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クテノカスマ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クテノカスマ
生息年代: ジュラ紀後期, 150–145 Ma
C. elegans の若年個体化石
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
: 翼竜目 Pterosauria
亜目 : 翼指竜亜目 Pterodactyloidea
: クテノカスマ科 Ctenochasmatidae
亜科 : クテノカスマ亜科 Ctenochasmatinae
: クテノカスマ属 Ctenochasma
学名
Ctenochasma
Meyer1852
タイプ種
Ctenochasma roemeri
Meyer1852
シノニム
  • C. roemeri Meyer, 1852
  • C. elegans (Wagner, 1861)
  • C. taqueti Bennett, 2007

クテノカスマ (Ctenochasma 「櫛の顎[1]」) は翼指竜亜目に属するジュラ紀後期産の翼竜の属。現在のところ、C. roemeri C. taquetiC. elegans の3種が認められている。彼らの化石は、ドイツバイエルン州ゾルンホーフェン石灰岩・ドイツ北西部のPurbeck 層群フランス東部のCalcaires tâchetés層から発見されている。属名のクテノカスマはギリシア語κτείς/kteis「櫛」(属格κτενός/ktenos「櫛の」)・χάσμα/chasma「口」から名付けられている。

記載

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亜成体の C. elegans の頭骨化石

クテノカスマは細長く伸びた口先に沿って並ぶ、非常に多数(成体で260本以上)の細くて長くて湾曲して密に並んだ歯で特徴づけられる。これらの歯は口縁に櫛状に非常に密に並び、成体では上下顎の外部に飛び出して籠のような形状を構成している。これまでのところこれは小型無脊椎動物を捕食するためにその歯を用いて水を漉す濾過食性の生活を営んでいたと考えられている。ただし、近縁のプテロダウストロとは異なり、水を出し入れする機構は備えていなかった。その代わり、歯牙によって形成される輪郭は上下顎の増大した表面積によって小動物をとらえるヘラサギのような生態を想起させている[2]。口先は少し上に反っており先端は丸く、歯の生えているのは顎の前半部に限られている[3]

最大の標本では翼開長は少なくとも1.2mにもなる[1]一方、最小の種であるCtenochasma elegans は翼開長がわずか25cmしかない。成体のクテノカスマは頭骨に沿って骨質のトサカがあったが、若年個体には存在しない[4]

Ctenochasma elegansCtenochasma taqueti の両者と現生の鳥類・爬虫類の強膜輪を比較することによってこの分類群が夜行性であり、現生の夜行性海鳥類と似たような行動様式を持っていた可能性が示唆されている。これはまた、昼行性と見なされているプテロダクティルススカフォグナトゥスのような同時代の翼竜とのニッチ分化を示している可能性がある[5]

他のクテノカスマ科翼竜と比べても大きな翼を持っており、現生のトウゾクカモメ類のような飛び方をしていたのかもしれない[2]

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C. elegans の若年個体標本

Ctenochasma という属名は、ドイツの古生物学者ヘルマン・フォン・マイヤーによって1852年に密に並んだ歯が生えた一本の下顎を元に命名され、種名はF. A. レーマー (Friedrich Adolph Roemer) への献名としてCtenochasma roemeri とされた[6]。第2の種であるC. gracile はアルベルト・オッペル (Albert Oppel) によって1862年に不完全な頭蓋骨に対して命名された[7]。この標本は元々マクシミリアン2世が国立ミュンヘンコレクションのために医師ハエバーラインの収集物から1857年に購入したものである[1]。しかしその1年前、同じ種に属すると思われるより完全な標本がWagnerによってPterodactylus elegans として記載・命名されていた。種小名elegans は種小名gracile より先に命名されていたために、この種は現在Ctenochasma elegans として知られている。これとは別の標本も小型または幼年個体のプテロダクティルスと考えられてPterodactylus brevirostris と(これは世界で二番目に名前が付けられた翼竜で、その後独自の属であるPtenodracon に分類された)名付けられたが、おそらく実際には幼体のクテノカスマである[8]。さらに付け加えられた種はアイヒシュテット産のC. porocristata で Paul de Buisonjé によって1981年に命名された。ただしこの種は主に鼻先に沿うトサカの存在をもって独立種であるとされているが、この鼻先のトサカというものは種によって異なる物ではなく、むしろ成長段階や性と関連した特徴であることが示されている[4]

クテノカスマの4番目の種はフィリップ・タケ (Philippe Taquet) によって1972年に初めて記載(ただし未命名)された[9]。唯一の標本は完全な脳函を残した頭骨の一部で、フランスで発見されサン=ディジエ博物館 (Saint-Dizier Museum) に収蔵されていた。他のクテノカスマ標本との詳細な比較が行われた結果、2004年に新種であると断定された[3]。この標本に対するタケの貢献から2007年にクリストファー・ベネット (Christopher Bennett) はこの種にC. taqueti と命名した[10]

分類

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C. elegans の若年個体標本
Jaime Headdenによる骨格復元図

以下のクラドグラムはAndres, Clark & Xu (2014) に基づく[11]

 Ctenochasmatidae 
 Gnathosaurinae 

Kepodactylus insperatus

Elanodactylus prolatus

Feilongus youngi

Moganopterus zhuiana

Huanhepterus quingyangensis

Plataleorhynchus streptophorodon

Gnathosaurus subulatus

Gnathosaurus macrurus

 Ctenochasmatinae 

Ctenochasma

Pterodaustro guinazui

Eosipterus yangi

Beipiaopterus chenianus

Gegepterus changi

出典

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  1. ^ a b c ペーター・ヴェルンホファー 『動物大百科別巻2 翼竜』 平凡社 1993 ISBN 4-582-54522-X pp. 105-107
  2. ^ a b Wilton, Mark P. (2013). Pterosaurs: Natural History, Evolution, Anatomy. Princeton University Press. ISBN 0691150613 
  3. ^ a b Jouve, S. (2004). “Description of the skull of a Ctenochasma (Pterosauria) from the latest Jurassic of eastern France, with a taxonomic revision of European Tithonian Pterodactyloidea”. Journal of Vertebrate Paleontology 24 (3): 542–554. doi:10.1671/0272-4634(2004)024[0542:dotsoa]2.0.co;2. 
  4. ^ a b Bennett, S.C. (1996). “Year-classes of pterosaurs from the Solnhofen Limestone of Germany: Taxonomic and Systematic Implications”. Journal of Vertebrate Paleontology 16 (3): 432–444. doi:10.1080/02724634.1996.10011332. 
  5. ^ Schmitz, L.; Motani, R. (2011). “Nocturnality in Dinosaurs Inferred from Scleral Ring and Orbit Morphology”. Science 332 (6030): 705–8. doi:10.1126/science.1200043. PMID 21493820. 
  6. ^ von Meyer, C.E.H. (1852). "Ctenochasma Roemeri." Paläontographica, 2: 82–84 & pl. 13.
  7. ^ Oppel A. (1862). "Über Fährten im lithographischen Schiefer. Paläontologische Mitteilungen aus dem Museum des Koenigl." Bayrischen Staates, ed. A. Oppel, vol. 1, pp. 121–125 & pl. 39. Stuttgart: Ebner & Sembek.
  8. ^ Bennett, S. Christopher (2013). “New information on body size and cranial display structures of Pterodactylus antiquus, with a revision of the genus”. Paläontologische Zeitschrift in press: 269–289. doi:10.1007/s12542-012-0159-8. 
  9. ^ Taquet, P. (1972). “Un crane de Ctenochasma (Pterodactyloidea) du Portlandien infe rieur de la Haute-Marne, dans les collections du Musee de St-Dizier”. Comptes Rendus de l’Academie des Sciences 174: 362–364. 
  10. ^ Bennett, S.C. (2007). “A review of the pterosaur Ctenochasma: taxonomy and ontogeny”. Neues Jahrbuch für Geologie und Paläontologie - Abhandlungen 245 (1): 23–31. doi:10.1127/0077-7749/2007/0245-0023. 
  11. ^ Andres, B.; Clark, J.; Xu, X. (2014). “The Earliest Pterodactyloid and the Origin of the Group”. Current Biology 24: 1011–6. doi:10.1016/j.cub.2014.03.030. PMID 24768054. 

関連項目

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