中央流行疫情指揮中心
中央流行疫情指揮中心(ちゅうおうりゅうこうえきじょうしきちゅうしん、略称:疫情指揮中心、英語:Central Epidemic Command Center、英略称:CECC)は非常時に中華民国(台湾)の衛生福利部国家衛生指揮中心(英語:National Health Command Center、英略称:NHCC)の下に設立する伝染病(感染症)の監視、防疫政策の策定および促進、感染症の予防と管理に必要な政策を担当する。常設の部署ではなく、防疫政策の必要に応じて都度設置される。日本の報道では『中央感染症指揮センター[1]』、あるいは『中央流行疫情指揮センター[2]』と意訳されることもある。
歴史
[編集]2005年1月18日、行政院衛生署(衛生福利部の前身)によりそれまでの「生物病原災害中央災害応変中心(対感染性病原体)」、「反生物恐怖攻撃指揮中心(対バイオテロ)」、「中央流行疫情指揮中心」などを束ねる国家衛生指揮中心が設置され、その中核組織として指揮中心が機能を果たすことになる[3]。
A型インフルエンザ
[編集]- H1N1亜型
2009年4月28日、H1N1亜型による2009年新型インフルエンザの世界的流行に伴い、行政院は衛生署署長葉金川を総指揮官とする指揮中心を設置した[4]。
- H7N9亜型
2013年4月、H7N9亜型による鳥インフルエンザが中国大陸で流行した際に設置され[5]、疾病管制署(CDC)署長の張峰義が指揮官となっている[6]
デング熱
[編集]2015年9月、台南市を中心にデング熱が蔓延し、国内感染者が1万人に迫った際に設立[7]。
ジカウイルス
[編集]2016年2月、中南米でジカウイルスによるジカ熱の流行が確認され、WHOがジカ熱流行を国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC, public health emergency of international concern) を宣言した翌日に政府はジカ熱を法定伝染病に指定、CDCは署長の郭旭崧を指揮官とする対策センター(茲卡病毒指揮中心)を発足させた[8][9]。
COVID-19
[編集]2020年1月20日、新型コロナウイルスの発生に伴い防疫レベル3級(海外での感染事案に対応)の「厳重特殊感染性肺炎中央流行疫情指揮中心」が組織され、疾病管制署(CDC)署長であった周志浩が指揮官となり[10]、その後23日には(国内の感染事案発生に対応する)2級への格上げで衛生福利部部長の陳時中が新指揮官となった[11]。世界規模での感染が認められた2月末に1級へ再昇格[12]。3月9日に副指揮官が任命され、内部組織が強化された[13]。国内感染者ゼロが2ヶ月近く経過した6月にCECCは男子卓球選手江宏傑(福原愛の夫)を「防疫新生活」のイメージキャラクターに起用した[14]。
厳重特殊感染性肺炎中央流行疫情指揮中心の構成人員
[編集]組はチームに相当[15]。
- 指揮官
- 周志浩(CDC署長):2020年1月20日 - 23日
- 陳時中(衛生福利部(衛福部)部長):2020年1月23日 - 2022年7月17日
- 王必勝:(衛生福利部附属医療及社会福利機構管理会執行長→衛福部次長)2022年7月18日[16] -
- 副指揮官 - 陳宗彦(内政部次長)
- 専門家会議招集人 - 張上淳(国立台湾大学副学長、医学部教授)
- (前進指揮所) - 2021年1月に院内感染が発生した衛生福利部桃園医院内に設置された臨時支部で、院内感染制圧を直接指揮する。その指揮官には医療応変組の副組長を務める王必勝が任命された[17]。
組名 | 組長 | 副組長 | 任務 |
---|---|---|---|
疫情監測組 | 周志浩●(衛福部疾病管制署(CDC)署長) | 国内および海外の流行状況監視と国際交流。 | |
辺境検疫組 | 陳宗彦(内政部次長) | 入国、国境管理および検疫対策。 | |
社区防疫組 | 地域別、家庭検疫と隔離追跡、在宅医療、心理カウンセリング、その他の業務。 | ||
医療応変組 | 感染症の予防と治療の医療ネットワーク、検疫所、大規模な入院と治療、およびその他の感染管理事項の管理。 | ||
研発組 | 梁賡義●(国家衛生研究院院長) [29] | 迅速なスクリーニング試薬、ワクチン、医薬品の研究開発、疫学予測、肺炎の流行研究ネットワークとデータベースの確立。 | |
資訊組 (情報組) |
簡宏偉(行政院資安処長) |
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流行情報 |
行政組 | 鄭舜平(衛福部主任秘書) [32] | 伝染病の予防、虚偽の情報の調査および関連する事柄に関連する法制度 | |
新聞宣導組 | 高遵(行政院新伝処長) |
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流行防止プロモーション、民衆諮詢、政府のマーケティング戦略 |
法務組 | 陳明堂(法務部次長) | 民衆法務諮詢 |
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左から蔡英文(総統)、陳時中、陳宗彦
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張上淳
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荘人祥
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周志浩
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羅一鈞
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李伯璋
国内での評価
[編集]指揮中心では1月の正式発足後6月上旬まで毎日欠かさず記者会見を開いていたことから、主要メンバーは「阿中、阿中部長、鋼鉄部長」(陳時中)、「護国神鈞」(羅一鈞)、「淳淳、教授」(張上淳)、「祥祥」(荘人祥)、「浩浩」(周志浩)などと愛称で呼ばれるようになり[34]、陳時中、張上淳、荘人祥、周志浩の4人組は「流星花園」出演ユニットになぞらえて『F4』[35]、または陳宗彦とCDC副署長の羅一鈞いずれかを加えた5人組を男性ロックバンド「五月天(メイデイ)」になぞらえて『防疫五月天』と呼ばれるようになった[36][37]。批踢踢(PTT。台湾最大のインターネット掲示板)で2019年末に転載されていた武漢の感染状況の投稿を発見した署員の通報から即座に防疫政策に反映させたCECC最年少の羅一鈞は『防疫界のコナン(柯南)』の異名で知られるようになった[38]。
2020年5月、民間シンクタンクの新台湾国策智庫が発表した世論調査結果では閣僚兼CECC指揮官の陳時中に対する支持率が93%に、CECCが統括した政府の防疫政策全般についても91%が満足と回答した[39]。
総統蔡英文は自身の2期目(15代総統)就任式典に閣僚続投となる陳時中以外の防疫五月天とCDC副署長の羅一鈞ら現場職の人員の出席を要請した[40]。
国外からの評価
[編集]2020年3月、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(JAMA)にCECCの対策が紹介された[41]。(原文[42])
2020年6月、日本政府の専門家会議に参加していた尾身茂は台湾の準備態勢を「優等生」と評価した[43]。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ “<新型コロナ>「武漢で隔離治療」昨年末WHOに通知 台湾、「人から人」疑いを指摘”. 東京新聞. (2020年4月12日)
- ^ “台湾でコロナを封じ込めた「鉄人大臣」の知られざる素顔”. Wedge. (2020年4月28日)
- ^ “整合指揮、捍衛健康-「國家衛生指揮中心」正式啟用”. 疾病管制署 行政院衛生署 (2005年1月18日).
- ^ “葉金川:豬流感風暴 台灣躲不掉”. 自由時報. (2009年4月29日)
- ^ “防疫如同作戰-全民健保不缺席”. 衛生福利部中央健康保險署. (2013年4月14日)
- ^ “簡訊:台灣成立H7N9流感中央指揮中心”. BBC中文網. (2013年4月3日)
- ^ “登革熱疫情將破萬!政院才宣布成立「中央疫情中心」”. The News Lens 關鍵評論網. (2015年9月15日)
- ^ “台湾がジカウイルス流行疫情指揮センターを設立”. 新華網. (2016年2月3日)
- ^ “WHO確認茲卡病毒為「國際公衛緊急事件」 疾管署:和伊波拉威脅同等級”. The News Lens 關鍵評論網. (2016年2月2日)
- ^ “第3レベルの感染状況指揮センター設置で新型肺炎対策を強化”. Taiwan Today. (2020年1月21日)
- ^ “防武漢肺炎升級 中央疫情應變中心「二級開設」【健康資訊】”. 台視 (Youtube). (2020年1月23日)
- ^ “蘇行政院長、中央感染症指揮センターのレベルを「一級開設」に格上げ”. Taiwan Today. (2020年3月2日)
- ^ “陳宗彥接內政部次長 「全壘打王 」也來拉炮”. 台湾国際放送. (2020年3月9日)
- ^ “帥!桌球好手江宏傑代言宣導「防疫新生活」”. 自由時報. (2020年6月10日)
- ^ 台灣中央流行疫情指揮中心及防疫作法”. 外交部 (2020年3月27日). 2020年4月10日閲覧。 中華民國駐外單位網站連結 “
- ^ a b c 李欣芳 (2022年7月15日). “政院宣布薛瑞元接衛福部長 王必勝任次長兼任指揮官”. 自由時報
- ^ “部桃指揮官王必勝海邊小放空 曝院內確實分艙分流”. 新頭殼 newtalk. (2021年1月26日)
- ^ “致WHO警告信「操刀人」是她 專家也大讚:一看就知警訊”. 三立新聞台. (2020年4月16日)
- ^ “五個部會首長及8 位政次背景 一次讓你看個夠”. 民報 Taiwan People News. (2016年4月28日)
- ^ “衛福部再傳人事異動!次長何啟功離職回高醫服務 接任人選未定”. 新頭殼newtalk (Yahoo奇摩). (2020年8月7日)
- ^ “政院:衛福部政務次長由李麗芬、薛瑞元接任”. 行政院 (2020年8月7日). 2022年6月14日閲覧。
- ^ “【防疫英雄】應變官莊人祥 大數據防疫守護國人”. 聯合報. (2020年3月16日)
- ^ “獨/抗疫週年!早出晚歸虧欠家人!「牠」成莊人祥減壓救贖”. 三立新聞網. (2021年1月26日)
- ^ “花蓮慈濟醫院王英偉接任國民健康署署長”. 中国時報. (2016年6月8日)
- ^ “屏衛生局長薛瑞元升官 8月接任衛福部次長”. 中国時報. (2017年7月26日)
- ^ 兼顧防疫、經濟以及社會運作 總統說明防疫新階段「四大重點措施」 共同打造更強韌的臺灣”. 中華民国総統府 (2022年4月26日). 2022年6月14日閲覧。 “
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- ^ “【抗疫勇士】隔離檢疫吃力不討好 胸腔重症醫出身!王必勝果斷決策築防線”. 台灣蘋果日報. (2020年2月25日)
- ^ “國衛院院長就職 梁賡義接棒”. 大紀元. (2017年12月5日)
- ^ “高醫大藥學教授吳秀梅 接任食藥署長”. 公共電視台 (Youtube). (2017年2月10日)
- ^ “衛福部大刀闊斧推醫療資安聯防,更要用資料治理打AI基礎”. iT home. (2019年5月18日)
- ^ “桃醫鄭舜平院長 扮推手助圓醫學中心夢”. 聯合報. (2019年1月28日)
- ^ “新任副縣長朱壽騫16日就職 鄧如秀調升衛福部”. 宜蘭新聞網. (2017年2月15日)
- ^ “新型コロナ対策本部、開設から満100日迎える”. Taiwan Today. (2020年4月29日)
- ^ “出門粉絲狂湧上拍照!全民偶像「防疫F4」紅翻國際...120天都沒休假”. ETtoday新聞雲. (2020年4月28日)
- ^ “百日露面穩民心 「防疫五月天」護台心境曝”. 壹新聞 NextTV. (2020年4月29日)
- ^ “「防疫五月天」台南防疫旅行を高評価! 黄偉哲市長は台南観光ブームを期待!”. 台南市政府. (2020年6月3日)
- ^ “超前部署「關鍵一夜」細節曝光! 羅一鈞扮柯南追出李文亮關鍵警訊”. 匯流新聞網 (新浪新聞). (2020年4月16日)
- ^ “民調:陳時中滿意度逼94%、政府防疫滿意度91.7%”. 新頭殼 newtalk. (2020年5月7日)
- ^ “羅一鈞也列席 陳時中讚:最年輕最有前途”. 台視 (Youtube). (2020年5月19日)
- ^ “台湾の新型コロナ対策、米医療雑誌『JAMA』で紹介される”. Taiwan Today. (2020年3月5日)
- ^ Response to COVID-19 in Taiwan Big Data Analytics, New Technology, and Proactive Testing”. 2020年5月10日閲覧。 C. Jason Wang (2020年3月3日). “
- ^ “尾身氏「台湾は優等生」 新型コロナ対策の準備体制を称賛”. フォーカス台湾. (2020年6月29日)