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エル・アリ隕石

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
エル・アリ隕石
隕石の画像
エル・アリ隕石
種類 鉄隕石[1]
IAB complex[1]
衝撃変成 low[2]
風化分類 moderate[2]
発見国 ソマリアの旗 ソマリア[1]
座標 北緯4度17分17秒 東経44度53分54秒 / 北緯4.28806度 東経44.89833度 / 4.28806; 44.89833座標: 北緯4度17分17秒 東経44度53分54秒 / 北緯4.28806度 東経44.89833度 / 4.28806; 44.89833[2]
発見日 2020年9月[1]
プロジェクト:地球科学Portal:地球科学
テンプレートを表示

エル・アリ隕石(エル・アリいんせき、: El Ali meteorite)は、ソマリアで発見された重さが約15.2トン鉄隕石である[3]。地元において以前よりこの岩の存在は知られていたが、2020年の調査によって隕石であることが判明した。エル・アリ隕石から採取した標本の分析により、新種の鉱物の発見が報告されている[3]

経緯

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エル・アリ隕石は、ソマリアのヒーラーン州にあるエル・アリ英語版という小さな町から北西におよそ15キロメートル程の位置、石灰岩渓谷の中で地元のラクダ飼い達がラクダの水や餌を得るために集まる場所にあった[1]。少なくとも5ないし7世代前には、この岩の存在は知られており、伝承踊りなどを通じて受け継いできたという[1]。ラクダ飼い達はこの岩が金属質であることを理解しており、刃物を研ぐための鉄床として利用していた[1][3]

2019年9月、Kureym Mining and Rocks Co. という鉱山会社の採鉱職人がオパールを探してその地を訪れた際に、この奇妙な岩が隕石ではないかと気付き、切片をケニヤへ送り分析にかけた[1]。2020年8月、鉱山会社は岩をモガディシュへ移送。ソマリア政府はこの岩を押収し、政府はアルマース大学(Almaas University)の地質学者アブドゥルカディル・アビイカール・フセイン(Abdulkadir Abiikar Hussein)に調査を依頼、鉱山会社の分析も合わせ、9月に隕石であることが確認された[1][3]。アビイカール・フセインは、政府に隕石を買い上げることを進言したが、政府はこれを断り隕石を鉱山会社へ返却、その後買い手を求めて中国へ送られたという[1][3]

特徴

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隕石の重さは、モガディシュ港湾管理委員会による証書では約15,150キログラム、アビイカール・フセインの調査による推定では約16,800キログラムとなっている[1]。発見時、1つの隕石塊としては史上9番目に重いものであった[4][3]。大きさは、205センチメートル×128センチメートル×100センチメートルと報告されている[1]

隕石からは、約90グラムの切片が分析のために採取され、そのうちおよそ70グラムは2つに分割されてアルバータ大学に、残りはデューク大学での分析を経て、7.76グラムがカリフォルニア大学ロサンゼルス校に、9.00グラムがアリゾナ大学へ送られ、この3機関が標本を保有している[1]。分析された隕石切片の断面には、ウィドマンステッテン構造が発達している様子がみられる[1]。また、多数の包有物の中にはトロイライトリン酸塩などが検出できる[1]。エル・アリ隕石は鉄隕石、その中でも“IAB complex”[5]に分類されている[1]

2022年、エル・アリ隕石切片の分析から、新種の鉱物が発見された[3]。分析を行ったアルバータ大学などの研究者らは、標本の中に珍しい組成の結晶を発見、分析を進めた結果、地球の自然界ではみつかったことがない鉱物であった[4]。みつかった鉱物の中で、まず2種類、“Elaliite”(エルアリ石英語版)と“Elkinstantonite”(エルキンズタントン石英語版)の発見が発表された[4]。Elaliite は隕石そのものの名称に、Elkinstantonite はNASA小惑星探査機サイキの研究代表者を務めるアリゾナ州立大学リンディ・エルキンズ=タントン英語版にちなんでいる[4][3]。もう1種類、“Olsenite”(オルセン石フランス語版)という鉱物もみつかっており、こちらはシカゴフィールド自然史博物館の元鉱物・隕石研究者でこの鉱物の存在を予想したエドワード・オルセンにちなんでいる[3]

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p Gattaccera, Jérôme; et al. (2022-11), “The Meteoritical Bulletin, No. 110”, Meteoritics & Planetary Science 57 (11): 2102-2105, doi:10.1111/maps.13918 
  2. ^ a b c El Ali, The Meteoritical Society, (2021-07-17), https://www.lpi.usra.edu/meteor/metbull.php?code=74444 
  3. ^ a b c d e f g h i Wei-Haas, Maya; 訳=三枝小夜子 (2022年12月16日). “巨大隕石から地球になかった「新種」の鉱物を発見、3種類も”. ナショナル ジオグラフィック. 日経ナショナル ジオグラフィック. 2022年12月24日閲覧。
  4. ^ a b c d MacPherson, Adrianna (2022年11月28日). “New minerals discovered in massive meteorite may reveal clues to asteroid formation”. University of Alberta. 2022年12月24日閲覧。
  5. ^ Wasson, J. T.; Kallemeyn, G. W. (2002-07-01), “The IAB iron-meteorite complex: A group, five subgroups, numerous grouplets, closely related, mainly formed by crystal segregation in rapidly cooling melts”, Geochimica et Cosmochimica Acta 66 (13): 2445-2473, doi:10.1016/S0016-7037(02)00848-7 

関連項目

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外部リンク

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