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デッツ反応

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

デッツ反応(—はんのう、Dötz reaction)とは、有機金属化学における合成反応のひとつ。アリール基またはビニル基と、アルコキシ基とで置換されたクロムカルベン錯体を、アルキン、そして一酸化炭素と反応させて、置換フェノールの Cr(CO)3 錯体に変える手法[1][2][3][4][5]

デッツ反応
デッツ反応

反応生成物の置換基の位置選択性は予測可能であり、アルキンで立体障害の高い置換基 (RL) がフェノールのヒドロキシ基の隣接位に、立体障害の少ない置換基 (RS) がアルコキシ基の隣接位に来るように環化が起こる[6][7]。末端アルキン (RS = H) を用いると、位置選択性がより確実となる。

反応生成物のクロム錯体からは、硝酸セリウム(IV)アンモニウム (CAN) の添加や、空気などで穏やかに酸化することで、クロムを遊離させてフェノールを取り出すことができる。

フェノール類がすばやく簡便に得られることから、デッツ反応は天然物合成においてよく用いられる[8][9]

機構

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下の図のように、アルキンへのカルベン錯体の付加から始まり、環化、開環、CO の挿入、環化を経て 4 が生成し、芳香族化により生成物のフェノール 5 となる。

デッツ反応の機構
デッツ反応の機構


参考文献

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  1. ^ Dötz, K. H. Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 1975, 14, 644-645. DOI: 10.1002/anie.197506442
  2. ^ Dötz, K. H.; Dietz, R.; von Imhof, A.; Lorenz, H.; Huttner, G. Chem. Ber. 1976, 109, 2033.
  3. ^ Timko, J. M.; Yamashita, A. Org. Syn., Coll. Vol. 9, p.1 (1998); Vol. 71, p.72 (1993). オンライン版
  4. ^ 総説: Dötz, K. H. Pure Appl. Chem. 1983, 55, 1689.
  5. ^ 総説: Dötz, K. H. New J. Chem. 1990, 14, 433-445.
  6. ^ Wulff, W. D.; Tang, P. C.; McCallum, J. S. J. Am. Chem. Soc. 1981, 103, 7677-7678. DOI: 10.1021/ja00415a058
  7. ^ Chamberlin, S.; Wulff, W. D. J. Org. Chem. 1994, 59, 3047-3054. DOI: 10.1021/jo00090a024
  8. ^ Manish, R.; Wulff, W. D. Org. Lett. 2004, 6, 329-332. DOI: 10.1021/ol0360445
  9. ^ White, J. D.; Smits, H. Org. Lett. 2005, 7, 235-238. DOI: 10.1021/ol047779s