アナスチグマート
アナスチグマート(独:Anastigmat )とは、レンズの収差補正状況を示す言葉の一つで、球面収差[1]、コマ収差[1]、像面湾曲[1]、非点収差[1]をすべて解消していることを言う。 英語読みではアナスティグマット。現代写真レンズのほとんど全てはこれに属する[1]。
概要
[編集]光学用途に用いるレンズは、屈折に伴って発生するコマ収差[1]や像面湾曲[1]、非点収差[1]といった、各種の収差が補正されていることが望ましい。しかし、初期の単純な構成のレンズでは、すべての収差を効果的に補正することは困難であり、アプラナートやスチグマートなどの限定的な収差補正にとどまっていた。
すべての収差を補正するアナスチグマートとして最初に実現したのは、ロッスのフーゴー・シュレーダーが1888年に開発したコンセントリック[2]であり、次いで同じ年の1888年にカール・ツァイスのパウル・ルドルフが開発したツァイス・アナスチグマート(後プロターに改名)[3]、続いてゲルツのエミール・フォン・フーフが開発したゲルツ・ドッペルアナスチグマート(後ダゴールに改名)や、フォクトレンダーのダーヴィット・ケンプファーが1893年に開発したコリニア等が、初期の製品として知られる。
1893年、ハロルド・デニス・テイラーによって比較的単純な3群3枚構成ですべての収差を補正できるトリプレットが考案され、アナスチグマートが一般化した。
20世紀前半までは、カメラ用レンズ銘にアナスチグマートであることを明記した製品も多かったが、アナスチグマートであることが当たり前になってからは、製品の特長として言及することは少なくなっている。
ドッペルアナスチグマート
[編集]アナスチグマートが開発された当時は対称型のレンズ構成が多く、対象の片側だけでも使用できたため、これを単にアナスチグマートと呼んでいた。 その後、時代が下って、2つ組み合わせた製品が出回るようになり、特に「ドッペルアナスチグマート(独: Doppel-Anastigmat)」もしくは「ダブルアナスチグマット(英: double-Anastigmat)」と呼ぶようになった。
関連項目
[編集]出典
[編集]参考文献
[編集]- 『クラシックカメラ専科』朝日ソノラマ
- 小林孝久『カール・ツァイス創業・分断・統合の歴史』朝日新聞社 ISBN 4-02-258480-7
- 竹田正一郎『ツァイス・イコン物語』光人社 ISBN 978-4-7698-1455-9
- 吉田正太郎『天文アマチュアのための望遠鏡光学・反射編』誠文堂新光社 ISBN 4-416-28813-1