インペリアル・イースター・エッグ
おんどりの時計 (マリア皇后へ、1900年) |
インペリアル・イースター・エッグ(英語:Imperial Easter Egg)は、金細工師ファベルジェによって製作された宝石で装飾した金製の卵型の飾り物のうち、1885年から1916年の期間にロマノフ朝ロシア皇帝アレクサンドル3世、ニコライ2世に納められたイースター・エッグ50個を指す。モスクワ・クレムリン宮殿の武器宮殿で見ることができる。
ロシア革命後、国有資産に組み込まれながら国外流出し、収蔵先はロシアの次にアメリカに多い。その希少性からオークションで1000万米国ドル相当の値が付いたものもある(2004年時点)[1]。
日本ではこれらを「ファベルジェの卵」と呼ぶことがあり、その場合は厳密には広く皇帝以外の注文主も含み、総点数58個、そのうち14個前後は所在地が公開されていない。また場合によってはファベルジェ風のデザインで20世紀、21世紀に作られたものを指す。
歴史
[編集]皇帝のイースター・エッグ
[編集]「皇帝の」イースター・エッグとして1885年、アレクサンドル3世は金細工師ファベルジェに、初めて皇后マリアに贈る黄金のイースター・エッグを作らせた。皇帝が結婚20周年の記念に卵型の贈り物を選んだ背景には皇后から聞いた少女時代の思い出があり[2]、デンマークの伯母ヴィルヘルミーネ・マリーが持っていた黄金の入れ子の卵は白い卵殻から雌鳥(めんどり)が現われ、それを開くとダイヤモンドをちりばめた王冠が入っていて、さらに中からダイヤモンドの指輪が出てくるデザインだったという[2][3]。
マリア皇后に贈られた純金製の卵は金の素地にエナメルを厚塗りした白い「殻」を開くと、つや消しの黄金で出来た卵黄が現われる。それがひとつめの「お楽しみ」(仕掛け) で、かみ合わせ式の留め金(バヨネット)を外すとスウェードを貼り巣に見立てた中に、色味の異なる金を数種類使い分けためんどり[要曖昧さ回避]の像がすわっていて、めんどりの留め金を開くと中からダイアモンドを施した小さな帝冠とルビーのペンダントヘッドが現われたというが、2つとも現存しない[4]。この贈り物は「最初のめんどりの卵」と名づけられた。
アレクサンドル3世は最初のイースター・エッグがたいへん喜ばれたことからピーター・カール・ファベルジェを「皇室御用達金細工師」に任命すると、翌年、もう1つ作らせ、それから毎年、黄金の卵は恒例の特注品となった。やがて年月とともにデザインがより精巧になっており、皇帝に細かい指示を与えられたファベルジェが自由にデザインする許可を受けたと考えられる。またファベルジェ家の言い伝えによれば、一つひとつのエッグに必ず「お楽しみ」という小物が入れてあること以外、アレクサンドル3世にさえ、どんな形に仕上がるのか知らせなかったという。
1894年11月1日、アレクサンドル3世が没すると注文主は息子のニコライ2世に代わり、妻アレクサンドラと母マリアに黄金の卵をプレゼントし続けた。製作はまずファベルジェ本人がデザイン原案を承認すると、加工はMichael Perkhin、Henrik Wigström、Erik August Kollinら歴代の職人頭が受け持っている。1904年から1905年の間は日露戦争のため、卵は作られなかった。1917年にロシア革命が勃発、2代のロシア皇帝に納めたエッグの50点目[注釈 1]に当たる「カレリアの白樺」は、皇帝の手元に届くことはなかった。皇帝に納めたうち、現在まで伝わったものはこれをふくめて44点である (2014年に発見された1点を含む)。
1700年代の先例
[編集]エルミタージュ美術館の研究員タマラ・V・クドリャウゼウによると[5] ロシア皇室にはイースター・エッグの贈り物の先例があり[6]、ファベルジェが製作した「ピョートル大帝」(1903年)のモデルは、エリザヴェータ1世のモノグラム[7] を施し時計を組み込んだデザインで製作時期は1757–1758年、製作地はパリであるという。皇帝のイースター・エッグの最初期の例で、その後、皇位を後継した女帝エカチェリーナ2世の治世にも、恋人のグリゴリー・ポチョムキンからの贈り物と伝わる七宝細工の黄金の卵形の香炉(brûle parfum エルミタージュ美術館収蔵)が伝わり、このほかに数例がある。
民間の注文品
[編集]ファベルジェ商会はロシア革命までの時期にチャーチル夫人 (1902年) やロスチャイルドのパリ分家ロチルド家(1902年)、ユスポフ家 (1907年)、ノーベル家 (1914年) と、ごく限られた客の注文に応じ、20世紀初頭のロシアの実業家アレクサンドル・ケルヒには7個シリーズを納めた。
国外に散逸
[編集]ロシア革命が起き、軍に囚われたアレクサンドラ皇后の持ち物はペトログラードの宮殿に残され、ボルシェビキの逮捕を免れたマリア皇太后はイースター・エッグをひそかに持ち出した[8]。ロマノフ朝の宮殿は荒らされて皇帝の持ち物や貴金属品は略奪に遭うものの、黄金の卵はピーター・ファベルジェの息子アガトン・ファベルジェに獄中で見積もらせた金額では買い手が付かず、数百ドルで換金されたと伝わっている[8]。レーニンは宮殿に残った皇室の宝物を守ろうと、ペトログラードからモスクワのクレムリン武器宮殿に移送させる。革命成立のおよそ1年後、ボリシェヴィキがファベルジェ商会を国有化した。
ヨシフ・スターリンは、外貨獲得の手段として1927年からいくつものエッグを競売にかけさせる[8]。1930年と1933年には14点のインペリアル・イースター・エッグがソビエト連邦から流出、そのとき父を介してレーニンと人脈のあったアメリカの実業家アーマンド・ハマー[注釈 2]がまとめて買い付けた (#リリアン・トマス・プラットの項を参照) 。ほかにも宝石商ウォルツキから派遣されたエマヌエル・スノーマンも競り落として国外に持ち出している。ウォルツキはやがてロンドン随一の宝石商に成長し、ロシア革命から100年近く行方不明だった「3番目の卵」(1887年製) がアメリカで再発見された2014年、これを買い取り、個人コレクションに仲介している[9]。皇室から動乱期に流出したイースター・エッグのうち7点は行方がわかっていないが、1889年製の「小物入れ」、「デンマーク王国祝祭」(1903年製) と「亡きアレクサンドル3世をしのんで」(1909年製) の3点は写真が残っている。
アメリカの5大コレクター
[編集]アメリカのコレクターは1920年代から現われ始め、中でも財力と人脈によりコレクションを築いた屈指の蒐集家が5人いる。
リリアン・プラット
[編集]バージニア州出身で皇帝のイースター・エッグ5点を所蔵したリリアン・トマス=プラットは、ゼネラルモーターズ重役ジョン・プラットの妻でたいへん富裕だった。ファベルジェの卵を持つきっかけは1920代に知人の富豪アーマンド・ハマーに勧められたからで、ニューヨークの骨董商ラ・ヴィエイユ・ルシーを介して入手した5点とは「水晶 (回転するミニチュア絵画)」、「ペリカン」、「 ピョートル大帝」、「ツァレーヴィチ (皇太子アレクセイ)」、「皇族の肖像と赤十字」である[10]。やがてプラットのロシア文物のコレクションは400点超[11] とアメリカで最も大きくなり、1947年に死去すると遺言により創建したばかりのバージニア州立美術館(リッチモンド市)に寄贈される[注釈 3]。同館の収蔵品の核をなす「リリアン・プラット・コレクション」の内訳は、ファベルジェ製の宝飾品のほかに新生ソビエト連邦政府から持ち出されたアクセサリー類や家具から陶磁器にわたる[10]。
マチルダ・G・グレイ
[編集]マチルダ・ゲディングス・グレイ(Matilda Geddings Gray)が所有した「デンマークの宮殿」、「ナポレオン」と「カフカス」は、その名を冠した財団(Matilda Geddings Gray Foundation)が管理している。他施設収蔵のファベルジェの卵とともにバージニア美術館の展示に貸し出したことがある[10]。
マージョリー・M・ポスト
[編集]27歳のとき父C・W・ポストから食品会社を相続したマージョリー・メリウェザー・ポストは、1929年にゼネラルフーズの社主となり当時アメリカ随一の女性の大富豪といわれた[注釈 4]。所有した黄金の卵は最晩年の遺言によりマージョリー・メリウェザー・ポスト財団に寄託、美しい庭園を一般開放する私設美術館ヒルウッド庭園美術館が管理する。
インディア・E・ミンシャル
[編集]ニューヨークの宝石商ラ・ヴィエイユ・ルシーから1943年に「キリストと聖女の肖像と赤十字」を入手したインディア・アーリー・ミンシャルはポカホンタス石油会社の創業者 T・エリス・ミンシャルの妻。ミンシャルが得た品は同じ年にモスクワの骨董品店 Antikvariat から匿名の購入者に売却されたものの転売と考えられる。著書 "The Story of My Russian Cabinet" に「ファベルジェを北のセリーヌと呼ぶ人もいるけれど、どんな宝石商もファベルジェの前ではかすんでしまう」と記している。1965年、宝飾工芸品コレクションを全点オハイオ州のクリーブランド美術館に遺贈[13]。
マルコム・フォーブス
[編集]アメリカの経済誌「フォーブス」の元発行人マルコム・フォーブスは皇帝のイースター・エッグ9個を自分のコレクションに加え、さらにファベルジェ宝飾品およそ180点を所有。死後、イースター・エッグはオークションでロシアの美術コレクターに一括して買い取られた。
展覧会に現われた黄金の卵
[編集]ファベルジェの卵は1990年代まで、ロシアを除くとアメリカのコレクターの所蔵数がいちばん多く、展覧会に出品する機会もあった。各地から借り受けて開いた例は1989年のサンディエゴ美術館と、年のメトロポリタン美術館(ニューヨーク市)があり、バージニア州立美術館(リッチモンド市)が企画した展覧会では寄託品が中心である。
サンディエゴ美術館
[編集]1989年、アメリカ・カリフォルニア州のサンディエゴ美術館はファブルジェの卵 26 点を各地から借り入れると芸術祭の一環で展示した。これほどまとまった数のエッグの公開は前にも後にも例がない[14]。
出品リストは次のとおり。略号のMとAはそれぞれマリア・フョードロヴナ皇后(のちの皇太后)とアレクサンドラ・フョードロヴナ皇后に贈られたことを示す。
-
クリーブランド美術館 1点
- イギリス王室収集品 2点
- クリーブランド美術館 1点
- キリストと聖女の像と赤十字(1915年、A)
- 個人コレクション 3点
メトロポリタン美術館
[編集]ファベルジェの宝飾品の展覧会を開いた際、メトロポリタン美術館はグレイ旧蔵の卵の新しい持ち主マクフェリン夫妻の提供した皇帝のイースター・エッグ[注釈 7]に合わせて、ニコライ2世(1868年 - 1918年)の父方の叔母に当たるロシア大公妃マリア・パヴロヴナがかつて持ち主だった宝飾品およそ100点とともに展示した。宝石細工のタバコケースやカフリンクなどである。
パヴロヴナの財宝はロシア革命後の混乱期にストックホルムで密かに隠されてきた品々の一部である。スウェーデンの外交官がパヴロヴナから預かり、ボルシェビキに没収されないよう隠した地下貯蔵室を地元住民と警察が守り通したという。発見されて3年後にオークションに出品されるとコレクターが一括で競り落としたため、ロシア皇族が所有したファベルジェの宝飾品としては珍しく散逸をまぬがれた。
バージニア州立美術館
[編集]ファベルジェの宝飾品の展覧会が2011年に開かれた[12]。この美術館はアメリカ屈指のロシア文物のコレクション[10] を#リリアン・プラットから遺贈され[11]、皇帝の卵5点を収蔵している[注釈 8]。
ロシアに戻った黄金の卵
[編集]9点を数えた故マルコム・フォーブスのコレクションは、その死後、2004年2月に遺族からサザビーズのオークションに出された。ところが競売が始まる前にロシアの新興財閥社長ヴィクトル・ヴェクセリベルクが代理人として全点買い取った。購入者アレクサンドル・イワノフ (美術蒐集家)は、ソビエト崩壊後の大富豪で美術品コレクターである[16]。それまで、ファベルジェが作った卵の最高額は2002年に付いた「冬」の960万ドルだったが、フォーブス・コレクションの落札は9点で1億ドルに達したといわれ記録を塗り替えたのである。イヴァノフとヴェクセリベルクたちが計画したファベルジェ美術館はサンクトペテルブルクに開館した[注釈 9]。
2013年、イギリスのテレビ局が組んだドキュメンタリー番組 BBC Four の取材に応じたヴェクセリベルクは、インペリアル・イースター・エッグ 9 点の収集に 1 億アメリカドル以上をつぎ込んだと明かしている[18]。ロシア国民として国の歴史と文化を伝える貴重な品、世界最高の宝飾品を守ろうと収集したのであって、自宅に飾り独占するためではないと強調すると、番組内で美術館を建てて所有するファベルジェの卵を公開するつもり[19] だと語った (美術館は2013年11月19日にサンクトペテルブルクに開館。サンクトペテルブルクのファベルジェ美術館も参照)[注釈 10]。
ロスチャイルドのエッグ
[編集]2007年11月、競売会社クリスティーズが「ファベルジェの時計」と題して[20]ロスチャイルドのエッグ (英語) をオークションにかけると、8900万ポンドで競り落とされた (手数料込み)。この「時計」は以前、1964年発行の L'Objet 1900 ( Maurice Rheims 著) に図版 29として載ったことがあるものの、ファベルジェが納めて以来、実物が公開されたことはなく競売に先立って2007年10月にクリスティーズが開いたモスクワの内覧会で初めてその姿を現したのだ。製作は1902年、エドゥアール・ド・ロチルド 男爵の婚約祝いの品で、時計を組み込み、正時に卵の頂点が開くとおんどりが現われて翼をひろげる仕かけを施してある。クリスティーズでロシアの美術工芸品部門をまとめるアレクシス・デ・ティーゼンハウセンによると、このときの競売は当時の史上最高の落札額を付け、世界一高価な時計であり、ロシアからの出品で初めてこれほどの高額を呼んだ、これら3つの点で意義深いという[21][22]。それ以前、ファベルジェの卵についた最高の落札額は9600万アメリカドル。2002年に取引された「冬」 (1913年製) である[23][24]。
ロスチャイルドのエッグは2014年12月8日、エルミタージュ美術館創設250年記念[注釈 11] の祝いの席でロシア政府より移管された[25][26]。授贈式はロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンが主催、ロスチャイルドのエッグに加えてファベルジェの作品をもう1点贈りスピーチを述べた。「エルミタージュに贈り物をしたいと思います。カール・ファベルジェ製作の時計、さらにもう1点、卵の時計、これも同じ人物の作品です。時計はかつてアレクサンドル3世とマリア・フョードロヴナの成婚25周年の記念に作られ、もう1点はロスチャイルドのファベルジェ・エッグと呼ばれています。今後、館内のふさわしい場所に展示されることを期待します」[27]。2015年7月時点でそのファベルジェの卵の時計は館内に展示されていない。
じつはこれらは美術収集家アレクサンドル・イヴァノフ[注釈 12] より2014年にロシア政府に寄贈されたのである[28][29]。2014年12月1日付けでイギリスとドイツの税務官がイワノフのファベルジェ美術館 (バーデンバーデン) に立ち入り調査を行い[30]、ロスチャイルドの卵をめぐる脱税問題との関係が注目された[31]。
創業家の手を離れた「ファベルジェ」というブランドはその後も所有者を変えて、2007年10月時点の継承者はふたたびファベルジェ家と手を組んでブランドの価値を高めたいと発表した[32]。
皇帝のイースター・エッグの所在
[編集]施設・持ち主 | 写真 | 点数 | 名前 |
---|---|---|---|
クレムリン武器宮殿 (ロシア・モスクワ) | 10 | アゾフの思い出、 百合の花束の時計、シベリア鉄道、クローバー、モスクワのクレムリン宮殿、アレクサンドル宮殿、スタンダールの帆船、馬に乗るアレクサンドル3世、ロマノフ王家の300年、鉄の砲弾 | |
ファベルジェ美術館(サンクトペテルブルク) (リンク・オブ・タイム財団ヴィクトル・ヴェクセリベルク) |
9 | 最初のめんどり (黄金の卵)、ルネサンス、薔薇のつぼみ、戴冠式、すずらん、若いおんどり、 15周年、月桂樹 (オレンジの樹)、 聖ゲオルギ勲章 | |
バージニア州立美術館(アメリカ合衆国バージニア州リッチモンド) リリアン・プラット寄贈 |
5 | 水晶 (回転するミニチュア絵画)、ペリカン、ピョートル大帝、ツァレーヴィチ (皇太子アレクセイ)、皇族の肖像と赤十字 | |
ロイヤル・コレクション (イギリス・ロンドン) | 3 | 野の花の籠、列柱の時計、 モザイク | |
メトロポリタン美術館 (ニューヨーク市) マチルダ・ゲディングス・グレイ財団寄託 |
3 | デンマークの宮殿、カフカス、ナポレオン (ナポレオン皇帝) | |
Edouard et Maurice Sandoz 財団 (スイス・ローザンヌ)[33] | 2 | 白鳥、孔雀 | |
ヒルウッド邸美術館 マージョリー・メリウェザー・ポスト寄贈 (ワシントン) |
2 | アレクサンドル3世の肖像、グリセイユ・浮彫り(エカテリーナ女帝) | |
ウォルターズ美術館 (メリーランド州ボルティモア | 2 | ガッチナ宮殿、薔薇の格子 | |
クリーブランド美術館 (オハイオ州クリーブランド[要曖昧さ回避] | 1 | キリストと聖女の像と赤十字 | |
アルベール2世 (モナコ大公)コレクション (モナコ・モンテカルロ) | 1 | 青い蛇の時計 | |
ファベルジェ美術館 (ドイツ・バーデン=バーデン) Alexander Ivanov寄託 |
1 | カレリヤの白樺 (白樺)[注釈 13] | |
カタール 首長 | 1 | 冬 | |
個人コレクション数ヶ所 | 4 | ダイヤの格子、パンジー、Love Trophies、3番目の卵 |
ケルヒ・エッグの所在
[編集]設/所有者 | 写真 | 点数 | 名前 |
---|---|---|---|
ファベルジェ美術館 (ロシア・サンクトペテルブルク) |
2 | ケルヒのめんどり、ケルヒのおんどり | |
ロイヤル・コレクション | 1 | 12のパネル | |
個人コレクション数ヶ所 | 4 | 松ぼっくり、りんごの花、荒磯の貝殻 (ロカイユ)、ボンボン入れ |
その他のエッグの所在
[編集]皇帝とケルヒ以外の人々に納められたもの。
製作年 | 名前 | 写真 | 特徴 | 施設/持ち主 | 所在地 |
---|---|---|---|---|---|
1902 | マールバラ公爵夫人 (ピンクの蛇の時計) | ファベルジェ美術館 リンク・オブ・タイム財団所有ヴィクトル・ヴェクセルベルク・コレクション |
サンクトペテルブルク | ||
1885–89 | キリストの復活 | ファベルジェ美術館 リンク・オブ・タイム財団所有ヴィクトル・ヴェクセルベルク・コレクション |
サンクトペテルブルク | ||
1899–1903 | 春の花々 | ファベルジェ美術館 リンク・オブ・タイム財団所有ヴィクトル・ヴェクセルベルク・コレクション |
サンクトペテルブルク | ||
1899–1903 | スカンジナビア | ファベルジェ美術館 リンク・オブ・タイム財団所有ヴィクトル・ヴェクセルベルク・コレクション |
サンクトペテルブルク | ||
1907 | ユスポフ | ノバルティス 財団 (Edouard et Maurice Sandoz コレクション) | スイス・ローザンヌ | ||
1902 | ロスチャイルド | エルミタージュ美術館 | サンクトペテルブルク | ||
1885–91 | 青い縞模様のエナメル | 個人コレクション | |||
1914 | ノーベルの氷 (雪片) | 個人コレクション |
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ アレクサンドル3世が皇后マリア・フョードロヴナに10個、ニコライ2世が皇后アレクサンドラと生母のマリア・フョードロヴナ皇太后に20個ずつプレゼントしている。
- ^ アーマンド・ハマーはアメリカ共産党創設者の息子、石油会社オクシデンタル・ペトロリウムの社長。リリアン・トマス・プラット (Lillian Thomas Pratt) にファベルジェの宝飾品蒐集を勧めると、ブラットはアメリカ初のインペリアル・イースター・エッグのコレクター5人のひとりに数えられる。
- ^ バージニア州立美術館に寄贈されたプラット夫人の蒐集品[12] には、工芸品の代金支払いに使った百貨店ロード・アンド・テイラー外商部の請求書も残り、コレクションを築いた道のりが辿れる[11]。
- ^ 父C・W・ポストは1895年、ミシガン州バトルクリークでポスト・フーズを創業、1920年代にゼラチンやチョコレート、コーヒーほか食品のナショナル・ブランドを次つぎに吸収合併し、冷凍食品会社の大型買収を経て1929年にゼネラルフーヅに社名変更。同社は1985年にフィリップモリスに吸収される。
- ^ ロマノフ家の古写真に写っていたことから皇帝の卵と判明。ただし技巧的に第一級品とは言いがたく、また注文の経緯を記録した書類がまったく見つからないため、真偽の論争に結論は出ていない。
- ^ 表面に見える赤っぽい七宝細工の楕円形の飾りはボタン操作で動き、下からニコライ2世の家族の肖像写真が現われる仕掛け。それぞれの楕円に施したイニシャルはローマ字とキリル文字を重ねてある。左から5列に分けて見ていくと、それぞれ次のように読める。
- ^ グレイの死後、ファベルジェの宝飾品コレクターのマクフェリン夫妻が皇帝のイースター・エッグをロンドンのサザービーズ競売で落札しチークウッド植物園美術館に寄託している。夫妻を同館に紹介したのは、グレイの兄弟の孫にあたるハロルド・ストリーム(Harold H. "Spook" Stream)だという[15]。
- ^ バージニア州立美術館収蔵のロシア皇帝の黄金の卵とは、「水晶 (回転するミニチュア絵画)」、「ペリカン」、「ピョートル大帝」、「ツァレーヴィチ (皇太子アレクセイ)」、「皇族の肖像と赤十字」の5点である。
- ^ 収蔵品は2004年5月から7月にモスクワのクレムリン内にある美術館 Church of the Twelve Apostles にて公開、ロシア、アメリカ、スイス、イタリア他でも展示を行ってきた[17]。
- ^ ファベルジェ美術館を作ったザ・リンク・オブ・タイムズ美術歴史財団は非営利法人で2004年、ロシアの起業家ヴィクトル・ヴェクセリベルクがモスクワに設立、理事長職に就く。“Supervisory Board - Link of Times Cultural-Historical Foundation (英語・財団理事名簿)”. 2015年9月5日閲覧。[リンク切れ]。財団はときにロシア文化省、ロシア正教ならびにロシア連邦大統領府[要曖昧さ回避]と合同でロシアの文物の返還計画を進めている。2008年9月にはハーバード大学と交渉の末、18個セットの通称「ロウエルハウスの鐘」(en:Lowell House#The Lowell House Bells) をモスクワの 聖ダニロフ修道院y (英語)に取り戻した。
- ^ エルミタージュ美術館発祥の建物はエカチェリーナ2世が1775年に冬宮の東側に設けた小美術館 (専用の美術品展示室)。現在、「小エルミタージュ」と呼ばれる。
- ^ アレクサンドル・イヴァノフはロシア国立博物館館長とロシア国内の個人美術館の団体代表、自身もファベルジェの宝飾品蒐集家。「ロシアへ帰国させます。最も美しく価値が高く、高い技術を凝縮した作品でもあるのです」と語った。
- ^ カレリヤの白樺 (白樺)製作年の2月にロシア革命が勃発したため皇帝がこの1点を受け取ることはなかった
出典
[編集]- ^ “世界で最も美しい卵—カール・ファベルジェの類まれな才能” (英語). BBC FOUR. 2015年9月5日閲覧。
- ^ a b “1885年「最初のめんどりの卵」の挿絵のキャプション [Photo caption, 1885 Hen Egg/First Hen Egg]” (英語). Mieks.com (2008年11月13日). 2012年12月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年3月26日閲覧。
- ^ Bencard, Mogens (1999) (英語). 卵の中の雌鶏 [The hen in the egg]. Amalienborg. コペンハーゲン: The Royal Danish Collections. ISBN 8789542363. OCLC 909694964
- ^ “1. めんどりの卵— 1885年の感謝祭に皇帝アレキサンドル3世より皇后マリア・フョードロヴナに贈られたフェベルジェ製の皇帝のイースター・エッグについて [The Hen Egg (The First Imperial Egg): A Fabergé Imperial Easter Egg Presented by Emperor Alexander III to His Wife The Empress Maria Feodorovna at Easter 1885”]. Link of Times Foundation USA. オリジナルの2012-11-27時点におけるアーカイブ。 2018年9月10日閲覧。
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- ^ Kudriavtseva, Tamara (1998). “皇室におけるイースターの伝統 [Osterliche Traditionen am Zarenhof]” (ドイツ語). 帝政時代の貴重なイースターエッグ [Kostbare Ostereier aus dem Zarenreich. Hirmer Verlag. ISBN 978-3-7774-8020-6. OCLC 41444239
- ^ . Munich. (1986). p. 653
- ^ a b c “ファベルジェの卵—革命後の命運 [...the fate of the eggs after the revolution]” (英語). PBS. 2002年12月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月15日閲覧。
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- ^ Quinn, Allison (9 December 2014). “ファベルジェ・エッグ、プーチン大統領より創立250年のエルミタージュへ移管 (英語、写真:ロスチャイルドのエッグ)”. ザ・モスクワ・タイムズ. 2015年11月27日閲覧。
- ^ “首相、創設250年を記念しファベルジェの時計の卵をエルミタージュ美術館に寄贈 (英語、写真:エルミタージュ美術館を訪れるプーチン大統領)”. ロシア政府発行紙 Russia Beyond The Headlines(Rossiyskaya Gazetaの英語版) (2014年12月10日). 2015年11月27日閲覧。
- ^ 250周年祝典に際しプーチン大統領が行った記者会見スピーチの全文 (英語、写真:記念のスピーチをするプーチン大統領)“エルミタージュ美術館創設250年の祝典”. ロシア大統領府公式サイト (2004年12月8日). 2015年11月27日閲覧。
- ^ Matlack, Carol (2014年12月15日). “プーチン大統領と1億4千ドル相当のファベルジェの卵をめぐる税法上の疑惑 (英語、写真:2007年、ロンドンでクリスティーズのオークションに出品されたロスチャイルドのファベルジェ・エッグ)” 2015年11月27日閲覧。
- ^ “エルミタージュに贈るためプーチンにファベルジェのエッグを贈ったビジネスマン――アレクサンドル・イワノフ (美術収集家) との対談 (ロシア語、写真:ロスチャイルドのファベルジェ・エッグ)”. Moskovskij Komsomolets (モスコースキー・コムソモーレッツ紙) (2014年12月9日). 2015年11月27日閲覧。
- ^ Dolgov, Anna (2014年12月12日). “イギリスの財務官、プーチン大統領のファベルジェの卵をめぐり美術館に立ち入り調査か (英語、写真:エルミタージュの創設250周年の記者会見にのぞむプーチン大統領)”. ザ・モスクワ・タイムズ. 2015年11月27日閲覧。
- ^ “税務官を批難、プーチン攻撃にファベルジェの卵の立ち入り調査を利用か”. タイムズ (2014年12月11日). 2015年11月27日閲覧。
- ^ “ファベルジェ美術館のご案内”. 2015年9月5日閲覧。
- ^ “Edouard & Maurice Sandoz Foundation (FEMS)”. 2015年9月5日閲覧。
- 「白鳥」と「孔雀」の所有者で肖像彫刻家 Edouard Marcel Sandoz (1881-1971) と美術蒐集家で文筆業の Maurice Yves Sandoz (1892-1958)の偉業を伝える財団。(英語)
参考資料
[編集]- Lynette G. Proler, Valentin Skurlov, Tatiana Faberge. Faberge Imperial Easter Eggs (Christie's, 1997) ISBN 978-0903432481
- Gerald Hill. Faberge and the Russian Master Goldsmiths (New York: Universe, 2007) ISBN 978-0-7893-9970-0
- Toby Faber. Faberge's Eggs: The Extraordinary Story of the Masterpieces That Outlived an Empire (New York: Random House, 2008) ISBN 978-1-4000-6550-9
書籍・資料の紹介
[編集]- ミークス. “ミークスのファベルジェの卵” (英語). 2005年5月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月5日閲覧。
エッグを近年の所有者や入手の経緯などで分類。カール・ファブルジェの伝記、エッグクイズ、フォーラム。
- “それぞれのファベルジェ” (英語). 2015年12月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年9月5日閲覧。
- 書籍の紹介。ファベルジェ商会の職人別に伝記と作品を紹介。
新聞のウェブ版
[編集]- Varoli, John (2007年11月28日). “ロスチャイルドのファベルジェの卵 16億5000万ドルで落札 (改稿2版)”. Bloomberg.com 2015年9月5日閲覧。 クリスティーズの競売で史上最高額を記録。落札したアレクサンドル・イヴァノフ>に新しいファベルジェ美術館について取材。ひ孫のサラ・ファベルジェのコメント(英語)
宝石商
[編集]- “ファベルジェの宝飾品”. ファベルジェ商会. 2015年9月5日閲覧。 宝飾品、腕時計他の広告。ファベルジェの卵のデザイン下絵など製作裏話。 (英語)
テレビ・映画
[編集]- “世界で最も美しい卵――カール・ファブルジェの類まれな才能” (2014年9月28日). 2015年9月5日閲覧。 テレビ番組「BBC FOUR」。スティーブン・スミス、ファベルジェに迫る。ケント公爵マイケルにロイヤル・コレクションについて取材。再放送。(英語)
- “ファベルジェの卵――エッグのたどった運命”. Pbs.org. 2015年9月5日閲覧。 クレムリン武器宮殿に移されたエッグを守った職員たち。散逸した初期は1点400-500ドルで売り買いされたエピソード。アメリカ初のコレクター、女性5人の紹介。 (英語)
- Smith, Stephan (2013年6月19日). “〈劇場・美術欄〉ファベルジェの卵は新しいロシアの権力の象徴”. BBC Four 2015年9月5日閲覧。 (英語)
- “真作「Fabergé: A Life of Its Own」”. IMDb. (June 29) 2015年9月8日閲覧。 カナダ全国の Cineplex で上映が始まる作品、「Fabergé: A Life of Its Own」はピーター・フェベルジェの父「カール」が主人公。小さな家族経営の工房を国際的な宝石商に育て上げ、また世界の王族から御用達の誉れを授かり、富裕な貴族層や財力を誇る大立者の注文を受けるまでに発展する物語である。ところがロシア革命が勃発、ブランドを奪われ失意の底に陥ったまま、1920年に亡命先のスイスで死去してしまう。大切な「ファベルジェ」の名前が日用品や果てはトイレ掃除の洗剤にまで使われる年月を経て、やがて豪華で高額な宝飾品を扱うブランドとしてふたたび息を吹き返す。(英語)
その他
- Ludewig McCanless, Christel. “ファベルジェ研究 ――カール・ファベルジェの芸術に捧げる”. 2015年9月5日閲覧。 (英語)
- ファベルジェ研究。書籍ほか参考資料、オークションの出品カタログを商会。Géza von Habsburg 博士はファブリジェの真作から複製品が作られた背景について1996年の展示カタログ解説 "Fabergé in America"に見識を述べた。「高い評価を受ける宝石商や競売会社以外、アメリカで手に入るファベルジェの宝飾品が贋作である可能性は高い」という。ただし、実際には真作と贋作の2種のほかにもう一種、〈ファベエルジェ様式〉で作った品を加える3種の分類が妥当と考えられる。 (英語)
- “BYU ファベルジェ・エッグ”. Byu Germslaf University. 2015年9月5日閲覧。 2003年の研究論文 (英語)
関連項目
[編集]- ピーター・カール・ファベルジェ
- 武器宮殿—クレムリン
- ファベルジェ美術館 (サンクトペテルブルク)
- ロマノフ朝
- 貴金属商
- 工芸
- 劇場版名探偵コナン 世紀末の魔術師
- 007/オクトパシー
外部リンク
[編集]- “the House of Fabergé 宝飾店ファベルジェ”. 2015年11月27日閲覧。 ミニチュア版の製作工程など動画あり
- “Imperial Easter Egg”. cargo. 2015年9月5日閲覧。[リンク切れ] 年譜
- “プーチンの免罪符を買う”. Energy Tribune 2015年9月5日閲覧。