風本真吾
風本 真吾(かぜもと しんご、1963年 - )は、日本の医師、実業家、作家[1]。四谷メディカルサロン院長[1]、株式会社メディカルサロン代表取締役[2]。健康管理、アンチエイジング、低身長治療、肥満やダイエット、美肌づくりについての著作が多数ある。慶應義塾大学医学部卒業[1]。1991年から1995年まで慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程に学ぶが、風本自身の説明では「学位制度に疑問を抱き」(本人にとって学位申請の意義がなくなっていた)学位申請はしなかったため[3]、博士課程は修了していない[4]。
風本は、28歳時に大学病院の外来診療を担当しながら、「日本の医療においては、個々の診療技術は実に優れているが、それを取り巻く制度に問題がある。その問題は、国民皆保険制度の足かせ化[5]である」と考え、「高齢化社会の到来を迎え、この制度はより良い方向に向かわなければならない[6]」と語ると同時に、「健康・医療に関する国民の知識の乏しさ[7]」「予防医学の未熟さ[8]」にも気づき、それらの解決を図ることを目的として、大学院在学中の1992年7月に四谷メディカルサロン(自由診療)を開設し、「医師と会員の友誼関係」を素地とした上で、健康管理を日常生活に密着して指導していくシステムであるプライベートドクターシステムを発案し、運営した[9]。同時に、その創業期に、会員向けの会報誌である「メディカルサロンインフォメーション」を創刊した。この会報誌は、その後、毎月刊行され、「アラ・サルーテ」「月刊メディカルサロン」と名称が変更される中で、平成7年に第三種郵便物として認可された。認可後も毎月発刊され、2013年1月時点で、第212号を数えるにいたった。風本の事跡は、この月刊誌を追求することによっても実証される[10]。
プライベートドクターシステムで、多くの経営者らと健康管理の在り方に関して、豊富なコミュニケーションをとりながら、健康管理の学問化に取り組んだ。健康管理には目標設定が必須であることを説き、その目標を「90才を超えても頭脳明晰で自分の足でどこにでも行けて、見た目の姿は50歳」に設定し、それを実現するために取り組む諸行為が健康管理である、と定義し、健康管理学は、寿命管理学、体調管理学、容姿管理学に3分類されることを説示し[11][12][13]、後に、「世界がもし100人の60才だったら」、免疫医学、EPA体質、予想医学、アンチエイジング医学、疲労回復の医学、遺伝子医学の実践応用、を述べた書籍「自分の寿命を管理する本」(東京新聞出版局)を著した[12]。
風本は「健康管理学は従来の医学のように医師が利用するために存在するものではありません。すべての人達が利用するためのものなのです。したがって、多くの人のポリシーに触れ、対話を繰り返しながら、築いていくものであると思っています」と語っている[14]。
健康管理にあたっては、本人の生活信条を中心に据えることが大切で、それこそ、「自由気ままに不節制しながらも健康で長生きしたい」と希望する人には、それを実現できるように指導することが、目指すべき健康管理指導である、と説き続けた[15][16]。
一方、たった数kgの体重減量で、コレステロール、血圧、尿酸などの薬が不要になる人がたくさんいるのに、健康保険の診療現場ではダイエット指導に本腰を入れず、薬漬けにしている現状を憂いて、1993年頃から、健康管理の一環としてのダイエット指導に熱心に取り組むことになった[17]。 風本が実践するダイエット指導は、医療行為としてのダイエット指導であり、自力で努力しても痩せられないという人が来院するので、必然的に医療用の食欲抑制剤であるマジンドールを使用することが多くなった。そこで、1993年から1994年ことには、「プライベートドクターシステム」から切り離して、ダイエット指導を行う「ウェイトコントロールシステム」が独立して運営されるようになった[18]。 1996年ごろまでには、マジンドールを使用するダイエットの手法が十分に進歩した。2000年には、マジンドールの副作用である口渇感と便秘を解消するのに優れた飲用物として桑を主原料とするお茶、減量中の停滞期を解除するクロムサプリメントを開発した[19]。手法論の一環として生活改善も研究され、朝食を抜くとやせやすくなるという新理論「朝だけダイエット」を発表した。 2000年に、三笠書房から刊行された『お医者さんが考えた朝だけダイエット』は、60万部突破の大ベストセラーになった[20]。一方、風本真吾の診療によって培われたマジンドールダイエットのノウハウは、メディカルサロンの訓え「マジンドールダイエットの総括」[21]としてまとめられている。
ダイエット希望者が増えてきた1999年ごろには、研究ターゲットが加算されていた。「最近、疲れやすいのです」という相談に対して、健康保険の医療が「検査しても異常ありません。年をとったのだからやむを得ないです」と応じて、相談者の悩みの解決になっていないことに注目して、疲労回復の医学の研究へと移行し[22]、後の著作である「自分の寿命を管理する本」に盛り込まれた[23]。この研究は、後にエイジングリカバリー医学(加齢に伴う衰えからの回復医学)へと発展することになり、「アンチエイジングでイキイキ長生き」(秀和システム)を著することになった。エイジングリカバリーは一般には、アンチエイジングと名付けられ、同名を関する医学会も設けられている。風本には大勢のプライベートドクターシステムの会員がいたので、この分野の研究は高速ですすめられ、特に成長ホルモンとプラセンタに注目し、その成果は「自分の寿命を管理する本」に盛り込まれた[24]。
疲労回復を目的として始めたプラセンタ医療であったが、皮膚への効果が女性に好まれた。風本は、胎盤エキスの皮膚に対する効果を研究し、胚芽細胞のターンオーバーを促す作用、胚芽細胞のセラミド合成を高める作用、アレルギーを中和する作用、P53遺伝子活性化を介して突然変異細胞を修復する作用(=シミが薄くなる)などを臨床的に検証し、その成果を2001年に「お医者さんが考えた1週間スキンケア」(三笠書房)に記した[25]。この書籍は版を重ねるベストセラー(11刷)となり、日本中にプラセンタ注射がひろまった。出版当時は、プラセンタ注射を実施していた診療所は、日本に数件しかなかったが、その数年後には、日本中の皮膚科、美容外科で実施されるようになった。[26]
「健康管理学は従来の医学のように医師が利用するために存在するものではありません。すべての人達が利用するためのものなのです。したがって、多くの人のポリシーに触れ、対話を繰り返しながら、築いていくものであると思っています」[27]と語っていたようだが、風本の著作が次々とベストセラーになった原点と関係しているかもしれない。 2000年頃の風本の著作の著者プロフィール欄には、風本真吾の生涯テーマとして、「健康管理の学問化とその学問に基づく実践指導」「栄養過剰時代における体重管理指導」「夢にあふれる高齢者社会のイメージ作り」「全国民の健康医療に関する知的レベルの向上」「海外で活躍する日本人の健康支援」「医療構造改革の実現」が掲げられている[28][29][30][31]。
慶應義塾大学卒業後の1992年、自由診療の内科医院、四谷メディカルサロンを創業[32]、「健康保険でカバーできない医療、健康保険でカバーすべきでない医療がある」とスローガンを掲げる[33]。以後、名古屋や大阪など全国各地におよそ15か所のサロンを展開したが[34][35]、 健康保険を用いない医療機関が大きくなっていくことに対して、国民皆保険を堅持しようとする医師関連団体、行政当局の反発を受けたため、2008年に四谷メディカルサロンのみを残して他のサロンを全て譲渡ないし廃業した[1]。
2002年に、風本は自ら会長となり、「全国民の健康、医療に関する知識の向上」を主たる事業目的として、NPO法人日本健康教育振興協会を設立したが、2008年にはNPO法人を解消し、経営する株式会社メディカルサロンの社内組織として位置づけなおした[36]。
行政当局の反発は強く、2014年2月27日、厚生労働省より「医師が看護師に指示を出して、同一診療所内であっても、医師の非面前で看護師に注射させたのは、医師法違反にあたる」と指摘され、業務停止1年の行政処分が下されている(2014年3月13日発効)[37]しかし、医療改革への志は失っていないと自らのホームページで語っている[38]。
主な著作
- 一億人の新健康管理バイブル、講談社 (1995/09)
- 知的ダイエット、マキノ出版 (2000/05)
- お医者さんが考えた「朝だけ」ダイエット、三笠書房 (2000/05) 【60万部ベストセラー】
- あなたの健康を保証する本、三笠書房 (2000/08)
- 朝だけダイエットノート、三笠書房 (2000/11)
- 私の健康記録 マイ・カルテ 、三笠書房 (2001/04)
- お医者さんが考えた「一週間スキンケア」、三笠書房 (2001/08)
- お医者さんが教える糖尿病らくらく克服術、マキノ出版 (2001/09)
- お医者さんが自信をもってすすめる米ぬかスキンケア、三笠書房 (2002/08)
- 名医が教える「からだの痛み」にすぐ効く本、三笠書房 (2002/04)
- 「もの忘れ」で絶対困らない本、三笠書房 (2002/09)
- もっとキレイに変身できる「朝だけ」ダイエット、三笠書房 (2003/05)
- 30歳からの美肌&ダイエットBOOK、三笠書房 (2003/11)
- 背がどんどん伸びる本、三笠書房 (2004/1)
- まんがで学ぶ40代からの健康管理(上) 、メディカルサロン (2004/12)
- まんがで学ぶ40代からの健康管理(中) 、メディカルサロン (2004/12)
- 自分の寿命を管理する本、東京新聞出版局 (2005/03)
- 男の腹やせダイエット、メディカルサロン (2005/07)
- まんがで学ぶ40代からの健康管理(下) 、メディカルサロン (2005/09)
- 背を伸ばす医療、メディカルサロン (2005/12)
- アンチエイジングでいきいき長生き、秀和システム (2006/08)
- 子育て終えて本格キレイ!美肌&ダイエット、メディカルサロン (2006/09)
- 仕事のキレイの妥協しない!スキンケア新常識、メディカルサロン (2006/11)
- お医者さんが教える「3日でヌード肌」、大和書房 (2007/01)
- なぜ「あと5センチ」背が伸びなかったのか?、宝島社 (2007/10)
- わが子の背をすくすく伸ばすには、メディカルサロン (2007/11)
- 女の腹やせダイエット、メディカルサロン (2007/12)
- 長寿の食事 短命の食事、三笠書房 (2008/06)
出典・脚注
- ^ a b c d 風本真吾. “プロフィール”. 風本真吾. 2012年8月11日閲覧。
- ^ “会社概要”. 株式会社メディカルサロン. 2012年8月11日閲覧。
- ^ 風本真吾. “これまでの歩み”. 風本真吾. 2012年8月17日閲覧。
- ^ 慶應義塾大学大学院学則 第4節 課程修了の認定及び成績評価 第109条4には、「医学研究科博士課程においては,大学院に4年以上在学し,所定 の単位を修得し,かつ研究上必要な指導を受けた上,博士論文の審査及び最終試験に合格することとする。ただし,在学期間に関しては, 優れた研究業績を挙げた者については,大学院に3年以上在学すれ ば足りるものとする。」とあり、博士論文の審査に合格しなければ「修了」にはならない。
- ^ 風本真吾『一億人の新健康バイブル』(講談社)、1995年、P330
- ^ 風本真吾『一億人の新健康バイブル』(講談社)、1995年、P335
- ^ 風本真吾『一億人の新健康バイブル』(講談社)、1995年、P2~P5、P327、P333~P334
- ^ 風本真吾『一億人の新健康バイブル』(講談社)、1995年、P2~P5
- ^ 風本真吾『一億人の新健康バイブル』(講談社)、1995年、P331
- ^ 月刊メディカルサロン 風本真吾
- ^ “40からの健康管理”. 東京新聞連載. (1998-9-12~1999-9-25)
- ^ a b 「自分の寿命を管理する本」(東京新聞出版局)
- ^ あなたの健康を保証する本(三笠書房)
- ^ 風本真吾. “健康管理の学問化”. 風本真吾. 2012年8月30日閲覧。
- ^ 一億人の新健康管理バイブルP5
- ^ 風本真吾. “情報を活用して、自由気ままに不摂生しながらも長生きを目指す”. 風本真吾. 2012年8月17日閲覧。
- ^ 「あと30年長生きする生活法(下)・実践的減量編」『サンデー毎日』1996年3月24日号、P242
- ^ 風本真吾『一億人の新健康バイブル』(講談社)、1995年、P319
- ^ 風本真吾. “ウェイトコントロールシステム「進化したマジンドールダイエット」”. 風本真吾. 2012年8月29日閲覧。
- ^ “「お医者さんが考えた朝だけダイエット」出版社/著者からの内容紹介”. 2012年8月30日閲覧。
- ^ マジンドールダイエットの総括 風本真吾、2012年9月22日閲覧。
- ^ 疲労回復と癒しの医療 風本真吾、2012年9月7日閲覧。
- ^ 風本真吾『自分の寿命を管理する本』(東京新聞出版局)、P252~P269
- ^ 風本真吾『自分の寿命を管理する本』(東京新聞出版局)、P212~P250
- ^ 風本真吾『お医者さんが考えた一週間スキンケア』(三笠書房)、P196~213
- ^ 学者として 風本真吾、2012年9月21日閲覧。
- ^ 健康管理の学問化 風本真吾。
- ^ 風本真吾『あなたの健康を保障する本』(三笠書房)、カバーの著者プロフィール欄
- ^ 風本真吾『お医者さんが考えた朝だけダイエット』(三笠書房)、カバーの著者プロフィール欄
- ^ 風本真吾『お医者さんが考えた一週間スキンケア』(三笠書房)、カバーの著者プロフィール欄
- ^ 風本真吾『背がどんどん伸びる本』(三笠書房)、カバーの著者プロフィール欄
- ^ 風本真吾. “風本が創業した四谷メディカルサロンについて”. 風本真吾. 2012年8月11日閲覧。
- ^ “健康保険でカバーできない医療、健康保険でカバーすべきでない医療がある”. 四谷メディカルサロン. 2012年8月11日閲覧。
- ^ “向精神薬「マジンドール」を違法販売 食欲抑制効果、容疑のエステ捜索”. 朝日新聞(夕刊): p. 13. (2007年12月27日) - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
- ^ “「メディカルサロン」代表の医師ら逮捕 無資格医業容疑で”. 朝日新聞(夕刊・大阪): p. 12. (2008年1月8日) - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
- ^ “設立までの歴史”. 日本健康教育振興協会. 2012年8月11日閲覧。
- ^ “厚生労働省:医師行政処分34人 免許取り消しは4人”. 毎日新聞. 2014年2月27日閲覧。
- ^ 風本真吾. “健康保険制度のひずみと、失われない志”. 2014年5月13日閲覧。