コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

Web Server Gateway Interface

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

Web Server Gateway Interface (WSGI; ウィスキー[1][2]) は、プログラミング言語Pythonにおいて、WebサーバWebアプリケーション(あるいはWebアプリケーションフレームワーク)を接続するための、標準化されたインタフェース定義である。また、WSGIから着想を得て、他の言語でも同様のインタフェースが作られた。

基本的な発想

[編集]

過去において、Pythonに多種のWebアプリケーションフレームワークが存在することは、PythonでWebアプリケーションを開発しようとする者にとって問題になっていた。というのも、Webアプリケーションフレームワークを選択することによって、使用できるWebサーバが制限されてしまったり、その逆の制限が発生したりしたためである。Pythonで書かれたWebアプリケーションは、FastCGI, mod_python, CGI, さらにはWebサーバ独自のAPIを使ったものなど、様々な方法で実装されていた。

この問題を解決するためにWSGIが考案された。WSGIは、Pythonにおける、WebアプリケーションとWebサーバを接続する標準仕様を定めるものである。これによって、WSGIに対応したWebアプリケーション(やフレームワーク)は、WSGIに対応した任意のWebサーバ上で運用できるようになる。つまり、アプリケーション側がWSGIに対応していれば、アプリケーションのコードに修正を加えることなく、WSGI対応サーバを自由に選択することができ、高い可搬性(ポータビリティ)が得られる。

仕様の概要

[編集]

WSGIには二つの側 — サーバ側とアプリケーション側が存在する。WSGIは、リクエスト情報・レスポンスヘッダ・レスポンス本文を、両者の間でどのようにやりとりするかをPythonのAPIとして定義している。

Webサーバにリクエストが来ると、次のような流れでやりとりが行なわれる:

  1. サーバ側が、クライアントからリクエストを受ける。
  2. サーバ側は、アプリケーション側がエントリポイントとして提供するcallableオブジェクト(関数やクラスインスタンスなど __call__ が定義されたオブジェクト)を呼び出して、その引数として環境変数と1つのコールバック用callableオブジェクトを渡す。
  3. アプリケーション側は、このコールバック用callableオブジェクトを呼び出すことでステータスコードとレスポンスヘッダをサーバ側に伝え、さらに本文を生成するiterableオブジェクト(イテレータやリストなど)を戻り値として返す。
  4. サーバ側は、これらを用いてクライアントへのレスポンスを生成する。

WSGIはミドルウェアの考え方も提供できる。WSGIミドルウェアは、サーバ側とアプリケーション側のWSGIインタフェースを実装しているため、WSGIサーバとWSGIアプリケーションの"中間に"挿入できる。ミドルウェアはサーバーの視点からはアプリケーションとして振る舞い、アプリケーションの視点からはサーバーとして振る舞う。

"ミドルウェア"は、例えば以下のような機能を提供できる:

  • 目標の URL にもとづき、環境変数を適宜変更し、リクエストを別のアプリケーションのオブジェクトに回送する
  • 複数のアプリケーション(やフレームワーク)が同じプロセスの中に同居して動作できるようにする
  • リクエストとレスポンスをネットワーク上で転送することによる負荷分散と遠隔処理
  • コンテンツの後処理の実行 — XSLスタイルシートを適用するなど

WSGIアプリケーションの例

[編集]

既存のWSGI対応フレームワークを使用する場合は意識する必要はないが、ゼロからWSGIアプリケーションを作る場合は以下の例(Hello Worldアプリケーション)のようにする:

def application(environ, start_response):
    start_response('200 OK', [('Content-Type', 'text/plain')])
    yield b'Hello World\n'

解説:

  • WSGIアプリケーションは、callableオブジェクト (__call__が定義されたオブジェクト) として定義する(この例では application 関数)。このオブジェクトが呼び出される際、引数 environ としてCGIと同様の環境変数が渡され、引数 start_response として、ステータスコードとレスポンスヘッダを受け取るcallableオブジェクトが渡される。
  • start_response を呼び出して、ステータスコードとレスポンスヘッダを設定する。
  • WSGIアプリケーションの戻り値は、本文を生成するiteratableオブジェクトである必要がある。この例ではPythonのジェネレータ機能を使ってそれを実現している。

WSGI 互換のWebアプリケーションフレームワーク

[編集]

WSGIをサポートするWebアプリケーションフレームワークは多数存在する。その一例を示す:

WSGI対応サーバ

[編集]

WSGIサーバ(WSGIアプリケーションコンテナ)は、WSGIアプリケーションを常駐させ、HTTPクライアントからリクエストを受け取るごとに、WSGIアプリケーションのcallableオブジェクトを呼び出す。これによって、クライアントからのリクエストがアプリケーションに転送される。

WSGIアプリケーションコンテナの例としては、uWSGI, Gunicorn, Apacheモジュール (mod_wsgi, mod_pythonなど), Microsoft IISisapi-wsgi, PyISAPIe, ASPゲートウェイを使用)などがある。

さらに、WSGIアプリケーションをラップすることで、FastCGISCGI環境で動作させることもできるし、古典的なCGIとして動作させることもできる(例えば、Python標準ライブラリに含まれるwsgiref.handlers.CGIHandlerが利用できる)。

他のプログラミング言語への影響

[編集]

WSGIから着想を得て、他のプログラミング言語にも同様のインターフェイスが作られた。以下はその一例である。

WSGIとPython 3

[編集]

Python 3において文字列とバイト列が分離されたことはWSGIにとって問題となった。HTTPヘッダのデータはテキストとして扱われたりバイナリとして扱われたりするが、WSGIはヘッダデータを文字列として扱っている。Python 2ではテキストもバイナリも「文字列」として扱っていたためこれで問題がなかったが、Python 3ではバイナリはbytes型で扱うことになり、「文字列」とはUnicode文字列のことを表すようになった。この問題に対処した更新版のWSGI仕様は、PEP 3333として公開されている。

再考されたWSGI仕様として Web3 というものも提案されており、こちらはPEP 444 として公開されている。Web3は、互換性のないWSGIの派生であり、Python 2.6以降および3.1以降で動作するように設計されている。

脚注

[編集]

外部リンク

[編集]