オオクチユゴイ
オオクチユゴイ | ||||||||||||||||||||||||
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アクアマリンふくしま飼育展示個体。
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保全状況評価[1] | ||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | ||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Kuhlia rupestris (Lacépède, 1802) | ||||||||||||||||||||||||
シノニム[2] | ||||||||||||||||||||||||
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英名 | ||||||||||||||||||||||||
Buffalo bream[1] Jungle perch[1] Mountain trout[1] Rock flagtail[1] |
オオクチユゴイ(Kuhlia rupestris)は、ユゴイ科に分類される魚類の一種。インド太平洋の熱帯から亜熱帯域に分布し、主に河川に生息する。
分布
[編集]東アフリカのソマリアから南アフリカ共和国、インド洋を通って西太平洋の琉球諸島からオーストラリアまで、太平洋では東はフィジー、サモア、カロリン諸島まで、インド太平洋に広く分布する[1]。オーストラリアではカーペンタリア湾、ヨーク岬から南はクイーンズランド州南部のタルバジェラ川まで見られる[3]。
日本では主に南西諸島から記録されるが[4]、黒潮に乗って南日本にも現れ、神奈川県[5]まで記録されている[6]。これらは黒潮の潮流変動によって接岸した個体で、再生産が行われない死滅回遊と考えられている[5]。但し近年では関東地域の複数河川にて温泉の排水などによる越冬も報告されており、今後の断続的な調査が期待される。
形態
[編集]適度に側扁した体を持つ。頭部は尖り、眼は大きい。口は大きく斜めに突き出、上顎の後端は目に達する。背鰭の棘条部と軟条部の間は大きく凹み、尾鰭の葉は丸く、緩やかな切れ込みがある[3]。背面は茶色からオリーブ色、体側面は銀色、腹面は白色である。体側面には多数の暗褐色から赤褐色の斑点があり、尾鰭に黒い斑点がある。鱗は円鱗である[7]。成魚では、尾の斑点が融合して尾鰭が黒くなる[8]。背鰭は10棘と10 - 12軟条から、臀鰭は3棘と9 - 11軟条から成る。全長は40 - 60 cmで、体重は最大2.7 kgに達する[2]。
生態
[編集]通常は流れの速い河川の渓流域に生息するが、河口や沿岸でも見られる[3]。滝壺の岩場でよく観察される[2]。西表島では水田からも記録されている[9]。産卵のために淡水から海へ移動する回遊魚で、雨期には洪水により海へ出て、一斉に産卵すると考えられている。オオクチユゴイの精子は、淡水や汽水では運動しない[10]。幼魚は成長とともに淡水に移動する。雑食性で、昆虫、甲殻類、小魚のほか、果実を食べる[3]。
人間との関係
[編集]学習が早く、ルアーを避ける方法を学ぶことから、釣り人に人気の種である[12]。クイーンズランド州では、この種に対する漁獲制限がある[13]。分布域が広く、商業的に捕獲されることもないため、IUCNでは低危険種と評価されている。しかし、生息地の劣化により脅かされている。ダムや貯水池が河川を塞いで生息地を狭め、一部の水域では個体数の減少や絶滅につながっている[1]。
出典
[編集]- ^ a b c d e f g Mailautoka, K.; Hoese, D.; Sparks, J.S.; Ebner, B. & Brooks, S. (2020). “Kuhlia rupestris”. IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T183158A173723091. doi:10.2305/IUCN.UK.2020-2.RLTS.T183158A173723091.en 04 June 2024閲覧。.
- ^ a b c Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2024). "Kuhlia rupestris" in FishBase. June 2024 version.
- ^ a b c d “Kuhlia rupestris”. Fishes of Australia. Fishes of Australia. 04 June 2024閲覧。
- ^ 岸野底、米沢俊彦「奄美大島嘉徳川におけるリュウキュウアユの流程分布とその季節変化」『魚類学雑誌』第60巻第2号、2013年、91-101頁、doi:10.11369/jji.60.91。
- ^ a b 工藤孝浩、瀬能宏「横浜市侍従川におけるオオクチユゴイの出現」『神奈川自然史資料』第23巻、2002年、3-4頁。
- ^ 細谷和海『山渓ハンディ図鑑15 増補改訂 日本の淡水魚』山と渓谷社、2019年、352頁。ISBN 978-4-635-07043-0。
- ^ Mark McGrouther (25 June 2019). “Jungle Perch, Kuhlia rupestris (Lacépède, 1802)”. Australian Museum. 04 June 2024閲覧。
- ^ “Kuhlia rupestris”. James Cook University. 04 June 2024閲覧。
- ^ 井口恵一朗、淀大我、片野修「西表島の水田用水系に出現する魚類の生息環境」『魚類学雑誌』第50巻第2号、2003年、115-121頁、doi:10.11369/jji1950.50.115。
- ^ “The enigmatic Jungle Perch - recent research provides some answers”. SPC Fisheries Newsletter #40. Pacific Community (1987年). 2020年6月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月4日閲覧。
- ^ “沖縄方言辞典 ミキユー”. あじまぁ沖縄. 04 June 2024閲覧。
- ^ “Jungle Perch”. Fishing Cairns. 04 June 2024閲覧。
- ^ “Jungle perch”. Queensland Government. 2020年4月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。12 April 2020閲覧。