アレクサンドル・ネフスキー (プロコフィエフ)
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カンタータ『アレクサンドル・ネフスキー』(ロシア語: Александр Невский)作品78は、セルゲイ・プロコフィエフが作曲した管弦楽とメゾソプラノ独唱、混声合唱のための作品である。セルゲイ・エイゼンシュテイン監督によるソ連映画『アレクサンドル・ネフスキー』(1938年公開)のための音楽から演奏会用のカンタータとして改作された。
映画はロシアの英雄で聖人ともされるアレクサンドル・ネフスキーとドイツ騎士団との戦いを描いている。
概要
[編集]プロコフィエフはソ連帰国後の1930年代から1940年代にかけて、何作かの映画の音楽を作曲しているが、セルゲイ・エイゼンシュテイン監督による1938年公開のソ連映画『アレクサンドル・ネフスキー』はその一作であった。公開の翌年1939年、プロコフィエフはこの映画の音楽から一部を抜粋し、全7曲からなる演奏会用のカンタータに改作・再構成した(その際にオーケストレーションも改めている)。
演奏会用カンタータとしての初演は1939年5月17日にモスクワで、プロコフィエフ自身の指揮で行われ、成功を収めた。
カンタータと同年にピアノ伴奏版の編曲も行われており、『アレクサンドル・ネフスキーからの3つの歌』作品78bisとして出版されている。
楽器編成
[編集]- メゾソプラノ独唱、混声合唱
- 木管楽器:ピッコロ、フルート2、オーボエ2、コーラングレ、クラリネット2、バス・クラリネット、テナー・サクソフォーン、ファゴット2、コントラファゴット
- 金管楽器:ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ
- 打楽器:ティンパニ、トライアングル、小太鼓、タンブリン、マラカス、ウッドブロック、シンバル、大太鼓、タムタム、グロッケンシュピール、シロフォン、鐘
- その他:ハープ、弦五部
楽曲の構成
[編集]全7曲からなる。演奏時間は約30分。
- 第1曲 モンゴル治下のロシア(Русь под игом Монгольским) - オーケストラのみ
- モルト・アンダンテ
- タイトル・バックから映画の導入部までの音楽。
- 第2曲 アレクサンドル・ネフスキーの歌(Песня об Александре Невском)
- レント
- 途中から戦争の描写を思わせるピウ・モッソの部分が入る。
- 第3曲 プスコフの十字軍(Крестоносцы во Пскове)
- 第4曲 起て、ロシアの人々よ(Вставайте, люди Русские!)
- ラルゴ―アンダンテ
- ドイツ騎士団による侵略を訴え、国民に戦意高揚を呼びかける合唱。
- 第5曲 氷上の戦い(Ледовое побоище)
- アダージョ―モデラート―アレグロ・モデラート―アレグロ―アンダンテ―アレグロ―アダージョ―アレグロ
- 映画のクライマックスをなす、チュード湖での戦いの場面の音楽。
- 第6曲 死の原野(Мёртвое поле) - メゾソプラノ独唱とオーケストラ
- アダージョ
- 壮烈な戦いで死んだ兵士を悼う哀歌。
- 第7曲 アレクサンドルのプスコフ入城(Въезд Александра во Псков)
- モデラート―アレグロ・マ・ノン・トロッポ―ピウ・ラルガメンテ
- プスコフ城に入城するネフスキー軍の栄光を讃える讃歌の合唱。
参考文献
[編集]- 『作曲家別名曲解説ライブラリー プロコフィエフ』(音楽之友社)
- プロコフィエフ『アレクサンドル・ネフスキー』(アバド指揮、ロンドン交響楽団、同合唱団、エレーナ・オブラスツォワ、DG)のライナーノーツ
- プロコフィエフ『アレクサンドル・ネフスキー』他(アンチェル指揮、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、同合唱団、ヴィエラ・ソウクボウアー、スプラフォン)のライナーノーツ