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クロロゲン酸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クロロゲン酸
識別情報
CAS登録番号 202650-88-2 チェック, 327-97-9 (E/Z)
PubChem 1794427
ChemSpider 1405788 チェック
UNII 318ADP12RI (E) チェック
KEGG C00852
ChEBI
ChEMBL CHEMBL284616 ×
RTECS番号 GU8480000
3DMet B01342
特性
化学式 C16H18O9
モル質量 354.31 g mol−1
密度 1.28 g/cm3
融点

207 ~ 209℃

危険性
安全データシート(外部リンク) External MSDS
GHSピクトグラム 急性毒性(低毒性)
GHSシグナルワード 警告(WARNING)
Hフレーズ H315, H319, H335
Pフレーズ P261, P264, P271, P280, P302+352, P304+340, P305+351+338, P312, P321, P332+313, P337+313, P362, P403+233, P405
NFPA 704
0
1
0
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

クロロゲン酸(クロロゲンさん、chlorogenic acid)は、植物界に広く存在するポリフェノールであり、桂皮酸誘導体(カフェ酸フェルラ酸等)とキナ酸エステル化合物の総称である[1]コーヒー生豆から初めて単離され[2]、熱に不安定で焙煎で容易にコーヒー酸キナ酸に分解する[3][4]

コーヒー生豆にはクロロゲン酸類が5%–10%と、とりわけ多く含まれている。コーヒー生豆に含まれるクロロゲン酸類は、3-カフェオイルキナ酸(3-CQA)、4-カフェオイルキナ酸(4-CQA)、5-カフェオイルキナ酸(5-CQA)、3-フェルロイルキナ酸(3-FQA)、4-フェルロイルキナ酸(4-FQA)、5-フェルロイルキナ酸(5-FQA)、ジカフェオイルキナ酸(di-CQA)からなる化合物である[5][6]。カフェインとともにコーヒー抽出液冷却時に認められる白濁の原因とされる。コーヒー抽出液の味覚における影響は複雑である(濃度その他の条件で渋、酸および甘を示す)。抽出時間が長すぎた時に顕われる雑味の原因とされる。

鉄(III) イオンの存在下で緑がかった黒色の化合物となる。アルカリ条件下で橙色を呈する。ラジカル捕捉能を持つため、抗酸化作用が期待されている。

生理作用

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試験管内実験や動物実験では血糖値上昇抑制効果が認められているが[7]、人を対象にした信頼性の高い研究で[8][9]有効性は確認されていない[1] 辛味を抑える作用が有る。

食薬区分

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食薬区分では、「専ら医薬品として使用される成分本質 (原材料)」にも「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料)」(非医薬品)にも該当せず、医薬品的な効能効果を表示することができない[1]。ただしコーヒーのように『明らか食品(医薬品に該当しないことが明らかに認識される食品)』であれば効能を表示しても薬機法(旧薬事法)には違反しない[10]。しかし「癌が治る」「血糖値が下がる」「血液を浄化する」といった誇大な医薬品的効果効能表示(店頭や説明会における口頭での説明も含む)を行うと、景品表示法健康増進法の規制の対象となる[11][12][13]

コーヒーから抽出したクロロゲン酸類(5-カフェオイルキナ酸として)を関与成分とし、「体脂肪が気になる方に適する」「血圧が高めの方に適する」という保健用途の表示ができる特定保健用食品が許可されている[14][15][6]

コーヒーボタンボウフウゴボウから抽出したクロロゲン酸を関与成分とした健康食品が、機能性表示食品として届けられている。機能性表示食品とは、国が審査は行わず、事業者が自らの責任において機能性の表示を行うもので、「体脂肪が気になる方に適する」「肌の水分量を高め、乾燥を緩和する機能があることが報告されている」「食後の血糖値上昇を緩やかにする機能が報告されている」などの表示をしている[16][17][18]機能性表示食品に関しては、利益相反によるバイアスの可能性などが指摘されている[19][20]

安全性

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サプリメントなど濃縮物として摂取する場合の安全性に関しては、信頼できる十分な情報は見当たらないため、特に妊婦・授乳婦、小児は自己判断でのサプリメントの摂取は控えること[1]

物性

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  • 水に可溶。アルコール、アセトンに易溶。
  • 渋みを持つ(低濃度では酸味)。
  • 味覚修飾物質(水に甘味を与える。ただし弱い)。

異性体

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脚注

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  1. ^ a b c d カフェー酸 - 素材情報データベース<有効性情報>(国立健康・栄養研究所
  2. ^ 岸本憲明, 藤田藤樹夫「未利用コーヒー生豆資源からクロロゲン酸類の単離」『近畿大学資源再生研究所報告』第7号、近畿大学資源再生研究所、2006年3月、29-39頁、NAID 120005729884 
  3. ^ Role of roasting conditions in the level of chlorogenic acid content in coffee beans: correlation with coffee acidity”. PubMed. 2021年8月2日閲覧。
  4. ^ 中林敏郎, 真野三蔵「コーヒーの品質に関する化学的研究 : (第3報)焙煎中のクロロゲン酸類の質的および量的変化」『日本食品工業学会誌』第22巻第11号、日本食品科学工学会、1975年、549-553頁、doi:10.3136/nskkk1962.22.549ISSN 0029-0394NAID 1300037880452021年8月20日閲覧 
  5. ^ 紙谷雄志, 岩井和也, 福永泰司, 木村良太郎, 中桐理「脱カフェインコーヒー豆抽出物の糖質分解酵素阻害活性とクロロゲン酸類の寄与」『日本食品科学工学会誌』第56巻第6号、日本食品科学工学会、2009年6月、336-342頁、doi:10.3136/nskkk.56.336ISSN 1341027XNAID 10024855674 
  6. ^ a b ヘルシアWコーヒー 無糖ブラック、特定保健用食品”. 2021年8月2日閲覧。
  7. ^ 立石絵美, 韓立坤, 奥田拓道「ラットにおける食後の血糖値に及ぼすコーヒー豆の熱水抽出物の影響」『栄養学雑誌』第62巻第6号、日本栄養改善学会、2004年、323-327頁、doi:10.5264/eiyogakuzashi.62.323ISSN 0021-5147NAID 130003667809 
  8. ^ 信頼できる確かな情報とは”. 国立健康・栄養研究所. 2021年7月30日閲覧。
  9. ^ その情報は「確かな情報」ですか?”. 国立健康・栄養研究所. 2021年7月30日閲覧。
  10. ^ 「明らか食品」とは?” (PDF). 北海道薬剤師会. 2021年7月25日閲覧。
  11. ^ 誇大表示の禁止”. 東京都福祉保健局. 2021年8月2日閲覧。
  12. ^ 健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について” (PDF). 消費者、 (2016年6月30日). 2021年7月23日閲覧。
  13. ^ 医薬品的な効能効果について”. 東京都健康福祉局. 2021年7月23日閲覧。
  14. ^ コーヒー - 素材情報データベース<有効性情報>(国立健康・栄養研究所
  15. ^ ヘルシアコーヒー無糖ブラック、特定保健用食品”. 2021年8月2日閲覧。
  16. ^ ヘルシア クロロゲン酸の力 コーヒー風味、機能性表示食品の届出情報検索”. 消費者庁. 2021年8月2日閲覧。
  17. ^ SOFINA iP クロロゲン酸飲料EX、機能性表示食品の届出検索”. 消費者庁. 2021年8月2日閲覧。
  18. ^ UCC珈琲生活プラス ワンドリップコーヒー”. 消費者庁. 2021年8月2日閲覧。
  19. ^ 機能性表示食品制度に対する意見書”. 東京弁護士会 (2016年1月13日). 2021年8月2日閲覧。
  20. ^ 「機能性表示食品」制度における機能性に関する科学的根拠の 検証-届け出られた研究レビューの質に関する検証事業 報告書” (PDF). 消費者庁. 2021年8月2日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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