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クレトキシリナ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クレトキシリナ
生息年代: 白亜紀, Albian–Campanian
[1][2]
クラオサウルスの死体の周りを泳ぐクレトキシリナ(手前)。奥はスクアリコラックス
保全状況評価
絶滅(化石
地質時代
前期白亜紀アルビアン - 後期白亜紀カンパニアン
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 軟骨魚綱 Chondrichthyes
亜綱 : 板鰓亜綱 Elasmobranchii
: ネズミザメ目 Lamniformes
: クレトキシリナ科 Cretoxyrhinidae
: クレトキシリナ属 Cretoxyrhina
Glikman, 1958
シノニム
  • Isurus denticulatus Glikman, 1964
  • Isurus mantelli Agassiz, 1843
  • Pseudoisurus mantelli Zhelezko, 2000
  • Pseudoisurus vraconensis Zhelezko, 2000
  • Oxyrhina mantelli Agassiz, 1843
下位分類群
  • C. mantelli Agassiz, 1843 (模式種)
  • C. denticulata Glikman, 1957
  • C. vraconensis Zhelezko, 2000

クレトキシリナ学名 Cretoxyrhina)は、前期白亜紀アルビアンから後期白亜紀カンパニアンまで生息していたサメ。鋭い歯がギンス社製のナイフと類似することから、タイプ種であるS. mantelliは俗にギンスシャークとも呼称される。本属の最大推定全長は7メートルに達する[3]

クレトキシリナの化石は世界中で発見され、特に北アメリカの当時の西部内陸海路で発見される頻度が高い[4]。絶滅したサメとしては最も理解が進んでいるものの1つであり、保存状態の良い化石が複数発見されている。形態学的特徴や生態的地位は現代のホオジロザメと類似している[3]

学名

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学名は「白亜紀の鋭い吻部」を意味するが、クレトキシリナの吻部は実際にはそこまで鋭くはないとされている[5]S. mantelliイグアノドンを発見したことで知られるイギリスの古生物学者ギデオン・マンテルにちなんだ種小名を与えられている。S. denticulataは「小さな歯を持つ」という意味の種小名を与えられており、これは同種の歯の大半に咬頭と呼ばれる突起が見られたことに由来する。Vraconensisは地名ヴラコンにちなんでいる。

系統発生と進化

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体格・骨格・生態的地位の点でクレトキシリナはホオジロザメと類似しているが、両者は近縁ではなく、これは単なる収斂進化の結果とされている[3]。2005年の分子遺伝学による系統発生解析では、クレトキシリナが現代のオナガザメと同種である可能性が指摘された。しかしクレトキシリナの遺伝子コードが完全なものではないことから結果が不確定であり、結論を下すには早いとして、同研究ではクレトキシリナをクレトキシリナ科に残留させることが推奨された[6]

2014年に提唱された新たな進化モデルでは、S. mantelliイスルスの種であり、前期白亜紀のアプチアンから始まったイスルスの系統の広がりの一部であることが示唆された。このモデルにおいてイスルスはS. appendiculatusを起源とし、セノマニアンの初期にS. mantelliに進化し、暁新世でS. schoutedentiS. praecursorへ進化した。この研究ではカンパニアン以降でS. mantelliの化石が発見されていないのは絶滅したためではなく単に化石記録がまだ見つかっていないだけであるとしている[7]が、他の古生物学者からは否定されている。

形態

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クレトキシリナは先述のように理解が進んでいる古代ザメの1つであり、保存状態の良い標本から詳細な形態が判明している。

最大7センチメートルに達する湾曲した歯が発見されており[8]、滑らかな縁を持ち厚いエナメル層に覆われていた。クレトキシリナの顎には7列の歯列が存在し、上顎には1列ごとに34本、下顎には1列ごとに36本の歯が並んでいた[9]

S. mantelliは最大7メートルに達し[3]、これは一般的なホオジロザメの全長を超過している。

生態

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復元図

クレトキシリナは当時における最大のサメであった。小型のモササウルス(モササウルス類[10])、エラスモサウルス(プレシオサウルス類[11])、小型のシファクテヌス(硬骨魚類[12])、アーケロン(プロトステガ科のカメ[4])など様々な海洋生物を捕食していたことが化石記録から判明している。天敵としては同時期に生息していたティロサウルスをはじめとした大型のモササウルス類があり、彼らに襲われたと思われる化石が発見されている。

絶滅した年代は約8000万年前であり、白亜紀末の大絶滅期を待たず絶滅している。

発見

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1843年に初めてスイスの自然愛好家ルイス・アガシズによって後にS. mantelliと命名される化石が同定された。最も完全な骨格は1890年にチャールズ・H・スターンバーグが発見し、1907年に発表された。この標本はほぼ完全に連続した脊柱と250本の歯が含まれていたが、サメの骨格は軟骨で構成されているため化石化しにくく、このように保存されることは非常に希である。カンザス州ゴーヴ郡ハックベリークリークから発掘されたこの標本は全長6.1メートルのサメと推定され、チャールズによりOxyrhina mantelliと命名された[9]

後に他の標本が発見された。1891年にジョージ・スタンバーグが発見した標本はミュンヘンの博物館に保管され、全長6.1メートルと報告された。この標本は第2次世界大戦においてミュンヘン爆撃で破壊された[9]

出典

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  1. ^ Kenshu Shimada (1997). “Stratigraphic Record of the Late Cretaceous Lamniform Shark, Cretoxyrhina mantelli (Agassiz), in Kansas”. Kansas Academy of Science. https://www.jstor.org/stable/3628002. 
  2. ^ Mikael Siverson and Johan Lindgren (2005). “Late Cretaceous sharks Cretoxyrhina and Cardabiodon from Montana, USA”. Acta Palaeontologica Polonica. http://agro.icm.edu.pl/agro/element/bwmeta1.element.agro-article-0b20e8d2-ca70-4067-beeb-c2fb4e01592d/c/app50-301.pdf. 
  3. ^ a b c d Kenshu Shimada (2008). [21:OPALHS2.0.CO;2, “ONTOGENETIC PARAMETERS AND LIFE HISTORY STRATEGIES OF THE LATE CRETACEOUS LAMNIFORM SHARK, CRETOXYRHINA MANTELLI, BASED ON VERTEBRAL GROWTH INCREMENTS”]. Journal of Vertebrate Paleontology. https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1671/0272-4634(2008)28[21:OPALHS]2.0.CO;2,. 
  4. ^ a b Shimada, Kenshu; Hooks, G. E. (2004). “SHARK-BITTEN PROTOSTEGID TURTLES from the UPPER CRETACEOUS MOOREVILLE CHALK, ALABAMA”. Journal of Paleontology. http://findarticles.com/p/articles/mi_qa3790/is_200401/ai_n9368107/ 2009年10月2日閲覧。. 
  5. ^ Kenshu Shimada (1997). “Skeletal Anatomy of the Late Cretaceous Lamniform Shark, Cretoxyrhina mantelli, from the Niobrara Chalk in Kansas”. Journal of Vertebrate Paleontology. https://www.jstor.org/stable/4523854. 
  6. ^ Kenshu Shimada (2005). “Phylogeny of lamniform sharks (Chondrichthyes: Elasmobranchii) and the contribution of dental characters to lamniform systematics”. Paleontological Research. https://doi.org/10.2517/prpsj.9.55. 
  7. ^ C. G. Diedrich (2014). “Skeleton of the Fossil Shark Isurus denticulatus from the Turonian (Late Cretaceous) of Germany—Ecological Coevolution with Prey of Mackerel Sharks”. Paleontology Journal. https://doi.org/10.1155/2014/934235. 
  8. ^ Everhart, Mike. “Large Sharks in the Western Interior Sea”. 1 August 2018閲覧。
  9. ^ a b c Everhart, Mike. “A giant Ginsu shark (Cretoxyrhina mantelli Agassiz) From Late Cretaceous Chalk of Kansas”. 1 August 2018閲覧。
  10. ^ Rothschild, B. M. (2005). “Sharks eating mosasaurs, dead or alive?”. Netherlands Journal of Geosciences 21 (4): 335–340. http://www.njgonline.nl/publish/articles/000268/article.pdf 2009年10月2日閲覧。. 
  11. ^ Everhart, M. J. (2005). “Bite marks on an elasmosaur (Sauropterygia; Plesiosauria) paddle from the Niobrara Chalk (Upper Cretaceous) as probable evidence of feeding by the lamniform shark, Cretoxyrhina mantelli”. PalArch's Journal of Vertebrate Paleontology. http://www.palarch.nl/wp-content/everhart_mj_bite_marks_on_an_elasmosaur_sauropterygia_plesiosauria_paddle_from_the_niobrara_chalk_upper_cretaceous_as_probable_evidence_of_feeding_by_the_lamniform_shark_cretoxyrhina_mantelli_palarchs.pdf 2009年10月2日閲覧。. 
  12. ^ Shimada, Kenshu (1997). “Paleoecological relationships of the Late Cretaceous lamniform shark, Cretoxyrhina mantelli (Agassiz)”. Journal of Paleontology. http://findarticles.com/p/articles/mi_qa3790/is_199709/ai_n8760035/pg_5/?tag=content;col1 2009年10月2日閲覧。.