シンセベース
シンセベース(英語: Keyboard bass、Key bass、Synth bass)、またはキーボード・ベースは、キーボード・シンセサイザーの一種であり、シンセサイザーで演奏されるベースパート。もしくはエレクトリックベースやダブル・ベースのシミュレーションを、ベースのレンジの中でクリエイトする楽器である。ファンクやR&B、Gファンクやギャングスタ・ラップのジャンルで、効果的に使用される。
概要
[編集]アナログシンセサイザーの登場初期には、電子オルガンの足鍵盤に相当するベース演奏専用のシンセサイザーとして「ベースシンセサイザー」という製品も存在した。一般にシンセサイザーは、楽音域すべてをカバーして演奏が可能なので、いかなる音色でもベースパートを演奏することは可能であるが、実際には音響的に不適当な音色での演奏は無意味である。実際のベース楽器をリアルにシミュレーションをした音色と、電子発振音らしさを強調した音色が主に使用される。
スタジオ録音では、一人多重録音を好んだスティービー・ワンダーがシンセベースを手弾きした。また、パーラメントのジョージ・クリントン[1]や、ザップのロジャー、カシーフらもシンセベースを多用している[2] 。アナログシンセサイザーの初期には、リアルな音色を望めなかったので、逆に矩形波にフィルターを掛けた、電子的な音色がコンピュータ・ミュージックの特徴と云え、近年のクラブミュージックなどでも、多く使用される。単独にプログラミングできるベースシンセサイザーとして、ローランド社のTB-303という製品が存在した。
デジタルシンセサイザーで、リアルなサンプリング音源を搭載したシンセサイザーの場合、シーケンサー・プログラミングにより、MIDIインタフェースによる自動演奏(一般的に打ち込みと言われる)が行われ、プログラム次第では全く実際の演奏と変わらないため、シンセサイザー音楽という扱いはされない。
シーケンサー・プログラミングによるシンセベースと、同様にプログラムによるドラムマシンの繰り返し演奏パターンを特徴とした音楽に「ドラムンベース」があるが、ハウスやテクノと同様シンセベースは添え物に過ぎず、ファンクやGラップほどのダイナミズムはない。
主なアーティスト
[編集]- 楢﨑誠 (from Official髭男dism)
- 新井和輝 (from King Gnu)
- ジョージ・クリントン
- パーラメント
- ヤーブロウ&ピープルズ[注 1]
- グラハム・セントラル・ステーション
- ドクター・ドレイ[注 2]
- E-40[注 3]
- EPMD[注 4]
- 細野晴臣[注 5]
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 81年の「ドント・ストップ・ザ・ミュージック」ほかでシンセベースを使用。
- ^ 90年代のギャングスタ・ラップ曲で使用。
- ^ 西海岸のGラッパーで、シンセベースを多用した。
- ^ ロジャーとザップの大ファンで、サンプリングでたびたびシンセベースを聴くことができる。
- ^ 元々ベーシストでベースギターを演奏している。YMO時代もレコードでは終始ベースギターを演奏する曲があったが、シンセベースと混在したり終始シンセベースだけの楽曲と様々だった。ライブでは終始ベースギター演奏の楽曲以外はシンセベースを演奏。2000年代以降YMOを再々結成した時は専らベースギターを演奏。しかし、2023年メンバーの高橋幸宏、坂本龍一が相次いで他界して再活動が不可能となる。
出典
[編集]書籍
[編集]- 相原耕治『シンセサイザーがわかる本』スタイルノート、2011年10月。ISBN 978-4799801000。
- 山下 春生『伝説のハンドメイドアナログシンセサイザー: 1970年代の自作機が蘇る』誠文堂新光社、2015年11月。ISBN 978-4416115435。
- 「シンセサイザー・クロニクル」『大人の科学マガジン別冊 シンセサイザー・クロニクル』、学習研究社、2008年7月、ISBN 9784056051834。
- 「アナログシンセの復活」『DTM magazine』第230巻、寺島情報企画、2013年8月、ASIN B00DC69PDW。