テイト予想 (結び目理論)
テイト予想(テイトよそう、Tait conjectures)とは、19世紀にスコットランドの物理学者ピーター・ガスリー・テイトによって提示された、結び目理論における3つの予想]。長く未解決だったが、現在では全て解決されている。
テイト予想
[編集]テイト予想は交代結び目に関するもので、次の3つからなる(第一予想と第二予想は逆に紹介されることもある)。
- テイトの第一予想
- テイトの第二予想
- テイトの最終予想
- 交代結び目の任意の2つの既約交代射影図について、片方に右図のような反転(Flyping)を有限回施すことによってもう片方の射影図が得られる。
- この予想はテイトの反転予想とも呼ばれ、第一予想と第二予想の両方を含んでいる。
テイトの第一予想と第二予想が正しければ、交代結び目の交点数は簡単にわかることになる。つまり、交代結び目には交代射影図があるはずなので、その交代射影図に存在する除去可能な交点を全て取り除いて既約交代射影図とすれば[注 2]、(テイトの予想1からそれは最小交点射影図なので)その既約交代射影図の交点数を数えるだけで交代結び目の交点数がわかることになる。
また、テイトの反転予想が正しければ、交代結び目の全ての既約交代射影図は、ある既約交代射影図に対して有限回の反転を施して得られることになり、高々有限個ということになる。
解決
[編集]第一予想と第二予想は、1987年頃に村杉邦男・ルイス・カウフマン・ティスツルスウェイトの3人によって独立に(ジョーンズ多項式を使って)解決された。
村杉邦男の論文[1]によると、まず結び目の射影図と平面グラフの対応[注 3]を使って交代絡み目の連結な既約交代射影図の交点数は、その絡み目のジョーンズ多項式の径間[注 4]と等しいことを示し、そのことから第二予想が正しいことを導いている。テイトの予想では交代結び目に限定しているが、射影図が連結であれば交代絡み目に対しても成立することが示されたことになる。第一予想もジョーンズ多項式によって解決されており、素な交代絡み目であればその最小交点射影図は全て既約交代射影図であるということも示されている。また、このとき系(corollary)として交代絡み目同士を連結和させた絡み目は交点数はもとの交点数の和に等しいことや交点数が奇数の交代絡み目は両手型[注 5]ではないことを示している。
テイトの反転予想は、1993年にウィリアム・メナスコとティスツルスウェイトによって解決された[2]。
脚注
[編集]- ^ 既約射影図の定義は結び目理論#結び目の表示を参照。
- ^ 交代射影図から除去可能な交点を取り除いても交代射影図のままとなる。
- ^ 結び目と平面グラフの対応を参照。
- ^ 多項式の最高次数と最低次数の差のことを多項式の径間(span)という。
- ^ ある結び目とその結び目の鏡像が同値のとき、その結び目を両手型結び目という。例えば8の字結び目は両手型結び目であるが、三葉結び目はそうではない。
参考文献
[編集]- C・C・アダムス著、金信泰造訳 『結び目の数学』 培風館、1998年、157-163頁。ISBN 978-4563002541。
- 村杉邦男 『結び目理論とその応用』 日本評論社、1993年、199-202頁。ISBN 978-4535781993。
外部リンク
[編集]- Weisstein, Eric W. "Tait's Knot Conjectures". mathworld.wolfram.com (英語).
- Weisstein, Eric W. "Flyping Conjecture". mathworld.wolfram.com (英語).