どんちっち
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どんちっちは、島根県浜田市における石見神楽の通称。浜田市や市産品などをピーアールするためのブランド名などとしてよく用いられる言葉でもある(商標登録番号4688190[1])。
概要
[編集]石見神楽は島根県石見地方を中心とする地域に伝わる伝統芸能であるが、特に浜田市においては子供言葉で「どんちっち」と呼ばれることがある。「ドンドン・チッチ・ドン・チッチ」と軽快なリズムで奏でられる[2]神楽の囃子を子どもがそう口ずさんだこと[3]が由来とされ、また神楽の八拍子のリズムが、どんちっち、どんちっち、と聞こえることから「どんちっち」であるという説もある[4]:33。
神楽は、太鼓や鉦[3]、笛[2]などで奏でられ、この囃子を聞くと、子どもたちのボルテージが高まり、身体を動かして神や鬼になりきる[2]。「石見の人は、母親のおなかにいる時から、お囃子の『ドンチッチ』のリズムが染み込んでいる」と語る市民もいる[5]。
ブランドとして
[編集]浜田市ではさまざまなものに「どんちっち」の呼び名が冠されており[6][7][8][9]:67、神楽が子供から大人まで共有される伝統文化であることが見てとれる[10]。
- どんちっち三魚
- 浜田漁港でとれるマアジ・ノドグロ・カレイのことで、他の地域で取れるものより脂の乗りがよくおいしいと言われ、「どんちっち」というブランドで出荷される[11][3]。「どんちっち三魚」は3魚種をまとめたブランド名[12]:24,193で、個別には「どんちっちアジ」「どんちっちカレイ」「どんちっちノドグロ」と命名されている[10][13]。県外でも有名な石見神楽をイメージさせた方がインパクトがあるという理由で選ばれた[13]。
- →「どんちっち三魚」も参照
- どんちっち神楽時計
- JR浜田駅前の駅前駐車場の一角にある石見神楽のからくり時計[14][7][15]。日本宝くじ協会から事業費全額の9975万円の助成を受けて浜田市が建設した[14][7]。時計は、高さ6.5メートルで、土台部は4.2メートル四方[16]。神楽殿をイメージした造りで、屋根は地元産の石見瓦を使っている[16]。土台部と神楽舞台の間に演奏台があり、この台は決まった時間に台座からせり上がる。神楽囃子が始まると舞台には大蛇(おろち)が登場し、口から霧状の水が噴き出る仕掛けになっている[14]。
- どんちっちタウン
- JR浜田駅前の銀天街商店街の愛称[17][18]。1998年に公募で決まったもので、石見神楽をテーマにしたアーチと電飾看板が設置されている[19]他、神楽の代表的な登場人物をかたどった石像七体が設置されている[17]。また、商店街の一角にはLED電子表示の大型電光掲示板「どんちっちタウンインフォメーション」表示システムが設置されている[20]。
- どんちっち交番
- JR浜田駅前の浜田署駅前交番の愛称。2003年に「親しみやすい」との理由で公募で決まった[21][22]。
- どんちっち浜っ子ステーション
- 2009年に完成したJR浜田駅の駅舎の愛称[23][24][25]。
- どんちっち青パト隊
- 浜田市内で青色パトロール車で防犯活動をしている団体の隊の総称[26][8][27]。
- どんちっち鍋
- 1999年に浜田市商品開発委員会が郷土の鍋料理として開発したもの[28][6]。材料に地元で取れるノドグロ、イカ、アンコウ、アジなどの魚介類を使い、調理方法や味付けは店側で考えてもらうという条件だった[29]。開発委員会で鍋蓋や、石見神楽に関する練り製品を作ることで統一感を出した[29]。
- どんちっちタクシー
- 浜田市の長見三階、美川両地区で運行されている予約型乗合タクシーの愛称[30][9]:67-74。
- どんちっち運動
- 浜田警察署の高齢者啓発運動の愛称[31][32][12]:110。「どんな道でも左右」「小(ち)っちゃな額でも送らない」「地域みんなで鍵掛けよう」を合言葉としている[31]。
出典
[編集]- ^ “登録4688190”. 商標照会(固定アドレス). 独立行政法人 工業所有権情報・研修館. 2022年4月18日閲覧。
- ^ a b c 「(こちら キッズアートワールド)「どんちっち」の世界を紹介 /島根県」『朝日新聞』2020年1月11日、朝刊 島根・1地方版、23面。
- ^ a b c 「[探Q・しまね]浜田漁港 自慢のどんちっち=島根」『読売新聞』2014年3月5日、大阪朝刊 島根2版、35面。
- ^ 九和かずと『築地魚河岸三代目』 42巻、はしもとみつお(画)、鍋島雅治(原案協力)、小学館〈ビッグコミックス〉、2014年5月5日、29-100頁。ISBN 978-4-09-186173-3。
- ^ 「石見の国 神楽の里 開放的な人々、100を超える社中「後継ぎもいっぱい」」『読売新聞』2006年7月26日、東京朝刊 文化版、17面。
- ^ a b 「「どんちっち商品」 島根県浜田市(山陰 つくる育てる) /島根」『朝日新聞』2003年1月29日、朝刊 鳥取2版、24面。「これまでに開発した商品は石見神楽面を添えた節分セット、どんちっちクッキー、どんちっち鍋、どんちっち甘鯛(だい)茶漬け、どんちっち鰈(かれい)カレーなど計7品目。「どんちっち」は伝統芸能の石見神楽の神楽囃子(ばやし)の愛称。枕ことばに使ったのがミソで商品を通して浜田をPRしようとのねらいも。」
- ^ a b c 「JR浜田駅前にからくり大時計、9月末に完成 石見神楽を題材に=島根」『読売新聞』2003年6月16日、大阪朝刊 島根版、28面。「「どんちっち」とは、神楽の地元での愛称で、浜田ブランドの魚にも冠する〈売り出し中〉の呼び名。関係者は「からくり時計とともに、この呼び名がどんどん有名になってほしい」と期待している。」
- ^ a b 「青パト隊「どんちっち」 県立大生遺棄1年 浜田で名称統一=島根」『読売新聞』2010年10月23日、大阪朝刊 島根版、33面。「「どんちっち」は石見神楽の囃子(はやし)の音を表現した言葉で、魚のブランドや浜田駅ビルの愛称にも用いられている。」
- ^ a b 松田善臣「需要応答型交通と浜田市における新交通システム」(PDF)『総合政策論叢』第16号、島根県立大学総合政策学会、2009年2月、2022年4月18日閲覧。「どんちっちタクシーの「どんちっち」とは、石見地方の伝統芸能である「石見神楽」の囃子を表現する幼児言葉で、「石見神楽」自体を「どんちっち」と呼んだりもしている。また、浜田港で水揚げされるアジ、ノドグロ、カレイの3魚を「どんちっちブランド」として全国にPRしたり、浜田駅前の商店街「どんちっちタウン」の名称にも使われるなど、浜田市民にとって親しみのある言葉である。」
- ^ a b 「[探Q・しまね]マイ神楽 地域の誇り=島根」『読売新聞』2012年2月2日、大阪朝刊 島根2版、25面。
- ^ 「全国豊かな海づくり大会で”どんちっち”3魚を全国にPRへ--浜田市 /島根」『毎日新聞』2003年5月21日、地方版/島根、23面。「”どんちっち”は石見神楽のリズムで、これにちなんでブランド名にした。」
- ^ a b “第2次浜田市総合振興計画” (PDF). 島根県立大学 (2016年3月). 2022年4月19日閲覧。
- ^ a b 「浜田の魚売り込もう マアジ・カレイ・ノドグロ3魚種 ブランド名決める=島根」『読売新聞』2002年9月24日、大阪朝刊 島根2版、26面。「石見神楽を地元の子供たちが「どんちっち」と呼ぶのに合わせ、「どんちっちあじ」「どんちっちかれい」「どんちっちのどぐろ」と命名。」
- ^ a b c 「伝統芸能をPR、どんちっち神楽時計設置へ JR浜田駅前 /島根」『朝日新聞』2003年6月8日、朝刊 島根版、34面。「地元では神楽囃子(ばやし)を「どんちっち」と呼ぶことから名付けられ、事業費9975万円は財団法人日本宝くじ協会から助成を受ける。」
- ^ 「JR浜田駅前の「どんちっち神楽時計」が完成 きょう除幕式--浜田市 /島根」『毎日新聞』2003年10月1日、地方版/島根、23面。
- ^ a b 「神楽時計が完成 JR浜田駅前=島根」『読売新聞』2003年10月2日、大阪朝刊 島根版、29面。
- ^ a b 「石像で街を活性化 浜田駅前の商店街「どんちっちタウン」 /島根」『朝日新聞』1999年12月9日、朝刊 島根版、24面。
- ^ 「石見神楽の競演 家族連れら魅了 浜田でフェスタ=島根」『読売新聞』2011年7月31日、大阪朝刊 島根版、31面。
- ^ 「[ひと模様]浜田駅前松山銀天街協同組合青年部長の佐古肇徳さん /島根」『毎日新聞』1998年11月29日、地方版/島根。
- ^ 「LED掲示板設置 売り出し情報を表示--浜田・銀天街商店街 /島根」『毎日新聞』2005年1月12日、地方版/島根、20面。
- ^ 「愛称は「どんちっち」 浜田駅前交番が完成=島根」『読売新聞』2003年3月30日、大阪朝刊 島根2版、30面。「愛称の「どんちっち」は、石見神楽のおはやしの音で、地元では神楽の別称に用いられており、「親しみやすい」との理由で選ばれた。」
- ^ 「愛称「どんちっち交番」に 応募84点 浜田署駅前交番 /島根」『朝日新聞』2003年2月15日、朝刊 島根版、24面。「愛称になる「どんちっち」は石見神楽の囃子(はやし)の愛称として親しまれていることから応募が多かった。」
- ^ 「JR浜田駅、新駅舎・通路が完成 宇津市長ら、記念式典祝う /島根」『朝日新聞』2009年6月7日、朝刊 島根・1地方版、26面。
- ^ 「JR浜田駅舎:完成、きょう式典 愛称「どんちっち浜っ子ステーション」 /島根」『毎日新聞』2009年6月6日、地方版/島根、21面。
- ^ 「JR浜田駅に南北通路 完成式典で山陰初の橋上駅祝う=島根」『読売新聞』2009年6月7日、大阪朝刊 島根版、33面。
- ^ 「青パト隊:「大蛇」にらむステッカー 市防犯協、決起大会で贈る /島根」『毎日新聞』2010年10月22日、地方版/島根、23面。「パトロール隊の総称は石見神楽のはやしを表現する「どんちっち青パト隊」。」
- ^ 「青パト12団体集結、協力して活動誓う 浜田 /島根県」『朝日新聞』2010年10月25日、朝刊 島根・1地方版、21面。「青パト隊の総称を石見神楽の囃子(はやし)言葉にちなんで「どんちっち青パト隊」としたことが報告された。」
- ^ 「「どんちっち鍋」商品化へ 地元料理人が味競う 試作の6点を審査--浜田市 /島根」『毎日新聞』1999年2月19日、地方版/島根。
- ^ a b 「にぎやか「神楽鍋」売り出し 浜田の9か所で独自の味 市商品開発委考案=島根」『読売新聞』2000年2月25日、大阪朝刊 島根版、35面。「愛称の「どんちっち」は、石見神楽のおはやしの音で、地元では神楽の別称に用いられており、「親しみやすい」との理由で選ばれた。」
- ^ 「予約型乗合タクシー:浜田市がきょうから運行 /島根」『毎日新聞』2008年5月2日、地方版/島根、19面。
- ^ a b 「犯罪事故抑制へ 啓発「幟旗」寄贈 浜田署に 防犯協=島根」『読売新聞』2014年7月10日、大阪朝刊 島根2版、32面。
- ^ “【防犯交通】浜田警察署からのお知らせ(2015年07月17日 10時42分)”. 浜田市 (2015年7月17日). 2022年4月18日閲覧。