ガリア群 (衛星)
ガリアグループ(がりあぐん、Gallic group)とは、土星の外部衛星のうち、軌道長半径が1600万〜1900万km、軌道傾斜角が比較的小さく(現在33~41°)、軌道離心率は 0.5 前後と比較的大きい、順行軌道をとるグループである。
概要
2018年現在、このグループに属する天体は4個発見されている[1]。
これらのうち、アルビオリックスは推定直径が 32 km であり、ガリアグループの衛星の中では最大である[2]。
このほか、2019年に発見された S/2004 S 24 もガリアグループに類似した軌道要素を持っている。しかしガリアグループに属する他の衛星と比べると、遥かに遠方を公転する軌道を持つ。そのため、かつては内側にあったものが外側に移動してきたものか、あるいはそもそもガリア群には属さない衛星である可能性もある[3]。
ガリアグループの衛星の固有名は、国際天文学連合 (IAU) の命名委員会で、ガリア神話に登場する神などの名前から命名されている。
物理的特徴と起源
ガリアグループの衛星は軌道要素が類似しているため、共通の起源を持っていることが発見直後から予想されており、単一の天体が衝突・破壊を起こした破片からガリア群が形成された可能性があると考えられている[4]。
その後の観測から、ガリアグループの衛星の表面はどれも似た淡い赤色を示すことが分かっており、色指数は B-V=0.91、V-R=0.48 と測定されている[5]。また赤外線でのスペクトル指数も類似していることが分かっている[6]。
最近の観測では、ガリアグループの最大の衛星であるアルビオリックスの表面は異なる2つの色を示すことが分かっている[7]。片方の色はエリアポとタルボスの表面と似ているが、もう片方はあまり赤みの無い色をしている。このことから、エリアポとタルボスはアルビオリックスへの天体衝突によって発生した破片であり、衝突の際に赤みの薄いクレーターを形成した結果としてアルビオリックスの模様が出来た可能性が示唆されている[7]。このような衝突を起こすためには、アルビオリックスに衝突した天体はサイズが 1 km 以上、相対速度は 5 km/s である必要があり、その結果として半径 12 km の大きなクレーターを形成する。同じ土星の衛星であるフェーベの表面には多数の大きなクレーターが発見されており、土星周辺では過去にこのような天体衝突が頻発していたことを示している。
出典
- ^ Scott S. Sheppard. “Saturn Moons”. Carnegie Science. 2019年11月2日閲覧。
- ^ Jet Propulsion Laboratory (2015年2月19日). “Planetary Satellite Physical Parameters”. Jet Propulsion Laboratory Solar System Dynamics. ジェット推進研究所. 2018年12月25日閲覧。
- ^ “観測成果 - すばる望遠鏡が土星の衛星を新たに 20 天体発見 - すばる望遠鏡”. すばる望遠鏡. 国立天文台 (2019年10月7日). 2019年11月2日閲覧。
- ^ Gladman, Brett; Kavelaars, J. J.; Holman, Matthew; Nicholson, Philip D.; Burns, Joseph A.; Hergenrother, Carl W.; Petit, Jean-Marc; Marsden, Brian G. et al. (2001). “Discovery of 12 satellites of Saturn exhibiting orbital clustering”. Nature 412 (6843): 163–166. doi:10.1038/35084032. ISSN 0028-0836.
- ^ Grav, Tommy; Holman, Matthew J.; Gladman, Brett J.; Aksnes, Kaare (2003). “Photometric survey of the irregular satellites”. Icarus 166 (1): 33–45. arXiv:astro-ph/0301016. doi:10.1016/j.icarus.2003.07.005. ISSN 00191035.
- ^ Grav, Tommy; Holman, Matthew J. (2004). “Near-Infrared Photometry of the Irregular Satellites of Jupiter and Saturn”. The Astrophysical Journal 605 (2): L141–L144. arXiv:astro-ph/0312571. doi:10.1086/420881. ISSN 0004-637X.
- ^ a b Grav, T; Bauer, J (2007). “A deeper look at the colors of the saturnian irregular satellites”. Icarus 191 (1): 267–285. arXiv:astro-ph/0611590. doi:10.1016/j.icarus.2007.04.020. ISSN 00191035.