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ツイクスト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ツイクストをプレイするアレックス・ランドルフ(右)。左はAI研究者のクリストフ・エンドレス。

ツイクスト(TwixT)は、アレックス・ランドルフによってデザインされたゲーム。1962年ボードゲームとして発売されたものが有名である。二人零和有限確定完全情報ゲームであり、発売から半世紀を越えた今も、海外・日本国内共に、多くの愛好家を持つ。

英語版の正式な綴りは、最後のTも大文字にした、"TwixT"であり、これはボードに挿したペグをイメージしている。

ツイクストの発祥と歴史

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  • 1957年 - ランドルフが日本に引っ越した翌年、囲碁をヒントに、ペンシル・ゲーム(紙とペンを使って行うゲーム)として考案。実際に囲碁と比較しても、比較的多いマス目、目先の攻撃より大局観を必要とするスキル、陣取りという勝利目的など、共通点が見られる。
  • 1962年3M版 - 同社のシド・サクソンから1961年にボードゲーム化の依頼があり、翌年に発売された。ボックスアートは、赤い背広と蝶ネクタイをした成人男性が、左手を口に当てて長考に沈んでいるシーンを、ボードの下からあおりの視点で、油絵風に描いたもの。このボックスアートは、その後の再版でも使われているものがある。またこの時には『PLOY』など他のゲームも発売されており、ボックスアートはみな共通の作風で描かれている。以下本記事では、この版を「初版」と記す。
  • 1976年アバロンヒル版 - 3Mがゲーム事業を分割した際に継承。
  • 1970年代ドイツ版 - ハズブロとは別に、アバロンヒルからライセンスを受けていた版。
  • 1998年ハズブロ版 - アバロンヒルを吸収した事で版権が移動したが、途中で絶版になっている。
    • なお日本では正式にライセンス販売された事がなく、海外版をそのまま、あるいは自作の簡素な説明書翻訳を本体と共にビニール梱包したか、どちらかのパターンで出回った。
  • 2011年 - ゲーム自体もランドルフ自身も、オリジン賞において殿堂入り。
  • 2020年ジーピー版 - 11月20日、同社より「ツィクスト(大文字のイではなく小文字のィ表記)」のタイトルで日本語版および英語版が発売予定。権利者と正式なライセンス契約を結んだ正規品となる[1]。ゲーム盤やペグ、ブリッジのデザインは一新され、パッケージも既存のボックスアートではなく写真が用いられている。また、発売に先んじて一般社団法人日本ツィクスト連盟が同年9月14日に設立[2]、同月24日に法人登録された[3]

ゲームの概要

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ゲームに使用する用品

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本作のデザインは以下の通り、アブストラクトゲームである。

  • ボード - 初版では箱からスライドする形で4枚に分割されており、これを組み合わせて1枚のボードにする。色は白地が多いが、再版には紺色も存在する。ボードには縦24列×横24行の穴が開いているが、四隅はルール上ペグを挿さないため穴がなく、結果として572個の穴を持つ。また左右と上下はそれぞれ、一番端と一段内側の間には、お互いの陣営の色が付いており、ここが双方の陣地である。
    • 初版には座標が書かれていなかったが、途中の再版からは上下端に左からA,B,C…Xまで、および左右端に上から1,2,3…22まで字がふられ、愛好者はこれを座標として、「B5」「D3」などと表記する。
    • また再版からは位置関係を判りやすくするため、W12~B2~L22、およびそれを90度ずつ回転させたM22~W2~C12、C13~W23~M2、V12~B2~L22の8ヶ所に線を引いた、八方星の意匠が入ったボードも出た(その後の版では、線を減らしたボードも見られる)。愛好者には位置を把握しやすくするため、これらの座標やラインを後から手書きする者もいる。
    • なおボードに見立てた記録用紙に記入していく場合、例えば一方を黒丸の中、もう一方を白丸の中に数字を記入し、(15)などと書く。この部分も囲碁に似ている。
  • ペグ(Peg) - 穴に挿しこむ小さな柱。
  • ブリッジ - スパナのような細長いパーツで、2つのペグの間に渡す。ブリッジは和製英語で、英語では"Link"と呼ぶ。
    • ペグとブリッジ共通の説明
      • 色はチェスリバーシのように、2人のプレイヤーがそれぞれ使う色が決められており、初版では赤と黒、再版では赤と白、赤と黄色、赤と青などが存在する。正式にはチェス同様、色の薄い側を先手が使う。
      • 再版ではペグをチェスのルーク、ブリッジを壁のようにしたデザインも存在する。

ゲームの流れ

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  1. ゲーム開始時、 ボードの穴には何も挿さず、ペグとブリッジはすべて、それぞれの色をプレイヤーの手元に置く。
  2. 先手と後手が交互に必ず一手ずつ指す。パスは無い。この点は多くの二人零和有限確定完全情報ゲームと同じである。
  3. 自分の番が来たプレイヤーは必ず、ボード上の穴のどこか一つに、自分のペグを挿す。ただし前述の敵陣の穴には自分のペグを挿せない。
  4. なお自分のペグが少なくとも2つ挿さっていなければ、ブリッジはかけられないため、自分も相手も第一手はペグのみで、ブリッジはかけられない。
  5. 次に、既に挿されている自分のペグのうち、あるペグともう一つのペグが桂馬飛びの位置関係にあれば、その間に自分のブリッジをかける事ができる。
  6. ただし両ペグの間に、自分・相手を問わず他のブリッジがかかっていては、新たなブリッジはかけられない。つまり一度ブリッジがかかると、それをまたぐ新たなブリッジはかけられない。
  7. ペグと違って、ブリッジには毎回かける義務がなく、かけられなかったり、かけることが出来てもかけたくなかったら、かけなくてよい。
  8. 上記をうまく使うと、一手で2本またはそれ以上のブリッジをかけられる。例えば一手目にD5、二手目にD7、三手目にF6へそれぞれ自分のペグを打ったとして、三手目直後でD5~F6間とD7~F6間どちらにもブリッジがなければ、D5~F6とD7~F6どちらにもブリッジがかけられる。
  9. ブリッジを3方向や4方向に分岐させることも可能で、理論上は最大8本分岐できる。
  10. 一方が上下と左右どちらかの自陣を連結すれば、連結した側の勝ちである。連結しなくても、勝てないと思ったプレイヤーは投了できる。

細則

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  • 先手の第一ペグが、自分にとって不利だと後手が思った場合、後手はそれを自分のペグに変えることが出来る。これは初版発売後、ランドルフ自身により追加された。
  • ブリッジが足りなくなった場合、自分の番に、すでに使っているブリッジを除去することが出来る。前述のペンシル・ゲーム時代には、このルールは存在しなかった。
  • ブリッジのかけ方次第では、どちらのプレイヤーも勝てない、つまり引き分けとなるパターンも存在する。

コンピュータ化

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ツイクストのゲームイメージ。これは実物でなく後述のコンピュータグラフィックス
  • アタリからパソコンゲームとして発売された。しかしリリースされた年度が古いためにCPU思考が弱く、ペグを挿しても所かまわず大量にブリッジを置きまくるなど、人間の相手としては十分なレベルではない。
  • 日本では『月刊アスキー1982年3月号に、if800用のBASICプログラムが投稿された。CPU思考は持たない2人対戦専用で、INPUT命令で座標を入力すると、双方に黄緑と水色でペグやブリッジが描かれる。同程度のグラフィック能力を持つマイクロソフトBASICであれば、移植は容易なため、FM-8で動かすための変更点も掲載されている。4月号には棋譜の読み書き・保存が可能な追加プログラムが投稿された。
  • 権利元の管理が緩いため、ネット上で自作ゲームも多数公開されている。スマートフォンの小さな画面で遊ぶため、画面全体が9×9マスしか見えず、必要な時にはスクロールして見なければいけない仕様のゲームも存在する。
  • オンライン上で不特定多数のユーザと対戦する、いわゆるネット対戦サイトにも存在する(#外部リンク参照)。
  • コンピュータグラフィックスでもモデリングデータが存在するが、これはゲームではない。陣営の色は紫と白。

マインドスポーツオリンピアード

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上記の説明通りマインドスポーツの価値を十分持つため、マインドスポーツオリンピアードにおいても1997年から採用された。各年の優勝者は以下の通りで、2011年からは公式チャンピオンとしても認められている。

類似作品

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  • Diagtwixt - マス目が12×12と小型化されている。
  • Imuri - マス目が30×30で、板には穴を開けていない。ヨーロッパで出回ったが、著作権侵害で回収された。
  • ダイアゴナル・ツイクスト - 訳すと「ダイヤ形のツイクスト」。マス目の22×22は同じだが、穴の開いていない座標が四隅だけでなく、不等辺直角三角形のように偏心している(点対称ではある)。アレンジはマーク・トンプソン。
  • デビッド・ブッシュ版 - 『ダイアゴナル・ツイクスト』に似ているが、穴の並びも直角でなく、斜め45度になっている、なおブッシュは後述の#マインドスポーツオリンピアードに出場、優勝もしている。

その他

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  • 日本でも法人などではない任意団体だが、愛好者団体が存在し、会員数は100人を越えている。囲碁・将棋のような段級位制は存在しない。

脚注

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外部リンク

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