ジバクアリ
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ジバクアリ | ||||||||||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Colobopsis saundersi (Emery, 1889) |
ジバクアリ (Colobopsis saundersi, 別名:バクダンオオアリ、kamikaze ants) は、マレーシアとブルネイで発見されたアリの1種である。
働きアリは敵に襲われると、腹筋を収縮することにより体の一部を自爆させる。この自爆によって、刺激臭のある粘性の毒液を相手に浴びせ、味方への注意と共に敵の動きを封じた上で道連れにする[1]。この行動はAutothysis(ギリシャ語の自己+犠牲から作られた造語)と呼ばれる[2]。通常のアリより何倍も大きく全身に及ぶ下顎腺を持ち、そこで防衛用の粘着分泌物を生成する[3]。
分泌物の成分
[編集]毒性接着剤は、雨季は明るい白色、乾季と雨季の初めごろは淡い黄色(もしくはクリーム色)と変色する。その理由は季節変化の食性か内部pHの違いによるものと考えられている[4]。成分は「主にポリアセテート、脂肪族炭化水素、およびアルコール」から構成されている。
- フェノール類 - ベンゼン環に直接ヒドロキシ基が付いている化合物。
- 2',4'-ジヒドロキシアセトフェノン - アセトフェノンのベンゼン環の2位(オルト位)と4位(パラ位)に1つずつヒドロキシ基が付いた化合物。
- 2-メチル-5,7-ジヒドキシクロモン - クロモン類の1種。
- m-クレゾール - ヒトの皮膚を腐食する性質を持ち、消毒薬としても使用される。ただし、m-クレゾールはごく微量しか含まれていない。
- オルシノール - これもごく微量しか含まれていない。
- 脂肪族化合物 - 長い炭化水素鎖を持った化合物。
- テルペノイド - イソプレンが縮合して合成される化合物。イソプレンの炭素は5個なので、テルペノイドの炭素は5の倍数個。
などといった化合物が含まれている。
関連する種
[編集]Autothysis は Colobopsis 属の他の種にも見られ[3]、ゴキブリ目シロアリ科[5]および半翅目(カメムシ目)アブラムシ科[6]の一部においても知られる。一部を以下で紹介する。
Colobopsis 属(膜翅目)
[編集]- バクダンオオアリ C. saundersi は C. explodens と種群(species complex)を形成するとされる[7]。
シロアリ科
[編集]本行動はシロアリ科の複数のグループで見られる。兵隊階級を持たない種で多く見られるが、兵アリが本行動を見せる種も知られる[5]。
アブラムシ科
[編集]社会性アブラムシであるモンゼンイスアブラムシNipponaphis monzeni が本行動を行うことが知られている[6][8]。
関連項目
[編集]- テラフォーマーズ……バクダンオオアリの能力を持つ改造人間が登場する。
参考文献
[編集]- ^ あなたの知らないアリの世界「劣勢になると自爆する『ジバクアリ』」(アメーバニュース)
- ^ Ulrich Maschwitz; Eleonore Maschwitz (1974). “Platzende Arbeiterinnen: Eine neue Art der Feindabwehr bei sozialen Hautflüglern”. Oecologia 14: 289–294. doi:10.1007/BF01039798 .
- ^ a b Betz, Oliver (2010). Adhesive Exocrine Glands in Insects: Morphology, Ultrastructure, and Adhesive Secretion. Biological Adhesive Systems: 111-152. doi:10.1007/978-3-7091-0286-2_8
- ^ Jones, T.H.; Clark, D.A.; Edwards, A.A.; Davidson, D.W.; Spande, T.F. and Snelling, Roy R. (2004): "The Chemistry of Exploding Ants, Camponotus spp. (Cylindricus complex)". Journal of Chemical Ecology 30(8): 1479-1492. doi:10.1023/B:JOEC.0000042063.01424.28
- ^ a b Thomas Bourguignon; Jan Šobotník; Jana Brabcová; David Sillam-Dussès; Aleš Buček; Jana Krasulová; Blahoslava Vytisková; Zuzana Demianová et al. (2016). “Molecular Mechanism of the Two-Component Suicidal Weapon of Neocapritermes taracua Old Workers”. Molecular Biology and Evolution 33 (3): 809–819. doi:10.1093/molbev/msv273 .
- ^ a b Mayako Kutsukake; Minoru Moriyama; Shuji Shigenobu; Xian-Ying Meng; Naruo Nikoh; Chiyo Noda; Satoru Kobayashi; Takema Fukatsu (2019). “Exaggeration and cooption of innate immunity for social defense”. PNAS 116 (18): 8950-8959. doi:10.1073/pnas.1900917116 .
- ^ Laciny, A.; Zettel, H.; Kopchinskiy, A.; Pretzer, C.; Pal, A.; Salim, K.A.; Rahimi, M.J; Hoenigsberger, M. et al. (2018). “Colobopsis explodens sp. n., model species for studies on "exploding ants" (Hymenoptera, Formicidae), with biological notes and first illustrations of males of the Colobopsis cylindrica group”. ZooKeys (751): 1–40. doi:10.3897/zookeys.751.22661. PMC 5919914 .
- ^ “兵隊アブラムシが放出する体液で巣を修復する仕組みを解明”. 産総研 研究成果記事. 産総研 (2019年). 2021年1月25日閲覧。