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テンダリー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

テンダリー」(英語: Tenderly) は、ウォルター・グロス英語版が作曲し、ジャック・ローレンスが作詞して、1946年に発表されたポピュラー音楽の楽曲。英語の「tenderly」は、「優しく」を意味する副詞である[1]

原曲は変ホ長調4分の3拍子ワルツで書かれていたが、その後4分の4拍子でも演奏されるようになり、ポピュラーなジャズ・スタンダード楽曲となった。特に知られた演奏として、サラ・ヴォーンナット・キング・コールといった歌手によるもの、アート・テイタムビル・エヴァンスペルチン英語版といったピアニストによるものなどがある。

演奏歴

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「テンダリー」の初録音は、ブラジルの歌手でピアニストでもあったディック・ファルネイ英語版による1947年6月15日のものであった。「愛らしい(英語: lovely)ワルツのメロディ」と評されたファルネイのバージョンは、7月にリリースされ好評を得た[2]。2番目の録音は、サラ・ヴォーン1947年7月2日のものであった。彼女のバージョンは、11月15日付でチャートに登場し、最高27位まで上昇した。このバージョンは、「魅惑的な表現(英語: a ravishing rendition)」と評された[3]。続いて、ランディ・ブルックス英語版楽団なども同年に録音した[3][4]。1950年には、ヴォーンがMGMレコードのために、この曲を再度録音した[3]

アート・テイタムオスカー・ピーターソンフィニアス・ニューボーンポール・スミス英語版といったピアノのヴィルトゥオーゾによっても、この曲は盛んに演奏された。ジャズ・シンガーにも盛んに取り上げられ、1960年ごろにはエリック・ドルフィーのような前衛的な奏者にも演奏されるようになった。[4]

またこの曲は、ラテン音楽においてもスタンダード曲となり、キューバの音楽家では、ビセンティコ・バルデススペイン語版モンゴ・サンタマリアボラ・デ・ニエヴェペルチン英語版らがこの曲を取り上げた[5][6]ブラジルトリオ・スルジーナ (ポルトガル語: Trio Surdina)は、サンバ風のバージョンを1953年に録音しており、また、ジェリー・ゴンザレス英語版とロス・コマンドス・デ・ラ・クラーベ (スペイン語: Jerry González y Los Comandos de la Clave)は、2010年にラテン・ジャズのバージョンを録音した。

主な録音

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男声ヴォーカル

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アーティスト 録音年

(発表年)

収録アルバム等 YouTube

Music[註 1]

ディック・ファルネイ英語版 1947 SP盤[2][7] *
チャーリー・スピヴァク英語版 1947 SP盤[3][8] 💽[9]
クラーク・デニス(英語: Clark Dennis) 1948 SP盤/シングル盤[3][10]
ナット・キング・コール[4] 1953 Sings for Two in Love 💽
ビセンティコ・バルデススペイン語版 (1957) Vicentico Valdes Sings[11] 💽
ボラ・デ・ニエヴェ 1970 Hotel Internacional de Varadero – Noviembre 1970 💽

女声ボーカル

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アーティスト 録音年 収録アルバム等 YouTube

Music[註 1]

サラ・ヴォーン 1947 SP盤[3][4][12][13]
1950 Tenderly[3][14]
1954 The Divine Sarah Sings[3] 💽
ローズマリー・クルーニー[4] 1955 Tenderly[15] 💽
アニタ・オデイ w/ オスカー・ピーターソン・カルテット 1957 アニタ・シングス・ザ・モスト英語版 💽
ロバータ・フラック 1994 ロバータ 💽

混声ボーカル

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アーティスト 録音年 収録アルバム等 YouTube

Music[註 1]

ルイ・アームストロング(Tp., Vo.)&エラ・フィッツジェラルド(Vo.) 1956 エラ・アンド・ルイ英語版 [4][12] 💽

インストゥルメンタル

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アーティスト 録音年

(発表年)

収録アルバム等 YouTube

Music[註 1]

ランディ・ブルックス英語版楽団 1947 SP盤/シングル盤[3][4][16] *
エロル・ガーナー(Pf.)[4] 1947 SP盤[17]
ウディ・ハーマン(Cl.) 1949 [4] 💽[18]
アート・テイタム(Pf.) 1953 The Art Tatum Solo Masterpieces Vol. 3[4] 💽
トリオ・スルジーナ (1953) Trio Surdina 💽
ベン・ウェブスター(T.Sax.) 1953 キング・オブ・テナーズ英語版[12] 💽
バド・パウエル(Pf.)[4] 1955 ジャズ・オリジナル 💽
ハリー・ジェイムス楽団[4] 1955 Jazz Session [19] 💽
デクスター・ゴードン(T.Sax.)[4] 1955 ホット&クール英語版 💽
デューク・エリントン[4]楽団 1957 エリントン・インディゴス英語版[12] 💽
ペルチン英語版(Pf.) 1958 Piano con moña
ビル・エヴァンス(Pf.) 1959 エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス英語版[12] 💽
エリック・ドルフィー(A.Sax.) 1960 ファー・クライ英語版 [4][12] 💽
モンゴ・サンタマリア(Conga, Bongo)[4] (1962) Mighty Mongo[20] 💽
フィニアス・ニューボーン (Pf.) 1969 ハーレム・ブルース英語版[12]
オスカー・ピーターソン(Pf.) 1975 デュオ・ライブフランス語: À la Salle Pleyel [4] 💽
グレート・ジャズ・トリオ 1976 ラブ・フォー・セール英語版[註 2]
ポール・スミス英語版[4] ラブ・フォー・セール(英語: Heavy Jazz – Vol. 2)[22] 💽[註 3]
ジョージ・ベンソン(E.Gt.) 1989 テンダリー 💽
デヴィッド・S・ウェア英語版(T.Sax.) 1994 アースクウェイション英語版 [4]
ゲイリー・バートン(Vib.)[4]&フレンズ 1996 デパーチャー(英語: Departure [4][12] 💽
バド・シャンク(A.Sax.)・ミーツ・ザ・リズムセクション 1996 スイングジャーナル・リーダーズ・リクエスト英語: By Request[12][23]
ジャン=ミシェル・ピルク(Pf.)・トリオ 2002 ウェルカム・ホーム(英語: Welcome Home[24] 💽
ジェリー・ゴンザレス英語版(Tp.) (2010) Avísale a Mi Contrario Que Aquí Estoy Yo 💽

脚注

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  1. ^ a b c d 💽:YouTube Musicの左掲のアルバムの当該トラックへのリンク。♬:YouTube Music の左掲とは異なるアルバムの当該トラックへのリンク。録音の同定のための情報が不足しているものにはアスタリスクを附した。
  2. ^ 再発盤のボーナス・トラック[21]
  3. ^ タイトルは異なるが、#6以降が左掲盤と同一である。

出典

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  1. ^ tenderlyとは”. ALC PRESS INC.. 2020年3月29日閲覧。
  2. ^ a b “Dick Farney” (英語). The Billboard 59 (28): 35. (1947-07-19). https://books.google.es/books?id=VgwEAAAAMBAJ&pg=PA35. 
  3. ^ a b c d e f g h i Sullivan, Steve (2013) (英語). Encyclopedia of Great Popular Song Recordings. Scarecrow Press. p. 536. ISBN 978-0-8108-8296-6. https://books.google.es/books?id=QWBPAQAAQBAJ&pg=PA536 
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u Gioia, Ted (2012-07-06). “Tenderly”. The Jazz Standards: A Guide to the Repertoire. New York City: Oxford University Press. pp. 424–425. ISBN 978-0-19-993739-4. https://books.google.co.jp/books?id=7WC8CgAAQBAJ&lpg=PA423&dq=jazz%20standard%20tenderly&hl=ja&pg=PA424#v=onepage&q=jazz%20standard%20tenderly&f=false 
  5. ^ Reyes, José (2018) (スペイン語). Música cubana: La aguja en el surco. Ediciones Cubanas. p. 113. ISBN 978-959-7230-89-2. https://books.google.es/books?id=LP8oDgAAQBAJ&pg=PT113 
  6. ^ Leymarie, Isabelle (1997) (フランス語). Cuban fire: musiques populaires d'expression cubaine. Outre Mesure. p. 134. https://books.google.es/books?id=1GRaAAAAMAAJ 
  7. ^ Dick Farney - Too Marvelous For Words / Tenderly (1947, Shellac)”. Discogs. 2020年12月21日閲覧。
  8. ^ Golden Earrings / Tenderly”. Discogs. 2020年12月21日閲覧。
  9. ^ Charlie Spivak And His Orchestra - What's Cookin' Charlie? '41 - '47 (1999, CD)”. Discogs. 2020年12月21日閲覧。
  10. ^ Clark Dennis - Tenderly / All The Things You Are”. Discogs. 2020年12月21日閲覧。
  11. ^ Vicentico Valdes Sings: Cuba's Dynamic Rhythm Vocalist”. Discogs. 2020年12月21日閲覧。
  12. ^ a b c d e f g h i Maycock, Ben. “Tenderly (1946): Recommendations for This Tune”. JazzStandards.com. 2020年12月21日閲覧。
  13. ^ Tenderly / Don't Blame Me”. Discogs. 2020年12月21日閲覧。
  14. ^ Sarah Vaughan - Tenderly”. Discogs. 2020年12月21日閲覧。
  15. ^ Rosemary Clooney - Tenderly (1955, Vinyl)”. Discogs. 2020年12月21日閲覧。
  16. ^ Lamplight / Tenderly”. Discogs. 2020年12月21日閲覧。
  17. ^ Errol Garner* - Tenderly / Someone To Watch Over Me”. Discogs. 2020年12月21日閲覧。
  18. ^ Woody Herman And His Orchestra - Early Autumn”. Discogs. 2020年12月21日閲覧。
  19. ^ Harry James And His Orchestra – Jazz Session - Discogs (発売一覧)
  20. ^ Mongo Santamaria - Mighty Mongo”. Discogs. 2020年12月21日閲覧。
  21. ^ ラヴ・フォー・セール [生産限定盤[CD] - ザ・グレイト・ジャズ・トリオ]”. UNIVERSAL MUSIC JAPAN. 2020年12月21日閲覧。
  22. ^ Heavy Jazz, Vol. 2 - Paul Smith”. AllMusic. 2020年12月21日閲覧。
  23. ^ By Request: Bud Shank Meets the Rhythm Section - Bud Shank”. AllMusic. 2020年12月21日閲覧。
  24. ^ Welcome Home - Jean-Michel Pilc Trio”. AllMusic. 2020年12月21日閲覧。

外部リンク

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