スターバト・マーテル (ハイドン)
スターバト・マーテル Hob.XXbisは、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが1767年に作曲した声楽作品。13曲からなる大規模な受難オラトリオ風の作品である[1]。
大部分の曲が遅く、短調の曲と長調の曲が交替する。この点で後の『十字架上のキリストの最後の7つの言葉』と共通する[2]。
演奏時間は約1時間。
概要
[編集]1766年3月にエステルハージ家の楽長ヴェルナーが没し、副楽長だったハイドンが楽長に就任すると、『チェチリア・ミサ』を皮切りに、それまでヴェルナーの担当だった宗教作品を次々に発表した。『スターバト・マーテル』もその中の1曲である[3]。
『スターバト・マーテル』には自筆原稿がないが、1768年の手紙の中で1年前に作曲したと言っているため、1767年の作曲と考えられる[4]。
当時の教会音楽、とくに当時ウィーンに住んでいたハッセの影響を受けており、ハイドンは筆写譜をハッセに送っている[3]。
1771年3月29日にはウィーンのマリア・トロイ教会(ピアリスト教会)で演奏された[5]。
1780年代にはいると、この曲はヨーロッパ中で有名になった[6]。晩年のオラトリオ『天地創造』以前、『スターバト・マーテル』はハイドンのもっとも有名な声楽曲だった[2]。
パリでは1781年にコンセール・スピリチュエルによって初演され、好評のため4回演奏された[7]。ロンドン、ドイツ各地、ローマでも演奏された[2]。
1803年には弟子のノイコムによってオーケストレーションがやり直された。1802年の『ハルモニー・ミサ』を最後としてハイドンは毎年のミサ曲の作曲をやめたため、1803年9月にミサ曲のかわりに演奏された可能性があるという[2]。
歌詞は本来のスターバト・マーテルとは少し異なっている。とくに第12曲の「Fac me cruce」の部分(第19詩節)は本来のスターバト・マーテルには存在せず、他の作曲家の作品にも見えない[2]。
編成
[編集]第2曲と第10曲ではオーボエにかわってコーラングレが使用される。ハイドンは同時期の大オルガン・ミサでもコーラングレを使用している。
構成
[編集]- Stabat Mater dolorosa - ラルゴ、ト短調、テノール独唱と合唱。
- O quam tristis - ラルゲット、変ホ長調、アルト独唱。
- Quis est homo - レント、ハ短調、合唱。
- Quis non posset - モデラート、ヘ長調、ソプラノ独唱。
- Pro peccatis - アレグロ・マ・ノン・トロッポ、変ロ長調、バス独唱。
- Vidit suum - レント、ヘ短調、テノール独唱。
- Eia Mater - アレグレット、ニ短調、合唱。
- Sancta Mater - ラルゲット、変ロ長調、ソプラノとテノールの独唱。
- Fac me vere - ラグリモーゾ、ト短調、アルト独唱。
- Virgo virginum praeclara - アンダンテ、変ホ長調、独唱者たちと合唱。
- Flammis orci ne succendar - プレスト、ハ短調、バス独唱。
- Fac me cruce - モデラート、ハ長調、テノール独唱。
- Quando corpus - ラルゴ・アッサイ、ト短調、ソプラノとアルトの独唱と合唱。
最後の「Paradisi gloria」はソプラノ独唱と合唱によるト長調のアーメン・フーガになる。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- 大宮真琴『新版 ハイドン』音楽之友社〈大作曲家 人と作品〉、1981年。ISBN 4276220025。
- Larsen, Jens Peter (1982) [1980]. The New Grove Haydn. Papermac. ISBN 0333341988
外部リンク
[編集]- スターバト・マーテル Hob. XXa:1の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- スターバト・マーテル作曲の楽譜 - Choral Public Domain Library (ChoralWiki)