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トゲネズミ属

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
トゲネズミ属
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 齧歯目 Rodentia
: ネズミ科 Muridae
亜科 : ネズミ亜科 Murinae
: トゲネズミ属 Tokudaia
学名
Tokudaia Kuroda1943[1]
模式種
Rattus jerdoni osimensis Abe, 1933[1]
シノニム[1]
和名
トゲネズミ属[2]
リュウキュウトゲネズミ属[3]
英名
Ryukyu spiny rat[4]
Spinous country-rat[5]

トゲネズミ属(トゲネズミぞく、棘鼠属、学名Tokudaia)は、南西諸島に生息する齧歯目ネズミ科の1属で、3種が確認されている。いずれの種も日本固有種である。トゲネズミと総称する。標準和名リュウキュウトゲネズミ属[3]

かつてはトゲネズミ Tokudaia osimensis 1種のみを認めることが多かったが、2001年以降3種に分類できることが明らかになった[6]

概要

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和名の由来の通り、約2センチメートルの針状毛を持つ。森林性のネズミで、自然度の高い広葉樹林(シイ林)に生息する。雑食性でスダジイマテバシイなどの実、サツマイモ、アリや昆虫などを食べる。またオキナワトゲネズミは飼育下でキノボリトカゲリュウキュウアカガエルなどを食べた例もある[7]。繁殖期は10-12月頃で、一腹仔数はアマミトゲネズミで1-7頭、オキナワトゲネズミで5-10頭である。生息地では、フイリマングースノネコノイヌにより捕食されており、絶滅が懸念されている[2]

近縁な属としては、マーガレットネズミ属 Margaretamys と 化石属の Parapodemys が考えられている[7]

分類史

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1941年に徳田御稔がアマミトゲネズミを新属Acanthomysに分類することを提唱したが、この属名はすでに別の分類群に使用されていたため、1943年に黒田長礼によりTokudaiaの属名が与えられた[8]。1946年にDavid H. Johnsonにより沖縄産の亜種が記載されて以来、本属にはトゲネズミ Tokudaia osimensis 1種を認め、それをアマミトゲネズミ T. o. osimensisオキナワトゲネズミ T. o. muenninki の2亜種に分類することが主流だった[8]。またそのほかに、徳之島には未記載の亜種が存在することも報告されていた[8]

しかし、2001年、須藤鎮世らにより、身体特徴・染色体構成・性決定法から、これらが3種に分類できることが明らかになった[5]。2つの亜種が別種であることは、同年金子之史によっても確認された[4]

第3の種は、2006年に、遠藤秀紀土屋公幸によりトクノシマトゲネズミ Tokudaia tokunoshimensis として記載された[9]

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3種は染色体数及び性染色体の型が異なる。また、全種が日本の天然記念物に指定されている(1972年指定)。

アマミトゲネズミ Tokudaia osimensis (Abe1933) — Amami spiny rat
奄美大島にのみ生息する。染色体数2n=25。性染色体XO型。オキナワトゲネズミよりも小型である。
ENDANGERED (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))
絶滅危惧IB類 (EN)環境省レッドリスト[2]
鹿児島県版レッドデータブック - 絶滅危惧I類
オキナワトゲネズミ Tokudaia muenninki (Johnson1946) — Okinawa spiny rat
沖縄本島北部にのみ生息する。染色体数2n=44。性染色体XY型
CRITICALLY ENDANGERED (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))
絶滅危惧IA類 (CR)環境省レッドリスト[2]
沖縄版レッドデータブック - 絶滅危惧IA類
トクノシマトゲネズミ Tokudaia tokunoshimensis Endo & Tsuchiya, 2006Tokunoshima spiny rat
徳之島にのみ生息する。染色体数2n=45。性染色体XO型。他の2種と比べ、体が一回り大きい。また頭骨の形状が異なる。
ENDANGERED (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))
絶滅危惧IB類 (EN)環境省レッドリスト[2]

その他の「トゲネズミ」

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学術的にトゲネズミと呼ばれるのはこの属だけだが、他にも「○○トゲネズミ」と呼ばれる種があり、ペット業界などではこれらを単にトゲネズミと呼ぶことがある。

それらは以下の属に分類されている。

脚注

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  1. ^ a b c Guy G. Musser & Michael D. Carleton, “Superfamily Muroidea,” In: Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (eds.), Mammal Species of the World (3rd ed.), Volume 2, Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 894-1537.
  2. ^ a b c d e 金子之史「オキナワトゲネズミ」「アマミトゲネズミ」「トクノシマトゲネズミ」、環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室 編『レッドデータブック2014 -日本の絶滅のおそれのある野生動物-1 哺乳類』ぎょうせい、2014年、20-21, 50-53頁。
  3. ^ a b 川田伸一郎・岩佐真宏・福井大・新宅勇太・天野雅男・下稲葉さやか・樽創・姉崎智子・横畑泰志 「世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
  4. ^ a b Kaneko, Y. (2001), “Morphological discrimination of the Ryukyu spiny rat (genus Tokudaia) between the islandsof Okinawa and Amami Oshima, in the Ryukyu Islands, southern Japan”, Mammal Study 26: 17-33, doi:10.3106/mammalstudy.26.17 
  5. ^ a b Sutou, S.; Mitsui, Y. & Tsuchiya, K. (2001), “Sex determination without the Y Chromosome in two Japanese rodents Tokudaia osimensis osimensis and Tokudaia osimensis spp.”, Mammalian Genome 12 (1): 17-21, doi:10.1007/s003350010228 
  6. ^ 本川雅治・下稲葉さやか・鈴木聡「日本産哺乳類の最近の分類体系 ―阿部(2005)とWilson and Reeder(2005)の比較―」『哺乳類科学』第46巻 2号、日本哺乳類学会、2006年、181-191頁。
  7. ^ a b 金子之史「アマミトゲネズミ」「オキナワトゲネズミ」、阿部永監修、阿部永・石井信夫・伊藤徹魯・金子之史・前田喜四雄・三浦慎吾・米田政明著、財団法人自然環境研究センター編 『日本の哺乳類【改訂2版】』 東海大学出版会、2008年、132-133頁、ISBN 978-4-486-01802-5
  8. ^ a b c 金子之史・村上興正 1996. 日本産の齧歯類(野鼠および家鼠)の分類学史的検討. 哺乳類科学 36(1):109-128. https://doi.org/10.11238/mammalianscience.36.109
  9. ^ Endo, Hideki; Tsuchiya, Kimiyuki (2006), “A new species of Ryukyu spiny rat, Tokudaia (Muridae: Rodentia), from Tokunoshima Island, Kagoshima Prefecture, Japan”, Mammal Study 31: 47-57, doi:10.3106/1348-6160(2006)31[47:ANSORS]2.0.CO;2 

参考文献

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  • 阿部永監修、阿部永石井信夫伊藤徹魯金子之史前田喜四雄三浦慎悟米田政明著、財団法人自然環境研究センター編 『日本の哺乳類【改訂2版】』 東海大学出版会、2008年、132-133頁、ISBN 978-4-486-01802-5
  • 阿部慎太郎 「アマミトゲネズミ」 『鹿児島県の絶滅のおそれのある野生動植物 -鹿児島県レッドデータブック動物編-』 鹿児島県環境生活部環境保護課 編、財団法人鹿児島県環境技術協会2003年、22頁、ISBN 4-9901588-0-6
  • 伊澤雅子 「オキナワトゲネズミ」 『改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(動物編) -レッドデータおきなわ-』、沖縄県文化環境部自然保護課編、2005年、23-24頁。
  • 丸山勝彦・伊澤雅子「オキナワトゲネズミ」『改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 (レッドデータおきなわ) 第3版 動物編』、沖縄県文化環境部自然保護課編、2017年、94-95頁。