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クダゴンベ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クダゴンベ
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
: ゴンベ科 Cirrhitidae
: クダゴンベ属 Oxycirrhites
Bleeker, 1857
: クダゴンベ O. typus
学名
Oxycirrhites typus
Bleeker, 1857[2]
シノニム
  • Oxycirrhites morrisi Fowler, 1934
  • Oxycirrhites seftoni Böhlke & Briggs, 1953

[3]

和名
クダゴンベ
英名
Longnose hawkfish

クダゴンベ学名: Oxycirrhites typus)は、スズキ目ゴンベ科に属する海水魚。クダゴンベ属(Oxycirrhites)を構成する唯一の単型)である。最大でも全長13 cm程度にしかならない小型魚で、その和名の通り管状に長く伸びた口吻と、体側に入る赤い格子状の模様が特徴。インド太平洋に広く分布し、日本でも南日本を中心に散発的にみられる。観賞魚として流通することがある。

分類

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クダゴンベは、スズキ目ゴンベ科のクダゴンベ属Oxycirrhites に属する唯一の種である[3][4]

本種はオランダ魚類学者ピーター・ブリーカーによって1857年に初記載された。タイプ標本インドネシアアンボン島から得られたものである[3]。ブリーカーはこの時単型のクダゴンベ属Oxycirrhites を設立し、本種にOxycirrhites typus という学名を与えた[5]。このうち、属名のOxycirrhitesは、「尖った」を意味する"oxy "と、ゴンベ科のタイプ属であるイソゴンベ属の学名"Cirrhitus"の複合語で、本種が尖った口吻をもつゴンベ科魚類であることを表している。種小名typusは本種がクダゴンベ属のタイプ種であることを表している[6]。クダゴンベ属には本種の記載後少なくとも2種が記載されたが、そのいずれも現在では本種と同一種(シノニム)とされているため、同属は単型の状態が続いている[3]

標準和名の「クダゴンベ」は、本種の長い吻を管に見立てたものである[7]

形態

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クダゴンベ(シェッド水族館

本種は他の全てのゴンベ科魚類と、長いを持つことで区別できる。吻の長さは頭部の全長のほぼ二倍に相当する。両顎の犬歯は均一な大きさで、内側にある絨毛状歯と比べて僅かに大きい程度である[8]。最大でも全長13 cm程度の小型魚である。背鰭は10棘条13軟条をもち、臀鰭は3棘条7軟条をもつ[9]。ゴンベ科の他種と同様、背鰭の棘部には数本の糸状皮弁がみられる[10][11] 体色は白を基調とし、赤色の縦帯と横帯が格子状に交差した模様がみられる[12]。一見派手に見えるこの模様は、枝サンゴの間に隠れる際に保護色としてはたらいていると考えられる[7]

分布

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本種はインド太平洋に広く分布する。インド洋での本種の生息域は紅海から南へアフリカ東岸をモザンビーク北部やマダガスカルまで広がる。生息域はさらに東へ太平洋へと広がり、東はハワイ諸島仏領ポリネシアソシエテ諸島、北は日本、南はオーストラリアまで達する[1]

日本においては房総半島から琉球列島にかけた南日本の太平洋沿岸で散発的にみられるほか、伊豆諸島小笠原諸島でもみられる[4][13]

水深10-100 mの海域で、ウミトサカ類やヤギ類などの群体上に生息する[1][4]

生態

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本種は底生あるいは浮遊性の小型甲殻類を主に捕食する。小型の魚を捕食するところも観察されたことがある。生息域全域で個体数はそれほど多くなく、各個体が縄張りを持って行動する[9][13]。ウミトサカ類やヤギ類の群体の周りを活発に遊泳するが、ダイバーが近づくとすぐに枝の間に隠れてしまう。ゴンベ科魚類には性転換を行なうものが多くいるが、本種が性転換を行うかについては不明である[11]

人間との関係

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本種は観賞魚として人気があり、野生下で捕獲された個体が流通する[14]

ギャラリー

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出典

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  1. ^ a b c Greenfield, D. & Williams, I. 2016. Longnose Hawkfish (errata version published in 2017). The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T67997854A115453267. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-1.RLTS.T67997854A68001711.en. Downloaded on 24 October 2021.
  2. ^ Bailly, Nicolas (2015). "Oxycirrhites typus Bleeker, 1857". World Register of Marine Species. 2021年10月24日閲覧
  3. ^ a b c d Eschmeyer, William N.; Fricke, Ron & van der Laan, Richard (eds.). "Species in the genus Oxycirrhites". Catalog of Fishes. California Academy of Sciences. Retrieved 20 July 2021.
  4. ^ a b c 『小学館の図鑑Z 日本魚類館』中坊徹次 監修、小学館、2018年、309頁。ISBN 9784092083110 
  5. ^ Eschmeyer, William N.; Fricke, Ron & van der Laan, Richard (eds.). "Genera in the family Cirrhitidae". Catalog of Fishes. California Academy of Sciences. Retrieved 20 July 2021.
  6. ^ Order CENTRARCHIFORMES: Families CENTRARCHIDAE, ELASSOMATIDAE, ENOPLOSIDAE, SINIPERCIDAE, APLODACTYLIDAE, CHEILODACTYLIDAE, CHIRONEMIDAE, CIRRHITIDAE, LATRIDAE, PERCICHTHYIDAE, DICHISTIIDAE, GIRELLIDAE, KUHLIIDAE, KYPHOSIDAE, OPLEGNATHIDAE, TERAPONTIDAE, MICROCANTHIDAE and SCORPIDIDAE”. The ETYFish Project Fish Name Etymology Database. Christopher Scharpf and Kenneth J. Lazara (25 February 2021). 20 July 2021閲覧。
  7. ^ a b クダゴンベ”. いきもの図鑑. DMMかりゆし水族館. 2021年11月18日閲覧。
  8. ^ Gaither, Michelle & Randall, John (2012). “On the validity of the cirrhitid fish genus Itycirrhitus”. aqua, International Journal of Ichthyology 18: 219-226. https://aqua-aquapress.com/on-the-validity-of-the-cirrhitid-fish-genus-itycirrhitus/. 
  9. ^ a b Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2021). "Oxycirrhites typus" in FishBase. June 2021 version.
  10. ^ Mark McGrouther (30 March 2021). “Longnose Hawkfish, Oxycirrhites typus Bleeker, 1857”. Australian Museum. 20 July 2021閲覧。
  11. ^ a b 片山英里 (2005年6月). “クダゴンベ Oxycirrhites typus Bleeker, 1857 (スズキ目ゴンベ科)”. 高知大学理工学部生物科学科 海洋生物学研究室. 2021年11月17日閲覧。
  12. ^ Oxycirrhites typus”. Reef Life Survey. 20 July 2021閲覧。
  13. ^ a b 『日本の海水魚』瀬能宏 監修、山と渓谷社、2008年、254頁。ISBN 4635070255 
  14. ^ Longnose Hawkfish”. Saltcorner. Bob Goemans. 20 July 2021閲覧。