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チュウテンカク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
チュウテンカク
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 core eudicots
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : バラ上群 superrosids
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : rosid I / Fabidae
: キントラノオ目 Malpigiales
: トウダイグサ科 Euphorbiaceae
: トウダイグサ属 Euphorbia
亜属 : Euphorbia
: Euphorbia[2]
: チュウテンカク E. ingens
学名
Euphorbia ingens
E.Mey. ex Boiss.
シノニム
  • Euphorbia bilocularis N.E.Br.
  • Euphorbia candelabrum var. bilocularis (N.E.Br.) S.Carter
  • Euphorbia confertiflora Volkens
  • Euphorbia reinhardtii Volkens
  • Euphorbia reinhardtii var. bilocularis (N.E.Br.) Oudejans
  • Euphorbia similis A.Berger
  • Euphorbia tozzii Chiov.[3]
英名
Naboom, Candelabra Tree, Tree Euphorbia

Euphorbia ingensトウダイグサ属植物の一種。園芸名はチュウテンカク(沖天閣)。ツリーユーフォルビア: tree euphorbia)とも呼ばれる[4]

樹高は10メートルを超え、トウダイグサ属では最大級である。幹は下の方から無数の多肉質の枝に分岐し、燭台のような外見となる[5]。種小名の ingensラテン語で「巨大な・大きな」を意味する[6]南アフリカ北部からモザンビークジンバブエに広がる乾燥地帯に分布し、標高1600メートルまでの岩山や砂地に自生する[5]。2019年までエウフォルビア・カンデラブルムEuphorbia candelabrum Trémaux ex Kotschy)の名で呼ばれていた東アフリカや北東アフリカ産の種も実際にはここに含まれる(参照: #分類)。従って出典として用いられている東アフリカならびに北東アフリカの植物に関する資料の中には、エウフォルビア・カンデラブルムの名で言及されているものも含まれ得るということに留意されたい。

乳液は極めて有毒で危険な刺激性物質であり、矢毒として使用されていた[7]

多肉化するトウダイグサ属植物という条件に当てはまるため、ワシントン条約(CITES)附属書IIの適用対象となる[8]

分布

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コンゴ民主共和国エチオピアスーダンソマリアウガンダケニアタンザニアアンゴラザンビアジンバブエマラウイモザンビークエスワティニナミビアボツワナ南アフリカ共和国に分布する[9]

生態

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サバンナや木の混じる開けた草原、岩がちな斜面に生育し、特にシロアリ上にしばしば見られる[10]

ケニアでは低木林や雑木林、木の混じる草原、乾燥常緑林のうち岩がちな急斜面や岩の露出した場所に見られ[11]ナクル湖より上方の丘の中腹に本種の大規模な森林が存在する[10]

特徴

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高木性の多肉植物[12]高さ6-18メートルになり[11]、多数の枝を放射状に斜上してこんもりした樹冠となり、大ろうそく台状となる[12]。茎は4-5稜で鮮緑色から-深緑色だが、古くなると灰褐色となってひび割れる[12]。枝は約15センチメートルごとにくびれ[12]、直径10センチメートル以下である[11]。稜背は歯状の切れ込みとなり、1対の刺と早落性の長さ2-4センチメートルの細葉をつける[12]。刺は長さ5ミリメートル未満である[11]。花は杯状花序[12]短い集散花序になり、黄緑色で[11][13]径2-6センチメートル、総苞は黄色である[12]。果実は赤色で2-3裂する[11]

分類

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「エウフォルビア・カンデラブルム」

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ケニアに分布する多肉植物の専門家であった P.R.O. Bally(1895–1980)はハンス・ディーター・ノイヴィンガーへの私信の形で、チュウテンカクをテオドール・コチーが命名したエウフォルビア・カンデラブルムEuphorbia candelabrum)やアラビアに自生する Euphorbia ammak と同一であるとする見解を伝えていた[10]。そして2019年に、それまでコチーによるエウフォルビア・カンデラブルムとして呼ばれていた東アフリカ-北東アフリカ産の種は実際にはこのチュウテンカクのことであるとする結論が出された[14]。この件の詳細についてはエウフォルビア・カンデラブルム#分類を参照。

毒性

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多肉質な枝の内側には白い乳液が含まれるが、これには強い刺激性や補発癌性を持つインゲノール(ingenol)ジテルペンエステルが含まれる[10]。この乳液が傷口や目に入ると危険である[11]ケニアでは本種の乳液を伝統医療に使用しようと試みた結果、死亡事故が起きたという報告が数件存在する[15]

また、本種から得られたにも刺激性があり、口に炎症を起こすため食用とすることはできないとされる[10]。しかしケニアの乾燥地域において、本種は重要な蜜源植物である[16]

利用

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ウガンダエチオピアケニア東アフリカ3ヶ国における利用法は以下のようなものが見られる[17][18][16]

ウガンダの旗 ウガンダ エチオピアの旗 エチオピア  ケニア
材木 屋根
テーブル -
マッチ -
-
木彫細工 -
楽器 -
- -
- -
ビーハイブ[要曖昧さ回避] - -
- -
家具 - -
ミツバチの餌 - -
接着剤 - -
- 〇(切った枝を使用) -
生け垣
日よけ - -
儀礼用 - -
薬用 - - 〇(人および家畜)
明かり取り - - 〇(乾燥させた枝を燃やす)

薬用

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ケニアではマサイ人およびキプシギス人において産後に胎盤などの娩出を早める目的で、茎を煎じたものが慎重を期した上で女性に処方される[10]

矢毒

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南スーダンにおいてザンデ人やかつてのバリ人英語版(Bari)(Jephson & Stanley (1890)) は乳液を矢毒として用いている、あるいは用いていたという報告がある[10]

諸言語における呼称

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ウガンダ:

エチオピア:

ケニア:

ソマリア:

  • ソマリ語: qulqaal[10]

脚注

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注釈

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  1. ^ ただしこの呼称は本種のほかにナンヨウスギ科ナンヨウスギ属パラナマツAraucaria angustifolia)も指し得る[19]

出典

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  1. ^ Botanic Gardens Conservation International (BGCI) & IUCN SSC Global Tree Specialist Group. (2019). Euphorbia ingens. The IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T146212515A146212517. doi:10.2305/IUCN.UK.2019-2.RLTS.T146212515A146212517.en. Accessed on 14 February 2022.
  2. ^ Dorsey, Brian L., et al. (2013). “Phylogenetics, morphological evolution, and classification of Euphorbia subgenus Euphorbia”. Taxon 62 (2): 291-315. 
  3. ^ Bruyns & Berry (2019:837).
  4. ^ リズデイルら (2007).
  5. ^ a b Euphorbia ingens”. African Plant Database. 2015年3月31日閲覧。
  6. ^ Euphorbia ingens”. Plantz Afrika. 2015年3月31日閲覧。
  7. ^ Hecker, E. (1977). “New toxic, irritant and cocarcinogenic diterpene esters from Euphorbiaceae and from Thymelaeaceae”. Pure Appl. Chem. 49 (9): 1423-1431. doi:10.1351/pac197749091423. 
  8. ^ Species+ https://speciesplus.net/#/taxon_concepts/26429/legal . 2018年10月14日閲覧。
  9. ^ Bruyns & Berry (2019:836).
  10. ^ a b c d e f g h i j Neuwinger (1996:477).
  11. ^ a b c d e f g h i Beentje (1994).
  12. ^ a b c d e f g ブリッケル (2003).
  13. ^ a b リズデイルら (2007).
  14. ^ Bruyns & Berry (2019).
  15. ^ Neuwinger (1996:477f).
  16. ^ a b Maundu & Tengnäs (2005).
  17. ^ a b c d Bekele-Tesemma (2007).
  18. ^ a b Katende et al. (2000).
  19. ^ Davis & Knapp (1992:33).
  20. ^ a b c d e Benson (1964).
  21. ^ a b Leakey (1977).
  22. ^ Payne & Ole-Kotikash (2008).
  23. ^ Kokwaro & Johns (1998).

参考文献

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英語:

日本語:

  • コリン・リズデイルスペイン語版、ジョン・ホワイト、キャロル・アッシャー 著、杉山明子、清水晶子 訳『知の遊びコレクション 樹木』新樹社、2007年、177頁。ISBN 978-4-7875-8556-1

関連文献

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ドイツ語:

  • Jephson, J.M.; Stanley, H.M. (1890). Emin Pascha und die Meuterei in Äquatoria. Leipzig. pp. 95, 121. NCID BA23053495 

関連項目

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