スイングしなけりゃ意味ないね
「スイングしなけりゃ意味ないね」 | |
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デューク・エリントンの楽曲 | |
リリース | 1932年 |
録音 | 1932年2月2日 |
ジャンル | ジャズ |
レーベル | アーヴィング・ミルズ |
作曲者 | デューク・エリントン |
「スイングしなけりゃ意味ないね」(スイングしなけりゃいみないね、英語: It Don't Mean a Thing (If It Ain't Got That Swing))は、1931年にデューク・エリントンが作曲し、アーヴィング・ミルズが作詞した曲[1]。初録音、および、リリースが翌年となったため1932年の楽曲として扱われることもある。今ではジャズ・スタンダードのひとつとされており、ジャズ史家のガンサー・シュラーはこの曲の特徴について、「今や伝説的 (now legendary)」であり、「予言的な作品であり予言的な曲名 (a prophetic piece and a prophetic title)」と述べている[2]。2008年には、エリントンによる1932年の録音が、グラミーの殿堂入りを果たした[3]。
日本語では曲名の表記に揺れがあり、「スイングしなけりゃ意味がない」などとされたり[1]、「スイング」が「スウィング」に置き換わったりすることがある[4][5][6]。
背景
[編集]この曲は、1931年8月に、シカゴのリンカーン・タヴァーン (the Lincoln Tavern) へ出演していたデューク・エリントンが、休憩中に作曲し、編曲したものであり[要出典]、歌詞はアーヴィング・ミルズが付けた。エリントンによれば、曲名は、トランペット奏者だったバディ・マイリーが信条としていた言葉であるとされるが[7]、当時マイリーは重い結核を患っていた[8]。マイリーは、この曲のリリースと同じ1932年に死去した[9]。
この曲の最初の録音は、1932年2月2日に、デューク・エリントンと彼の楽団によってブランズウィック・レコードのためにおこなわれた[10]。ボーカルを担当したのはアイヴィ・アンダーソンで[1]、トロンボーン奏者のジョー・ナントンとサクソフォーン奏者のジョニー・ホッジスがソロを取った。その後の演奏の機会には、トランペット奏者のレイ・ナンスがボーカルを担当することが多かった。
エリントンが記したところによると、「当時のジャズ・ミュージシャンたちの間に広がっていた感情の表現として (as the expression of a sentiment which prevailed among jazz musicians at the time)」この曲は有名になった[7]。この曲は、「スウィング」という言葉をポピュラー音楽において用いた最も初期の用例のひとつである[11]。
その他のおもなバージョン
[編集]- ミルズ・ブラザーズ (The Mills Brothers) (1932)[11]
- ボズウェル・シスターズ (The Boswell Sisters) (1932)[12]
- ロジャー・ウルフ・カーン (Roger Wolfe Kahn (1932)[13]
- ステファン・グラッペリとジャンゴ・ラインハルト (1935)[10]
- セロニアス・モンク – 『セロニアス・モンク・プレイズ・デューク・エリントン』 (リバーサイド, 1955)[10]
- American Public Mediaが制作するラジオ番組『Marketplace』では、ダウ平均株価が上昇とも下落ともつかない場合に、このモンクのバージョンを背景音楽として流すことが知られている[14]。
- シドニー・ベシェとマーシャル・ソラール – 『Sidney Bechet-Martial Solal Quartet Featuring Kenny Clarke』 (1957)[10]
- ルイ・アームストロングとデューク・エリントン – 『The Great Reunion』 (1961)[15]
- エラ・フィッツジェラルドとデューク・エリントン – 『Ella and Duke at the Cote D'Azur』[10] (ヴァーヴ, 1967)
- テレサ・ブリュワーとデューク・エリントン – (1974)[16]
- チャック・ブラウン (Chuck Brown) – 『Go Go Swing Live』(1987)[17]
- ダイアン・シューア (Diane Schuur) とスタン・ゲッツ – 『Schuur Thing』(1985)[10]
- ドクター・ジョン - 『デューク・エレガント-ドクター・ジョン、エリントンを歌う-』(2000)[10]
脚注
[編集]- ^ a b c 「スイングしなけりゃ意味ないね」『デジタル大辞泉プラス』 。コトバンクより2024年8月9日閲覧。
- ^ Schuller, Gunther (1991). The Swing Era: The Development of Jazz, 1930-1945. Oxford University Press. pp. 50–51. ISBN 978-0195071405
- ^ “Grammy Hall Of Fame”. Recording Academy. 2011年1月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月9日閲覧。
- ^ “スウィングしなけりゃ意味ないね(デューク・エリントン)【It Don't Mean a Thing (If It Ain't Got That Swing)】”. ミュージックストア・ジェイ・ピー. 2024年8月9日閲覧。
- ^ “スウィングしなけりゃ意味がない / It Don't Mean A Thing, If it Ain't Got That Swing 楽譜と歌詞カード キーAm(イ短調)らくらく楽譜 (デューク・エリントン) / メロディ 初級”. Piascore, Inc.. 2024年8月9日閲覧。
- ^ このほか、「スウィングしなけりゃ意味ないさ」(“スウィングしなけりゃ意味ないさ”. Music Eight. 2024年8月9日閲覧。)、「スイングがなければ意味がない」(“スイングがなければ意味がない”. ヤマハミュージックデータショップ. ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス. 2024年8月9日閲覧。)などとされることがある。
- ^ a b Ellington, Duke (1976). Music Is My Mistress. Da Capo Press. pp. 419, 106. ISBN 978-0306800337
- ^ Jazz Journal, Dec. 1965
- ^ Corliss, Richard (21 October 2011). “It Don't Mean A Thing (If It Ain't Got That Swing)”. Time .
- ^ a b c d e f g Gioia, Ted (2012). The Jazz Standards: A Guide to the Repertoire. New York City: Oxford University Press. p. 206. ISBN 978-0-19-993739-4
- ^ a b Ewen, David (1987). American Songwriters. The H.W. Wilson Company. p. 149. ISBN 0-8242-0744-0
- ^ Friedwald, Will (1990). Jazz Singing. Charles Scribner's Sons. p. 169. ISBN 0-684-18522-9
- ^ Yanow, Scott (2003). Jazz on Record: The First Sixty Years. Backbeat Books. p. 97. ISBN 978-0879307554
- ^ “Frequently Asked Questions”. Marketplace.org. 2023年4月22日閲覧。
- ^ Nollen, Scott Allen (2004). Louis Armstrong: The Life, Music, and Screen Career. McFarland and Company. p. 162. ISBN 0-7864-1857-5
- ^ “Top Album Picks”. Billboard: 61. (February 9, 1974) .
- ^ Gantt, Diedre R. (2013). “Talking Drums: Soca and Go-Go Music as Grassroots Identity Movements”. Rhythms of the Afro-Atlantic World. University of Michigan Press. p. 207. ISBN 978-0-472-02747-7