ソングス・オブ・イノセンス (U2のアルバム)
『ソングス・オブ・イノセンス』 | ||||
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U2 の スタジオ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 |
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ジャンル | ロック | |||
時間 | ||||
レーベル |
アイランド・レコード[1] ユニバーサルミュージック | |||
プロデュース | デンジャー・マウス, ポール・エプワース, ライアン・テダー, ディクラン・ギャフニー, フラッド | |||
U2 アルバム 年表 | ||||
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『ソングス・オブ・イノセンス』 (Songs of Innocence) は、アイルランドのロックバンド、U2のスタジオ・アルバム。
概要
[編集]2009年の『ノー・ライン・オン・ザ・ホライゾン』以来5年7ヶ月ぶりのアルバム。プロデューサーにデンジャー・マウス、ポール・エプワース、ライアン・テダーらを迎え、レコーディングを行った。
タイトルはウィリアム・ブレイクの詩集『Songs of Innocence and of Experience(無垢と経験の歌)』にちなんで命名された。2017年発表のアルバム『ソングス・オブ・エクスペリエンス』とは連作の関係にある。
アルバム・ジャケットはグレン・ラッチフォードが担当し、ラリー・マレン・ジュニアとその息子が写っている。初期の『ボーイ』『WAR(闘)』のような作風になっている。
iTunes先行配信に関する問題
[編集]2014年9月10日、iTunesでアルバムが先行配信され、10月13日まで無料でダウンロード可能となった。ユーザーの設定によるがアップルのデバイスに自動でダウンロードされ、iCloudにログインしているユーザーには、自動で購入済みに無償で追加される。購入済みに追加されたユーザーから、アルバムを勝手に購入されたなどの苦情が相次いだ。
苦情を受けたアップルは、16日までにU2のアルバムをiTunesのアカウントから消去するためのウェブサイトを設けている[2][注釈 1]。
これに対し、ボノは「削除したいって人達もいる。でも、この5年間でU2以上にU2の曲を削除した人はいないよ。これだけ多くの人達が曲を聴いてくれた。それには本当にワクワクする。僕が言えるのは、このジャンク・メールの中には血と涙と汗が詰まってるってことだけだ」とコメント[3]。しかし後日、ファンとのQ&Aに応える形で「素晴らしいアイデアに思えて、舞い上がってしまった。自分たちの楽曲が聴かれないかもしれないという恐怖感があった。どうやら私達がうるさくやりすぎてしまったのかもしれない」と謝罪の旨を表明した[4]。
シャロン・オズボーンはU2に対しTwitterで「中年の政治グルーピーの集まりに過ぎないわね」などと綴り、U2やiTunes、ジミー・アイオヴィンを強く批判していた[5]が、後に撤回している[6]。オジー・オズボーンは「U2はフリーでアルバムを配る余裕はある。しかし他のバンドはそんなことはできない。だから新人バンドには難しくなるんだ。ありえないくらい自分勝手だ」と、イギー・ポップも「『俺たちに強制しないでくれ』と言おうとしていた彼らの意見は正しい」と発言し、それぞれ批判した[7]。
逆にメタリカのラーズ・ウルリッヒは、「俺にとってはこの試みは成功するかどうかが問題なんじゃないんだ。これだけ過激なことを俺たちに投げつけてみるだけの根性がU2には備わっていたこと、それとそれだけ先を見ていたという事実が俺には重要なんだよ」と賞賛するコメントをした[8]。またノエル・ギャラガーは、「音楽をタダで配ったりするのには、同意できないね。アルバムというのは、作るのにかなりのコストがかかるものなんだからさ。まあ、当然U2はこれ以上、金はいらないのかもしれないし、それは良かったですね、という感じだけど、俺はこの先も、絶対に無料配信とかはないね」としつつも、「1つ確実に言えるのは、U2はファンを2人増やした。アルバムが無料配信されてから、俺の息子2人とも、今じゃU2の大ファンだからね」と発言した[9]。メガデスのデイヴィッド・エレフソン[10]、トレント・レズナーも肯定のコメントをしている[要出典]。
Innocence + Experience Tour
[編集]アルバムリリース後のツアーは「Innocence + Experience Tour」(オフィシャルポスターはiNNOCENCE + eXPERIENCE)というタイトルで、2015年5月14日のバンクーバー公演からスタート。前回の「360°Tour」とは異なり、マディソン・スクエア・ガーデンやO2アリーナといったアリーナがメインとなった。上述のような問題とは裏腹にアメリカ、カナダ公演のチケットはソールドアウトするなど、成功を収めている。ツアーでは初日にエッジがステージから落ちたり[11]、ツアー中にマネジメントが心臓発作で他界[12]するなどのトラブルも起きた一方、マディソン公演ではレディー・ガガやポール・サイモン、ブルース・スプリングスティーンなどがゲストで参加するなど大きな話題を呼んだ。
同年9月からはイタリアのパラスポーツ・オリンピコ公演からヨーロッパツアーがスタートした。10月26日にはノエルが、29日にはパティ・スミスがゲストで参加した。
収録曲
[編集]楽曲一覧
[編集]全作詞: ボノ, ジ・エッジ、全作曲: U2。 | |||
# | タイトル | プロデューサー | 時間 |
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1. | 「ザ・ミラクル (オブ・ジョーイ・ラモーン) -The Miracle (of Joey Ramone)」 | デンジャー・マウス, ポール・エプワース, ライアン・テダー | |
2. | 「エヴリー・ブレイキング・ウェィヴ - Every Breaking Wave」 | マウス, デダー デクラン・ギャフニー[a] | |
3. | 「カリフォルニア(ゼア・イズ・ノー・エンド・トゥ・ラヴ) - California (There Is No End to Love)」 | ギャフニー, エプワース, マウス | |
4. | 「ソングス・フォー・サムワン - Song for Someone」 | デダー, フラッド | |
5. | 「アイリス(ホールド・ミー・クローズ) - Iris (Hold Me Close)」 | エプワース, テダー, マウス[a] | |
6. | 「ヴォルケーノ - Volcano」 | ギャフニー, エプワース[a] | |
7. | 「ライズド・バイ・ウルヴス - Raised by Wolves」 | ギャフニー, マウス | |
8. | 「シダーウッド・ロード - Cedarwood Road」 | マウス, エプワース | |
9. | 「スリープ・ライク・ア・ベイビー・トゥナイト - Sleep Like a Baby Tonight」 | マウス | |
10. | 「ディス・イズ・ホエア・ユー・キャン・リーチ・ミー・ナウ - This Is Where You Can Reach Me Now」 | デンジャー・マウス | |
11. | 「ザ・トラブルズ - The Troubles」 | マウス, ギャフニー[a] | |
合計時間: |
- Notes
- ^[a] signifies an additional producer
- ^[b] 以下の6曲が収録されている
- 1. "Every Breaking Wave"
- 2. "California (There is No End to Love)"
- 3. "Raised By Wolves"
- 4. "Cedarwood Road"
- 5. "Song For Someone"
- 6. "The Miracle (of Joey Ramone)" (Busker Version)
- ^[c] 海外アナログ盤収録曲
楽曲解説
[編集]- カリフォルニア(ゼア・イズ・ノー・エンド・トゥ・ラヴ) - California (There Is No End to Love)
- 80年代初期に初めてカルフォルニアに行った思い出が綴られている。タイトルの地名が入っているのは「Miami」「New York」に続いて3曲目。
- アコギヴァージョンはカリフォルニアのマリブでレコーディングされ、デラックス・エディションに収録された。このヴァージョンではエッジはピアノを弾いており、デヴィッド・キャンベルによるストリングス・アレンジメントが施されている。
- アイリス(ホールド・ミー・クローズ) - Iris (Hold Me Close)
- 「I Will Follow」「Tomorrow」「Mofo」についで14歳の時に亡くなった母アイリス・ヒューソンについての曲。歌詞にKraftwerkのアルバム『Man Machine』の名前が出てくるのは、母親が亡くなったのとのぼ同時期に、アリと出会い、彼女に初めて贈ったプレゼントが、それだったから。
- ちなみに1994年、ボノはシム・シェリダンのIRAをテーマにした映画『父に祈りを』のサントラに、ギャヴィン・フライデーとモーリス・シーザーと一緒に「In the Name of the Father」「Billy Boola」「You Made Me the Thief of Your Heart」の3曲を提供している。このうち「In the Name of the Father」と「Billy Boola」はボノとギャビンが歌い、「You Made Me the Thief of Your Heart」はシネイド・オコナーが歌った。そして「You Made Me the Thief of Your Heart」のシングルのB面にはサントラ未収録の「The Father and His Wife the Spirit」というインスト曲が収録されているだが、これが「Iris (Hold me Close)」に酷似[15]しているのだという。
- 2022年8月、Aviciiの「Stars Don't Go Feat. U2」という曲が、ネット上にリークされた。[16]「Iris」の初期ヴァージョンと思われる。
- ヴォルケーノ - Volcano
- 母親が亡くなって荒れた心情を歌っている。
- Verse 3の「You were alone / And now you’re not alone / You were alone / You are Rock N Roll / You and I are Rock N Roll / You are Rock N Roll / You and I are Rock N Roll」は未発表曲の「Glastonbury」のサビの部分を使っている。またこの部分は『Songs of Experience』に収録された「Americal Soul」でも使われている。
- ライズド・バイ・ウルヴス - Raised by Wolves
- ボノが遭遇した1974年5月17日ダブリンで起きたIRAによる自動車爆破テロ事件がテーマ。元々はポップな曲だったが、ボノが仕上げた歌詞がダークな内容だったために方向転換を迫られたとのこと。
- アコギヴァージョンはカリフォルニアのマリブでレコーディングされ、デラックス・エディションに収録された。このヴァージョンではエッジはピアノを弾いており、デヴィッド・キャンベルによるストリングス・アレンジメントが施されている。
- シダーウッド・ロード - Cedarwood Road
- タイトルはボノがギャビンやグッギとともに生まれ育った通りの名前。エッジがラリーが作ったドラムループに合わせてGarage Bandというアプリケーションで作ったギターリフが冒頭で使われており、これに合うようにボノが作詞を行った。
- アコギヴァージョンはカリフォルニアのマリブでレコーディングされ、デラックス・エディションに収録された。このヴァージョンではエッジはピアノを弾いており、デヴィッド・キャンベルによるストリングス・アレンジメントが施されている
- スリープ・ライク・ア・ベイビー・トゥナイト - Sleep Like a Baby Tonight
- カソリック教会の児童虐待がテーマ。デラックスエディションにTchad Blakeによる「Alternate Perspective Mix」が収録されている。
- ディス・イズ・ホエア・ユー・キャン・リーチ・ミー・ナウ - This Is Where You Can Reach Me Now
- The Clash賛歌。
- ザ・トラブルズ - The Troubles
- タイトルのThe Troublesとは北アイルランド問題のことである。
- スウェーデンの新星歌姫リッキ・リーがバックコーラスを務めている。デンジャー・マウスに誘われ、メンバー不在のロサンゼルスのスタジオでレコーディングされた。その後、ロンドンで再レコーディングした際、ボノと顔を合わせたのだという。リーの父親は自分の娘がU2と一緒に仕事をしたことをなかなか信じなかったのだとか。[17]
- デラックスエディションにAlternate Versionが収録されている。
- なおこの曲では元Dirty Projectersのエンジェル・デラドオリアンもバックコーラスをレコーディングしたが、こちらはボツになった。
評価
[編集]イヤーオブ
[編集]- 2014年ローリングストーン年間ベストアルバム第1位[18]
- 2014年ローリングストーン読者が選ぶ年間ベストアルバム第2位[19]
- 2014年Qマガジン年間ベストアルバム第44位[20]
- 2014年テレグラフ年間ベストアルバム第12位[21]
- 2014年ビレッジヴォイスが選ぶJazz&Popリスト第69位[22]
オールタイム
[編集]脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ ただし、削除すると有料配信されるまで利用不可になる。
出典
[編集]- ^ “Songs of Innocence U2”. Apple Music. 2024年8月6日閲覧。
- ^ “U2って誰だよ…無料配信に苦情殺到 「削除してくれよ」「こんなのいらない」 (2/3ページ)”. SankeiBiz (2014年9月22日). 2014年9月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月6日閲覧。
- ^ Ako Suzuki (2014年9月20日). “賛否両論の無料配信に、U2「騒ぎを起こすのが僕らの役目”. BARKS. 2024年8月6日閲覧。
- ^ “U2のボノ、新作『ソングス・オブ・イノセンス』の無料一括配信について「ごめん」”. ロッキング・オン ドットコム. ロッキング・オン (2014年10月15日). 2024年8月6日閲覧。
- ^ Ako Suzuki (2014年9月18日). “シャロン・オズボーン、U2を攻撃”. BARKS. 2024年8月6日閲覧。
- ^ “シャロン・オズボーン、U2の態度に自己嫌悪”. BARKS (2015年1月14日). 2024年8月6日閲覧。
- ^ Jay Kogami (2014年10月21日). “アップルとU2のiTunesアルバム・フリーダウンロード戦略を厳しく批判する海外アーティスト達:「音楽の価値を引き下げた」”. Musicman. 2014年10月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月6日閲覧。
- ^ “メタリカのラーズ・ウルリッヒ、U2の新作リリース方法は称賛に値すると語る”. ロッキング・オン ドットコム. ロッキング・オン (2014年10月3日). 2024年8月6日閲覧。
- ^ “ノエル、U2の無料配信にちなみコールドプレイ新作のリリース形態を大胆予測”. ロッキング・オン ドットコム. ロッキング・オン (2014年12月10日). 2024年8月6日閲覧。
- ^ “メガデスのD・エレフソン、U2の新作無料配信を「尊敬の念しかない」と擁護”. ロッキング・オン ドットコム. ロッキング・オン (2014年12月18日). 2024年8月6日閲覧。
- ^ 宮嵜広司 (2015年5月17日). “U2ツアー2日目。B.B.キングとの「When Love Comes To Town」を22年ぶりに演奏”. ロッキング・オン ドットコム. ロッキング・オン. 2024年8月6日閲覧。
- ^ “U2のツアー・マネージャーのデニス・シーハンがツアー中に心臓発作で他界”. ロッキング・オン ドットコム. ロッキング・オン (2015年5月28日). 2024年8月6日閲覧。
- ^ “ノエル・ギャラガー、U2との共演に「夢が叶った」と語る”. ロッキング・オン ドットコム. ロッキング・オン (2015年10月30日). 2024年8月6日閲覧。
- ^ “ソングス・オブ・イノセンス [SHM-CD]”. ユニバーサルミュージック. 2024年8月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月6日閲覧。
- ^ “u2songs | The History Mix Gavin Friday |”. www.u2songs.com. 2024年4月6日閲覧。
- ^ “u2songs | U2 vs Avicii Leak |”. www.u2songs.com. 2024年6月1日閲覧。
- ^ Grow, Kory (2014年9月11日). “How Lykke Li Wound Up on U2's Secret Album” (英語). Rolling Stone. 2024年4月6日閲覧。
- ^ “Rocklist.net....Rolling Stone (USA) Lists Page 2...”. www.rocklistmusic.co.uk. 2024年4月6日閲覧。
- ^ “読者投票による「2014年の年間ベスト・アルバム TOP10」を米ローリングストーン誌が発表”. amass. 2024年4月6日閲覧。
- ^ “Rocklist.net...Q End Of Year Lists Lists .....”. www.rocklistmusic.co.uk. 2024年4月6日閲覧。
- ^ “英国の新聞The Telegraphが「2014年の年間ベスト・アルバム TOP50」を発表”. amass. 2024年4月6日閲覧。
- ^ “Rocklist.net...Village Voice (Pazz & Jop) Lists 2014 .....”. www.rocklistmusic.co.uk. 2024年4月6日閲覧。
- ^ “Rocklist.net - Best Albums Of The Decade (2010's)”. www.rocklistmusic.co.uk. 2024年4月6日閲覧。
- ^ “Rocklist.net....Rolling Stone (USA) Lists Page 2...”. www.rocklistmusic.co.uk. 2024年4月6日閲覧。