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アーグルトン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
オートンのボールドレーン(Bold Lane)から見た「アーグルトン」の所在地

アーグルトンArgleton)は、Googleが提供する地図上に存在した、実在しない町である。

2009年12月中旬に訂正が行われるまで、この地名はイギリスイングランドランカシャー州オートン英語版に近接した位置に表示されていた。しかし、実際のこの場所には空き地が広がっている[1][2]

Google上の「アーグルトン」

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アーグルトンの位置(イングランド内)
アーグルトン
「アーグルトン」の位置

Google マップおよびGoogle Earthで表示されていた「アーグルトン」の位置は、北緯53度32分35秒 西経2度54分43秒 / 北緯53.543度 西経2.912度 / 53.543; -2.912座標: 北緯53度32分35秒 西経2度54分43秒 / 北緯53.543度 西経2.912度 / 53.543; -2.912だった。ここはランカシャー州ウエスト・ランカシャー英語版にある人口約8000人の村・オートンの村域内[3]で、リヴァプールヨークとを結ぶ幹線道路A59 (A59 roadがすぐ近くを走っている。

Googleのデータは他のオンライン情報サービスにも利用されているため、「アーグルトンの天気」「アーグルトンの不動産」「アーグルトンの求人」といった、あたかもこの町が実在するかのような情報が多数リストアップされることになった。これら「アーグルトン」と関連付けられた人や事業やサービス自体は、同じ郵便番号L39の地域内にある実在のものである[1][4]

発見と流行

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実在しない町「アーグルトン」に気づいて最初に反応したのは、オートンの隣町オームスカーク英語版でウェブサービス会社の社長を務めるマイク・ノーラン(Mike Nolan)であった。ノーランは2008年9月、インターネット上で実在するかのように振る舞う「幽霊集落」のことを自身のブログに書き込んだ[2][5]

2009年はじめ、ノーランの同僚であるロイ・ベイフィールド(Roy Bayfield)によって詳しい調査が試みられた。特別な何かがあるのかどうかグーグル・マップが指し示す位置を実際に歩いたベイフィールドは、マジックリアリズム心理地理学英語版において現実と虚構が混交する「架空の土地」を引き合いに出しながら、「アーグルトン」は「一見普通だった」(deceptively normal)と自身のブログに報告した。「アーグルトン」の発見と探索をめぐる物語は、まず地元のメディアによって取り上げられた[6][7]

2009年11月には「Googleマップには存在するが、現実には存在しない町」が世界中のメディアの注目を集めるようになり、インターネット上でも大きな流行を呼んだ。Googleにおける"Argleton"の検索結果は、2009年11月4日現在で25,000件、同年12月23日には249,000件にまで増加した。Twitterでも"Argleton"はよく使われるハッシュタグとなった[2][8]。「アーグルトンでこのTシャツを買ってきた」とか「ニューヨークパリ、アーグルトン」であるとかいった文字をプリントした商品を販売するサイトも登場した[4]。argleton.comというドメインを取得した人々は、以下のようなメッセージを記している。

What the hell are they talking about? We, the good citizens of Argleton do exist. Here we are now!
日本語翻訳:一体何を言ってるんだ? アーグルトンの住民はここにいる、今ここに![9]

説明

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アーグルトンという存在を説明する一つの方法は「著作権トラップ」である。トラップストリートのように地図の著作権侵害をとらえるため故意に誤情報が加えられることはあるが、一般にこれほど目立つような形では行われない。Googleがわざと「アーグルトン」を記したと疑う人々は"Argle"が"Google"と同じような響きであるとか、"Argleton"は"Not Large"や"Not Real G"(GはGoogleのG)のアナグラムであるとかいった解釈をおこなっている[1][10]

あるいは単に"Aughton"をスペリングミスしたものである可能性もある[8]英国地図学協会英語版会長のダニー・ドーリング(Danny Dorling)教授は、「他愛もない間違い」以上の何者でもないとみなしている[2]

Googleのスポークスマンは「情報の大部分は正確だが、たまに誤りもある」とコメントしており、利用者に誤りをデータ提供者に知らせるよう勧めている。Googleマップにデータを提供しているのは、オランダに本拠を持つテレアトラス社英語版である。同社は、このような「異常」がデータベースに混入した理由についての説明を行わず、「アーグルトン」は地図から除去されるだろうと述べた[1]。情報の訂正は2009年12月中旬に行われ、以降 Google Map 上でも「アーグルトン」を見つけることはできない。

脚注

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  1. ^ a b c d Lefort, Rebecca(31 October 2009). "Mystery of Argleton, the 'Google' town that only exists online". Telegraph.co.uk. Retrieved on 6 November 2009.
  2. ^ a b c d Hickman, Leo(3 November 2009). "Welcome to Argleton, the town that doesn't exist". Guardian.co.uk. Retrieved on 6 November 2009.
  3. ^ より正確に表現すれば、オートンのシヴィル・パリッシュ (Civil Parish内。シヴィル・パリッシュ(行政教区)はイングランドの行政区画の一つである。
  4. ^ a b Ramachandran, Arjun(4 November 2009). "Argleton: the phantom town that Google created". The Sydney Morning Herald. Retrieved on 7 November 2009.
  5. ^ Nolan, Mike(9 September 2008). "Google Renames Village". Web Services at Edge Hill University. Retrieved on 6 November 2009.
  6. ^ Jaleel, Gemma(2 April 2009). "Ormskirk man Roy Bayfield visits the Bermuda Triangle of West Lancashire – Argleton in Aughton". Ormskirk & Skelmersdale Advertiser. Retrieved on 7 November 2009.
  7. ^ Bayfield, Roy(22 February 2009). "Destination: Argleton! Visiting an imaginary place". Walking Home to 50. Retrieved on 7 November 2009.
  8. ^ a b Jaleel, Gemma(5 November 2009). "Advertiser leads way over mystery Google Map town Argleton". Ormskirk & Skelmersdale Advertiser. Retrieved on 7 November 2009.
  9. ^ Heusner, Ki Mae & Potter, Ned(4 November 2009). "Google Maps Mystery: Phantom Town Only Exists Online". ABC News. Retrieved on 7 November 2009.
  10. ^ "Mystery of phantom Google village". BBC Liverpool(3 November 2009). Retrieved on 7 November 2009.

関連項目

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外部リンク

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