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ロイヤル・コレクション

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
馬上のチャールズ1世とサン・アントワーヌの領主の肖像』(1633年)
アンソニー・ヴァン・ダイク

ロイヤル・コレクション: The Royal Collection)またはイギリス王室コレクションイギリス王室が所有する美術品コレクション。イギリス王室の私的財産で、王室の一部局である英国王立所蔵品協会の管理となっている[1]。英国王立所蔵品協会(The Royal Collection Department)はロイヤル・コレクションの分類、保存、洗浄、修復や、書物、絵画、彫刻などの展示に対して責任があるが、建築物については管轄外となっている。399人のスタッフがおり、2009年度には2,642万ポンド以上の収益があった[2]

ロイヤル・コレクションには7,000点以上の絵画、40,000点以上の水彩画、ドローイング、150,000点以上の版画のほか、歴史的な価値がある写真タペストリー、調度品、陶磁器書物など、様々な美術品の一大コレクションとなっている。一般大衆に公開され、王族は住んでいないハンプトン・コート宮殿や、王族の邸宅ではあるが一般公開されているウィンザー城など、複数の場所に分散して収蔵されている。ロンドンバッキンガム宮殿にあるクイーンズ・ギャラリー(en:Queen's Gallery)や、エディンバラホリールード宮殿にあるエディンバラ・クイーンズ・ギャラリー(en:Queen's Gallery, Edinburgh)にも、ロイヤル・コレクションの美術品が数ヶ月間展示されることがある。ロイヤル・コレクションの金銭的価値は総額3,600億ポンドといわれている[3]

歴史

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バッキンガム宮殿クイーンズ・ギャラリーに展示される『菜食主義を唱道するピタゴラス』(1618年 - 1630年頃)
ピーテル・パウル・ルーベンス

コレクションの中に16世紀のイングランド王ヘンリー8世以前の美術品はほとんど存在しない。ロイヤル・コレクションの発展に最も大きな寄与をしたのは、イタリア・ルネサンス絵画の熱心なコレクターで、アンソニー・ヴァン・ダイクらの芸術家を庇護したチャールズ1世だった。このコレクションはイングランド内戦による1649年のチャールズ1世の処刑後に売り払われてしまったが、1660年の王政復古で国王の座に就いたチャールズ2世が、コレクションのほとんどを取り戻している。また、ネーデルラント連邦共和国から28点のイタリア・ルネサンス絵画や12点の古代彫刻などを贈られ(en:Dutch Gift)、後にチャールズ2世も絵画や美術品を多数購入している。1760年に即位したジョージ3世は、王室図書館長フレデリック・オーガスタ・バーナード(en:Frederick Augusta Barnard)とともに非常に重要な版画と絵画をコレクションに加えており、1837年に即位したヴィクトリア女王と王配アルバートは、当時の現代絵画とオールド・マスターの絵画を熱心に収集した。ロイヤル・コレクションの所蔵美術品には美術館に贈与された作品もあり、歴代君主の中ではジョージ3世とヴィクトリア女王が多くの絵画を美術館に寄付している。特に王室図書館の収蔵品の大部分がジョージ3世によって大英博物館に寄付され、現在では大英図書館の所蔵となっている書物は現在でも「王室(Royal)」としてカタログに記載されている。ロイヤル・コレクションの中核となっているのは1603年にスコットランド王に加えイングランドなどの王に即位したジェームズ1世が購入したコレクションで、ウェールズの地図学者ハンフリー・ルイド(en:Humphrey Llwyd)、初代ラムリー男爵ジョン・ラムリー(en:John Lumley, 1st Baron Lumley)、第19代アランデル伯爵ヘンリー・フィッツアランらのコレクションと関連がある[4]

1952年に即位した女王エリザベス2世のもとで重要な美術品がコレクションに加えられており、これらには購入や遺贈のほかに諸外国や公的機関からの贈与も含まれている[5]イギリス連邦からの贈与が多く、一例として1985年から2001年にかけてカナダ水彩画協会(CSPWC)から75点の現代水彩画がコレクションに加えられたことがあげられる。

1962年、バッキンガム宮殿の一角にクイーンズギャラリーが開設され、ロイヤル・コレクションは一般に公開されるようになった。1993年にはロイヤル・コレクション・トラストが設立され、コレクション管理の他、ギャラリー運営、グッズ販売に至るまで、近代的なシステムにより経営されることとなった(初代理事長には皇太子時代のチャールズ3世が就任)。2002年にはクイーンズギャラリーが拡大されるとともにエディンバラにも新たなギャラリーが開設され、スコットランドでもロイヤル・コレクションの鑑賞が可能となった[6]

主要なコレクション

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絵画、版画、ドローイング

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アングロアメリカ

オランダ美術(200点以上)[7]

音楽の稽古』(1612年 - 1617年)ヨハネス・フェルメール

イギリス美術

『ウィンザー宮近況』(1841年 - 1843年)
エドウィン・ランドシーア

フランドル美術

『聖母被昇天』(1662年 - 1664年頃)
ピーテル・パウル・ルーベンス

フランス美術

『手紙を読む聖ヒエロニムス』(1621年 - 1623年)
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール

ドイツ美術

『我に触れるな (Noli me tangere)』(1532年 - 1533年頃)
ハンス・ホルバイン

イタリア美術

笛を持つ少年』(1508年頃)
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ帰属。以前はジョルジョーネの作品と考えられていた。
『果物の皮を剥く少年』(1593年)
カラヴァッジョ
『キリスト昇天祭のブチントーロの帰還』(1732年)
カナレット
アングロアメリカ
オランダ絵画
イギリス絵画
フランドル絵画
フランス絵画
ドイツ絵画
イタリア絵画

フランス調度品

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幅広い年代に渡って125点以上の作品があり、世界最大かつ最重要のコレクションになっている。

  • ジョセフ・バウムハウアー - 1点
  • ピエール・アントワン・ベランジェ - 13点
  • アンドレ=シャルル・ブーレ - 12点;
  • マルタン・カルラン - 2点
  • フランソワ=オノレ=ジョルジュ・ジャコブ=デマルテル - 1点
  • ヤコブ・フレール - 1点
  • ジェラール=ジャン・ガレ - 1点
  • ピエール・ガルニエール - 2点
  • ジョルジュ・ヤコブ - 30点
  • ジル・ジュベール - 2点
  • ピエール・ラングロワ - 5点
  • エチエンヌ・ルヴァスール - 7点
  • マルタン=エロイ・リニュルー - 2点
  • ベルナール・モリトール - 3点
  • ジャン・アンリ・リーズネル - 6点
  • フランス国立セーブル製陶所 - 1点
  • ピエール=フィリップ・トミール - 15点
  • ベンジャミン・ヴリアミー、ベンジャミン・ルイ・ヴリアミー - 4点
  • ベンジャミン・ヴリアミー - 3点
  • アダム・ヴァイスヴァイラー - 13点

ヨーロッパ調度品

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イギリス

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  • ロバート・ヒューム - 1点

フランドル

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  • 作者未詳 - 2点

ドイツ

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  • ヨハン・ダニエル・ゾンマー - 2点
  • メルキオール・バウムガルトナー - 2点

オランダ  

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  • 作者未詳 - 1点

時計

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  • アンドレ=シャルル・ブール - 4点
  • アブラアム=ルイ・ブレゲ - 1点
  • デ・ラ・クロワ - 1点
  • ジェラール=ジャン・ガレ - 1点
  • ジャン=アントワーヌ・レピン - 1点
  • マルタン=エロイ・リニュルー - 1点
  • ピエール=フィリップ・トミール - 1点
  • ベンジャミン・ヴリアミー - 1点
  • ベンジャミン・ルイ・ヴリアミー - 1点

装飾美術

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  • マシュー・ボールトン - 4点
  • ファベルジェ - 世界最大のコレクションの一つ
  • ジェラール=ジャン・ガレ - 2点
  • フランソワ・ルモンド - 12点
  • ピエール=フィリップ・トミール - 3点

陶磁器

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  • フランス国立セーブル製陶所 - まず間違いなく世界最大のコレクション
  • チェルシー磁器工房 - 全ての磁器がコレクションされている

彫刻

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『レリーのヴィーナス』(古代ローマ・五賢帝時代)
2005年から大英博物館に貸与されている

タペストリー / 絨毯

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  • ゴブラン織り - 14点

出典

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  1. ^ The Royal Collection - What is the Royal Collection?
  2. ^ Company Accounts, available from Companies House
  3. ^ “The Queen”. The Sunday Times. Rich List (London). (27 April 2008). オリジナルの2009年5月7日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20090507171859/http://business.timesonline.co.uk/tol/business/specials/rich_list/article3766741.ece 2009年5月20日閲覧。. 
  4. ^ R. Brinley Jones, ‘Llwyd, Humphrey (1527–1568)’, Oxford Dictionary of National Biography, Oxford University Press, Sept 2004
  5. ^ Royal Treasures, A Golden Jubilee Celebration. Edited by Jane Roberts. Publisher: Royal Collection Enterprises, St. James' Palace, London, 2002. Page 25 (by Sir Hugh Roberts) and Page 391 (chapter 14). ISBN 1 902163 49 4 (h-b uk) and ISBN 1 902163 52 4 (pb uk)
  6. ^ 桜井武『ロンドンの美術館』、平凡社新書、2008
  7. ^ The Social Affairs Unit - Web Review: Dutch Paintings at the Royal Collection
  8. ^ Jones, Jonathan (30 August 2006). “The real Da Vinci code”. The Guardian (London). http://arts.guardian.co.uk/features/story/0,,1860869,00.html 2011年7月14日閲覧。 
  9. ^ 池上英洋『西洋美術史入門』筑摩書房、2012年、125頁。ISBN 978-4-480-68876-7 
  10. ^ The Royal Collection - The Art of Italy in the Royal Collection: Renaissance & Baroque

外部リンク

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