コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

シクロペンタジエニルナトリウム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
シクロペンタジエニルナトリウム
{{{画像alt2}}}
識別情報
CAS登録番号 4984-82-1
PubChem 78681
ChemSpider 71032
日化辞番号 J52.072A
EC番号 225-636-8
特性
化学式 C5H5Na
モル質量 88.08 g mol−1
への溶解度 反応
テトラヒドロフランへの溶解度 可溶
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

シクロペンタジエニルナトリウム(sodium cyclopentadienide)は化学式C5H5Naで表される有機ナトリウム化合物である。本化合物はしばしばNaCpあるいはCpNaと略記される(Cpシクロペンタジエニドアニオン)。Cpは錯体化学においてシクロペンタジエニル配位子の略としても使用される[1]

調製

[編集]

シクロペンタジエニルナトリウムはTHF溶液として市販されている。シクロペンタジエンナトリウムで処理することによって調製される[2]

通常、この変換はジシクロペンタジエン中の溶融ナトリウム懸濁液を加熱することによって行われる[3]。以前は、ナトリウムは「ナトリウムワイヤー」あるいは「ナトリウムサンド」の形で提供されていた。ナトリウムサンド(砂)は加熱還流し素早く撹拌したキシレン中でナトリウムを溶解させることにより調製されたナトリウムの微細分散である[4][5]

水素化ナトリウムが適当な塩基である[6]

初期の研究では、グリニャール試薬が塩基として用いられた。シクロペンタジエンのpKaは15であり、多くの試薬により脱プロトン化することができる。

NaCpの特性はその媒質に強く依存しており、合成計画と立てる目的でしばしばNa+C5H5で表されるとして表現される。なかなか目にすることのない結晶性の無溶媒NaCpは、Na+中心がμ-η55-C5H5配位子間にサンドイッチされたものが交互に続く無限鎖となるポリデッカーサンドイッチ錯体である[7]。ドナー溶媒中の溶液として、NaCpはNa(tmeda)Cp付加体の分離性から示唆されるようにアルカリ金属において特に高度に溶媒和されている[8]

応用

[編集]

シクロペンタジエニルナトリウムは、メタロセンの調製のための一般的な試薬である(例: フェロセン[4]および二塩化ジルコノセン[9]の調製)。

脚注

[編集]
  1. ^ International Union of Pure and Applied Chemistry (2005). Nomenclature of Inorganic Chemistry (IUPAC Recommendations 2005). Cambridge (UK): RSCIUPAC. ISBN 0-85404-438-8. p. 262. Electronic version.
  2. ^ Cotton, F. Albert; Wilkinson, Geoffrey (1988). Advanced Inorganic Chemistry (5th ed.). New York: Wiley-Interscience. ISBN 0-471-84997-9 
  3. ^ Tarun K. Panda, Michael T. Gamer, Peter W. Roesky (2003). “An Improved Synthesis of Sodium and Potassium Cyclopentadienide”. Organometallics 22: 877–878. doi:10.1021/om0207865. 
  4. ^ a b Wilkinson, Geoffrey (1963). "Ferrocene". Organic Syntheses (英語).; Collective Volume, vol. 4, p. 473
  5. ^ Partridge, John J.; Chadha, Naresh K.; Uskokovic, Milan R. (1990). "An asymmetric hydroboration of 5-substituted cyclopentadienes: synthesis of methyl (1R,5R)-5-hydroxy-2-cyclopentene-1-acetate". Organic Syntheses (英語).; Collective Volume, vol. 7, p. 339
  6. ^ Girolami, G. S.; Rauchfuss, T. B. and Angelici, R. J. (1999). Synthesis and Technique in Inorganic Chemistry. Mill Valley, CA: University Science Books. ISBN 0935702482 
  7. ^ Robert E. Dinnebier, Ulrich Behrens, and Falk Olbrich (1997). “Solid State Structures of Cyclopentadienyllithium, -sodium, and -potassium. Determination by High-Resolution Powder Diffraction”. Organometallics 16: 3855–3858. doi:10.1021/om9700122. 
  8. ^ Elschenbroich, C. (2006). Organometallics. Weinheim: Wiley-VCH. ISBN 3527-29390-6 
  9. ^ Wilkinson, G.; Birmingham, J. G. (1954). “Bis-cyclopentadienyl Compounds of Ti, Zr, V, Nb and Ta”. J. Am. Chem. Soc. 76 (17): 4281–84. doi:10.1021/ja01646a008.