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アイカサ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
株式会社Nature Innovation Group
種類 株式会社
本社所在地 日本の旗 日本
160-0022
東京都新宿区新宿1丁目26−9 ビリーヴ新宿8階
設立 2018年6月19日
業種 サービス業
事業内容 傘のシェアリングサービスの運営
代表者 代表取締役 丸川照司
外部リンク https://www.i-kasa.com/company
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名古屋市内の駅に設置されたアイカサスポット。表記されている料金や傘のデザインは最新のものと異なる。

アイカサは、2018年に日本で事業を開始したシェアリングサービスである。

運営会社

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創業者の丸川照司は日本人の父と台湾人の母を持つハーフ[1]、1994年に埼玉県に生まれた[2]。幼少期を台湾シンガポールで過ごしたのち、10歳から日本で暮らす。一度は工学院大学に入学し[3]化学を専攻したものの、関心を持つことができずにいた。そうした中で児童福祉に関心を持ち、興味の対象は社会問題全般に広がっていった[4]。そして、駒崎弘樹の著書からソーシャル・ビジネスの道があることを知る[5][6]。大学を中退し、留学した先のマレーシアではさまざまなシェアリングサービスが普及していた。かねてから、傘のシェアリングサービスがあればいいと考えており、調べたところ日本では年間1億2~3千万本が消費されていることを知る[3]。事業を立ち上げるため丸川は再び大学を中退した[4]中国で先行していた事業を参考に、2018年6月に渋谷駅周辺の飲食店などで試験的な傘のシェアリングサービスを開始[7]。放置されたビニール傘を回収・再使用することを検討したが、メンテナンスコストがかさむうえ、利用者からも受け入れられにくいと考え、新品の傘に方針転換した[8]。2018年12月、東京の渋谷で本格始動。渋谷を選んだのは、学生・ビジネスマン・外国人など多様な来街者が集まる街でサンプルを集めやすいことと、競争が激しく地価も高い街で成功を収めれば他の地域にも広めやすいという思惑から[4]。当初はLINEを介したサービスであった[9]

2018年12月、天気予報アプリ開発・運営会社ALiNKインターネットと資本業務提携締結。降水確率が高くなるとtenki.jpのアプリにバナーを掲出し、アイカサの利用を勧める[10]。2021年5月には、アイカサのアプリにtenki.jpから提供を受けた天気情報を通知する機能を搭載した[11]。2019年4月に京急アクセラレータープログラム[注釈 1]に採択。2019年5月には福岡市およびLINEグループのまちづくりの取組みと協業を開始し[3]西鉄天神駅で初めて鉄道駅へ設置され[13]、以降複数の電鉄会社と提携し駅へのスポットの設置が進展する。2021年には、環境省主催の第9回グッドライフアワード 環境大臣賞 ユース部門を受賞した[6]。2023年11月に、前澤化成工業と資本業務提携を締結[14]。2024年3月には東急不動産ホールディングスが出資するCVCファンド英語版「TSVF1 投資事業有限責任組合」からの出資を受け、雨傘のほかに、日傘としても使える晴雨兼用傘を東急不動産グループの施設に配備した[15]

シェアリングサービス

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2024年6月時点のアプリ登録者数は約55万人、貸出スポットは約1500か所[16]

2024年10月現在、傘の貸出システムはダイヤル式と通信式の2種類あり、福岡市周辺・佐賀市水戸市札幌市はダイヤル式、東京都神奈川県千葉県埼玉県愛知県岐阜市奈良県大阪府兵庫県岡山市は通信式を採用している。いずれも貸出・返却手続きはスマートフォンアプリで行い、支払いにはクレジットカード通信キャリア決済が利用できる。料金プランは月額280円定額制の「使い放題プラン」と24時間140円[注釈 2]の従量制の「使った分だけプラン」がある。使い放題プランは2本まで借りられるため、1本は自宅で置き傘にし、もう1本は出先での急な雨の際に借りるという使い方が可能である。使った分だけプランは24時間ごとに課金されるが、同月内の最大料金は560円である。貸出時とは別のスポットに返却することも可能であるが、ダイヤル式と通信式のエリアをまたがって返却することはできない[17]

電鉄会社や商業施設と協業しており、貸出スポットは駅頭やマルイなどの店舗、大学やオフィスビルなどに設置されている。施設所有者から土地を借りてスポットを設置させてもらうのではなく、施設側から料金を得てシェアリングサービスを提供する形態をとり、商業施設にとっては顧客サービス、オフィスビルでは福利厚生の付加価値をもたらす。鉄道駅では、設置料金を相殺したうえで貸し出し本数に応じて収益の一部を電鉄会社に納める契約とした。ラックは外部電源不要で、単3乾電池4本で1年以上稼働できるシンプルな設計にしている[7]

東京都の雨具メーカー、株式会社サエラと共同開発した傘は[18]2年以上問題なく使い続けられるほど耐久性が高く[19]、破損した際には骨の1本から修理可能な構造となっている[20]。傘の外面は広告媒体として使用することができ[21]、2020年7月には旭化成ホームプロダクツBEAMS COUTUREとタイアップして、ジップロックをリサイクルして製作した傘の貸出を開始[22]。2020年12月29日から翌1月3日には、アニメーション映画『天気の子』が地上波放送されることにあわせ、映画の舞台となる池袋駅新宿駅代々木駅で、ヒロインの陽菜をデザインした傘を期間限定で設置した[23]。貸出スポットは改札口前の目につきやすい好立地に設置されていることが多く、前面パネルへの広告掲出も行われている[24]

「使った分だけプラン」では返却しなければ追加料金が発生することから、返却率は約99%。紛失した場合には864円の手数料が発生するが、破損の際には手数料を徴収していない[25]。全国の警察署に遺失物として届けられた場合には、紛失した利用者に通知が届き、傘はアイカサに返還される仕組みが構築されている[26]

環境省が算定した「3R原単位の算出方法」によると、傘のレンタル1回あたり692グラムの二酸化炭素排出削減に貢献する[27]。2030年までに、日本で年間8千万本消費される使い捨て傘をゼロにすることを目標にしている[16]

脚注

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注釈

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  1. ^ 沿線価値を高めるための、京浜急行電鉄とスタートアップ企業等とのパートナーシップ制度[12]
  2. ^ 24時間ごとの料金は、当初の70円からのちに110円になり、2023年11月からは140円。使い放題プランは2021年1月に導入された[7]

出典

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  1. ^ “砕かれても立ち上がる 「アイカサ」運営の丸川照司さん 新興人図鑑 傘を貸し出し、使い捨てなくす”. 日本経済新聞. (2021年8月9日). https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD2072D0Q1A520C2000000/ 2024年10月27日閲覧。 
  2. ^ 【マシンガンズ滝沢氏×アイカサ丸川氏 特別対談】愛とリスペクトがごみを減らす鍵になる”. この指とーまれ! (2022年10月14日). 2024年10月27日閲覧。
  3. ^ a b c “傘のシェアリングで社会課題を解決する・27歳起業家の挑戦を導いた転機”. 日刊工業新聞ニュースイッチ. (2022年1月6日). https://newswitch.jp/p/30249 2024年10月24日閲覧。 
  4. ^ a b c 失うものがなかったから挑戦できた アイカサ 丸川照司さん”. 渋谷新聞 (2023年4月4日). 2024年10月23日閲覧。
  5. ^ 株式会社Nature Innovation Group アイカサ 代表取締役 丸川照司氏”. 東京都創業NETインタビュー. 2024年10月23日閲覧。
  6. ^ a b 第9回グッドライフアワード 環境大臣賞 ユース部門 傘のシェアリングサービス「アイカサ」”. 環境省 (2021年). 2024年10月27日閲覧。
  7. ^ a b c 八塩圭子 (2023年12月12日). “傘シェアリング一気に拡大 「愛」が詰まったアイカサのマーケ”. 日経クロストレンド. 2024年10月25日閲覧。
  8. ^ “ゴミの延命はしたくない―。「傘レンタル」代表が失敗から学んだこと”. 東京バーゲンマニア. (2022年2月24日). https://bg-mania.jp/2022/02/24468817.html 2024年10月24日閲覧。 
  9. ^ 渋谷から日本の雨の日をハッピーにする!傘のシェアリングサービス「アイカサ」株式会社Nature Innvation Group丸川照司氏【起業インタビュー94回目】”. 起業サプリジャーナル. 行政書士法人バタフライエフェクト (2019年2月14日). 2024年10月28日閲覧。
  10. ^ “ALiNK社 傘シェアサービスと連携”. 日本経済新聞. (2018年12月26日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39397710W8A221C1000000/ 2024年10月27日閲覧。 
  11. ^ 傘シェア「アイカサ」アプリに新機能。”天気予報機能”で雨の日の問題をサポートし、より快適な毎日へ。”. PR TIMES (2021年5月12日). 2024年10月27日閲覧。
  12. ^ KEIKYU ACCELERATOR PROGRAM
  13. ^ “脱炭素におけるサーキュラーエコノミービジネスの可能性──ビニール傘ゼロを目指す、アイカサの挑戦”. ダイヤモンドオンライン. (2023年3月29日). https://diamond.jp/articles/-/334059?page=2 2024年10月27日閲覧。 
  14. ^ 「新進気鋭のスタートアップ」と「水インフラを支える上場企業」の幸福な出会いから考える。理想的なアライアンスとは?”. XAOS JAPAN (2024年3月8日). 2024年10月27日閲覧。
  15. ^ "東急不動産ホールディングスが出資する CVC ファンド「TSVF1 投資事業有限責任組合」、「アイカサ」の Nature Innovation Group に出資" (pdf) (Press release). 東急不動産ホールディングス株式会社・株式会社 Nature Innovation Group. 29 March 2024. 2024年10月27日閲覧
  16. ^ a b 「2030 年使い捨て傘ゼロプロジェクト」への参画について”. 日本公認会計士会東京会 (2024年6月20日). 2024年10月27日閲覧。
  17. ^ アイカサ 公式ウェブサイト
  18. ^ 【COLLABORATION ARCHIVES 】アイカサ”. サエラ (2023年6月1日). 2024年10月25日閲覧。
  19. ^ アイカサと⼤⼿企業8社、「2030年使い捨て傘ゼロ」傘シェアプロジェクトを開始”. Circular Economy Hub (2022年6月1日). 2024年10月25日閲覧。
  20. ^ 『アイカサ』、新プロダクトの発表!新タイプの傘と傘立て、アプリの3つのアップデートを経て”傘を消費しない”エコシステム構想を実現。使い捨て傘に終止符を!”. PR TIMES (2020年5月11日). 2024年10月25日閲覧。
  21. ^ コラボレーションパートナーのご紹介(アイカサ公式サイト)
  22. ^ ジップロック リサイクルプログラム”. 旭化成ホームプロダクツ. 2024年10月25日閲覧。
  23. ^ “『天気の子』アイカサとコラボ 陽菜が空に浮かんでいるような透明傘が登場”. オリコン. (2020年12月29日). https://www.oricon.co.jp/news/2180640/full/ 2024年10月25日閲覧。 
  24. ^ "「アイカサ傘ラック前面パネル広告 山手線ジャック」の販売を開始" (pdf) (Press release). ジェイアール東日本企画. 15 June 2021. 2024年10月25日閲覧
  25. ^ “月額280円で駅の傘「使い放題」なのに返却率は99% 設置場所が増えている「アイカサ」の正体”. ITmediaビジネスオンライン. (2021年1月19日). https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2101/19/news041_2.html 2024年10月27日閲覧。 
  26. ^ 警察署に届いた傘が返還。アイカサが遺失物になっても戻ってくる仕組みを構築”. LoveTech Media (2021年4月30日). 2024年10月27日閲覧。
  27. ^ 3R原単位の算出方法” (pdf). 環境省. pp. 119-121. 2024年10月27日閲覧。

外部リンク

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