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シュウ酸第二鉄カリウム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
シュウ酸第二鉄カリウム
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識別情報
CAS登録番号 5936-11-8 チェック, 5936-11-8 (trihydrate) ×
特性
化学式 K3[Fe(C2O4)3] (無水物)
K3[Fe( C2O4)3]·3H2O (三水和物)
モル質量 437.20 g/mol (無水物)
491.25 g/mol (三水和物)
外観 エメラルドグリーンの水和結晶
密度 2.13 g/cm3
融点

230 °C, 503 K, 446 °F (三水和物は3つのH2O分子を113 °Cで失う[1])

構造
配位構造 八面体形分子構造
双極子モーメント 0 D
危険性
主な危険性 腐食性、目、呼吸および皮膚に対して刺激性
Rフレーズ R20, R21, R22, R34, R36/37/38
関連する物質
その他の陰イオン シュウ酸第二鉄ナトリウム英語版
関連するcompounds シュウ酸鉄(II)
シュウ酸鉄(III)英語版
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

シュウ酸第二鉄カリウム(英語:Potassium ferrioxalate)あるいはトリスオキサラト鉄(III)酸カリウム(英語:potassium trisoxalatoferrate(III))は化学式K3[Fe(C2O4)3]で表される、酸化数+3の鉄イオンを含む化合物である。シュウ酸イオン2箇所で中心の鉄(III)イオンに配位したキレート錯体である。カリウムイオンは対イオン英語版となり、錯体の電荷−3を中和している。三水和物の結晶(K3[Fe(C2O4)3]·3H2O)はエメラルドグリーン色である。溶液中では解離してシュウ酸鉄(III)酸イオン([Fe(C2O4)3]3−)を生成し、蛍光緑色溶液となる。シュウ酸第二鉄カリウムは光束など化学的な光量の定量英語版に用いられる。

調製

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シュウ酸第二鉄カリウム三水和物の結晶

この錯体は硫酸鉄(III)シュウ酸バリウム、そしてシュウ酸カリウム英語版を反応させて合成する[2]

Fe2(SO4)3 + 3 BaC2O4 + 3 K2C2O4 → 2 K3[Fe(C2O4)3] + 3 BaSO4

反応物のイオンが水中で混ざり合い、不溶性のBaSO4沈殿して取り除かれ、この溶液を冷やすと三水和物の緑色結晶が得られる。 他の有名な方法として、塩化鉄(III)の六水和物水溶液とシュウ酸カリウム・一水和物を反応させる方法がある[3]

FeCl3·6H2O + 3 K2C2O4·H2OK3[Fe(C2O4)3]·3H2O + 3 KCl + 6H2O

構造

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シュウ酸鉄錯体は鉄(III)イオンを中心とする八面体形分子構造で、D3分子対称性を持つ。Fe–O結合距離は2.0 Åに近い[4]。これは鉄(III)イオンのスピンが高い英語版ことを示している。なぜならスピンが低いとヤーン・テラー変形が観察されるからである。アンモニウム塩ナトリウムとカリウムの塩の混合物は同型であり、Al3+Cr3+V3+の錯体と関連がある。

シュウ酸塩第二鉄錯体は幾何学的に重ね合わせられない2つの形をとることができるため、らせんキラリティーをもつ。IUPAC会議によれば 左手型の巻き方をしている異性体はギリシャ文字のΛ(ラムダ)、その鏡像である右手型の巻き方をしている異性体はΔ(デルタ)の文字が割り当てられている[5]

反応

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光還元

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溶液中で、シュウ酸鉄(III)錯体は光還元される。この過程で分子は光子を吸収し、Fe(C2O4)2−
2
CO2に分解する。鉄(III)イオンは電子を得て還元され、酸化数が+3から+2に減少する。そしてシュウ酸イオンは二酸化炭素酸化される。

2 [Fe(C2O4)3]3− + → 2 [Fe(C2O4)2]2− + 2 CO2 + C2O2−
4
[6]

熱分解

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三水和物を加熱すると、113 °Cで同時に3つの水分子が失われ、一気に無水物になる[1]

296 °Cでは、無水物の塩が鉄(II)イオンの錯体であるシュウ酸第一鉄カリウム英語版とシュウ酸カリウム、そして二酸化炭素に分解する[1]

2 K3[Fe(C2O4)3] → 2 K2[Fe(C2O4)2] + K2C2O4 + 2 CO2

脚注

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  1. ^ a b c J. Ladriere (1992): "Mössbauer study on the thermal decomposition of potassium tris (oxalato) ferrate(III) trihydrate and bis (oxalato) ferrate(II) dihydrate". Hyperfine Interactions, volume 70, issue 1, pages 1095–1098. doi:10.1007/BF02397520
  2. ^ Bailar, John C.; Jones, Eldon M. (1939). “Trioxalato Salts (Trioxalatoaluminiate, -ferriate, -chromiate, and -cobaltiate)”. Inorganic Syntheses英語版 1: 35–38. doi:10.1002/9780470132326.ch13. 
  3. ^ Performed by Benjamin J. Abram, OSU lab manual, Dr. Richard Nafshun
  4. ^ Junk, Peter C. (2005). “Supramolecular interactions in the X-ray crystal structure of potassium tris(oxalato)ferrate(III) trihydrate”. J. Coord. Chem. 58 (4): 355–361. doi:10.1080/00958970512331334250. 
  5. ^ グリーンウッド, ノーマン; アーンショウ, アラン (1997). Chemistry of the Elements (英語) (2nd ed.). バターワース=ハイネマン英語版. ISBN 978-0-08-037941-8
  6. ^ Pozdnyakov, Ivan P.; Kel, Oksana V.; Plyusnin, Victor F.; Grivin, Vyacheslav P.; Bazhin, Nikolai M. (2008). “New Insight into Photochemistry of Ferrioxalate”. J. Phys. Chem. A 112 (36): 8316–8322. doi:10.1021/jp8040583.