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ヘアドネーション

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ヘアドネーションとは、小児がん、先天性の脱毛症、不慮の事故などで頭髪を失った子供のため、市民から寄付された髪の毛でウィッグを作り、無償で提供する活動。

美談として報道されるが、実際は、ヘアドネーションは髪の無いマイノリティーをかえって傷つける行為、善意のマウンティング、無意識の差別行為であるとの批判、問題提起が、NPO法人Japan Hair Donation & Charity(ジャーダック、JHD&C)から行われている[1][2]。(#批判・問題点を参照。)

概要

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ヘアドネーションはもともと、アメリカの団体Locks of Love[3]などが行っていた活動である。日本では2009年に、NPO法人Japan Hair Donation & Charity(ジャーダック、JHD&C)が活動を開始し、その後、いくつかの団体が相次いで活動を開始した。

当初は認知度の低さから髪の毛の寄付が少なく、最初のウィッグを提供するまで4年を要したが、水野美紀柴咲コウなどの有名人が参加したことにより認知度が上がり、寄付が急増した[4]

寄付する髪の毛は、原則として31cm以上の長さが条件である[注 1]。この「31cm」という中途半端な値の由来は、もともと米国で「12インチ(=30.5cm)以上」が基準とされ、それを日本でメートル法に換算したためとされている[6]。ただし、発祥元のひとつであるLocks of Loveでは2021年現在、12インチではなく「10インチ(=25.4cm)以上」を受け入れ条件としている[7]

ただし、女児向けのウィッグを作るためには31cmよりもさらに長い髪を必要とするため[6][8]、受入先の中には、31cmちょうどですぐに切らずに、もっと伸ばせる人は伸ばしてから寄付してほしい、と訴えている団体もある[8][9]

なお、頭髪の提供者は女性が中心であるが、男性が提供するケースもある。

批判・問題点

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善意のマウンティング、無意識の差別

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日本のヘアドネーションの第一人者であり実際にウィッグの申込者と向き合っているNPO法人Japan Hair Donation & Charity(ジャーダック、JHD&C)代表渡辺貴一は、活動し始めてすぐに、ウィッグを渡したところで何の解決にもならない、ウィッグを求めるのは病気で髪を失った子の親であり、受け取った子供本人は望んでつけているわけではない、中には「負けたような気持ちになる」と言う子供もいるという実情を目の当たりにする。ヘアドネーションというのは「ウィッグが手に入れば髪の毛がない人は喜ぶに違いない」という勝手な思い込み、押し付け、ただの廃棄物である髪を「いいこと」へと差し替える行為、ヘアドネーションできるほど髪がある、髪の毛があるということは素晴らしいことという善意のマウンティング、髪の無い人を傷つける無意識の差別である、という真実に至る。ジャーダックは現在「ヘアドネ 意味ない」として、こんな活動が一日も早くなくなる社会を望み、発展的な解散を目標として活動している[1][2]

活動拡大の弊害、困難さ

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ヘアドネーション活動を行っている団体の多くはボランティアベースの小規模な組織であり、人員・予算の両面において困難を抱えている。そのため、寄付されてくる大量の髪の受け入れなどに十分対応できず、渡辺によると、活動から撤退する団体も相次いでいるという。

Japan Hair Donation & Charity(ジャーダック、JHD&C)では、世の中の差別がなくなれば必要なくなる活動に対して、続けられるように算段することは目的と手段が入れ替わる本末転倒なこと、むしろ活動が拡大すればするほど、今まで髪の毛がなくても何とも思っていなかった人が「ウィッグをつけた方がいいのかな」と不安になってしまう、として活動拡大は考えておらず、発展的な解散を目標として活動している[2]

その他の一部の団体では、活動拡大の困難さから、毛髪の現物だけでなく金銭的な支援も検討してほしいと訴えている[10][11]

さらに2020年ごろからは、 新型コロナウイルス感染症の流行により活動を休止した団体も多く、ジャーダックもその例外ではなかった[12][13]。2023年5月にコロナ禍の終息宣言が出た後も、活動再開を積極的にアピールしている団体は少ない。

子供がウィッグをつけるデメリット

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ウィッグには頭皮が蒸れるというデメリットがある。ヘアドネーションでも提供されている、全頭部型の物は特に、頭皮が蒸れて雑菌が繁殖し炎症まで引き起こしてしまうことも少なくない。また、ウィッグで髪がないことを隠すことにより「バレたらどうしよう」という不安やストレスを常に心の中に抱える、メンタル面のストレスというデメリットもある[14]

子供には学校生活があり、体育の授業の運動、水泳、休み時間の友達との遊び等、頭皮が蒸れる状態、ウィッグが外れる心配をしなければならない状況は避けては通れず、学校側への配慮のお願い、担任教師への毎年の申し送りも含め[1]、ウィッグをつけることによって生じるデメリットは多い。

活動を行っている日本の団体

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下記は例示であり、網羅的な一覧ではないことに注意。

  • 特定非営利活動法人 Japan Hair Donation & Charity[15]
    • 日本におけるヘアドネーション活動の先駆けとされる。
  • 特定非営利活動法人HERO[10]
  • 株式会社グローウィング『つな髪プロジェクト』[16]
  • Hair for Children(旧・女子高生ヘアドネーション同好会)[17]

出典

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  1. ^ a b c 西本美沙. “ヘアドネーションという罪。「いいこと」がもたらす社会の歪みについて”. ランドリーボックス. 2022年6月4日閲覧。
  2. ^ a b c 西本美沙 (2022年5月13日). “無意識の差別をなくすことはできるのか?ヘアドネーションがいらない社会を目指して”. ランドリーボックス. 2024年2月29日閲覧。
  3. ^ Locks of Love”. 2021年4月9日閲覧。
  4. ^ “髪を失った子に笑顔を-柴咲コウさんも賛同、切った頭髪でウイッグ提供「ヘアドネーション活動」大阪のNPO法人10年”. 産経WEST. (2018年1月4日). https://www.sankei.com/article/20180104-G4TX6DPITBLL5P32GNT3Y64UQE/ 2018年2月12日閲覧。 
  5. ^ 【最重要】15cm以上31cm未満の髪の受付完全終了のお知らせ”. つな髪プロジェクト. 2024年3月17日閲覧。
  6. ^ a b 【ヘアドネーション 不安解消マニュアル】長さ (簡単な測り方)・31cm? 15cm? 違い・仕上がり目安・ダメージ毛・お手入れ・年齢・送り方 【まとめ 】 |”. 美容師 ヨシノブログ (2023年5月22日). 2024年3月17日閲覧。
  7. ^ Get involved - Locks of Love”. 2021年4月9日閲覧。
  8. ^ a b NPO法人HERO. “どうして31cm以上なの?”. 2020年9月23日閲覧。
  9. ^ Japan Hair Donation & Charity (2020年5月22日). “【重要】毛髪のご寄付に関する大切なお知らせ(2) 「#31センチからのお願い」”. 2020年9月23日閲覧。
  10. ^ a b Hair Donation(ヘアドネーション) | ヘアドネーションならNPO法人HERO”. 2024年3月17日閲覧。
  11. ^ 第2弾!【全国子ども病院支援イベント】ウィッグドネーションプロジェクト”. つな髪プロジェクト. 2024年3月17日閲覧。
  12. ^ 【重要】新型コロナウィルス等の感染症に関して事務局業務についてのお知らせ” (2020年2月17日). 2024年3月17日閲覧。
  13. ^ 【重要】ヘアドネーション毛髪の受け入れ一時停止について” (2020年3月2日). 2024年3月17日閲覧。
  14. ^ カツラ、ウィッグ等の使用が「薄毛」を加速させる理由”. ゴールドオンライン (2017年6月26日). 2024年10月11日閲覧。
  15. ^ Japan Hair Donation & Charity(ジャーダック, JHD&C) | ヘアドネーションを通じた社会貢献活動”. 2024年3月17日閲覧。
  16. ^ つな髪® | 髪の寄付(ヘアドネーション)で医療用ウィッグを無償提供”. 2024年3月17日閲覧。
  17. ^ Hair for Children | Home”. 2024年3月17日閲覧。

脚注

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  1. ^ 『つな髪プロジェクト』はかつて、寄付の条件を「15cm以上」としていた。しかしその後、在庫過多により31cm未満の髪の受け入れを休止し、最終的に2023年5月末をもって31cm未満での受け入れを終了した[5]

関連項目

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