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カンブリア (イングランド)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カンブリア
地理
様態 典礼および非都市カウンティ
起源1974年
リージョン イングランド北西部
面積
総面積
行政区画
3 位
6,768 km2 (2,613 sq mi)
2 位
カウンシル所在地カーライル
ISO 3166-2GB-CMA
ONSコード 16
NUTS 3 UKD11/12
人口統計
人口
総人口 (2018年中期推計値)
人口密度
行政区分
登録人口
41位
498,888
74/km2 (190/sq mi)
26位
498,888
民族構成 96.7% イギリス系白人
1.7% その他の白人
0.6% アジア系
0.5% 混血
0.2% 中国系
0.2% アフロ・カリブ系
0.1% その他
政治
カウンティカウンシルなし
国会議員
ディストリクト
  1. カンバーランド英語版単一自治体
  2. ウェストモーランド・アンド・ファーネス英語版(単一自治体)

カンブリア (Cumbria) はイングランド北西端のカウンティ。1974年に当時のカンバーランドウェストモーランドWestmorland)に加え、ランカシャーヨークシャーのそれぞれ一部が合併して誕生した。古くはケルト系のカンブリア人ウェールズ人に近い)が住み、カンブリア語が話されていた。湖水地方をはじめとした豊かな自然で有名。

歴史

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新石器時代のカストルリッグ・ストーンサークル

新石器時代、この地域には石斧の一大生産地(いわゆるラングデールの石斧工場)があった。カンブリアでつくられた石斧は、グレートブリテン島各地で発見されている[1]。また、ストーンサークルストーンヘンジが各地でつくられ、今日でもカンブリアはイングランドで最もそうしたフィールドモニュメントの遺跡が多い地方のひとつとなっている[2]

紀元43年のローマ帝国によるブリタニア侵攻では征服されなかったが、当初ローマと同盟を結んでいたブリガンテス族が紀元69年に反乱を起こすと[3]、今日のカンブリアの大部分はローマの版図となった。ローマは占領後、国際連合教育科学文化機関 (UNESCO) の世界文化遺産に登録されているハドリアヌスの長城をはじめとして、多くの要塞や防御設備を築いた[4]

中世初期にはブリトン人のレゲド王国の中心部であったと考えられてきたが、近年ギャロウェイ付近でこの通説と矛盾する発見があった[5]。その後、10世紀ごろまでブリトン人のストラスクライド王国やアングル人ノーサンブリア王国など、複数の勢力がカンブリアをめぐって争いを繰り広げた。ノルマン・コンクエストのあった1066年には、今日のカンブリアの大部分はスコットランド王国の公領であった。そのため、1086年のドゥームズデイ・ブックの検地では対象から除外されたが、1092年にウィリアム2世により征服され、イングランド領となった[6]。しかし、その後も中世後期から近世初期にかけてイングランド・スコットランド戦争がうち続き、ボーダー・リーバーズと呼ばれる無法者がこの地域を荒らし回った[7]カーライルはイングランドとスコットランドの戦争中、少なくとも3回包囲され、ジャコバイトの反乱ではさらに2回包囲された。

18世紀にジャコバイトの乱が収束して以降、情勢は安定し、イングランド北部のほかの地域と同様、産業革命で都市人口が急激に膨張した。ワーキントン、マイロム、バーロウ=イン=ファーネスといった西海岸の町では鉄鋼業が発展し、バーロウではそれに加えて造船業も急速に成長した[8]ケンダルケズィック、カーライルでも製造業が発展し、織物、鉛筆、ビスケットなどを産した。19世紀初頭には、この地方の自然に暮らすウィリアム・ワーズワースサミュエル・テイラー・コールリッジ湖水詩人が有名になった。後年、同様にこの地方に暮らした児童文学作家のベアトリクス・ポターは大地主となり、死に際して遺産の大部分をナショナル・トラストに寄贈した。ナショナル・トラストの所有地の大部分は1951年、湖水地方国立公園に指定され、今日でもイングランド最大の国立公園として地域のアイデンティティと経済を支えている。

1957年には、イギリス史上最悪の原子力事故であるウィンズケール原子炉火災事故が発生した[9]

カンブリアは、下記の4つの歴史的カウンティからなる
  カンバーランド
  ウェストモーランド
  ランカシャー
  ウェスト・ライディング・オブ・ヨークシャー

典礼カウンティとしてのカンブリアは1974年に、カンバーランドとウェストモーランドの各行政カウンティとカンバーランド内のカーライル特別市、「ランカシャー・ノース・オブ・ザ・サンズ」と通称されるバーロウ=イン=ファーネス特別市を含むランカシャーのファーネス地域の北ロンズデール、それにウェスト・ライディング・オブ・ヨークシャーのセドバーグ村をもって発足した[10]。それ以降、カンブリア州議会(カウンティ・カウンシル)が行政を担ってきたが、2023年に州議会は廃止され、ふたつの単一自治体(カンバーランドとウェストモーランド・アンド・ファーネス)の議会がこれに取って代わった。

地理

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カンブリアの地形図

カンブリアはイングランドで最も北西にあるカウンティである。

カンブリアの北端と西端はそれぞれデッドウォーター英語版南ウェルニー島英語版のちょうど西である。カークビー・スティーブン英語版(タンヒル英語版の近く)とセント・ビーズ・ヘッド英語版はそれぞれカウンティの東端と西端である。978メートル (3,209 ft)のスカーフェル・パイク英語版はイングランド及びカンブリアの最高地点である。ウィンダミア湖はイングランドで最大の天然湖である。ランカスター運河英語版はプレストンから南カンブリアまでの間を通り、現在でも一部が使用されている。かつてモーカム湾英語版まで通じていたウルバーストン運河英語版は一度1945年に閉鎖されたものの現在でも維持されている。

境界

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カンブリアはイングランドのカウンティであるノーサンバーランドダラムノース・ヨークシャーランカシャーそしてスコットランドのカウンティであるダンフリーズ・アンド・ガロウェイスコティッシュ・ボーダーズと境界を接する。

境界線は西はアイルランド海からモーカム湾英語版に、東はペナイン山脈に沿っている。カンブリア北部の境界線はソルウェイ平原英語版からソルウェー湾へとスコットランドからノーサンバーランドの境界に沿って東に延びる。

行政

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カンバーランド英語版ウェストモーランド・アンド・ファーネス英語版のふたつの単一自治体からなる。かつてはシティ・オブ・カーライルイーデン英語版アラーデール英語版コープランド英語版サウス・レイクランド英語版バロー=イン=ファーネスの6つのディストリクトから構成されていたが、2023年に再編された[11]。ディストリクトから単一自治体への再編は2007年1月にカンブリア州議会が発議したものの、当時のコミュニティ・地方自治省に却下された経緯があり[12]、約15年越しに実現した形となった。

経済

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バーロウ=イン=ファーネスのBAEシステムズ・サブマリンズ[13]

カンブリア最大の雇用主はカウンティ・カウンシルで、1万7000人ほどの職員がいる。民間企業ではバーロウのBAEシステムズが1万2000人ほどと最も多く、新たな契約によって今後さらに雇用が増加することが期待されている。セラフィールドには1万人の労働者が勤めている[14]

交通

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グレイリッグの森近くを並走するM6高速道路と西海岸本線

道路

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M6がカンブリアを通過する唯一の高速道路である。この高速道路はケンダルやペンリスを経て、カーライルの北のスコットランドとの境界でA74 (M) に接続する。そのほかの主要道路は下記の通り。

バス会社はステージコーチ・ノースウェストが最大手で、バーロウ=イン=ファーネスやカーライル、ケンダル、ワーキントンで路線を運行している。州南部のバーロウ=イン=ファーネスとケンダルを結ぶX6線が主要路線である。

空港

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カーライル湖水地方空港とバーロウ/ウォルニー・アイランド空港のふたつの空港がある。両空港とも、国内および欧州地域からのフライトに対応するため、拡張や改修の計画が持ち上がっている。近隣の国際空港としては、南部はブラックプール空港、マンチェスター空港リバプール・ジョン・レノン空港、ティーズサイド国際空港、北部はニューカッスル国際空港、グラスゴー・プレストウィック空港、グラスゴー国際空港がある。

船舶

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バーロウ=イン=ファーネスは国内有数の造船の街であるが、バーロウ港自体は小規模で、アラーデールのサイロス港と並びアソシエーテッド・ブリティッシュ・ポーツが運営している。カンブリア沿岸にフェリー航路はない。

鉄道

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カーライル駅、バーロウ=イン=ファーネス駅、ペンリス駅、オクセンホルム湖水地方駅が主要駅として挙げられる。西海岸本線が、高速道路のM6と並行して州内を通っている。バーロウ=イン=ファーネスとカーライルを結ぶカンブリア沿岸線は、州西部の主要路線である。そのほかの路線としてウィンダミア支線、ファーネス線、セトル=カーライル線がある。

観光

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年間4700万人の観光客が訪れるカンブリアでは、観光業が最大の産業となっている[15]湖水地方国立公園のみでも、毎年1580万人ほどを受け入れている[16]。これに対して、湖水地方の人口は5万人にも満たず、そのほとんどがアンブルサイド、ボウネス=オン=ウィンダミア、コニストン、ケズィック、ゴスフォース、グラスミア、ウィンダミアに集中している[16]

州内では3万6000人以上が観光業に従事し、年間11億ポンドを生み出している。2009年に人気だった州内の観光地上位20地点は下記の通り(ファーネス修道院、レイクス・アクアリウム、サウス・レイクス・サファリ動物園など、調査対象から外れた観光地もある)[17]

順位 観光地 所在地 訪問者数
1 ウィンダミア湖クルーズ ボウネス=オン=ウィンダミア 1,313,807
2 レゲド ペンリス 439,568
3 アルズウォーター・スチーマーズ グレンリッディング 348,000
4 ウィンラッター森林公園およびビジターセンター ウィンラッター 252,762
5 タリー・ハウス・ミュージアムおよびアート・ギャラリー カーライル 251,808
6 グライズデール森林公園およびビジターセンター グライズデール 175,033
7 カーライル大聖堂 カーライル 166,141
8 ブロックホール湖水地方ビジターセンター ウィンダミア 135,539
9 ヒル・トップ ホークスヘッド 103,682
10 サイザーフ城 サイザーフ城 90,063
11 ダーウェント鉛筆博物館 ケズィック 80,100
12 マンカスター城 レイブングラス 78,474
13 ドック・ミュージアム バーロウ=イン=ファーネス 73,239
14 ザ・ビーコン ホワイトヘブン 71,602
15 ホルカー・ホール カートメル 58,060
16 カーライル城 カーライル 56,957
17 ビアトリクス・ポター・ギャラリー ホークスヘッド 47,244
18 湖水地方野生生物保護区[18] バセンスウェイト 45,559
19 ザ・ホームズ・オブ・フットボール アンブルサイド 49,661
20 カートメル小修道院 カートメル 43,672

姉妹都市

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市町村 姉妹都市
カーライル ドイツの旗 ドイツ フレンスブルク
ポーランドの旗 ポーランドスウプスク
コッカーマス フランスの旗 フランス マルブジョル英語版
ダルトン=イン=ファーネス アメリカ合衆国の旗 アメリカ ドルトン (ペンシルベニア州)英語版
ケンダル アイルランドの旗 アイルランド キラーニー
ドイツの旗 ドイツ リンテルン
ペンリス オーストラリアの旗 オーストラリア ペンリス (ニューサウスウェールズ州)
セドバーグ スロベニアの旗 スロベニア ズレチェ
ウルバーストン フランスの旗 フランス アルベール (ソンム県)英語版
ホワイトヘイブン ブルガリアの旗 ブルガリア コズロドゥイ[19]
ウィンダミア ドイツの旗 ドイツ ディーセン・アム・アンマーゼー
ワーキントン ドイツの旗 ドイツ ゼルム
フランスの旗 フランス ヴァル=ド=ルイユ英語版

カウンティの象徴と紋章

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カンブリア州議会の紋章は1974年10月10日紋章院より与えられた。 紋章はその地域を代表し、新しい州議会の地域が置かれた。紋章である緑の枠の楯にはカンバーランドを代表するパルナッソスの花とランカシャー(ファーネス地区)の赤いバラ、そしてヨークシャー(ウェスト・ライディング英語版、現在はセドバーグ)の白いバラをあしらっている。紋章の頂上はウェストモーランド州議会とバロー州市の両方の紋章から採った雄羊の頭のてっぺんだったがカンバーランドのパルナッソスの花が再び描かれた。さらに伝説のDacre Bull (カンバーランド)とレッドドラゴン(Appleby in Westmorland英語版)が対になっている。この二つはハドリアヌスの長城(カンバーランド)を表す区画をベースに二つの赤い棒を(ウェスト・モーランドの紋章より)横切るように配置されている。 [20]

カンブリア州議会の標語("I shall lift up mine eyes unto the hills")は旧約聖書詩編121篇ラテン語"Ad Montes Oculos Levavi"に由来する。[20]

カンブリア州の州旗はカンブリア州議会のheraldic flag英語版である。[21]

脚注

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  1. ^ Castleden, Rodney (1992). Neolithic Britain: New Stone Age Sites of England, Scotland, and Wales. Routledge. ISBN 9780415058452. オリジナルの20 August 2018時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180820172803/https://books.google.co.uk/books?id=-wYOAAAAQAAJ&pg=PA60&dq=Langdale+axe+industry&redir_esc=y#v=onepage&q=Langdale%20axe%20industry&f=false 20 August 2018閲覧。 
  2. ^ Barrowclough (2010), p. 105.
  3. ^ Shotter (2014), p.5
  4. ^ Frontiers of the Roman Empire”. whc.unesco.org. UNESCO World Heritage Centre. 20 August 2018時点のオリジナルよりアーカイブ20 August 2018閲覧。
  5. ^ Ronan, Toolis (31 January 2017). The lost Dark Age kingdom of Rheged : the discovery of a royal stronghold at Trusty's Hill, Galloway. Bowles, Christopher R.. Oxford. ISBN 9781785703126. OCLC 967457029 
  6. ^ Sharpe, Richard (2006). Norman rule in Cumbria, 1092-1136. Cumberland and Westmorland Antiquarian and Archaeological Society. ISBN 978-1873124437. OCLC 122952827 
  7. ^ Tuck, J.A. (January 1986). “The Emergence of a Northern Nobility, 1250–1400”. Northern History 22 (1): 1–17. doi:10.1179/007817286790616516. ISSN 0078-172X. 
  8. ^ Gill, Jepson (15 November 2017). Barrow-in-Furness at Work : People and Industries Through the Years. Stroud: Amberley Publishing. ISBN 9781445670041. OCLC 1019605931 
  9. ^ Richard Black (18 March 2011). “Fukushima - disaster or distraction?”. BBC. オリジナルの11 April 2020時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20200411003052/https://www.bbc.co.uk/news/science-environment-12789749 23 August 2019閲覧。 
  10. ^ Local Government Act 1972”. www.legislation.gov.uk. 1 July 2018時点のオリジナルよりアーカイブ16 August 2018閲覧。
  11. ^ Next steps for new unitary councils in Cumbria, North Yorkshire and Somerset” (英語). GOV.UK. 1 January 2022閲覧。
  12. ^ County council votes to pursue a single council for Cumbria”. 24 February 2007閲覧。
  13. ^ BAE Workforce 2024
  14. ^ Cumbrian employers supporting staff after multiple shooting”. Personneltoday (3 June 2010). 24 December 2013時点のオリジナルよりアーカイブ15 July 2010閲覧。
  15. ^ Cumbria Tourism”. 2024年9月9日閲覧。
  16. ^ a b Lake District National Park”. Lake District National Park. 19 October 2013時点のオリジナルよりアーカイブ。16 July 2010閲覧。
  17. ^ Lake District National Park”. Cumbria Tourism. 2 August 2010時点のオリジナルよりアーカイブ16 July 2010閲覧。
  18. ^ About Us – Lake District Wildlife Park”. 15 March 2017時点のオリジナルよりアーカイブ14 March 2017閲覧。
  19. ^ http://www.kozloduy.bg/proekti/pobratimeni-gradove_en
  20. ^ a b Cumbria County Council (Civic Heraldry) accessed 24 January 2010
  21. ^ http://www.communities.gov.uk/news/corporate/1768083

関連項目

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ウェールズ語でウェールズを表す古名がラテン語化されて派生したCambriaとは異なる。

外部リンク

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