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ナメラダイモンジソウ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナメラダイモンジソウ
イワタイゲキ、岐阜県美濃地方にて、2021年10月19日撮影
ナメラダイモンジソウ、2021年10月
岐阜県美濃地方にて
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
: ユキノシタ目 Saxifragales
: ユキノシタ科 Saxifragaceae
: ユキノシタ属 Saxifraga
: ダイモンジソウ(広義)[1]
S. fortunei
変種 : ナメラダイモンジソウ
S. fortunei var. suwoensis
学名
Saxifraga fortunei Hook.f. var. suwoensis Nakai[2]
和名
ナメラダイモンジソウ

ナメラダイモンジソウ(滑大文字草、学名: Saxifraga fortunei Hook.f. var. suwoensis Nakai[2])は、ユキノシタ科ユキノシタ属分類される多年草の1である[3][4]。広義のダイモンジソウ変種のひとつ[1]和名花弁の形が『大』の文字であり[4]、採集された山口県山口市の滑(なめら)山に由来する[3][5]

特徴

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草丈は高さ5-40 cm[6]根茎は短く、走出枝をつくらない[7]根生[8]、腎円形で長さ3-10 cm、基部は心形、なかほどまで拳状に[8]5-7裂し、裂片はふつう倒卵形で[4]あらい鋸歯があり、両面に毛が生え[3]葉柄は長さ3-20 cm[8]托葉は膜質で縁は毛状に裂ける[9]花茎をだし、円錐花序に白色のをつけ[3]花柄にまばらに短腺毛がある[9]。花弁は5個、上の3個は小さく長さ3-4 mm、下の2個は長さ6-15 mmで[6]、垂れ下がる[3]雄蕊は10個、は橙色[9]。花期は7-10月[3][4]果実は蒴果[9]種子は紡錘形で平滑[9]

分布と生育環境

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増水時に流水に浸かるような川岸の岩壁に群生するナメラダイモンジソウ

日本固有変種[6]本州中部地方以西)と九州に分布する[3][4]愛知県が分布の東限[6]

山地の湿気の富む上などに生育する[3]。増水時に流水に浸かるような岩上に群生することがある[10]花崗岩地帯のもは矮小で、古生層地帯のものは大形になる傾向がある[10]

和名の混同

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1939年に、原寛は『大日本植物誌(ユキノシタ科)』(三省堂)で本変種をカエデダイモンジソウと考えて、Saxifraga fortunei Hook.f. var. partita (Makino) Nakai[11]の学名をあてた[5]1953年1975年に、大井次三郎は『日本植物誌』(至文堂)で本変種をカエデダイモンジソウとして記載、図示していた[5]。1953年に、中井猛之進は本種を和名、ナメラダイモンジソウ、学名:Saxifraga fortunei Hook.f. var. suwoensis Nakaiとして報告している[5]。この基準標本は、当時の山口県阿武郡(現在の山口市)の滑(なめら)山で採集されたもので、国立科学博物館に収められている[5]1961年に、北村四郎村田源は『原色日本植物図鑑 草木編(Ⅱ)』(保育社)で本種をカエデダイモンジソウとして記載、図示していた[5]。このように本変種はしばしば誤って[6]カエデダイモンジソウと呼ばれていた[4]。現在は、カエデダイモンジソウは、エチゼンダイモンジソウ(越前大文字草、学名:Saxifraga acerifolia Wakab. et Satomi[12])の別名とされている[11]

ダイモンジソウとの識別ポイント

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類似するダイモンジソウ[9](大文字草、学名:Saxifraga fortunei Hook.f. var. alpina (Matsum. et Nakai) Nakai)[13]シノニムSaxifraga fortunei Hook.f. var. incisolobata (Engl. et Irmsch.) Nakai[4][14][15])との識別ポイントを下表に示す。本種の葉がなかほどまで5-7裂するのに対して[3]、ダイモンジソウは浅く5-17裂する[14]

和名
学名
葉の画像 識別のポイント
ナメラダイモンジソウ
S. fortunei
var. suwoensis
ナメラダイモンジソウの葉、岐阜県美濃地方にて、2021年10月19日撮影 葉はなかほどまで拳状に[8]5-7裂する[3]
分布域:本州(中部地方以西)と九州[3][4]
ダイモンジソウ
S. fortunei
var. alpina
ダイモンジソウの葉、伊吹山(岐阜県揖斐川町)にて、2014年9月13日撮影 葉は浅く5-17裂する[14]
分布域:ウスリー、樺太南千島中国朝鮮半島、日本(北海道、本州、四国、九州)[4]

種の保全状況評価

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日本では環境省による国レベルのレッドリストの指定を受けていないが[16]、以下の都道府県でレッドリストの指定を受けている。園芸目的の採集[6][17]林道工事治山工事[8]などにより、絶滅が危惧されている。

脚注

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  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2012年5月12日). “ダイモンジソウ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年10月20日閲覧。
  2. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2012年5月12日). “ナメラダイモンジソウ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年10月20日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k 林 (2009)、421頁
  4. ^ a b c d e f g h i 佐竹 (1982)、172頁
  5. ^ a b c d e f 若林 (1976)、122頁
  6. ^ a b c d e f g レッドデ-ータブックあいち2020” (PDF). 愛知県. pp. 610. 2021年10月20日閲覧。
  7. ^ ナメラダイモンジソウ”. 岡山理科大学. 2021年10月20日閲覧。
  8. ^ a b c d e f 三重県レッドデータブック2015” (PDF). 三重県. pp. 4951. 2021年10月20日閲覧。
  9. ^ a b c d e f 福岡県レッドデータブック2001、ナメラダイモンジソウ”. 福岡県. 2021年10月20日閲覧。
  10. ^ a b ナメラダイモンジソウ”. 広島大学デジタル博物館. 2021年10月20日閲覧。
  11. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2012年5月12日). “エチゼンダイモンジソウのシノニム”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年10月20日閲覧。
  12. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2012年5月12日). “エチゼンダイモンジソウ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年10月20日閲覧。
  13. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2012年5月12日). “ダイモンジソウ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年10月20日閲覧。
  14. ^ a b c 林 (2009)、420頁
  15. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2012年5月12日). “ダイモンジソウ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年10月20日閲覧。
  16. ^ 環境省レッドリスト2019の公表について”. 環境省. 2021年10月20日閲覧。
  17. ^ a b 福岡県レッドデータブック2011、ナメラダイモンジソウ”. 福岡県. 2021年10月20日閲覧。
  18. ^ レッドデータブックくまもと2019、維管束植物・コケ植物” (PDF). 熊本県. pp. 48. 2021年10月20日閲覧。
  19. ^ レッドデータブックおおいた2011、ナメラダイモンジソウ”. 大分県. 2021年10月20日閲覧。
  20. ^ 長野県版レッドリスト(植物編)2014”. 長野県. 2021年10月20日閲覧。
  21. ^ 佐賀県レッドリスト2020(植物編)”. 佐賀県. 2021年10月20日閲覧。

参考文献

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  • 佐竹義輔大井次三郎北村四郎、亘理俊次、冨成忠夫 編『日本の野生植物 草本II離弁花類』平凡社、1982年3月17日。ISBN 458253502X 
  • 林弥栄『日本の野草』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2009年10月。ISBN 9784635090421 
  • 若林三千男「カエデダイモンジソウとナメラダイモンジソウ」『植物分類,地理』第27巻第3号、日本植物分類学会、1976年、121-122頁、doi:10.18942/bunruichiri.KJ00002992179NAID 110003762374 

外部リンク

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