Wikipedia:競走馬の特筆性判断の基準と独立記事作成についてのガイドライン/解説2021
特筆性の一般的な基準は「然るべき情報源で然るべき言及があるもの」ということになっている。
分野別の基準ではたいてい「◯◯に該当するもの」というものになっている。
この2つの基準はどちらが優先だとかの規定はない。つまり、互いに独立した2系統の基準が併存しているということ。それぞれの基準が別々の成立過程を経てきたからこうなっている。
そこで両者の整合性をはかるためには、<分野別「◯◯に該当するもの」であれば、「然るべき情報源で然るべき言及」があるはず。>とすればよい。当座は記事に出典がなくても、ちゃんと探せばみつかるはずだ、ということになる。
逆に言えば、確実に「然るべき情報源で然るべき言及がある」ものを、各分野別の基準として具体的に示せばよい。
たとえば競馬分野では、重賞に勝てば、数日から数カ月後には、その馬の特集記事が『優駿』『ハロン』『競馬ブック』『ギャロップ』などの紙の定期刊行物に掲載されるのは確実。だから「重賞勝ち」であれば特筆性の一般的基準を満たすことは確実視できる、ということになる。
「特筆性」の変遷
[編集]2002年にWikipedia日本語版が誕生して間もない頃は、利用者は自由に記事を作成していました。ですがそのうち、「いくらなんでもそれはなくない?」と他の大勢が感じるような記事はあかん、ということになります。
そこで、記事を作成するにはある程度の水準をクリアするべきだ、という風潮が生まれました。(作成の目安)
また、あまりひどいのは削除しようということになりました。(削除の目安)
当時、削除依頼の場面では、1件毎に削除するかどうかの議論が行われました。やがて判断する側からは、いちいち議論せずとも、機械的・自動的に判断できるような基準を作れば、いちいち議論しなくても済むのではないかという意見が出され、各分野毎にその基準を作るように提案が行われました。
これによって、分野ごとの基準が作られましたが、分野ごとに、それは「作成の基準」だったり「削除の基準」だったり、異同はみられます。
こうした動きとは別に、英語版からの翻訳のかたちでWikipedia:独立記事作成の目安が整備され、「特筆性」という新概念が導入されました。この文書は、紆余曲折を経て、2015年に「ガイドライン」に昇格しました。
2つの基準
[編集]「作成の目安」と「削除の目安」を同一視する人もいます。「作成の目安」をクリアしなければ削除である、とか、「削除の目安」に該当するものは作成してはいけない、というものです。作成の目安=削除の目安ということになり、1基準で両方を判断できます。
私個人は、この立場をとりません。「作成の目安」と「削除の目安」は別のものと扱うべきだ、と考えています。作成の目安をクリアしていないかもしれないが削除の目安には該当していないというような、両者のグレーゾーンが存在すると考えます。
一般論と分野別の具体論
[編集]いまは、「特筆性」は一般論として「対象と無関係な信頼できる情報源において有意に言及されている状態」と定義されています。ですがこの定義は、歴史的に見れば「後からできた定義」です。
それ以前に分野別に基準が作られたときには、「◯◯賞を受賞したもの」など、より具体的な基準が運用されていました。
これらの「一般論」と「分野別の基準」の関係については、「特に定めがない」としか言いようがありません。どちらが優先であるとかの規定や合意はありません。そうした議論自体、行われませんでした。
競走馬の「特筆性」の解釈
[編集]競走馬の場合、おおざっぱにいうと、「重賞勝ち」が「作成の目安」として合意があります。
上で述べたように私個人は「作成の目安」と「削除の目安」を同一視しませんが、同一視する方も多くいて、「重賞勝ちがない」のは削除に値する、という判断が長いあいだ行われてきています。
分野別基準と一般論の関係
[編集]こうした分野別基準と一般的基準を整合させるための、理論上の方便としては、私は次のように解釈できると考えています。
「重賞勝ち」した競走馬であれば、その馬についての詳しい情報源(特集記事)は存在するはずである。だから、仮に記事にその情報源が示されていない(出典がない)状態でも、それはその競走馬が特筆性を満たしていないことの証明にはならない。適切な調査をすれば、情報源を示してその馬の「特筆性の一般的基準」とクリアすることが可能なはず。
おそらく(控えめにみても)1960-70年代以降であれば、JRAの『優駿』や地方競馬の『ハロン』などの月刊誌や、『競馬ブック』『ギャロップ』などの週刊誌などで、「重賞勝ち馬」の特集記事が組まれるはずで、それによって重賞勝ち馬の特筆性は証明できるはずであろう。
- 注意点
ただし「重賞」の定義はあやふやである。日本の古い時代や海外の競馬を対象とする場合には「重賞」という概念は通用しない。
が、とりあえず日本語版Wikipediaでは、そういう競走馬の記事が対象になるのは稀れだから、そこをあまり詰める必要はないだろう。詰めるために投じられるコストと果実が見合わない。
- 解説
現代の競馬では、JRAと地方競馬の主催者が自ら「重賞」と位置づけているレースがそれにあたることになる。しかし「重賞」というコトバはもともと「重要なレース」ではなく「毎季重ねて行われるレース」(パターンレース)を意味していたとするならば、どこまでを含むのかはよくわからない。日本では古い時代には「重賞」という表現ではなく「特別競走」というコトバが、現在の「重賞」に相当するものだった。
海外の競馬には「重賞」というコトバにピッタリ当てはまる概念はない。現代の日本でふつうにいう「重賞」に最も近い概念は、「格付けを受けたレース」を意味する「Graded race」。日本でのジョーシキとしては「G1・G2・G3」を指すが、本来の格付制度はパターンレースを対象としており、すなわちリステッドレースもそこに加える必要がある。逆に言えば、地方競馬の「重賞」のほとんどは格付けを得ていないから、外人からすればそれらは「Graded race」ではないということになり、重賞ちゃうやんけ、となる。
海外の情報源はふつう伝統的に、「Graded race」ではなく「Stakes race」をカウントする。大雑把にいうと「Stakes race」はパターンレースに相当する。(ここでいう「ステークス」という語は、賞金を誰が提供しているかによる分類である。ステークス競走ではないパターン競走としては、カップ競走・パース競走・プライズ競走があった。これらはいずれも「レースに持ち馬を出走させる馬主」以外の第三者が賞金を提供するもの。)