スウェーデン学派 (文化人類学・民俗学)
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スウェーデン学派は、20世紀の20年代からスウェーデンのルンド大学、次いでストックホルム大学などで文化人類学・民俗学の刷新をになった研究者グループを指す。20世紀のはじめの数十年間は、スウェーデンでも文化人類学や民俗学の分野ではイギリスのジェームズ・フレイザーの主著『金枝篇』などが圧倒的な影響をあたえており、特にルンド大学のペトル・ニルソンが代表的な存在で、ヨーロッパ各国でも名声を得ていた。これに対して永く講師の後、教授となったカール・ヴィルヘルム・フォン・シイドォウが方法論の面から異論を唱え、農村の民俗行事などがキリスト教以前の神話やアーリア人の信仰に由来すると見るネオロマン派の固定観念を、時代思潮を背景にした虚構であると指摘した。その批判は、フレイザーの原型にあたるドイツのヴィルヘルム・マンハルトに遡って行われたため、マンハルディアン批判とも呼ばれる。シイドォウの後、オーケ・カムベル、シーグルド・エリクソン、シーグルド・スヴェンソンなどが理論と実証研究を発展させ、さらにアルベルト・エスケレードが民俗行事の意味機能の遡及有意性について空間・時間・社会の規準を提示し、実証的に活用した(1947年)ことによって方法論としても確立された。
(付記)Sydow の発音は英仏独などでも一定していない。ちなみにカール・ヴィルヘルム・フォン・シイドォウの息子でハリウッドの俳優は日本ではマックス・フォン・シドーと表記されている。
参考文献
[編集]- インゲボルク・ヴェーバー=ケラーマン著『ヨーロッパ・エスノロジーの形成 : ドイツ民俗学史』(2003年 アンドレーアス・C・ビマーとジークフリート・ベッカーによる改訂版) 河野眞訳 文緝堂 2011, p.130-141 (「ウィーン学派とスウェーデン学派 ー 同時代の両極」).
- 河野眞 ドイツ民俗学とナチズム 創土社 2005, p.525-341(「スウェーデン学派の導入 ー マンハルトとフレイザーへの批判」)」).
- 河野眞 昔話研究における<自家類型>(oicotype)の概念をめぐって ― シイドォウ理論の再検討 ― (1) 愛知大学一般教育研究室『一般教育論集』第42集(2012). p.49-61.