デニス・シアマ
Dennis Sciama デニス・シアマFRS | |
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生誕 |
Dennis William Siahou Sciama 1926年11月18日 イングランド ランカシャー州マンチェスター |
死没 |
1999年12月18日(73歳没) イングランド オックスフォード |
研究分野 | 重力学 |
研究機関 |
オックスフォード大学 ケンブリッジ大学 コーネル大学 ハーバード大学 キングス・カレッジ・ロンドン テキサス大学オースティン校 国際先端研究大学院大学 ピサ高等師範学校 |
出身校 | ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ[1] |
博士論文 | On the origin of inertia (1952) |
博士課程 指導教員 | ポール・ディラック[2] |
博士課程 指導学生 | |
主な業績 |
現代宇宙論 ブラックホール ビッグバン理論 暗黒物質 重力波 クエーサー |
主な受賞歴 | ガスリー・メダル (1991)[6] |
配偶者 |
Lidia Dina (結婚 1959年) |
子供 | 2人 |
プロジェクト:人物伝 |
デニス・ウィリアム・シアホウ・シアマ(Dennis William Siahou Sciama FRS [ʃiˈæmə]、1926年11月18日 - 1999年12月18日)[7][8]は、イギリス・イングランドの物理学者である。自身や指導した学生たちの研究により、第二次世界大戦後のイギリスの物理学の発展に大きな役割を果たした[9][10]。シアマが博士論文の指導をした学生の中には、ジョン・D・バロウ、デイヴィッド・ドイッチュ、ジョージ・エリス、スティーヴン・ホーキング、エイドリアン・メロット、マーティン・リースなどの多くの著名な物理学者・宇宙論学者がおり、シアマは現代宇宙論の父の一人とみなされている[11][12][13][14]。
生涯
[編集]シアマはイングランドのランカシャー州マンチェスターで1926年11月18日に生まれた[15]。シリア系ユダヤ人の末裔であり、父アブラハムはマンチェスター生まれ、母ネリーはエジプト生まれだが、いずれの家系もシリアのアレッポにルーツを持つ[16]。
ケンブリッジ大学に入学し、ポール・ディラックの指導の下で1953年にPhDを取得した[2]。博士論文のテーマは、マッハの原理と慣性についてだった。この研究は、後に重力のスカラー・テンソル理論の定式化に影響を与えた。
シアマはコーネル大学、キングス・カレッジ・ロンドン、ハーバード大学、テキサス大学オースティン校の教員も務めたが、キャリアの大半をケンブリッジ大学(1950年代から60年代)とオックスフォード大学オール・ソウルズ・カレッジの研究員(1970年代から80年代前半)として過ごした。1983年にイタリアのトリエステに移り、国際先端研究大学院大学(SISSA)の天文物理学教授、国際理論物理学センターのコンサルタントとなった。また、ピサ高等師範学校でも教鞭をとった。 1972年から1973年まで、ダブリン大学トリニティ・カレッジで数学のドネガル講師職に就いた[17]。1990年代は、トリエステとオックスフォードを行き来し、ヴェネツィアとオックスフォードの両方に家を構えた。生涯現役のまま、1999年12月18日にオックスフォードで死去した。
業績
[編集]シアマは天文学と天体物理学のいくつかの問題を結びつけ、電波天文学、X線天文学、クエーサー、宇宙マイクロ波背景放射の異方性、星間・銀河間物質、天体素粒子物理学、暗黒物質の性質について執筆した。シアマの業績で最も重要なのは、一般相対性理論(量子論が関わるものと関わらないものの双方)とブラックホールに関する研究である[18]。シアマは一般相対性理論の古典相対論的拡張(アインシュタイン=カルタン理論)の活性化に貢献した。
キャリアの初期には定常宇宙論を支持し、その提唱者であるフレッド・ホイル、ヘルマン・ボンディ、トーマス・ゴールドと交流した。1960年代、宇宙マイクロ波背景放射などの定常宇宙論に対する反証が多数発見されたことで、シアマは定常宇宙論への支持を撤回し、ビッグバン宇宙論の研究に取り組んだ。定常宇宙論支持者の中で、そこから転向したのはシアマくらいである。ホイルは定常宇宙論の研究に生涯取り組み続けた。ボンディとゴールドは1960年代に宇宙論の研究自体から撤退した。
晩年のシアマは暗黒物質の問題に興味を持つようになった。シアマは、暗黒物質の正体が「重いニュートリノ」であるという理論を追求した。
博士論文指導学生
[編集]シアマが博士論文の指導をした学生の中には、以下に挙げるような現代を代表する宇宙物理学者や宇宙論者が数多くいる。
- ジョージ・エリス (1964)[2]
- スティーヴン・ホーキング (1966)[3][2]
- ブランドン・カーター (1967)[2]
- マーティン・リース (1967)[2][4]
- ゲイリー・ギボンズ (1973)[2]
- ジェームズ・ビニー (1975)[2]
- ジョン・D・バロウ (1977)[2]
- フィリップ・キャンデラス (1977)[19]
- デイヴィッド・ドイッチュ (1978)[2]
- エイドリアン・メロット (1981)[2]
- アントニー・ヴァレンティーニ (1992)[2]
シアマはロジャー・ペンローズにも強い影響を与えている。シアマの死後、ペンローズは著書"The Road to Reality"をシアマに捧げている。
著書
[編集]- Sciama, Dennis (1959). The Unity of the Universe. London: Faber & Faber
- Sciama, Dennis (1969). “The Physical Foundations of General Relativity”. Science Study Series (New York: Doubleday) 58. Bibcode: 1969pfgr.book.....S. Short (104 pages) and clearly written non-mathematical book on the physical and conceptual foundations of General Relativity. Could be read with profit by physics students before immersing themselves in more technical studies of General Relativity.
- Sciama, Dennis (1971). Modern Cosmology. Cambridge University Press. ISBN 9780521080699
- Sciama, Dennis (1993). Modern Cosmology and the Dark Matter Problem. Cambridge University Press. ISBN 9780521438483
賞と栄誉
[編集]シアマは1983年に王立協会フェロー(FRS)に選出された[7]。また、アメリカ芸術科学アカデミー、アメリカ哲学協会、アッカデーミア・デイ・リンチェイの名誉会員でもある。1983年から1986年まで、国際一般相対性理論・重力学会の会長を務めた[20]。
最も有名な教え子であるスティーヴン・ホーキングの伝記映画やドラマにはシアマが登場する。2004年にBBCが製作したテレビ映画『ホーキング』では、シアマの役をジョン・セッションズが演じた。2011年の映画『博士と彼女のセオリー』では、デヴィッド・シューリスがシアマを演じた。ただし、シアマの教え子の一人である物理学者のエイドリアン・メロットは、この映画におけるシアマの描き方を強く批判した[21]。
私生活
[編集]シアマは、自らがシリア系ユダヤ人であることや、無神論者であることを公言していた[22]。
1959年、シアマは社会人類学者のリディア・ダイナ(Lidia Dina)と結婚した。リディアとの間には2人の娘がいる[7]。
脚注
[編集]- ^ Oral Histories – American Institute of Physics
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w Dennis Sciama - Mathematics Genealogy Project
- ^ a b Hawking, Stephen William (1966). Properties of Expanding Universes. repository.cam.ac.uk (PhD thesis). University of Cambridge. doi:10.17863/CAM.11283. OCLC 62793673. EThOS uk.bl.ethos.601153。
- ^ a b Rees, Martin (1967). Physical Processes in Radio Sources and the Intergalactic Medium (PhD thesis). University of Cambridge. 2018年6月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年10月29日閲覧。
- ^ “Professor Tim Palmer, CBE, FRS”. Honorary Graduates 2016. University of Bristol (21 July 2016). 2016年10月17日閲覧。
- ^ “Institute of Physics awards”. Iop.org (21 February 2012). 2012年2月28日閲覧。
- ^ a b c Ellis, George F. R.; Penrose, Roger (2010). “Dennis William Sciama. 18 November 1926 -- 19 December 1999”. Biographical Memoirs of Fellows of the Royal Society 56: 401–422. doi:10.1098/rsbm.2009.0023.
- ^ Ellis, George F. R. (2000). “Dennis Sciama (1926–99)”. Nature 403 (6771): 722. Bibcode: 2000Natur.403..722E. doi:10.1038/35001716. PMID 10693790.
- ^ “PhysicsWorld Archive » Volume 13 » Obituary: Dennis Sciama 1926–1999”. Physicsworldarchive.iop.org. 2012年2月28日閲覧。
- ^ “PROCEEDINGS OF THE AMERICAN PHILOSOPHICAL SOCIETY VOL. 145, NO. 3, SEPTEMBER 2001”. 21 February 2012時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年2月28日閲覧。
- ^ The Renaissance of General Relativity and Cosmology, eds. G. F. R. Ellis et al., Cambridge Univ. Press, 1993. (Contains a Sciama Festschrift with Sciama's complete scientific genealogy).
- ^ Short biography (source for much of this entry)
- ^ Oral History interview transcript with Dennis W. Sciama 25 January 1989, American Institute of Physics, Niels Bohr Library and Archives
- ^ Sciama, Dennis William (1926–1999), cosmologist. Oxford Dictionary of National Biography. doi:10.1093/ref:odnb/73574
- ^ The International Who's Who, 1997-98
- ^ Helge Kragh (1999). Cosmology and Controversy: The Historical Development of Two Theories of the Universe H (1st ed.). University of Chicago Press. p. 220
- ^ The Dublin University calendar 1972-73 Trinity College Dublin, The University of Dublin
- ^ Celotti, A.; Miller, J. C.; Sciama, Dennis W. (29 October 1999). “Astrophysical evidence for the existence of black holes”. Classical and Quantum Gravity 16 (12A): A3–A21. arXiv:astro-ph/9912186. Bibcode: 1999CQGra..16A...3C. doi:10.1088/0264-9381/16/12A/301 27 May 2023閲覧。.
- ^ Candelas PhD Theses http://solo.bodleian.ox.ac.uk/primo_library/libweb/action/dlDisplay.do?vid=OXVU1&search_scope=LSCOP_OX&docId=oxfaleph012115106&fn=permalink
- ^ “GRG Society History”. International Society on General Relativity and Gravitation. 2024年3月19日閲覧。
- ^ Melott, Adrian (2015). “Vews: 'The Theory of Everything' is missing something”. Astronomy & Geophysics 56 (2): 2.9–c–2.9. doi:10.1093/astrogeo/atv057. ISSN 1366-8781.
- ^ Ellis, George F. R. (2010). “DENNIS WILLIAM SCIAMA: 18 November 1926 – 19 December 1999”. Biographical Memoirs of Fellows of the Royal Society 56: 401–422. doi:10.1098/rsbm.2009.0023. JSTOR 41413916.