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ダルマエナガ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ダルマエナガ科
ズグロムシクイ
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: スズメ目 Passeriformes
亜目 : スズメ亜目 Passeri
小目 : スズメ小目 Passerida
上科 : ウグイス上科 Sylvioidea
: ダルマエナガ科 Sylviidae
学名
Sylviidae Vigors1825
シノニム

Paradoxornithidae Horsfield et Moore[1]1854

20属

ダルマエナガ科(ダルマエナガか、学名 Sylviidae)は、鳥類スズメ目の科である。

主に旧大陸の中低緯度に生息するが、ミソサザイモドキのみアメリカ西海岸に生息する。

名称

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学名どおりにはズグロムシクイ科であり、ダルマエナガ科 Paradoxornithidaeシノニムである。ダルマエナガ科 Paradoxornithidae を単独の科とする説もあった。

ウグイスを含む場合はウグイス科、ヨシキリを含む場合はヨシキリ科と和名が変化する。ただし現代的な分類では、ウグイスはウグイス科 Cettiidae、ヨシキリはヨシキリ科 Acrocephalidae に分離される。

系統と分類

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系統樹は Genalg et al.(2009)[2]より。ダルマエナガ科内の系統名「~類」は仮のものである。

ダルマエナガ科

ゴシキチメドリ Myzornis

ズグロムシクイ類

キンムネチメドリ Lioparus

ノドジロチメドリ類

ダルマエナガ類(ミソサザイモドキを含む)

メジロ科 Zosteropidae

チメドリ科 Timaliidae

現代的な分類でのダルマエナガ科は、チメドリ科 Timaliidae +メジロ科 Zosteropidae姉妹群である(メジロ科をチメドリ科に含めるならチメドリ科が姉妹群となる)[3][2]

ズグロムシクイ属は伝統的にチメドリ科とされた数種を内包する側系統である。これらの一部はズグロムシクイ属に含めることが議論されている[4]

ダルマエナガ類はミソサザイモドキを内包する側系統である。かつてはオオダルマエナガ Conostoma 以外のダルマエナガ類は1属ダルマエナガ属 Paradoxornis にまとめられていたが、ミソサザイモドキとオオダルマエナガを内包する側系統だったため、複数属に分割された。

歴史

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現在のダルマエナガ科が単系統として認識されたのは最近のことであり、ズグロムシクイ属 Sylvia とそれ以外では、異なる分類史を持つ。

これらは共に Hartert (1910) により拡大されたヒタキ科 Muscicapinae に含められたが、その中で異なる亜科とされた。それらの亜科は Amadon (1957)Wetmore (1960) により別々の科となっており、現在の科に相当する。

ズグロムシクイ属はヒタキ科ウグイス亜科 Sylviinae / ウグイス科 Sylviidae に含まれた。この科はウグイスなど「旧世界ムシクイ類Old World warblers からなる科だったが、それらの類似は収斂進化のためであり、系統が判明するといくつもの科に解体された。ズグロムシクイ属は旧世界ムシクイ類の中では孤立した系統位置にあり、それを含む科として定義される Sylviidae はズグロムシクイ属のみの単型科ズグロムシクイ科となった[5][6]

ズグロムシクイ属以外の属はヒタキ科チメドリ亜科 Timaliinae / チメドリ科 Timaliidae に含まれていた。ただし、ダルマエナガ類とミソサザイモドキはこの科に含めるかどうか議論があった。当初これらは、Delacour (1946) によりヒゲガラ属 Panurus と共にチメドリ科ミソサザイ族 Chamaeini にまとめられた。しかしダルマエナガ類は、ダルマエナガ亜科 Paradoxornithinae / ダルマエナガ科 Paradoxornithidae に分離されたり (Mayr & Greenway 1956)、ヒゲガラ属と共に分離(科名はダルマエナガ亜科 / ダルマエナガ科のこともヒゲガラ亜科 Panurinae / ヒゲガラ科 Panuridae のこともあった)されたりした。ミソサザイモドキは単型のミソサザイモドキ科 Chamaeidae に分離されたりした (Wetmore 1960)[7]

Sibley and Ahlquist (1990)ダルマエナガ亜科 Sylviinae にチメドリ類・ズグロムシクイ属・ミソサザイモドキ・ダルマエナガ類をまとめた。ただし、ズグロムシクイ属とミソサザイモドキはそれぞれ単型のズグロムシクイ族 Sylviini・ミソサザイモドキ族に、ダルマエナガ類はチメドリ類と共にダルマエナガ族 Timaliini に分けられた。

Cibois (2003)[8]やそれに続く[9][2]DNAシーケンス系統により、ダルマエナガ類、ミソサザイモドキ、さらにチメドリ類の一部が、チメドリ類の主流とは別系統で、ズグロムシクイ属を内包することが明らかになった。これらは合わせてダルマエナガ科 Sylviidae となった[10]。この際、かつてのチメドリ属 Alcippe多系統だと判明し3–5分割され、うち2属がダルマエナガ科に移された。

属と種

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国際鳥類学会 (IOC)[11]による。ただし系統的にいくつかのグループに分けた。和名は厚生労働省[12]などより。20属70種。

ゴシキチメドリ

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ズグロムシクイ類

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キンムネチメドリ

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ノドジロチメドリ類

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ダルマエナガ類

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出典

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  1. ^ デービッド・ムーア(1808年 – 1879)植物学者 or Frederic Moore(1830 – 1907)昆虫学者 or Joseph Curtis Moore(1914-1995)動物学者
  2. ^ a b c Gelang, M.; Cibois, A.; Pasquet, E.; Olsson, U.; Alström, P.; Ericson, P.G.P. (2009), “Phylogeny of babblers (Aves, Passeriformes): major lineages, family limits and classification”, Zoologica Scripta 38 (3): 225–236, doi:10.1111/j.1463-6409.2008.00374.x, http://www.nrm.se/download/18.2656c41712139f1fb5b80006026/Gelang+et+al+Timaliidae+ZSC+09.pdf 
  3. ^ Cibois, Alice (2003), “Mitochondrial DNA phylogeny of babblers (Timaliidae)”, Auk 120 (1): 35–54, doi:10.1642/0004-8038(2003)120[0035:MDPOBT]2.0.CO;2, http://www.bioone.org/doi/abs/10.1642/0004-8038%282003%29120%5B0035%3AMDPOBT%5D2.0.CO%3B2 
  4. ^ Gill, F.; Donsker, D., eds. (2009), “Timaliidae Families”, IOC World Bird Names, Working Draft August 2009, http://www.worldbirdnames.org/updates.html 
  5. ^ Gill, Frank; Donsker, David, eds. (2009), IOC World Bird Names, version 2.0, http://www.worldbirdnames.org/IOC%20Names%20File-2.0.xls 
  6. ^ Billerman, Shawn; Lovette, Irby; et al. (2009), “Recognize six families arising from the breakup of the Sylviidae”, in AOU N&MA Check-list Committee, Proposals 2009-C, p. 19–24, http://www.aou.org/committees/nacc/proposals/2009-C.pdf 
  7. ^ Sibley, C.G. (1970), Family Timaliidae, Babblers, “A Comparative Study of the Egg-White Proteins of Passerine Birds”, Peabody Museum of Natural History and Department of Biology, Yale University, Bulletin 32 (New Heaven, CT)  - 1970年までの分類史は主にこの文献による
  8. ^ Cibois, Alice (2003), “Mitochondrial DNA phylogeny of babblers (Timaliidae)”, Auk 120: 35–54, http://www.jstor.org/pss/4090138 
  9. ^ Alström, P.; Ericson, P.G.P.; Olsson, U.; Sundberg, P. (2006), “Phylogeny and classiWcation of the avian superfamily Sylvioidea”, Mol. Phylogenet. Evol. 38: 381–397, http://www.nrm.se/download/18.4e1d3ca810c24ddc7038000946/Alstr%C3%B6m+et+al+Sylvioidea+MPEV+2006.pdf 
  10. ^ Billerman, S.; Lovette, I.; Chesser, T.; NACC (2009), “Alter the composition of the Timaliidae by merging Zosterops and moving the Wrentit Chamaea fasciata to the Sylviidae”, in AOU N&MA Check-list Committee, Proposals 2009-C, p. 25–27, http://www.aou.org/committees/nacc/proposals/2009-C.pdf 
  11. ^ Gill, F.; Donsker, D., eds. (2010), “Old World Warblers & babblers”, IOC World Bird Names, version 2.6, http://www.worldbirdnames.org/n-warblers.html 
  12. ^ 厚生労働省 動物の輸入届出制度 届出対象動物の種類名リスト 鳥類一覧