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インドボダイジュ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
インドボダイジュ
インドボダイジュの葉と幹
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : バラ上類 superrosids
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : マメ類 fabids
: バラ目 Rosales
: クワ科 Moraceae
: イチジク属 Ficus
: インドボダイジュ F. religiosa
学名
Ficus religiosa L.[1]
和名
インドボダイジュ[1]
(印度菩提樹)
英名
Bo tree
Peepal
Pipal
Bodhi Tree

インドボダイジュ(印度菩提樹、学名: Ficus religiosa: pippala または aśvattha)は、クワ科イチジク属植物の一種[2]インド中部や北部の風土や文化によく根づいており、仏教徒ヒンドゥー教徒ジャイナ教徒にとって聖なる木とされる[3]仏教の発祥地であるインドの国花になっている。「仏教三霊樹」のひとつで、仏教の経典にはテンジクボダイジュ[1](天竺菩提樹)の別名を持つ。

リンネの『植物の種』(1753年) で記載された植物の一つである[4]

特徴

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インドボダイジュ(マウイ島カフルイ

熱帯地方では高さ30メートル (m) に生長する高木[5]。成長が早く、木の寿命は数千年といわれている[3]。本来は落葉性であるが、常に多湿なところでは常緑となる[5]。若木の樹皮は滑らかで、うっすらと横縞があるが、老化するにつれてまだら状に裂けて縦に溝が入り、基部が広く張り出してくる[3]。しばしば気根が出て、木の強度と安全性を高め、他の動物などの隠れ家にもなる[3]

は長さ15 - 18センチメートル (cm) の円状卵形から三角状のハート形で、先端が細長く突き出すように伸びて尾状になるのが特徴である[5][3]葉身の表面は光沢のある明るい緑色[5]、裏側は光沢のない薄い緑色である[3]。成長した葉は革質になり、黄緑色の葉脈がよく目立つ[3]。4月ごろの芽生えのときは、朱色や銅色、ピンク色の若葉が萌えだし、真冬に落葉する[3]。若菜のときに葉色が薄いのは、草食動物に食べられてしまう可能性を低くするためで、赤い色は食草にする昆虫に見えにくくする効果があるといわれる[3]。葉柄が長く柔軟であるので、わずかな風でも大きくそよいで、特徴的な葉ずれの音が聞こえる[3]

他のイチジク属植物と同様に、他肉質で袋状の球形をした花嚢(かのう)が枝につき、花嚢の内側に無数の小さなが咲く[3]。花嚢にはイチジクコバチ属のハチが共生しており、ハチが花粉を運んで受粉する[3]。受粉すると花嚢が肥大してサクランボほどの大きさの果嚢となり、黄緑色から濃紫色を経て、黒色に熟す[3]。果嚢をほとんどの人が食用にすることはないが、ムクドリコウモリが好んで食べて、湿り気のある木の割れ目などに種子を落として発芽させる[3]

他のイチジク属と同様、絞め殺しの木となることがある。耐寒性が弱く元来は日本で育てるには温室が必要であるが、近年では地球温暖化の影響で、関東以南の温暖な地域では路地植えで越冬できたり、または鉢植えの観葉植物として出回っている。先述の通り原産地のインドが仏教発祥の地であることから仏教を信仰する国々で広く栽培されている。温帯地方の日本では、各地の仏教寺院では本種の代用としてシナノキ科植物ボダイジュがよく植えられている。そのためボダイジュが「菩提樹」であるかのように誤解されることが多いが、本種が仏教聖樹の「菩提樹」である

分布

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原産地はパキスタンからミャンマーにかけての地域である[3]インドから東南アジアにかけて広く分布。

諸言語における呼称

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南アジア

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インド:

インドおよびバングラデシュ:

スリランカ:

  • シンハラ語: බෝ (bō)、බෝගහ (bō-gaha)、බෝදුම (bōduma)、බෝධි (bōdhi)、අශ්වත්ථ (aśvattha)、ප්ලක්ෂ (plakṣa)、චෛත්‍ය වෘක්ෂ (caitya-vr̥kṣa)、මඩලපත් (maḍala-pat)、සසලදල (sasaladala)[11]

東南アジア

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ミャンマー:

仏教三大聖樹

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無憂樹沙羅双樹 と並び 仏教三大聖樹(仏教三霊樹)の一つ[5]釈迦(ガウタマ・シッダールタ)が、インドボダイジュの木陰で瞑想をしているときに悟り菩提)を開いたとされる[5][2][3]。現在、この場所はインド北東部のビハール州にあるブッダガヤといわれており、大きな寺院が建ち、聖なる菩提樹もある[3]。釈迦が瞑想したというインドボダイジュの木はすでに失われているが、紀元前288年にこの木の枝をスリランカアヌラダプラに持っていき挿し木したものがあるため、その枝をインドに持ってきて挿し木をしたとされる[3]

ヒンドゥー教の聖樹

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ヒンドゥー教の中心をなす3大神、ブラフマーシヴァヴィシュヌの神がインドボダイジュと密接な関係にあり、土曜日に女性が木の幹の周りに紐を結ぶと女神ラクシュミーから多くの子供と富を授かると信じられている[14]。さらにインドボダイジュがインドセンダンAzadirachta indica)に絡まることは、特別な吉とされ、この木のカップルのために象徴的な結婚式が執り行われたり、その場所に神殿がなければ新たに神殿が建設されたりもした[14]

脚注

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注釈

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出典

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  1. ^ a b c d 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Ficus religiosa L. インドボダイジュ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年8月10日閲覧。
  2. ^ a b 岩波 仏教辞典 2002, p. 923-924.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r ドローリ 2019, p. 122.
  4. ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 1059. https://www.biodiversitylibrary.org/page/359080 
  5. ^ a b c d e f g h 土橋豊 1992, p. 113.
  6. ^ 小学館ランダムハウス英和大辞典 第2版 編集委員会 編『小学館ランダムハウス英和大辞典』(第二版)、1994年。ISBN 4-09-510101-6 
  7. ^ 熱帯植物研究会 編『熱帯植物要覧』(第4版)養賢堂、1996年、37頁。ISBN 4-924395-03-X 
  8. ^ a b c Haughton, Graves C. (1833). A Dictionary, Bengálí and Sanskrit, Explained in English, and Adapted for Students of Either Language. London: J. L. Cox & Son. pp. 234, 736, 1062, 1739, 1740, 1861. https://archive.org/details/dictionarybengal1687haug/ 
  9. ^ a b দাস, জ্ঞানেন্দ্রমোহন (1937). বাঙ্গলা ভাষার অভিধান (2nd ed.). কলিকাতা: দি ইণ্ডিয়ান্ পাব্‌লিশিং হাউস. pp. 259, 753, 1342, 1343, 1441, 1707, 1965 (ベンガル語)
  10. ^ Upendra Kishore Ray Choudhury (1966). পৌরাণিক কাহিনী. কলকাতা: নিউস্ক্রিপ্ট প্রকাশক. https://books.google.co.jp/books?id=KXFmAAAAMAAJ&q=%E0%A6%AA%E0%A6%BF%E0%A6%AA%E0%A7%81%E0%A6%B2+%E0%A6%85%E0%A6%B6%E0%A7%8D%E0%A6%AC%E0%A6%A4%E0%A7%8D%E0%A6%A5&dq=%E0%A6%AA%E0%A6%BF%E0%A6%AA%E0%A7%81%E0%A6%B2+%E0%A6%85%E0%A6%B6%E0%A7%8D%E0%A6%AC%E0%A6%A4%E0%A7%8D%E0%A6%A5&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwiNkNOnzOfpAhUeyosBHW02AeQQ6AEIJzAA (ベンガル語)
  11. ^ Clough, B. (1892). A Sinhalese-English Dictionary. Kollupitiya, Colombo: Wesleyan Mission Press. pp. 56, 403, 432, 451, 673, 788. https://books.google.co.jp/books?id=2AQVAAAAYAAJ&pg=PA432&dq=Ficus+religiosa&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwjv_MbIkMzpAhWGGaYKHT42AhkQ6AEINjAC#v=onepage&q=Ficus+religiosa&f=false 
  12. ^ a b 大野, 徹『ビルマ(ミャンマー)語辞典』大学書林、2000年、208頁。ISBN 4-475-00145-5 
  13. ^ Judson, A.; Stevenson, Robert C.; Eveleth, F. H. (1921). The Judson Burmese-English Dictionary. Rangoon: American Baptist Mission Press. p. 714. https://archive.org/details/judsonburmeseeng00judsrich/page/715/mode/2up 
  14. ^ a b ドローリ 2019, p. 123.

参考文献

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  • ジョナサン・ドローリ 著、三枝小夜子 訳『世界の樹木をめぐる80の物語』柏書房、2019年12月1日。ISBN 978-4-7601-5190-5 
  • 土橋豊『観葉植物1000』八坂書房、1992年9月10日、112-114頁。ISBN 4-89694-611-1 
  • 中村元ほか(編)『岩波 仏教辞典』(第二版)岩波書店、2002年10月。 

関連項目

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外部リンク

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