Wikipedia:外来語表記法/ブルガリア語・マケドニア語
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この文書は、ブルガリア語、およびマケドニア語に由来する外来語を、日本語の仮名文字で表記する際の参考資料として作成されたガイドラインです。特定の表記を強制するものではありません。もちろん、編集は大胆に。
概要
[編集]ブルガリア語、マケドニア語はスラヴ語派に属しており、ロシア語やセルビア・クロアチア語など他のスラヴ語と似た部分が多く見られます。しかしながら、よく似ているが故に他のスラヴ語と取り違えられ、日本語での表記にぶれが生ずるひとつの原因ともなっています。ここでは、そうした表記ぶれを少なくし、ブルガリア語、マケドニア語を分かりやすく仮名に転写するための、一つの指針を示します。
原語に関して
[編集]原語表記について
[編集]キリル文字を使用する場合、ラテン文字表記を併記するとより分かりやすいですが、必ずしも必要ではありません。 表記に際しては、正しく表示されるように{{lang}}タグの使用が推奨されます。
言語コードはブルガリア語は「bg」、マケドニア語は「mk」です。
- ブルガリア語、マケドニア語ともにキリル文字を標準としています。原語表記に際してはキリル文字を使ってください。
方言と標準形
[編集]ブルガリア語、マケドニア語にはさまざまな方言がありますが、その土地固有の方言について基本的には言及する必要はありません。標準形を使用してください。
仮名転写に関して
[編集]ブルガリア語、マケドニア語は、ともに表記と発音はほぼ完全に対応しています。日本語への転写は、片仮名を用います。実際の発音規則を念頭に、原音に類する仮名を用いて転写してください。なお、日本語への転写は、厳密に原音を表記したものとは異なるということを念頭に入れておく必要があります。
- 慣習によって、原音とはあまり似ていない表記が定着していることもあります。基本的には、慣習に基づく表記を優先してください。必要に応じて、原音に近い表記を併記すると、より親切です。
- 例: シメオン・サクスコブルクゴツキ(Симеон Сакскобургготски)、より原音に近い表記では「シメオン・サクスコブルゴツキ」
- 長音記号「ー」は、入れても入れなくてもかまいません。長音記号が入っているところは、強勢が置かれていると見なされるため、強勢のないところには長音記号を入れるべきでありません。
- ブルガリア語、マケドニア語の母音は比較的弛緩したものが多いです。促音記号「ッ」の使用はあまり推奨されません。
人名
[編集]- 慣習がある場合、慣習に基づいたものを優先してください。必要に応じて、より原音に近いものを併記するとより親切です。
- 表記は「名・姓」とし、名と姓の間は全角中黒「・」で区切って下さい。
- ハイフンがある場合は、ハイフンは全角等号「=」で表記してください。
地名
[編集]- 日本語において、特別に定着している場合は、慣習に従ってください。
- ブルガリアの公用語はブルガリア語です。ブルガリアの地名は、ブルガリア語で表記します。トルコ語などの少数言語話者の多い地域については、ブルガリア語を優先しつつも、適宜併記するとよいでしょう。
- 例: モムチルグラト(ブルガリア語:Момчилград / トルコ語ではメスタンル Mestanlı )
- マケドニア共和国の憲法で定められている唯一の公用語はマケドニア語です。マケドニア共和国の地名は、マケドニア語で表記します。また、地方自治体においては、少数言語の話者数が20パーセントを超える場合、その言語はマケドニア語とともに自治体の公用語とされます。この規定に従って、マケドニア国内の一部の自治体ではアルバニア語、トルコ語、ロマ語、アルーマニア語、セルビア語が、マケドニア語とともに公用語となっています。マケドニア語を優先しつつも、これらの地方公用語は併記することが望ましいです。それ以外の場合でも、必要に応じて適宜併記するとよいでしょう。
- 例:クルシェヴォ(マケドニア語:Крушево、アルバニア語ではクルシェヴァ Krusheva、アルーマニア語ではクルシュヴァ Crushuva)
企業名
[編集]- 日本に支社がある場合は、支社が用いている表記を尊重して下さい。
- 原則として、ブルガリア語やマケドニア語での正式な社名を優先して下さい。但し、日本で格別別言語名で定着している場合はその限りではありません。
その他
[編集]- 人名・地名が元になっているもの(航空機名、艦船名など)は、元の人名・地名に合わせるか、少なくとも関連が容易にわかる表記を選んで下さい。
仮名転写方法
[編集]次の表に従って片仮名に転写することができます。なお、表のキリル文字の下のラテン文字は、ラテン文字への転写のひとつの例を示しています。
子音
[編集]有声音 | 無声音 | 転写方法 (単独)は後ろに母音を伴わない場合 |
例 | ||
---|---|---|---|---|---|
ブルガリア語 | マケドニア語 | ブルガリア語 | マケドニア語 | ||
Б б B b |
Б б B b |
П п P p |
П п P p |
それぞれ、バ行音およびパ行音で転写します。 (単独)ブ、プ |
ブルガス(Бургас) ペトリチ(Петрич) |
Д д D d |
Д д D d |
Т т T t |
Т т T t |
それぞれ、ダ行音およびタ行音で転写します[1]。 (単独)ド、ト[2] |
ドブリチ(Добрич) トシェ・プロエスキ(Тоше Проески) |
Г г G g |
Г г G g |
К к K k |
К к K k |
それぞれ、ガ行音およびカ行音で転写します。 (単独)グ、ク |
ゲオルギ・ディミトロフ(Георги Димитров) キロ・グリゴロフ(Киро Глигоров) |
Дз дз Dz dz |
Ѕ ѕ Dz dz |
Ц ц Тс тс[3] Ts ts Ts ts |
Ц ц Тс тс[3] C c Ts ts |
それぞれ、ザ行音およびツャ行音で転写します[4]。 (単独)ズ、ツ |
ツァレヴォ(Царево) |
Дж дж Dzh dzh |
Џ џ Dž dž |
Ч ч Ch ch |
Ч ч Č č |
それぞれ、ジャ行音およびチャ行音で転写します。 (単独)ジュ、チュ あるいはジ、チ[5] |
ジェベル(Джебел) チョチェク(чочек) |
Ѓ ѓ Ǵ ǵ |
Ќ ќ Ḱ ḱ |
それぞれ、ジャ行音およびチャ行音で転写します。 (単独)ジ、チ[6] |
ジョルチェ・ペトロフЃорче Петров チェバピќебапи | ||
В в V v |
В в V v |
Ф ф F f |
Ф ф F f |
それぞれ、ヴァ行音およびファ行音で転写します。 (単独)ヴ、フ |
ヴァルナ(Варна) フェルディナンド1世(Фердинанд I) |
З з Z z |
З з Z z |
С с S s |
С с S s |
それぞれ、ザ行音およびサ行音で転写します。 (単独)ズ、ス |
ズラタリツァ(Златарица) スコピエ(Скопје) |
Ж ж Zh zh |
Ж ж Ž ž |
Ш ш Sh sh |
Ш ш Š š |
それぞれ、ジャ行音およびシャ行音で転写します。 (単独)ジュ、シュ または ジ、シ[5] |
ジェリノ(Желино) シュメン(Шумен) |
Х х H h |
Х х H h |
ハ行音で転写します。 (単独)フ |
ハスコヴォ(Хасково) | ||
М м M m |
М м M m |
マ行音で転写します。 (単独)ム または ン |
マケドニア(Македонија) | ||
Н н N n |
Н н N n |
ナ行音で転写します。 (単独)ン |
ネヴェスティノ(Невестино) | ||
Њ њ Nj nj |
ニャ行音で転写します。 (単独)ニ[6] |
||||
Й й Y y |
Ј ј J j |
ヤ行音で転写します[7]。 (単独)イ |
ユーゴノスタルギヤ(југоносталгија) | ||
Л л L l |
Л л L l |
ラ行音で転写します。 (単独)ル |
レフ(лев) | ||
Љ љ Lj lj |
リャ行音で転写します。 (単独)リ[6] |
||||
Р р R r |
Р р R r |
ラ行音で転写します。 (単独)ル |
リラ(Рила) | ||
Щ щ Sht sht |
マケドニア語のштと同等です。 | トゥルゴヴィシテ(Търговище) | |||
母音
[編集]ブルガリア語 | マケドニア語 | 転写方法 | 例 |
---|---|---|---|
А а A a |
А а A a |
ア段で転写します。 | アスパルフ(Аспарух) |
Е е E e |
Е е E e |
エ段で転写します。 | エレナ・リステスカ(Елена Ристеска) |
И и I i |
И и I i |
イ段で転写します。 | イヴァン・アセン2世(Иван Асен II) |
О о O o |
О о O o |
オ段で転写します。 | オムルタグ(Омуртаг) |
У у U u |
У у U u |
ウ段で転写します。 | ウグルチン(Угърчин) |
Ъ ъ A a |
ウ段、またはア段で転写します。 | クルジャリ(Кърджали) | |
Ю ю Yu yu |
マケドニア語のjуと同等です。 | キュステンディル(Кюстендил) | |
Я я Ya ya |
マケドニア語のjаと同等です。 | ヤンボル(Ямбол) | |
Ьо ьо Yo yo |
マケドニア語のjоと同等です。 | ペーテョ(Петьо) |
気をつけるべき点
[編集]ブルガリア語とマケドニア語は、互いに概ね意思疎通ができるといわれるほど近縁の言語ですが、歴史的経緯により、その表記法には違いが生まれています。以下に、仮名転写に際して注意すべき点を挙げます。
有声化・無声化
[編集]対になった有声子音と無声子音(例:д - т)では、有声化・無声化という現象があります。この現象が起こる箇所では、有声子音の文字で書かれているものが実際には無声子音として発音されたり、その逆のことが行われたりします。
- ブルガリア語、マケドニア語では、ともに語末の有声子音は無声化されます。(セルビア・クロアチア語では無声化されません。混同に注意してください。)
- 有声子音と無声子音が連続する場合、前者は無声化されます。逆に、無声子音と有声子音が連続する場合、前者は有声化されます。ブルガリア語ではこれは表記に反映されません。マケドニア語では表記に反映されます。
- 例:オプシュティナ(ブルガリア語:община、マケドニア語:општина。щ / шが無声子音なので、そのひとつまえの子音は実際の発音では無声化されます。どちらも発音は同じですが、マケドニア語では無声化を反映してпとなっていますが、ブルガリア語では表記はбとなっています。)