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アマダイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アマダイ属 Branchiostegus
アカアマダイ B. japonicus
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : スズキ亜目 Percoidei
: アマダイ科 Branchiostegidae
: アマダイ属 Branchiostegus
Rafinesque, 1815
英名
Tilefish, Blanquillo
下位分類群
16種(本文参照)

アマダイ(甘鯛、尼鯛)は、スズキ目アマダイ科Branchiostegidaeアマダイ属 Branchiostegus に分類される魚の総称。おもにインド太平洋大陸棚を中心に生息する底生肉食魚である。日本では南日本近海で5種が見られ、このうちアカアマダイシロアマダイキアマダイの3種が重要な食用種となっている。

名称

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日本での地方名はオキツダイ(静岡)、グジ(京都・舞鶴・大阪[1])、クズナ(大阪・福岡・壱岐)、コビリ、コビル(山陰地方)、スナゴ(愛媛)等がある[2]香港周辺では広東語で「馬頭(マータウ)」と称する。

特徴

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いずれも全長は20 - 60cmほど。体は前後に細長く、側扁する。頭部は額と顎が角張った方形で、目は額の近くにある。体表は鈍い光沢のある鱗に覆われる。体色はピンク色 - 赤褐色で、腹側は白っぽい。種類によっては鞍状斑・帯模様・黒点等が出現し、同定のポイントになる。各鰭はどれも小さめで、棘条もそれほど強靭ではない。背鰭は基底が長い長方形で背中の殆どに亘る。尾鰭は截形だが種類によっては後方中央が僅かに突出し凧形に近くなる。顎には小さな歯がある[2][3][4]

インド太平洋とアフリカ西部沿岸の大陸棚に分布する。日本近海では本州中部以南で6種が見られ、特に東シナ海で多産していたが、20世紀後半からは沿岸諸国による乱獲が進み漁獲量が減少している[5][6]

浅い海から水深300mくらいまでの砂泥底に巣穴を掘って生息している。小魚・甲殻類・多毛類など小動物を捕食する[4][6]

食材

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アマダイのグリル

日本では高級食材として扱われ、底引き網、延縄釣り等で漁獲される。中国からの輸入も多い。

身は白身で、脂肪分が少なく淡白だが柔らかく水っぽい。日本では刺身にはあまり利用せず、水分を飛ばして風味をつける焼き魚干物等の料理法が一般的である[2][4]。またも食べることができ、鱗を落とさずに焼く鱗焼きという調理法もある。鱗に高温の油をかけることで鱗が逆立ち、パリパリとした食感を楽しむこともできる。ムニエルポワレ照り焼き(若狭焼き)、酒蒸し、粕漬け味噌漬け西京焼き)、干物ワイン煮(シャンパン煮)等様々な料理で食べられる。韓国済州島では一夜干しを焼いた「옥돔구이(オクトムクイ)」が名物料理のひとつとなっているほか、冷たく酸味と辛みのある汁に生の切り身を入れて食べるムルフェなどの郷土料理にも用いられる。香港では蒸し魚やの具にする。

なお、アメリカのFDAは、有機水銀が蓄積されている可能性が高いとして2003年に妊婦や授乳中の女性および子供はアマダイ(tilefish)を摂取しないよう勧告を行っている[7]

分類

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漢字で書くと「甘鯛」または「尼鯛」だが、タイ科ではなく、いわゆる「あやかり鯛」の一つである。従来はキツネアマダイ科の中にアマダイ科も含まれていた。

16種類が知られ、B. semifasciatus 1種のみがアフリカ西部沿岸産、他は全てインド太平洋産である[5][8]

  • シロアマダイ Branchiostegus albus Dooley, 1978 - 本州中部からフィリピン
  • スミツキアマダイ B. argentatus (Cuvier, 1830) - 東シナ海・南シナ海
  • キアマダイ B. auratus (Kishinouye, 1907) - 本州中部から東シナ海
  • B. australiensis Dooley et Kailola, 1988 - スマトラからオーストラリア西岸
  • B. doliatus (Cuvier, 1830) - インド洋西部
  • B. gloerfelti Dooley et Kailola, 1988 - インドネシア産のホロタイプのみが知られる
  • B. hedlandensis Dooley et Kailola, 1988 - オーストラリア西岸。ホロタイプとパラタイプのみが知られる
  • B. ilocanus Herre, 1928 - フィリピン沿岸
  • アカアマダイ B. japonicus (Houttuyn, 1782) - 本州中部から南シナ海。アラフラ海からの記録もある
  • ハナアマダイ B. okinawaensis Hiramatsu and Yoshino, 2012 - 琉球列島
  • B. paxtoni Dooley et Kailola, 1988 - オーストラリア西部
  • コクテンアマダイ B. sawakinensis Amirthalingam, 1969 - インド太平洋熱帯海域
  • B. semifasciatus (Norman, 1931) - モロッコからアンゴラにかけてのアフリカ西岸
  • B. serratus Dooley et Paxton, 1975 - オーストラリア西岸
  • B. vittatus Herre, 1926 - フィリピン

日本近海産のおもな種類

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アカアマダイ(赤甘鯛、: Red tilefishBranchiostegus japonicus (Houttuyn, 1782)
体長40cmほど。目の後下方に逆三角形の白い模様があり、頬にがない。尾びれに黄色の縦しまが数本ある。本州中部から南シナ海に分布し、水深80-120mの砂泥底に生息する[3]。日本産アマダイ類の中では最も漁獲量が多い。
シロアマダイ(白甘鯛) B. albus Dooley, 1978
体長60cmに達する大型種。和名通り体が白っぽく、「シラカワ」とも呼ばれる。また尾鰭の黄色は横しまである。本州中部からフィリピンまで分布し、水深40-60mの砂泥底に生息する。日本産アマダイ類の中では最も美味と言われ、珍重される[3][4]
キアマダイ(黄甘鯛) B. auratus (Kishinouye, 1907)
体長30cmほど。目から口まで白い線がある。和名通り頬・背鰭・尾鰭の黄みが強い。また水深200-300mほどと他種より深所に多い。アカアマダイ、シロアマダイより味は落ち、あまり珍重されない[3][4]
スミツキアマダイ(墨付甘鯛) B. argentatus (Cuvier, 1830)
体長が最大27cmほどの小型種。目から口まで2本の銀白色の縞があり、背鰭膜間には和名通り大きな黒色の斑点が並ぶ。体側には2本の褐色の縦縞がある。漁獲量が少なく市場に出回ることはほとんどない[3]

関連項目

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  • イトヨリダイキダイ - アマダイ類と同所的に生息する肉食魚。
  • ソコアマダイ、オキアマダイ - アカタチ科の海水魚。形態・生態ともアマダイに似る。
  • テンス - ベラ科の海水魚。形態がアマダイに似ており、実際に和歌山県ではアマダイと呼ばれる。
  • キングクリップ - 南半球産のアシロ科の海水魚。食用魚として日本にも輸入されている。1970年代-2000年代には「アマダイ」の名で販売されていた。

参考文献

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  1. ^ (大阪での「グヂ」のみ)牧村史陽編 編「アマダイ【甘鯛】」『大阪ことば事典』講談社講談社学術文庫〉、1984年10月10日(原著1979年)、26頁。ISBN 4-06-158658-0 「グジ」『大阪ことば事典』、210頁。 本書では「アマダイ」の項にのみ解説があり、「グジ」の項では「アマダイ」を参照している。なお、後述する地方名の「クズナ」については、本書は記載していない。
  2. ^ a b c 蒲原稔治著・岡村収補訂『エコロン自然シリーズ 魚』1966年初版・1996年改訂 保育社 ISBN 4586321091
  3. ^ a b c d e 岡村収・尼岡邦夫監修 山溪カラー名鑑『日本の海水魚』(解説 : 山田梅芳)1997年 ISBN 4635090272
  4. ^ a b c d e 石川皓章『釣った魚が必ずわかるカラー図鑑』2004年 永岡書店 ISBN 4522213727
  5. ^ a b FAMILY Details for Malacanthidae - Froese, R. and D. Pauly. Editors. 2009. FishBase. World Wide Web electronic publication. version (11/2009)
  6. ^ a b 水産総合研究センター西海区水産研究所平成20年度アマダイ類(東シナ海)の資源評価
  7. ^ What You Need to Know About Mercury in Fish and Shellfish,2004 EPA and FDA Advice For: Women Who Might Become Pregnant, Women Who are Pregnant, Nursing Mothers, Young Children.
  8. ^ ITIS Standard Report Page:Branchiostegus