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エルマン試薬

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
エルマン試薬[1]
識別情報
略称 DTNB
CAS登録番号 69-78-3
PubChem 6254
ChemSpider 6018 チェック
ChEMBL CHEMBL395814 チェック
特性
化学式 C14H8N2O8S2
モル質量 396.35 g mol−1
外観 薄黄粉末固体
融点

240-245 ℃ (dec.)

危険性
Rフレーズ R36/37/38
Sフレーズ S26 S36
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

エルマン試薬イールマン試薬、英:Ellman's reagentDTNB)とは、試料中のチオール(R-SH)の濃度を測定するための試薬。ジョージ・L・エルマン(George L. Ellman)によって開発された。

合成

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エルマンによる論文では、5-クロロ-2-ニトロベンズアルデヒドのアルデヒド基酸化することでカルボン酸とし、硫化ナトリウムによってクロロ基をチオールへと置換し、ヨウ素での酸化によってチオール同士をカップリングさせて得られた[2]。今日では、化学物質販売店で得ることができる。

エルマン法

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チオールはエルマン試薬と反応すると、ジスルフィド結合を分離し2-ニトロ-5-メルカプト安息香酸(TNB)を生成する。1モルのチオール試料から1モルのTNBが即座に生成されるため、TNBの吸光度(λmax=412 nm、ε=14,150 M-1cm-1)からチオールの濃度を測定することができる[3][4]

エルマン試薬とチオール(R-SH)の反応.

エルマン試薬は自由チオール基の共役塩基(R-S-)と反応するため、溶液は弱塩基性であるか、もしくは還元剤を利用する必要がある。その他、チオール基のpKa立体電気障害に影響を受ける[4]。TNBのモル吸光係数はpH 7.6からpH 8.6の間では一定だが、高い濃度など溶質の組成によって変化することがある[4]

異なる溶質におけるモル吸光率[4]
溶質 モル吸光係数(412 nm)
0.1M リン酸緩衝液、pH 8.0、1mM EDTA 14,150
2% SDS 12,500
6M 塩化グアニジニウム 13,700
8M 尿素 14,290

利用

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エルマン法は、血中グルタチオン濃度[5]などの低分子量のチオール濃度を測定するのに適している。またチオール基を生成する生化学反応の反応速度を測定[6]したり、タンパク質上のチオール基の数を測定[7]するのに利用されている。

脚注

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  1. ^ 5,5′-Dithiobis(2-nitrobenzoic acid) at Sigma-Aldrich
  2. ^ Ellman GL (1959). "Tissue sulfhydryl groups". Arch. Biochem. Biophys. 82 (1): 70–7. doi:10.1016/0003-9861(59)90090-6. PMID 13650640
  3. ^ Collier HB (1973). "Letter: A note on the molar absorptivity of reduced Ellman's reagent, 3-carboxylato-4-nitrothiophenolate". Anal. Biochem. 56 (1): 310–1. doi:10.1016/0003-2697(73)90196-6. PMID 4764694
  4. ^ a b c d Riddles PW, Blakeley RL, Zerner B (1983). "Reassessment of Ellman's reagent". Meth. Enzymol. Methods in Enzymology 91: 49–60. doi:10.1016/S0076-6879(83)91010-8. ISBN 978-0-12-181991-0. PMID 6855597
  5. ^ Sedlak J, Lindsay RH (1968). "Estimation of total, protein-bound, and nonprotein sulfhydryl groups in tissue with Ellman's reagent". Anal. Biochem. 25 (1): 192–205. doi:10.1016/0003-2697(68)90092-4. PMID 4973948
  6. ^ Gokhale RS, Hunziker D, Cane DE, Khosla C (1999). “Mechanism and specificity of the terminal thioesterase domain from the erythromycin polyketide synthase”. Chem. Biol., Volume 6, Issue 2, Pages 117–125. DOI: 10.1016/S1074-5521(99)80008-8
  7. ^ Riener CK, Kada G, Gruber HJ (2002). "Quick measurement of protein sulfhydryls with Ellman's reagent and with 4,4'-dithiodipyridine". Anal. Bioanal. Chem. 373 (4–5): 266–76. doi:10.1007/s00216-002-1347-2. PMID 12110978

外部リンク

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