アウトレットモール
アウトレットモール(英: outlet mall、または、outlet centre)とは、流通業(小売業)の形態のひとつで、衣料品、アクセサリー、大型日用品などの商品を低価格で販売する複数の直接販売店舗(アウトレットストア、アウトレット店)が集積したショッピングモールのこと。
アウトレットストアには、消費者にとって商品を通常より安く手に入れられる利点があり、各製造・販売業者にとってはブランドイメージを損なわずに在庫を処分できる利点がある[1]。ショッピングモールの形態を取ることで、多数のブランドや業種を揃えた利便性を備えることができ、販売者は消費者に対して商品購入の選択幅を提供できる[1]。
概要
[編集]アウトレット(英語: outlet)とは、水や煙などの排出口[1]が原義の言葉で、ここでは流通経路・販売経路における、売り手から見た「売り先」という意味である[1]。アメリカ合衆国の流通業界では、メーカーおよびブランド取扱業者が、流行遅れ商品、通信販売のクーリングオフ品、実用上は問題のない欠格品(いわゆる「わけあり商品」。「半端もの」「棚ずれ品」とも)[1]などの不良在庫を処分するために、工場や倉庫の一角に在庫処分店舗(これを「アウトレットストア」と呼んだ)を設置していたが、各業者が既存流通経路の保全(通常価格の維持)やさらなる集客のために、1980年代以降、これらのアウトレットストアを一か所に集約するようになった。これがアウトレットモールの始まりである[1]。
モールのアウトレット店舗には、メーカーなどが自社企画品や自社生産品の直接販売を行う(通常、販売するブランド名を屋号として掲示しメーカー直販を明示する)「ファクトリー・アウトレット」と、自社で商品を生産しない事業者(モール外で量販店を運営する企業など)が複数のメーカーから卸売を介さずに仕入れた在庫品を販売する「リテール・アウトレット」の2種類がある[1]。この2種類以外に、モールにはまれに非公式の流通ルートで仕入れた在庫品(バッタもん)を扱う「バッタ屋」が入居することがあるが、上記の通り、バッタもんは通常アウトレット品の定義に含まれない。
衣料・装飾分野の取扱商品は主にいわゆる「メーカー品(通常、メーカーのブランド名を表示したもの)」や、いわゆる「高級ブランド品(通常、百貨店などで高額でも購入者がつき、販売可能なもの)」として生産されたものである。また、家電量販店・家具量販店などが、各店舗で販売期間の終了した店頭展示商品を集めて低価格で販売する例もある。
今日では、アウトレットストアは在庫処分目的だけでなく、新ブランド・新商品の反応を得るための市場調査目的のためにも設置される[1]。このため、アウトレット店では、アウトレット店のみで売るために新規に開発される「アウトレット専売商品」を取り扱っていることがある。これは通常のメーカー品の単なる廉価版である。
日本のアウトレットモールの歴史
[編集]日本ではつくば万博(1985年開催)跡地を再利用したショッピングモールが始まりとされる。1993年(平成5年)に埼玉県入間郡大井町(現:ふじみ野市)にアウトレットモール・リズムが開業[1](2011年に閉業)。これを機に地方を中心に建設が進んで、2000年代以降、全国に数十か所のアウトレットモールが開店するに至った。
日本のアウトレットモールの多くは、高速道路や幹線道路沿いの郊外、または観光地に立地している。近年は、高速道路のインターチェンジと専用通路で直結されているものもある(あみプレミアム・アウトレット等)。都心部の正規品流通店舗との競合を避け、通常店舗の分布が少ない地域にアウトレット店を置くことで広域から一定の集客を得るためと、そもそもの土地代の安さによって安値販売を成立させるためである。基本的に自家用車での来客を想定した立地ではあるものの、公共交通機関での来客を想定しバスターミナルを併設する例もある(佐野プレミアム・アウトレット等)。
日本の多くのアウトレットモールでは、モール建物内などにフードコートや飲食店街を併設しており、地方ごとに特色のあるメニューを提供する店舗が入居している[1]。
日本の主なアウトレットモール
[編集]日本では「三井アウトレットパーク」(三井不動産)と、「プレミアム・アウトレット」(三菱地所・サイモン)が共通の店名で全国展開を行っているほか、不動産各社などが運営を行っている。
北海道
[編集]- 千歳アウトレットモール・レラ(北海道千歳市)〈LaSalle Investment Management → プロッド イクス〉
- 三井アウトレットパーク 札幌北広島(北海道北広島市)〈三井不動産〉
東北地方
[編集]- 三井アウトレットパーク 仙台港(宮城県仙台市宮城野区)〈三井不動産〉
- 仙台泉プレミアム・アウトレット(宮城県仙台市泉区)〈三菱地所・サイモン〉
関東地方
[編集]- あみプレミアム・アウトレット(茨城県稲敷郡阿見町)〈三菱地所・サイモン〉
- 那須ガーデンアウトレット(栃木県那須塩原市)〈西武プロパティーズ〉
- 佐野プレミアム・アウトレット(栃木県佐野市)〈三菱地所・サイモン〉
- 三井アウトレットパーク 幕張(千葉県千葉市美浜区)〈三井不動産〉
- 三井アウトレットパーク 木更津(千葉県木更津市)〈三井不動産〉
- 酒々井プレミアム・アウトレット(千葉県印旛郡酒々井町)〈三菱地所・サイモン〉
- 三井アウトレットパーク 入間(埼玉県入間市)〈三井不動産〉
- レイクタウンアウトレット(埼玉県越谷市)〈イオンリテール → イオンモール〉
- ふかや花園プレミアム・アウトレット(埼玉県深谷市)〈三菱地所・サイモン〉
- 三井アウトレットパーク 多摩南大沢(東京都八王子市)〈三井不動産〉
- グランベリーパーク(東京都町田市)〈東急モールズデベロップメント〉
- 三井アウトレットパーク 横浜ベイサイド(神奈川県横浜市金沢区)〈三井不動産〉
- THE OUTLETS SHONAN HIRATSUKA(神奈川県平塚市)〈イオンモール〉
中部地方
[編集]- 御殿場プレミアム・アウトレット(静岡県御殿場市)〈三菱地所・サイモン〉
- 軽井沢・プリンスショッピングプラザ(長野県北佐久郡軽井沢町)〈西武プロパティーズ〉
- 土岐プレミアム・アウトレット(岐阜県土岐市)〈三菱地所・サイモン〉
- 三井アウトレットパーク ジャズドリーム長島(三重県桑名市)〈三井不動産〉
- 三井アウトレットパーク北陸小矢部(富山県小矢部市)〈三井不動産〉
近畿地方
[編集]- 三井アウトレットパーク 滋賀竜王(滋賀県竜王町)〈三井不動産〉
- ららぽーと門真・三井アウトレットパーク 大阪門真(大阪府門真市)〈三井不動産〉
- りんくうプレミアム・アウトレット(大阪府泉佐野市)〈三菱地所・サイモン〉
- 神戸三田プレミアム・アウトレット(兵庫県神戸市北区)〈三菱地所・サイモン〉
- 三井アウトレットパーク マリンピア神戸(兵庫県神戸市垂水区)〈三井不動産〉
中国地方
[編集]- 三井アウトレットパーク 倉敷(岡山県倉敷市)〈三井不動産〉
- 広島マリーナホップ(広島県広島市西区)〈マリーナホッププロパティ〉
- THE OUTLETS HIROSHIMA(広島県広島市佐伯区)〈イオンモール〉
九州地方
[編集]- THE OUTLETS KITAKYUSHU(福岡県北九州市八幡東区)〈イオンモール〉
- 鳥栖プレミアム・アウトレット(佐賀県鳥栖市)〈三菱地所・サイモン〉
沖縄
[編集]開業予定のアウトレットモール
[編集]- (仮称)三井アウトレットパーク 岡崎(愛知県岡崎市)- 2025年秋開業予定[2]。
- (仮称)京都城陽プレミアム・アウトレット(京都府城陽市)- 開業時期未定。
閉店・閉鎖・業態変更した日本の主な元アウトレットモール
[編集]北海道地方
[編集]- 小樽アウトレットタウンWALL(北海道小樽市)〈マイカル → 小樽ベイシティ開発〉
- かつて2階の一部に「アウトレットタウンWALL」が存在したが、現在は複合商業施設形態となっている。
東北地方
[編集]- 仙台ヒルサイドアウトレット(宮城県仙台市青葉区)〈ヒルサイドモールマネージメント〉
関東地方
[編集]- ビッグホップガーデンモール印西(千葉県印西市)
- 2008年5月の運営会社経営破綻以降、アウトレットショップが相次いで撤退。住商アーバン開発→京阪流通システムズへの運営会社移行後は、アウトレット店も含めた複合商業施設形態となっている。
- アウトレットコンサート長柄(千葉県長生郡長柄町)〈長柄ショッピングリゾート〉
- 2009年3月31日閉鎖。跡地は「ロングウッドステーション」(撮影用スタジオやイベント会場などとして使用)。
- アウトレットモール・リズム(埼玉県ふじみ野市)〈スター・プロパティーズ〉
- 大洗リゾートアウトレット(茨城県東茨城郡大洗町)〈八ヶ岳モールマネージメント〉
- ヴィーナスアウトレット(東京都江東区)〈ヴィーナスフォート → 森ビル〉
中部地方
[編集]近畿地方
[編集]- コスタモール(大阪府貝塚市)〈伊藤忠商事〉
- 2008年3月31日閉店。閉店後は温泉施設のみ営業。跡地にはスーパーセンタートライアル二色浜店が開業。
- 岸和田カンカンベイサイドモールWEST(大阪府岸和田市)〈住商アーバン開発→プライムプレイス〉
- 2017年3月に運営会社が変更し、2018年3月にアウトドアスポーツ・ライフスタイルショップ主体の商業施設としてリニューアルオープン。
- 三井アウトレットパーク 大阪鶴見(大阪府大阪市鶴見区)〈三井不動産〉
- 2023年3月12日閉店。
九州地方
[編集]脚注
[編集]関連項目
[編集]- ディスカウントストア
- 免税店
- インターネットオークション、フリマアプリ - 店舗アカウントからの出品で、中古品・型落ち品などが販売される例がある