名古屋高速バス横転炎上事故
このページ名「名古屋高速バス横転炎上事故」は暫定的なものです。(2022年8月) |
この記事は最新の出来事を扱っています。 |
名古屋高速バス横転炎上事故 | |
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場所 |
日本・愛知県名古屋市北区 (名古屋高速11号小牧線豊山南出口付近) |
座標 | |
日付 |
2022年(令和4年)8月22日 10時10分頃(JST) |
原因 | 中央分離帯に接触、調査中 |
死亡者 | 2人(運転手1人・乗客1人)[1][2][3][4] |
負傷者 | 7人(乗客6人・別車両1人)[1][2] |
謝罪 | 会社が同日17時頃に謝罪、翌日に記者会見を開いて謝罪[5] |
名古屋高速バス横転炎上事故(なごやこうそくばすおうてんえんじょうじこ)[6][7]は、2022年(令和4年)8月22日、愛知県名古屋市北区の名古屋高速11号小牧線・豊山南出口付近にて、名古屋市中区栄から県営名古屋空港(小牧空港)へ向かっていたあおい交通の空港連絡バスが中央分離帯に接触、横転し炎上したバス事故である[1]。この事故で2人が死亡、7名が負傷した[1][8][9]。
事故の概要
名古屋市栄発の県営名古屋空港直行バスが横転し炎上、乗客乗員8人が死傷した。また、追突した後続車の運転手1人も負傷した[2]。
当該バスは、あおい交通野口営業所(愛知県小牧市)[10]が運行していた[11]。野口営業所は2022年3月より営業開始した新設営業所で、同年7月25日に国土交通省中部運輸局から初めて監査を受けたが、その際には違反はなかった[11]。同社では名古屋市と県営名古屋空港を結ぶ空港連絡バス路線を1日約45往復運行している[12]。
同社野口営業所の説明によれば、バスは同日午前9時55分に名古屋市中区の「栄」停留所を出発し、同日午前10時15分頃、名古屋高速道路の豊山南出口で一般道へ降りる分岐点(0.8キロポスト付近)で事故が発生した[11]。バスは県営名古屋空港へ向かう途中で、豊山南出口で高速道路から一般道へ降りる予定であった[13]。
あおい交通は22日、同社公式Twitterで事故発生の第一報をツイートした[14]。
本日、8月22日(月)10:00過ぎ、弊社運行の県営名古屋空港直行バスが県営名古屋空港へ向かう途中、豊山南の名古屋高速道路上で事故により炎上しました。
詳細については、現在、原因不明なので、把握次第弊社掲載いたします。ご迷惑をおかけいたしますがよろしくお願いいたします。 — あおい交通、あおい交通 公式Twitter (@aoi_transit) 、2022年8月22日
事故発生現場は名古屋市北区新沼町の、名古屋高速道路と名古屋第二環状自動車道が交差する楠ジャンクション付近であった[15]。バスは本線から豊山南インターチェンジの出口を出て一般道へ下りる経路であったが、進路変更の際に、本線と出口を隔てる中央分離帯とその手前にある緩衝具「クッションドラム」に接触し、本線側で横転し炎上した[15][5][16]。同社野口営業所の運行主任は「高速の出口は右側の車線にあり、走行車線から車線をまたいで出なければいけない。運転する立場としても大変気を使う場所だ」と述べた[15]。
愛知県警察の捜査関係者によれば、バスは名古屋高速11号小牧線の下り線で豊山南インターチェンジ出口へ向かって進行していたところ、本線方向へ突然寄り始め、出口と本線を区切る分岐点付近に衝突し横転したとみられる[13][17]。走行中のバスがふらついていたとの目撃証言もあり[13]、バスが出口へ向かう車線を走行中に中央分離帯に接触したとみられ、また現場にブレーキ痕が無かったことから、回避操作が行われることなく中央分離帯に接触したとみられる[13][18]。
近隣住民の証言では、現場近くでは10回ほども爆発音が聞こえたという[19]。また現場近くのビルにいた者からは「ビルの壁に何か激突したかと思うほどの音や風圧を感じた」との証言もあった[20]。
バスには乗員(運転手)1人、乗客7人の合計8人が乗車していた[2][16]。乗客は20代から50代の男性7人[2][16]。運転手は運転席で心肺停止状態で発見され、事故後に死亡が確認された[8][15][3]。
また乗客1人も車内で心肺停止状態で発見され、事故後に死亡が確認された[8][15][3]。横転したバスの前輪付近に設置された燃料タンクから出火し、数分で燃え広がったとみられる[3]。死亡した乗客は前方座席に座っていたが車内後方で発見され、逃げ遅れたとみられる[3]。負傷した6人の乗客は最後部の窓から脱出していた[3]。
そのほか、乗客6人が負傷しいずれも軽傷とみられる[13]。死亡した乗客以外はいずれもバス車内を移動し、割れたバスのガラスから自力で脱出して、警察や消防が到着した際には高速道路上で救助を求めていた。また、後続の乗用車の運転手1人も病院へ搬送された[8][15]。
死亡したバス運転手は、55歳の男性で運転歴は約10年[8][5][12]、2019年1月に入社以来、事故歴や処分歴はなかった[8][5][12]。事故当日も午前4時半に営業所へ出社し、乗務前点呼でのアルコール検査や検温などでの異常はなかった[8][5]。また運転手に持病はなく[5]、会社の年2回の健康診断でも異常はなかった[12]。運転手は2019年1月の入社以来、同じバスのルートを担当していた[16][12]。同社によれば運転手は勤務態度も真面目で、遅刻などもなく寡黙な人柄であったという[13]。
同年8月30日に死亡した2人の身元が判明し、死亡した乗客はDNA鑑定により、県営名古屋空港の管理・運営を行う名古屋空港ビルディング株式会社の社長と確認され、出勤途中であったとみられる[3][4][21][22]。乗客は2018年6月に名古屋空港ビルディング社長に就任、バス通勤していた[4]。大卒後に名古屋鉄道へ入社後、同社広報宣伝部長、名鉄産業常務、金沢名鉄丸越百貨店社長など名鉄の要職を歴任後、名鉄も出資する同社の社長に就任した[4][21][22]。
事故後
当事故の影響で、名古屋高速道路の楠ジャンクション - 小牧北インターチェンジ間の上下線が一時通行止めとなり、22日夜までに通行止めは解除された[8]。
愛知県警察は自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)などの疑いで詳しい事故原因を調べた。県警の捜査関係者によれば、現場付近には目立ったブレーキ痕がないこと、バスの右前方部分のバンパーが大きく凹み損傷していたことなどから、バスが十分に減速せず分離帯に接触した可能性があるとした[8][16]。県警は何らかの理由により正常な運転ができない状態だったとみて、運転手の健康状態や勤務状況を調査する[3]。
国土交通省は、当事故を「特別重要調査対象事故」に指定し、事業用自動車事故調査委員会が国交省の要請を受け調査を開始した[8][13]。また、国土交通省中部運輸局はあおい交通野口営業所を特別監査し、名古屋北労働基準監督署もあおい交通本社などに立入調査を行った[8][13]。バスが横転炎上する死亡事故は、貸切バスでは例があるものの、定時定路線を運行する乗合バスでは珍しい[11]。
あおい交通の松浦秀則社長は22日、報道陣の取材に対し「申し訳ない。亡くなった方のご冥福をお祈りする。事後処理に真摯に対応し、安全対策を徹底したい」と述べた[8][17]。
事故翌日の同年8月23日午前9時頃、愛知県警察は自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の疑いで、あおい交通本社と野口営業所を家宅捜索した[16]。県警の捜査員が同社本社や営業所を約1時間にわたり捜索し、運転手の勤務実態や健康状態などを調査するため関連資料を押収した[16]。県警では運転手が何らかの操作ミスをした疑いがあるとみて、同社の勤務体制や安全管理に問題がなかったかなどを調査する[17]。
家宅捜索後の同日午前11時頃、あおい交通は記者会見を開き、社長が「昨日の事故で亡くなられた方、けがをされた方に心よりおわび申し上げます」と謝罪した[5]。社長は事故原因について「分離帯にぶつかっているので、当然運転手のミスがあったと考えている」「出口に向かう準備が十分できておらず、急に降り口が迫って焦って操作してぶつかったのではないか」と述べた[5]。またバスには本体記録型ドライブレコーダー(ドラレコ)が搭載されていたが[11][5]、記者会見の時点では画像データの確認などはできていなかった[5]。その後の県警の調査によれば、車両に搭載されたドラレコは焼失した可能性が高く、映像を外部サーバに記録するクラウド型ではなく、本体に挿入したSDカードに記録する方式であったため、ドラレコ焼失によりデータも失われたとみられる[23]。
また事故当日より、あおい交通の公式ウェブサイトにアクセスが集中して繋がらなくなり、サーバがダウンして同社公式ウェブサイトが閲覧できなくなった[24]。そのため同社は公式Twitterでその旨を告知するとともに[24]、翌8月23日、公式Twitter上に謝罪文を掲載した[25]。
昨日の名古屋高速上でのバス火災事故の原因は、弊社のバスによる単独事故と判明致しました。お亡くなりになられました方へは、心よりお悔やみ申し上げます。同じくお怪我をされた方々へも真摯に対応させていたいただく所存です。
この度は、重大事故を引き起こしてしまい申し訳御座いませんでした。 — あおい交通、あおい交通 公式Twitter (@aoi_transit) 、2022年8月23日
また同年8月22日・23日付で、同社公式ウェブサイトにも、公式Twitterに掲載したものと同じ文面の謝罪文が掲載された[26][27]。
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運行会社
バスを運行していたあおい交通は、愛知県小牧市に本社を置く貸切バス・乗合バス事業者で、一般路線バスや空港連絡バスのほか、愛知県内のコミュニティバスの運行受託などを行っている。
過去の行政処分については、2017年5月に「路線バスを終点まで運行せず中断した」としてバス1台を10日間使用停止の処分を受けた[28]。また2019年5月には、愛知県内の自治体から運行受託しているコミュニティバスの車両を車検切れの状態で複数回運行したほか、3か月ごとの法定点検を怠ったこと、運転者の勤務時間違反などで、小牧営業所で135日間の車両使用停止処分を受けている[12][29]。
影響
あおい交通と社名の似た兵庫県相生市のバス会社「あいおい観光バス有限会社」に、事故に関する問い合わせの電話が数回かかってきたため、同社では「当社は無関係のため、事故については説明できない」旨を発表した[30][31]。なお、あいおい観光バスは貸切バス専業事業者であり、空港連絡バス(乗合バス)は運行していない[32]。あいおい観光バスは2022年8月22日、自社公式Twitterアカウントで「本日の名古屋高速で起きました事故の運行バス会社『あおい交通』と弊社は全く無関係でございます。既に何件かお電話がありましたが、弊社へお問い合わせいただいても、状況等ご説明できません。」とツイートした[33]。
脚注
- ^ a b c d “名古屋高速道路 バス事故で2人死亡 分離帯に接触し横転か”. NHKニュース. 日本放送協会 (2022年8月22日). 2022年8月22日閲覧。
- ^ a b c d e “名古屋高速バス炎上事故、2人の死亡確認 7人がけが”. 毎日新聞 (2022年8月22日). 2022年8月22日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 名古屋高速バス事故 死亡の2人身元判明 運転手と客の空港ビル社長 毎日新聞、2022年8月30日、2022年8月31日閲覧。
- ^ a b c d 名古屋城本丸御殿の復元に尽力 高速バス事故で死亡の空港ビル社長 毎日新聞、2022年8月30日、2022年8月31日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j 運行会社社長「運転手のミスあった」 名古屋高速バス炎上事故 毎日新聞、2022年8月23日、2022年8月23日閲覧。
- ^ “名古屋高速バス横転炎上事故、けが人9人中2人が死亡「ポンという爆発音が何度も」”. 日刊スポーツ (2022年8月22日). 2022年8月22日閲覧。
- ^ “名古屋高速バス横転炎上事故、けが9人、うち2人心肺停止か”. 産経新聞 (2022年8月22日). 2022年8月24日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l “名古屋高速バス炎上事故 ブレーキ痕なし、十分に減速せず衝突か”. 毎日新聞 (2022年8月22日). 2022年8月22日閲覧。
- ^ “名古屋高速バス事故 立ち上る火柱、黒焦げの車体”. 日本経済新聞 (2022年8月22日). 2022年8月23日閲覧。
- ^ あおい交通 野口営業所までのご案内 あおい交通、2022年8月23日閲覧。
- ^ a b c d e 名古屋高速で乗合バス横転炎上 2人死亡 発足直後の営業所 監査では異常なし 乗りものニュース、株式会社メディア・ヴァーグ、2022年8月22日、2022年8月23日閲覧。
- ^ a b c d e f “横転バスの運転手は経歴10年のベテラン、事故の路線を繰り返し運行…会社「健康問題なかった」”. 読売新聞 (2022年8月23日). 2022年8月23日閲覧。
- ^ a b c d e f g h “炎上したバス、降りるはずだったIC出口付近で横転…ブレーキ痕なし”. 読売新聞 (2022年8月23日). 2022年8月23日閲覧。
- ^ “あおい交通 公式Twitter (@aoi_transit)” (2022年8月22日). 2022年8月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月23日閲覧。
- ^ a b c d e f 事故現場「大変気を使う場所」 名古屋高速で横転のバス事業者 毎日新聞、2022年8月22日、2022年8月30日閲覧。
- ^ a b c d e f g 名古屋高速バス炎上事故 運行会社を家宅捜索 勤務実態調べる 毎日新聞、2022年8月23日、2022年8月23日閲覧。
- ^ a b c 運転手が操作誤ったか、愛知県警がバス会社捜索…名古屋高速道の9人死傷事故 読売新聞、2022年8月23日、2022年8月23日閲覧。
- ^ “名古屋 バス事故 出口へ走行中 分離帯に衝突か ブレーキ痕なし”. NHKニュース. 日本放送協会 (2022年8月23日). 2022年8月23日閲覧。
- ^ 「10回ぐらい爆発音が」名古屋高速でバス横転 現場近くの男性証言 毎日新聞、2022年8月22日、2022年8月23日閲覧。
- ^ 炎上バスから「パンパン」と破裂音…車で真横を通過した男性、窓閉めていても「すごい熱さ」 読売新聞、2022年8月23日、2022年8月23日閲覧。
- ^ a b 名古屋高速バス事故、遺体の身元判明 犠牲の名古屋空港ビル社長、名鉄で要職 中日新聞、2022年8月31日、2022年9月1日閲覧。
- ^ a b 死亡乗客は元エムザ社長 名古屋のバス事故 北國新聞、2022年8月31日、2022年9月1日閲覧。
- ^ ドラレコ焼失、原因究明長期化か 名古屋高速バス事故 日本経済新聞電子版、2022年8月28日、2022年9月1日閲覧。
- ^ a b なお、現在サーバへのアクセス集中により閲覧しにくい状況が続いております。ご迷惑をおかけいたしますがよろしくお願いいたします。 あおい交通 公式Twitter、2022年8月22日、2022年8月23日閲覧。
- ^ “あおい交通 公式Twitter (@aoi_transit)”. Twitter (2022年8月23日). 2022年8月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月23日閲覧。
- ^ 県営名古屋空港直行バス事故につきまして 2022年8月22日、あおい交通、2022年9月1日閲覧。
- ^ 昨日の県営名古屋空港直行バス事故につきまして あおい交通、2022年8月23日、2022年9月1日閲覧。
- ^ “路線バス、終点まで行かず 2事業者を行政処分、愛知”. 千葉日報 (2022年8月22日). 2022年8月22日閲覧。
- ^ “乗合バス事業者を車両停止処分”. 国土交通省中部運輸局自動車交通部 (2019年5月29日). 2022年8月22日閲覧。
- ^ “名古屋あおい交通バス事故、無関係の「あいおい観光バス」に勘違い電話複数 「状況等ご説明できない」”. J-CAST ニュース (2022年8月22日). 2022年8月22日閲覧。
- ^ 名古屋バス横転事故で『勘違い電話』が続出 訴えに「ちゃんと考えて」「不憫すぎる」 grapee、株式会社グレイプ
- ^ 会社案内 あいおい観光バス有限会社
- ^ あいおい観光バス [@aioikankobus] (2022年8月22日). "本日の名古屋高速で起きました事故の運行バス会社「あおい交通」と弊社は全く無関係でございます。…". 2022年8月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。X(旧Twitter)より2022年8月23日閲覧。
関連項目
- バス事故
- あおい交通
- 県営名古屋空港 - 同空港への空港連絡バスで事故が発生、同空港の管理運営を行う名古屋空港ビルディング社長が死亡した。