キビヒトリシズカ
キビヒトリシズカ | ||||||||||||||||||
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1. キビヒトリシズカ
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分類 | ||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||
Chloranthus fortunei (A.Gray) Solms (1869)[1][2] | ||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||
キビヒトリシズカ(吉備一人静、学名: Chloranthus fortunei)は、センリョウ科チャラン属に属する多年草の1種である。茎の先端付近にふつう4枚の葉が輪生状につき、中央から白いブラシ状の花序が1本伸びる(図1)。花は花被を欠き、3本の細長い雄しべの葯隔が白く目立つ。日本を含む東アジアに分布する。ヒトリシズカに類似するが、雄しべの葯隔がより長い。日本では初めに岡山県(吉備国)で発見されたため、「キビヒトリシズカ」の名がつけられた[4]。有毒であるが、中国では薬用に利用されることがある[4][5]。日本では絶滅危惧II類に指定されている(2020年現在)。
特徴
[編集]短い地下茎から、数本の茎が直立する多年草であり、高さ15–50センチメートル (cm)[4][6]。茎の下部3–4節には三角形の鱗片葉がつき、上部の2節 (ときに3節) に大型の葉が十字対生する[4][6] (下図2a)。大型の葉がつく節間はふつうごく狭いが、ときに 1–6 cm になる[6]。葉の葉柄は長さ 1–2.5 cm、葉身は広楕円形から卵状楕円形、5–13 × 2.5–8 cm、薄く表裏とも無毛、先端は短く尖り、基部は鋭形、葉縁には鋭い鋸歯がある[4][6] (下図2a)。葉脈は羽状、側脈は4–6対[4]。
花期は4–5月、密に花をつけた1本の穂状花序が頂生する[4][6] (上図2a)。花序の長さは花期には約 2 cm、果期には伸長して約 3 cm になる[4][6]。花は香気があり、両性、花被を欠き、苞は倒卵形で幅2.5–3ミリメートル (mm)、長さ 1.5 mm、深く3裂している[4][6]。雌しべの子房の背側 (背軸側) に雄しべがついている。雄しべは白色、3個が基部で合着し (1個の雄しべが3裂したともされる[7])、3本の葯隔が糸状に伸びている (長さ 8–12 mm)[4][6] (上図2a)。中央の葯隔の内側には2個の黄色の葯があり、左右の葯隔の基部内側にそれぞれ1個の葯がある[4][6]。雌しべの子房は長さ約 1 mm[6]。果期は5–6月、果実は淡緑色、倒卵状球形、長さ 3 mm[4][6]。染色体数は 2n = 30, 60[5]。
ヒトリシズカ (上図2b) は本種に類似するが、葉に光沢があり葉先が急に狭まり細く尖る傾向があること、苞の先端が平らか浅く2–3裂すること、雄しべの葯隔長が 3–5 mm と短いこと、ふつう中央の1対の葯を欠き左右外側に1個ずつの葯しかないことで区別できる[4][6][8]。
分布と生育環境
[編集]日本 (瀬戸内海沿岸から九州北部)、朝鮮半島南部、中国中部に分布する[4][6]。山野の林内に生える[6]。
保全状況評価
[編集]絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)
日本では生育環境の減少や園芸目的の乱獲によって減少し[8]、絶滅危惧Ⅱ類に指定されている (2020年現在)[9]。また下記のように、個々の都道府県でも絶滅危惧種に指定されている。以下は2020年現在の各都道府県におけるレッドデータブックの統一カテゴリ名での危急度を示している[9]。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c “Chloranthus fortunei”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2021年8月14日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “キビヒトリシズカ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年4月4日閲覧。
- ^ a b GBIF Secretariat (2021年). “Chloranthus fortunei (A.Gray) Solms”. GBIF Backbone Taxonomy. 2022年4月4日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 大森雄治 (1999). “日本のドクダミ科・コショウ科・センリョウ科植物”. 横須賀市博物館研究報告 自然科学 46: 9-21. NAID 40003710131.
- ^ a b Flora of China Editorial Committee (2008年). “Chloranthus fortunei”. Flora of China. Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2021年8月15日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 米倉浩司 (2015). “センリョウ科”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 1. 平凡社. pp. 52–53. ISBN 978-4582535310
- ^ Kong, H. Z., Chen, Z. D. & Lu, A. M. (2002). “Phylogeny of Chloranthus (Chloranthaceae) based on nuclear ribosomal ITS and plastid trnL‐F sequence data”. American Journal of Botany 89 (6): 940-946. doi:10.3732/ajb.89.6.940.
- ^ a b “キビヒトリシズカ”. おかやまの植物事典. 重井薬用植物園. 2021年8月18日閲覧。
- ^ a b “キビヒトリシズカ”. 日本のレッドデータ 検索システム. 2021年8月18日閲覧。
外部リンク
[編集]- “キビヒトリシズカ”. 植物図鑑. 筑波実験植物園. 2021年8月18日閲覧。
- “キビヒトリシズカ”. おかやまの植物事典. 重井薬用植物園. 2021年8月18日閲覧。
- Flora of China Editorial Committee (2008年). “Chloranthus fortunei”. Flora of China. Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2021年8月17日閲覧。 (英語)
- “Chloranthus fortunei”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2021年8月17日閲覧。 (英語)