オデッサ・グレーディ・クレイ
オデッサ・グレーディ・クレイ | |
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Odessa Grady Clay | |
生誕 |
Odessa Lee Grady 1917年2月12日 アメリカ合衆国 ケンタッキー州ホプキンス郡 |
死没 |
1994年8月20日 (77歳没) アメリカ合衆国 ケンタッキー州ルイビル |
配偶者 |
カシアス・マーセラス・クレイ・シニア (結婚 1934年、死別 1990年) |
子供 |
モハメド・アリ(カシアス・クレイ・ジュニア) ラーマン・アリ(ルディ・クレイ) |
オデッサ・グレーディ・クレイ(Odessa Grady Clay、1917年2月12日 - 1994年8月20日)は、アメリカ合衆国のプロボクサーであるモハメド・アリ(カシアス・クレイ・ジュニア)とラーマン・アリ(ルディ・クレイ)の母親であり、レイラ・アリの祖母である[1][2]。1930年代にカシアス・マーセラス・クレイと結婚し、一家を支えるために家政婦をしていた[3]。
若年期
[編集]ケンタッキー州ホプキンス郡でジョン・ルイス・オグレーディ(John Lewis O'Grady)とバーディ・B・モアヘッド(Birdie B. Morehead)の娘として生まれた[4]。出生時の名前はオデッサ・リー・グレーディ(Odessa Lee Grady)だった。
父方の祖父はエイブ・オグレディ(Abe O'Grady)というクレア県エニス出身のアイルランド人で、南北戦争後すぐにアメリカに移住し、ケンタッキー州トッド郡のルイス・ウォーカー(Lewis Walker)の娘と結婚した[5][6][7][8]。母方の祖父のトム・モアヘッド(Tom Morehead, 1837-1913)は、白人の父と黒人奴隷の母の間の子供だった。モアヘッドは南北戦争中、第122有色軍に従軍していた[9]。
オデッサが幼い頃に両親は別居し[10]、母親に引き取られた。母親はメイドとして働き、白人家庭で家事や幼い子供たちの世話をしていた。母親の仕事中は叔母がオデッサの世話をした[10]。思春期になると、オデッサは学校を中退し、家政婦として働くようになった。オデッサが16歳の時、20歳のカシアス・クレイと出会った。2人はすぐに結婚し、ケンタッキー州ルイビルに住居を構えた[11]。オデッサの結婚生活は平穏とは言えなかった。息子のモハメド・アリは、ボクシングのプロモーターに「母は父を怖がっている (She's afraid of him.)」と話していた[8]。
モハメド・アリへの影響
[編集]キリスト教への強い信仰を通して、オデッサは2人の息子たちの人生と精神的な成長に大きな影響を与えた。モハメド・アリは後に、母親について次のように語った。「私の母はバプテスト派で、私が成長したとき、母は神について知っていることを全て教えてくれました。毎週日曜日になると、彼女は私に服を着せて、私と弟を教会に連れて行き、彼女が正しいと思う道を私たちに教えてくれました。人を愛すること、誰にでも親切に接することを教えてくれました。偏見や憎しみを持つことは間違っていると教えてくれました。後に私は宗旨を変え、いくつかの信念を変えましたが、彼女の神は、ただ私が違う名前で呼んでいるだけで、今でも神です。そして私の母は……私が昔から人に言ってきたことを言っておきます。彼女は優しくて、太っていて、そして、料理をすること、食べること、服を作ること、家族と一緒にいることが大好きな、素晴らしい女性でした。彼女は酒も飲まず、タバコも吸わず、他人の仕事にも口出ししませんし、誰にも迷惑をかけませんでした。私の人生の中で、誰よりも私に良くしてくれた人でした[12]」
オデッサは息子のボクシングのキャリアを通して息子を支え、刺激してきた。息子のキャリアの初期には小さなジムへ、後に彼が世界的に有名になると国際的なアリーナへ、オデッサは息子と一緒に旅行し、彼の試合のリングサイドには必ずオデッサがいた[13]。モハメド・アリは母親のことを親しみを込めて「バード」と呼び、父親よりも母親の方が近い存在だった。モハメド・アリがボクシングを知った後、彼は母親と、最強の男になるという夢を共有した[14]。
晩年と死去
[編集]夫のカシアスは1990年に亡くなった。オデッサは1994年8月20日にケンタッキー州ルイビルの老人ホーム「ハーストボーン・ヘルスセンター」で心不全のため死去した。オデッサは1994年2月から脳卒中で体が不自由になっていた[13][15]。遺体は、ルイビルのグリーンメドウズ記念墓地に夫と並んで埋葬された[16]。
1996年のドキュメンタリー映画『ムハンマド・アリ: ザ・ホール・ストーリー』と『モハメド・アリ かけがえのない日々』に生前のオデッサ・クレイの姿が出ている[17]。
1977年の映画『アリ/ザ・グレーテスト』ではドロシー・マイヤーが、2001年の映画『ALI アリ』ではキャンディ・ブラウンがオデッサ・クレイの役を演じた[18]。
脚注
[編集]- ^ “The Dream”. Time magazine. (March 22, 1963) 2009年9月4日閲覧. "Odessa Grady Clay is a short, pillowy woman who has 12 cats with freckled fawn skin and an expensive orthodontist. ..."
- ^ “Young Cassius Clay”. Sports Illustrated. (January 13, 1992) 2009年9月4日閲覧. "Clay was his mother's son. Odessa Grady Clay was a sweet, pillowy, light-skinned black woman with a freckled face, a gentle demeanor and an easy laugh. ..."
- ^ Egerton, John (September 28, 1980). “Ali's Kentucky Roots”. New York Times 2009年9月4日閲覧. "There, Odessa eventually met and married Cassius Marcellus Clay Sr. Little is known about the Grady side of the family, except that a cousin of Muhammad Ali ..."
- ^ “The special bond shared by Muhammad Ali and mum Odessa Clay”. 27 June 2020閲覧。
- ^ “Muhammad Ali's warm Irish welcome”. BBC. (September 1, 2009) 2009年9月2日閲覧. "Ali's ancestor, Abe Grady, lived on the Turnpike Road in the town, before moving in the 1860s to the US, where he married an African-American freed slave."
- ^ "Muhammad Ali the Irishman given hero's welcome in Ennis, County Clare", The Times, September 2, 2009
- ^ “Irish Cultural Society of San Antonio”. Irishculturalsociety.com. 2016年7月2日閲覧。
- ^ a b “Growing Up Scared in Louisville”. Sports Illustrated. (April 18, 1966) 2009年9月4日閲覧. "More than once Odessa Clay had her husband brought into court for roughing her up. Cassius Sr. was also picked up for reckless driving, disorderly conduct, assault and battery, always after he had been drinking. As another old friend put it, "The father isn't a criminal or even an evil man. He's just a frustrated little guy who can't drink. He never served any time and he never will."
- ^ “Thomas Morehead (1836-1913) - Find A Grave...”. www.findagrave.com. 2021年2月16日閲覧。
- ^ a b Hauser, p. 18
- ^ “Archived copy”. September 27, 2007時点のオリジナルよりアーカイブ。July 28, 2007閲覧。
- ^ Hauser, Thomas. Muhammad Ali: His Life and Times
- ^ a b “Ali's Mother Is Dead at 77”. Associated Press in New York Times. (August 23, 1994) 2009年9月3日閲覧. "Odessa Lee Grady Clay, mother of the three-time heavyweight champion Muhammad Ali, died Sunday at the Hurstbourne Health Center, a nursing home. She was 77 and had been disabled by a stroke since February, according to John Ramsey, a family friend. ..."
- ^ “Archived copy”. June 29, 2007時点のオリジナルよりアーカイブ。July 19, 2007閲覧。
- ^ “Odessa Lee Grady Clay, 77, mother of boxing legend Muhammad Ali, dies”. Johnson Publishing. (September 12, 1994) 2009年9月4日閲覧. "Odessa Lee Grady Clay, 77, mother of three-time heavyweight champ Muhammad Ali, died recently of heart failure at a nursing home in the Louisville, KY, area. Mrs. Clay had been disabled by a stroke since February, according to family friend John Ramsey."
- ^ Entry for Odessa Clay's grave, in Findagrave website (2019). https://www.findagrave.com/memorial/81894995/odessa-lee-clay
- ^ “Odessa Clay”. The Internet Movie Database. 2009年9月4日閲覧。
- ^ “Ali (2001)”. The Internet Movie Database. 2009年9月4日閲覧。
参考文献
[編集]- Hauser, Thomas. Muhammad Ali and Company, pp. 18–19, Hastingshouse/Daytrips Publishing (1998) ISBN 0-8038-9411-2