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サン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
サン・アントニオ級
ドック型輸送揚陸艦
基本情報
艦種 ドック型輸送揚陸艦(LPD)
命名基準 アメリカ合衆国の都市
建造所 エイボンデール造船所
インガルス造船所
運用者  アメリカ海軍
建造期間 2000年-現在(フライトI)
就役期間 2006年-就役中
計画数 26隻
建造数 15隻
前級 トレントン級
ニューポート級
チャールストン級
要目
軽荷排水量 19,208 t
満載排水量 25,883 t
全長 208.5 m
最大幅 31.9 m
吃水 7.0 m
機関方式 CODAD方式
主機 コルト-ピルスティク16PC2-5 STCディーゼルエンジン×4基
推進器 可変ピッチ・プロペラ×2軸
出力 41,600bhp
最大速力 22ノット
航続距離 8,000海里(18kt巡航時)
乗員
  • 個艦要員:士官29名+曹士351名
  • 上陸部隊:669名+予備人員101名
兵装
  • Mk.46 30mm機関砲×2基
  • Mk.26 12.7mm機銃×2基
  • Mk.49近SAM 21連装発射機×2基
  • 搭載機 MV-22B×2機
    C4ISTAR
    レーダー
  • AN/SPS-48E 3次元式×1基
  • AN/SPQ-9B 低空警戒用×1基
  • AN/SPS-73(V)13 対水上捜索用×1基
  • 電子戦
    対抗手段
  • AN/SLQ-32A(V)2 電波探知装置
  • Mk.53 連装デコイ発射機×2基
  • Mk.137 6連装デコイ発射機×4基
  • AN/SLQ-25A 対魚雷デコイ装置
  • [1]
    テンプレートを表示

    サン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦(サン・アントニオきゅうドックがたゆそうようりくかん、英語: San Antonio-class amphibious transport dock)は、アメリカ海軍ドック型輸送揚陸艦(LPD)の艦級。

    来歴

    [編集]

    1980年代より、アメリカ海軍は海兵隊と共同で、揚陸艦の近代化・輸送力向上のための研究に着手していた。この結果、従来は様々な種類の艦を寄せ集めて適宜編成されていた両用即応群(ARG)の構成艦の均一化が計画された。この新編成においては、強襲揚陸艦(LHAまたはLHD)とドック型輸送揚陸艦(LPD)、ドック型揚陸艦(LSD)1隻ずつで構成されることとされていた。当時、トーマストン級およびアンカレッジ級LSDの老朽化が進んでいたことから、まずこれらを代替するホイッドビー・アイランド級およびハーパーズ・フェリー級12隻が建造された。続いてLPDとして建造されたのが本級である[2]

    1988年より、まず種々の選択肢の検討による暫定要求仕様の準備が着手された。1989年から1992年にかけて可能性研究、1993年から1994年にかけて予備設計、1994年から1996年にかけて契約設計が行われた。ネームシップの建造は1996年度計画で認可され、1996年12月、エイボンデール造船所が建造契約を落札したものの、入札で敗れたインガルス造船所の抗議のために、実際の建造契約は1997年4月まで遅延した[2]

    設計

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    横図
    断面図

    設計にあたっては、アメリカ海軍の揚陸艦として初めてステルス性への配慮が導入された。特にマストについては周囲が八角柱に近い構造のパネルにより覆われた先進型閉囲マスト/センサーとなっており、外部からのレーダー波を反射し、自艦の電波は透過するようになっている。前檣の頂部ドームにはAN/SPQ-9B低空警戒レーダー、本体内にはAN/SPS-73(V)13対水上捜索レーダーが、また後檣にはAN/SPS-48E 3次元レーダーが装備される[2]。これらの配慮により、レーダー反射断面積(RCS)はオースティン級の1パーセント程度にまで低減されている[1]

    居住区は、士官用のものは上部構造物に、海兵隊員用を含む大部分は主船体内の車両甲板の直前に設けられている。就寝時・起床時兼用寝台(Sit-up berth)の採用や艦内広域ネットワーク(SWAN)による電子メール送受信など、艦内生活の質的向上にも意が払われた[2]

    主機関はホイッドビー・アイランド級およびハーパーズ・フェリー級と基本的に同構成で、ターボチャージャーを備えたコルト-ピルスティク16PC2-5 STC中速ディーゼルエンジン[1][3]4基によって構成されており、可変ピッチ・プロペラ2軸を駆動するCODAD方式である。また煙突は左右非対称の配置となっており、右前部と左中部にある。機械室と補機室は横隔壁によって複数区画に分割されており、被害極限による生残性向上が考慮されている[2]

    能力

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    輸送揚陸機能

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    本級は、オースティン級クリーブランド級およびトレントン級を含む)のみならず、チャールストン級貨物揚陸艦ニューポート級戦車揚陸艦をも代替するものとして設計された[4]

    貨物揚陸艦のようなクレーンによる重量物の舷側揚陸能力、戦車揚陸艦のような擱座着岸能力、従来のドック型輸送揚陸艦のような揚陸指揮艦能力には欠けているが、これら3艦種とLSDを合わせたほどの輸送揚陸能力を備えている[3]1990年代の揚陸艦はいずれも車両搭載能力が不足していたことから、本級では3層・計2,323 m2に及ぶ車両甲板が確保されている。物資搭載能力は963 m3であり、また弾薬についてはパレット搭載分708 m3、弾薬庫1,007 m3に収容できる。このほか、ジェット燃料(JP-5)1,196 m3、ガソリン38 m3も搭載できる。また逆浸透膜による海水淡水化装置5基を備えており、それぞれ毎日45,000リットルの真水製造能力を備えている[1]

    病院船機能として、手術室2室と病床24床が設けられており、また必要であれば更に病床を100床に拡張することができる[1]

    LPDはもともと強襲揚陸艦に近い性格を備えていた[3]ことから、本級も優れた航空運用能力を備えている。上部構造物の後端はハンガーとされており、MV-22Bティルトローターであれば2機、CH-46E輸送ヘリコプターであれば4機を収容できるほか、AV-8B垂直離着陸機の支援も可能である。また艦尾甲板はヘリコプター甲板とされており、発着スポット2個が設定されている。またヘリコプター甲板直下のウェルドックはオースティン級と同程度の面積であり、LCACであれば2隻、LCUであれば1隻、AAV7であれば14両を収容できる[1]

    個艦防御機能

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    アメリカ海軍では、全てのヴィークルが協力しあって交戦することを構想しており、このために本級にもかなり強力な戦闘指揮システムが導入されている。戦術情報処理装置としてACDSブロック1が搭載されており、これを含めた統合システムとして艦艇自衛システム(SSDS)Mk.2が構築されている。統合戦術情報伝達システム(JTIDS)が搭載されているほか、共同交戦能力(CEC)も導入されている[1]

    各級指揮官の情報共有・戦術状況評価のためのC4IシステムとしてAN/USQ-119C(V)27 JMCISが装備されているほか、水陸両用作戦の指揮・統制のため、AN/KSQ-1強襲揚陸指揮システム(AADS)も装備されている[1]

    武装として、近距離の空中目標に対してはRAM近接防空ミサイルの21連装発射機2基、水上目標に対してはMk.46 30mm機関砲が搭載されている。当初計画では、上部構造物直前にESSM個艦防空ミサイルのためのMk.41 VLS16セルの搭載が予定されていたが、まず当初3隻分から、その後最終的に全艦で削除された。しかし後日装備可能なように容積・重量の余地は確保されている[1]

    同型艦

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    2024年9月までに13隻が就役している。1番艦の建造費は約14億USドルであった。

    12番艦「フォート・ローダーデール (LPD-28)」より、サンアントニオ級の基本設計を修正した後継艦『LX(R)級ドック型水陸両用輸送艦』のベースとなる「フライトII」に準じた設計変更が行われ、本級の特徴的外観であった「ステルスマスト」を廃し、アメリカ海軍艦で一般的な鋼材ラティスマストを採用するなど、様々な形で建造コスト圧縮が行われている。また、アメリカン・スーパーコンダクター社が製造した「高温超伝導体」を利用する『対機雷防御用消磁システム』を採用して艦艇の磁気特性低減を図っている。

    フライト # 艦名 建造所 起工 進水 就役 母港
    I LPD-17 サン・アントニオ
    USS San Antonio
    エイボンデール 2000年
    12月9日
    2003年
    7月12日
    2006年
    1月14日
    バージニア州
    ノーフォーク海軍基地
    LPD-18 ニューオーリンズ
    USS New Orleans
    2002年
    10月14日
    2004年
    12月11日
    2007年
    3月10日
    長崎県佐世保市
    佐世保基地
    LPD-19 メサ・ヴェルデ
    USS Mesa Verde
    インガルス 2003年
    2月25日
    2004年
    11月19日
    2007年
    12月15日
    バージニア州
    ノーフォーク海軍基地
    LPD-20 グリーン・ベイ
    USS Green Bay
    エイボンデール 2003年
    8月11日
    2006年
    8月11日
    2009年
    1月24日
    長崎県佐世保市
    佐世保基地
    LPD-21 ニューヨーク
    USS New York
    2004年
    9月10日
    2007年
    12月19日
    2009年
    11月7日
    フロリダ州
    メイポート海軍補給基地
    LPD-22 サンディエゴ
    USS San Diego
    インガルス 2007年
    5月23日
    2010年
    5月7日
    2012年
    5月19日
    長崎県佐世保市

    佐世保基地

    LPD-23 アンカレッジ
    USS Anchorage
    エイボンデール 2007年
    9月24日
    2011年
    2月12日
    2013年
    5月4日
    カルフォルニア州

    サンディエゴ海軍基地

    LPD-24 アーリントン
    USS Arlington
    インガルス 2008年
    12月18日
    2010年
    11月23日
    2013年
    2月8日
    バージニア州
    ノーフォーク海軍基地
    LPD-25 サマセット
    USS Somerset
    エイボンデール 2009年
    12月11日
    2012年
    4月17日
    2014年
    3月1日
    カルフォルニア州
    サンディエゴ海軍基地
    LPD-26 ジョン・P・マーサ
    USS John P. Murtha
    インガルス 2012年
    6月6日
    2014年
    10月30日
    2016年
    10月8日
    LPD-27 ポートランド
    USS Portland
    2013年
    8月2日
    2016年
    2月13日
    2017年
    12月14日
    LPD-28 フォート・ローダーデール
    USS Fort Launderdale
    2017年
    10月13日
    2020年
    3月28日
    2022年
    7月30日
    バージニア州
    ノーフォーク海軍基地
    LPD-29 リチャード・M・マクール・ジュニア
    USS Richard M. McCool Jr.
    2019年
    4月12日
    2022年
    1月5日
    2024年
    9月7日
    II LPD-30 ハリスバーグ
    USS Harrisburg
    2022年
    1月28日
    2024年
    10月5日
    LPD-31 ピッツバーグ
    USS Pittsburgh
    2023年
    6月2日
    LPD-32 フィラデルフィア
    USS Philadelphia

    登場作品

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    小説

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    『日中開戦7 不沈砲台』 ISBN 978-4-12-501348-0
    在日米軍佐世保基地内で修理中だった「グリーン・ベイ」が出撃し長崎に侵攻している中国人民解放軍と戦闘を行う。
    『攻撃目標を殲滅せよ』 ISBN 978-4-16-766114-4
    アメリカ海軍特殊部隊 (NAVSPECFORCE)の所属 第13番艦「エヴァンス・F・カールソン」として登場する。

    ゲーム

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    大戦略シリーズ
    マーセナリーズ2 ワールド イン フレームス
    ミサイル駆逐艦」という名称で登場。国連軍が使用する駆逐艦という扱いになっており、127mm艦砲RIM-116 RAM艦対空ミサイルファランクス CIWS巡航ミサイルを搭載している。
    エースコンバット7 スカイズ・アンノウン
    オーシア国防海軍所属の揚陸艦として登場。劇中では「ワッグテイル」「パフィン」「ターミガン」「フェザント」他の6隻が登場する。
    コール オブ デューティシリーズ
    COD:MW3
    アメリカ海軍所属艦が登場。マンハッタン島沖に何隻かが大破・傾斜した状態で放棄されているのが確認できる。
    COD:BO2
    アメリカ海軍所属艦が登場。 架空の空母「バラク・オバマ」とともに艦隊を組んでいるが、敵の空挺兵ドローンの襲撃を受けて何隻かが撃沈されている。

    脚注

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    1. ^ a b c d e f g h i Eric Wertheim (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 16th Edition. Naval Institute Press. pp. 866-867. ISBN 978-1591149545 
    2. ^ a b c d e 吉原栄一「ドック型輸送揚陸艦「サン・アントニオ」級 (特集 アメリカ海軍の新型艦艇) -- (アメリカ海軍の新型艦艇)」『世界の艦船』第623号、海人社、2004年3月、98-101頁、NAID 40006087510 
    3. ^ a b c 「アメリカ揚陸艦史」『世界の艦船』第669号、海人社、2007年1月、1-135頁、NAID 40015212119 
    4. ^ 阿部安雄「アメリカ揚陸艦の歩み」『世界の艦船』第669号、海人社、2007年1月、137-143頁、NAID 40015212119 

    参考文献

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    外部リンク

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