アメリカ合衆国のファーストレディの回想録一覧
歴代アメリカ合衆国のファーストレディのうち、14名が合計で23冊の回想録を著している。ファーストレディとはホワイトハウスの女主人を指し、例外もあったものの慣例ではアメリカ合衆国大統領夫人が務める。20世紀以降のファーストレディの回想録はすべてベストセラーになっており、中には大統領自身の回想録より売れたものも存在する[1][2]。
アビゲイル・アダムズの書簡集は1840年に『Letters of Mrs. Adams, the Wife of John Adams』として出版され、ルイーザ・アダムズも自伝を書くことを数度試みたとされるが、アダムズは自伝を出版しようとはしなかった[1]。ドリー・マディソンの回想録と書簡集は1886年に『Memoirs and Letters of Dolley Madison, Wife of James Madison, President of the United States』という題名で出版されたが、実際にはマディソンの姪にあたるメアリー・カッツが著し、ルシア・カッツ(Lucia Cutts)が編集した作品である[注釈 1][4]。
ジュリア・グラントは回想録を著し、出版しようとした最初のファーストレディであり、彼女は夫ユリシーズ・グラントの死後、1890年代に『Personal Memoirs of Julia Dent Grant』を著した。しかし、彼女が回想録の価値を見誤ったこともあり、1902年に死去するまでに回想録を出版してくれる出版社を見つけられなかった。グラントの回想録はその後、1975年に出版された[5]。存命中に回想録が出版された最初のファーストレディはヘレン・タフト(1914年)である[1]。大統領夫人による回想録は1970年代まで珍しいものであり、タフトの後、1970年までに回想録を著して出版したファーストレディはイーディス・ウィルソン、グレース・クーリッジ、エレノア・ルーズベルト、レディ・バード・ジョンソンの4名である[2]。このうち、クーリッジの回想録は1冊の書籍ではなく、1930年代に『ジ・アメリカン・マガジン』誌の記事という形で出版された[4]。1978年にベティ・フォードが1冊目の回想録を出版した以降、ファーストレディの大半が存命中に1冊以上の回想録を出版している[2]。
初期の回想録はあまり重要でない事柄に着目することが多く、またファーストレディ自身の私生活に着目することも多かった。ヘレン・タフトの回想録は『ザ・サン』紙から「明るくウィットに富み、人を喜ばせる思い出」と形容され、イーディス・ウィルソンの『My Memoir』(1939年出版)は同時代の『ニューヨーク・タイムズ』紙のレビューなどで衣装や社交行事に終始していると批判された[6][7]。4冊の自伝を著したエレノア・ルーズベルトはこの傾向を変え、自身の私生活よりも政治問題について書くようになった。 レディ・バード・ジョンソンはまず200万文字の自伝を後述して書き取らせた後、それを30万文字に短縮し、『大統領夫人日記: ホワイトハウスの5年間』として出版した。この自伝は成功し、夫リンドン・ジョンソンの回想録より売れた[6]。ジャクリーン・ケネディ・オナシスは自身では自伝を書かなかったが、1960年代にメアリー・V・R・テイヤーによる『Jacqueline Kennedy』と『Jacqueline Kennedy: The White House Years』の編集に関わった[4]。
ベティ・フォード、ロザリン・カーター、バーバラ・ブッシュによる回想録はそれぞれ夫の回想録より売れた[1]。ナンシー・レーガンによる『マイ・ターン: ナンシー・レーガン回想録』(1989年)は夫への「復讐」とみられる内容により「マイ・バーン」(My Burn、「私のやけど」)とのあだ名がつけられたが、ベストセラーになり、3か月以上ニューヨーク・タイムズのベストセラーリストにランクインした[6][8]。ミシェル・オバマは回想録『マイ・ストーリー』(2018年出版)の出版にあたり、頭金6000万米ドルを受け取っており、回想録も2019年11月時点で115万冊以上の売上を叩き出した[9][10]。直近に出版されたファーストレディの回想録はメラニア・トランプによる『メラニア』(2024年出版)である[11]。
一覧
[編集]注釈
[編集]- ^ ステュアート・ライビッガー(Stuart Leibiger)によると、「私を含む多くの歴史家は『Memoirs and Letters of Dolley Madison, Wife of James Madison, President of the United States』を引用したが、(中略)それが実際にはドリーの姪メアリー・エステル・エリザベス・カッツ(Mary Estelle Elizabeth Cutts)によって書かれ、作者の表示なしで出版されたことを知らなかった」[3]。
- ^ グラントは存命中に回顧録を出版してくれる出版社を探したが、見つけられなかった[5]。
- ^ 3作目までの自伝をまとめたうえ、追加の章が書かれた著作[12]。
- ^ a b クリス・チェイスとの共著[13][14]。
- ^ 夫ジミー・カーターとの共著[15]。
- ^ ビル・リビーとの共著[16]。
- ^ ウィリアム・ノヴァクとの共著[17]。
- ^ ファーストレディになる前に出版された[18]。
- ^ 報道では『メラニア』[19]。
出典
[編集]- ^ a b c d Fehrman, Craig (21 May 2010). "First Lady Lit". The New York Times (英語). 2015年4月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年3月30日閲覧。
- ^ a b c Sánchez, Bianca (13 November 2018). "The History of First Ladies' Memoirs". Smithsonian Magazine (英語). 2020年11月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月20日閲覧。
- ^ Leibiger, Stuart (June 2014). "The Queen of America: Mary Cutts's Life of Dolley Madison". Presidential Studies Quarterly (英語). 44 (2): 376–377. doi:10.1111/psq.12125。
- ^ a b c Anthony, Carl (18 May 2016). "First Ladies as Author". The National First Ladies' Library (英語). 2020年11月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月21日閲覧。
- ^ a b "The Personal Memoirs of Julia Dent Grant". National Park Service (英語). 2020年11月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月20日閲覧。
- ^ a b c Brockell, Gillian (12 November 2018). "Julia Grant couldn't find a publisher for her memoir. Michelle Obama got paid millions for hers". The Washington Post (アメリカ英語). ISSN 0190-8286. 2020年11月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月20日閲覧。
- ^ "The Memoirs of Mrs. Wilson". The New York Times (英語). 12 March 1939. 2021年8月19日閲覧。
- ^ Fehrman, Craig (2012). "Reagan and the Rise of the Blockbuster Political Memoir". American Literary History (英語). 24 (3): 468–490. doi:10.1093/alh/ajs031. ISSN 0896-7148. JSTOR 23249745. 2021年5月20日閲覧。
- ^ "Michelle Obama's book is set to become the best-selling memoir in history" (英語). Reuters. 27 March 2019. 2020年11月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。NBC Newsより2020年11月20日閲覧。
- ^ Superville, Darlene (19 November 2019). "Michelle Obama signs 'Becoming' copies on book's anniversary". Associated Press (英語). 2021年5月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月20日閲覧。
- ^ Pastis, Stephen「トランプ再選で急変、米国の「ベストセラー本」ランキング」『フォーブス』2024年11月11日。2024年12月14日閲覧。
- ^ Laski, Marghanita (3 August 1962). "Eleanor Roosevelt's autobiography – archive, 1962". The Guardian (英語). 2020年11月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月21日閲覧。
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- ^ Jensen, Erin (7 May 2019). "Jill Biden writes of marriage with Joe, 'totally shattering' death of son Beau in new book". USA Today (英語). 2019年6月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月18日閲覧。
- ^ 芦塚智子「メラニア・トランプ夫人、中絶の権利擁護 回想録で表明」『日本経済新聞』2024年10月4日。2024年12月14日閲覧。
関連図書
[編集]- Wertheimer, Molly Meijer, ed. (2004). Inventing a Voice: The Rhetoric of American First Ladies of the Twentieth Century (英語). Rowman & Littlefield. ISBN 978-0-7425-2971-7。
関連項目
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