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デイヴィッド・ステュアート

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

デイヴィッド・S・ステュアート英語: David S. Stuart1965年 -)は、アメリカ合衆国考古学者マヤ文字碑文研究者。主にコパンパレンケピエドラス・ネグラス、ラ・コロナ、サン・バルトロなどを調査している[1]

経歴

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ステュアートはワシントンD.C.に生まれた[2]。父はナショナルジオグラフィックの考古学者[3]として知られるジョージ・E・ステュアート(1935-2014)で、母のジーンもマヤ研究者だった。両親の共著によるマヤ関係の著書もある。両親に連れられて発掘現場を巡ったために、幼いころからマヤ遺跡に親しんだ。

ステュアートの早熟ぶりを伝えるエピソードはマイケル・D・コウ『マヤ文字解読』第10章にも紹介され、よく知られている[4]。両親につれられてパレンケリンダ・シーリーにはじめて会ったとき、シーリーはステュアートがパレンケの太陽の神殿の石板を24分でほぼ完全に解読したことに驚き[5]、1978年の第3回パレンケ円卓会議に招いた。この会議で12歳のステュアートは最初の学術論文を発表した[4]。1980年末にペテン県ナフ・トゥニッチの洞穴壁画の調査に碑文解読者として父とともに参加し、ハアブの月名「パシュ」が他と異なって表音的に書かれていることを発見した[6]

高校時代からダンバートン・オークスのインターンとして働き、1983年に高校を卒業した後、同所で1年間ジュニア研究員をつとめた[5]。1984年には史上最年少の18歳でマッカーサー・フェローに選ばれた[2][7]

1985年にプリンストン大学に入学した。ステュアートは父のジョージが創始した『古代マヤ文字調査報告』誌(“Research Reports on Ancient Maya Writing)に次々と研究を発表した[8]。中でも1987年の論文「Ten Phonetic Syllables」(10音節)[9]は、マヤ文字のうち音節文字の音価を決定する手順を例とともに示したもので、その後のマヤ文字解読に大きな影響を与えた[10][11]

ステュアートはイアン・グレアムリオ・アスルで発見した瓶の銘文を解読し、「カカオ用の瓶」と書かれていると指摘した。ハーシーの食品研究所に調査を依頼したところ、実際にチョコレートの成分が検出された[12][13][14]。また土器の銘文は一般に持ち主、器の形状ならびに用途などから構成されると指摘した[15]。1989年にプリンストン大学を卒業した後、ヴァンダービルト大学で研究を続け、1995年に博士の学位を得た。

1993年から11年間ハーバード大学で教え、かつ同校に附属するピーボディ考古学・民族学博物館キュレーターをつとめた[16]。ステュアートは1994年以降イアン・グレアムによる『マヤ神聖文字碑文集成』(CMHI)の作業の協力者だった[17][18]。1997年にグレアムとステュアートはペテン県の新発見の遺跡を訪れ、ラ・コロナと命名した。ピーター・マシューズが1970年代に調査した「Q遺跡」は存在が不明であったが、ステュアートは2001年にラ・コロナがその遺跡であると判断した[19][20]

2004年にテキサス大学オースティン校の教授に就任した[1]。同大学のメソアメリカセンターの主任でもある[21]

主な著作物

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発行年順。

  • (pdf) Ten Phonetic Syllables. Research Reports on Ancient Maya Writing. 14. Boundary End Archaeology Research Center. (1987). http://www.mesoweb.com/bearc/cmr/RRAMW14-OCR.pdf. "formerly known as The Boundary End Center (BEC)" 
    • Stuart, David (1987). Ten Phonetic Syllables. Washington, D.C. (P.O. Box 65760, Washington 20035-5760): Center for Maya Research. OCLC 18464107 全52頁、図版あり、高さ 28 cm
  • Stuart, David (1988). “The Rio Azul Cacao Pot: Epigraphic Observations on the Function of a Maya Ceramic Vessel” (英語). Antiquity 62: 153-157. doi:10.1017/S0003598X00073634. .
  • Stuart, David (1989). “Hieroglyphs on Maya Vessels”. In Justin Kerr (pdf). The Maya Vase Book: A Corpus of Rollout Photographs of Maya Vases. 1. Kerr Assoc. pp. 149-160. http://www.mesoweb.com/publications/MayaVase/Stuart1989.pdf ISBN 0962420808.
  • Stephen Houston; Oswaldo Chinchilla Mazariegos; David Stuart, eds (2001年頃). University of Oklahoma Press  ISBN 0806132043
  • Stuart, David (2005). “A foreign past : the writing and representation of history on a royal ancestral shrine at Copán”. In E. Wyllys Andrews; William L. Fash. Copán : the history of an ancient Maya kingdom. School of American Research advanced seminar series (1st ed.)  ISBN 9781930618374

参考文献

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主な執筆者、編者の順。

脚注

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注釈

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  1. ^ 日本語訳の書評は『考古学研究』誌に掲載[22]、国立国会図書館の合巻にも収載[23]

出典

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  1. ^ a b Dr. David Stuart” (英語). The University of Texas at Austin. 2021年8月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年7月12日閲覧。
  2. ^ a b David Stuart”. MacArthur Foundation. 2017年7月12日閲覧。
  3. ^ National Geographic Society (U.S.) ; Stewart, George E. Archeological map of Middle America, land of the feathered serpent. 地図(National Geographic Society, Washington, 1968)OCLC 225459858。1枚、カラー、47 × 62 cm。折りたたみ時24 × 16 cm。
  4. ^ a b Coe 1992, pp. 231–233
  5. ^ a b David Stuart” (英語). 75th Anniversary. Dumbarton Oaks (2017年6月15日). 2017年7月12日閲覧。
  6. ^ Coe 1992, pp. 238–239
  7. ^ “18-year-old gets award of $128,000” (英語). The New York Times (The New York Times). (1984年2月15日). http://www.nytimes.com/1984/02/15/us/18-year-old-gets-award-of-128000.html 
  8. ^ Research Reports on Ancient Maya Writing”. Center for Maya Research. 2017年7月12日閲覧。
  9. ^ Stuart, David (1987). Ten Phonetic Syllables. Washington, D.C. (P.O. Box 65760, Washington 20035-5760): Center for Maya Research. OCLC 18464107 全52頁、図版あり、高さ 28 cm
  10. ^ Houston, Chinchilla Mazariegos & Houston 2001, p. 194
  11. ^ The Boundary End Center (BEC) 1987, 第14巻
  12. ^ Graham 2010, p. 217
  13. ^ Coe 1992, pp. 247–248
  14. ^ 『Antiquity』 1988, pp. 153–157
  15. ^ Stuart 1989, pp. 149–160
  16. ^ Graham 2010, pp. 480–481
  17. ^ Graham 2010, p. 401
  18. ^ Corpus of Maya Hieroglyphic Inscriptions: Associates”. Peabody Museum of Archaeology and Ethnology. 2017年7月12日閲覧。
  19. ^ Graham 2010, p. 494
  20. ^ “[R The Importance of La Corona]” (英語) (2013年). 2017年7月12日閲覧。
  21. ^ The Mesoamerica Center: Staff” (英語). The University of Texas at Austin. 2024年1月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年7月4日閲覧。
  22. ^ 穴沢 和光(著)、考古学研究会編集委員会(編)「書評 マイケル・D・コウ(増田義郎訳 武井摩利・徳江佐和子監修)『マヤ文字解読』」『考古学研究』第50巻4(通号200)、考古学研究会、2004年3月、114ー116、国立国会図書館書誌ID:6945702 
  23. ^ 『考古学研究』第50巻第1号-4号(通号197-200)2003-2004年、国立国会図書館書誌ID:000000007685
  24. ^ 原書はReading the Maya glyphs.の第2版。

外部リンク

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