クロウミツバメ
クロウミツバメ | |||||||||||||||||||||||||||
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保全状況評価[1] | |||||||||||||||||||||||||||
VULNERABLE (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | |||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Hydrobates matsudairae Kuroda, 1922 | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
クロウミツバメ | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Matsudaira's strom petrel |
クロウミツバメ(黒海燕、学名Hydrobates matsudairae)は、ミズナギドリ目ウミツバメ科オーストンウミツバメ属に分類される鳥。
分布
[編集]日本(南硫黄島)で繁殖し、非繁殖期はケニア沖やフィリピン沖へ南下する。2009年現在、繁殖地は南硫黄島しか確認されていない。
形態
[編集]全長22.5-25cm。翼開張56cm。尾羽はアルファベットの「V」字状で、やや深い切れこみが入る。全身は黒褐色の羽毛で覆われる。翼は長く幅広い。大雨覆は淡褐色で、飛翔時には逆「ハ」字状の斑紋(翼帯)に見える。初列風切の羽軸は白い。
嘴や後肢の色彩は黒い。
分類
[編集]本種は以前はウミツバメ属(Oceanodroma)に分類されていたが、近年の研究成果に基づき[2][3][4] 現在はオーストンウミツバメ属(Hydrobates)に分類されている。[5]
生態
[編集]海洋に生息する。翼を水平に広げ、羽ばたきと滑翔を交えながら飛翔する。
食性は動物食で、魚類、甲殻類、軟体動物などを食べる。水面付近を飛翔しながら獲物を捕食する。
繁殖形態は卵生。3-4月に地面に掘った穴に1回に1個の卵を産む。
南硫黄島での繁殖状況
[編集]現在クロウミツバメの繁殖が確認されているのは全世界で南硫黄島のみである。南硫黄島では1982年6月の調査時に繁殖が初めて確認された。この時の調査では、標高916メートルある南硫黄島の中で、標高約750メートル以上の樹林帯で巣穴が発見され、南硫黄島の標高が高い地域で繁殖しているものと考えられた[6]。
南硫黄島では2007年6月に再び総合調査が行われ、やはり標高約700メートル以上の樹林帯で繁殖していることが確認された。クロウミツバメは地面に穴を掘って営巣するため、土壌が発達している地域しか営巣することが出来ない。そのため島の周囲が海食崖による断崖絶壁になっているなど、土壌の発達が悪い南硫黄島の標高の低い地域では営巣せず、標高が高い地域で営巣しているものと考えられる。2007年の調査では推定数万つがいという数多くのクロウミツバメが南硫黄島で繁殖していることが確認されている[7][† 1]。
人間との関係
[編集]種小名matsudairaeや英名の頭に付いているMatsudaira'sは、本種の発見者であり鳥類標本の収集家であった明治時代の華族、松平頼孝子爵に献名されたものである。ウミツバメの仲間は凪の間、海面に浮いている生物などを採餌するが、彼はこの性質を利用し、伊豆諸島沖で船上から大量のイワシ油を撒いて人工的に凪の状態をつくり、採餌のため寄ってきた鳥たちを捕獲していて本種を発見した。
航行中の船舶の後方を追いかけて飛翔することもある。
ゴミの誤飲や海洋汚染などにより生息数の減少が懸念されている。第二次世界大戦前には北硫黄島でも繁殖が確認されていたが、その後繁殖が確認されていないため現在も繁殖しているかは不明。北硫黄島にはクマネズミが侵入してしまっているため卵や幼鳥が捕食され生息数が減少、もしくは繁殖地として壊滅したと考えられている[7]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 1982年の調査時は南硫黄島の標高約400メートルから750メートル付近はシロハラミズナギドリが繁殖し、750メートル以上ではクロウミツバメが繁殖を行うといった住み分けがされているとの調査結果であったが、川上ら(2008)によれば、2007年の調査時はシロハラミズナギドリは山頂部でも繁殖が確認されており、25年の間に南硫黄島ではシロハラミズナギドリの分布の拡大が起こった可能性と、体格がより大きいシロハラミズナギドリがクロウミツバメの繁殖を圧迫している可能性を指摘している。
出典
[編集]- ^ http://www.iucnredlist.org/details/22698548/0
- ^ Penhallurick, J., & Wink, M. (2004). Analysis of the taxonomy and nomenclature of the Procellariiformes based on complete nucleotide sequences of the mitochondrial cytochrome b gene. Emu - Austral Ornithology, 104(2), 125–147. https://doi.org/10.1071/MU01060
- ^ Bruce C. Robertson, Brent M. Stephenson, Sharyn J. Goldstien, When rediscovery is not enough: Taxonomic uncertainty hinders conservation of a critically endangered bird, Molecular Phylogenetics and Evolution, Volume 61, Issue 3, 2011, Pages 949-952, ISSN 1055-7903, https://doi.org/10.1016/j.ympev.2011.08.001.
- ^ S.J. Wallace, J.A. Morris-Pocock, J. González-Solís, P. Quillfeldt, V.L. Friesen, A phylogenetic test of sympatric speciation in the Hydrobatinae (Aves: Procellariiformes), Molecular Phylogenetics and Evolution, Volume 107, 2017, Pages 39-47, ISSN 1055-7903, https://doi.org/10.1016/j.ympev.2016.09.025.
- ^ Gill F, D Donsker & P Rasmussen (Eds). 2024. IOC World Bird List (v14.2). doi : 10.14344/IOC.ML.14.1.
- ^ 環境庁自然保護局(1983)pp.250-274
- ^ a b 川上ら(2008)
- ^ “【鳥類】環境省第4次レッドリスト(2012)<分類群順>” (PDF). 環境省 (2012年8月28日). 2012年9月9日閲覧。
参考文献
[編集]- 環境庁自然保護局編(1983)『南硫黄島の自然』日本野生生物研究センター
- 『原色ワイド図鑑4 鳥』、学習研究社、1984年、138頁。
- 黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科7 鳥I』、平凡社、1986年、177頁。
- 桐原政志 『日本の鳥550 水辺の鳥』、文一総合出版、2000年、75頁。
- 真木広造、大西敏一 『日本の野鳥590』、平凡社、2000年、41頁。
- 『小学館の図鑑NEO 鳥』、小学館、2002年、19頁。
- 高野伸二 『フィールドガイド 日本の野鳥 増補改訂版』、日本野鳥の会、2007年、76-77頁。
- 安部直哉 『山渓名前図鑑 野鳥の名前』、山と渓谷社、2008年、161頁。
- 『鳥を描き続けた男―鳥類画家小林重三』、晶文社、1999年。
- 川上 和人ほか(2008)「南硫黄島の鳥類相」、『小笠原研究』33、首都大学東京 → 南硫黄島の鳥類相(CiNii)