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亜硝酸エステル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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亜硝酸エステルの構造式(anti体)

亜硝酸エステル(あしょうさんエステル、: Alkyl nitrites)は亜硝酸エステルで、RON=Oの一般式を持つ有機化合物の総称である。トランス型に似たanti体と、シス型に似たsyn体の幾何異性体がある。

性質

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常温で気体である亜硝酸メチル以外は、無色ないし淡黄色の液体である。その多くが果実に似た香りを持ち、有機溶剤によく溶けるが、水には溶けにくい性質を持つ。N=O部の伸縮振動による特徴的な赤外吸収は、構造決定に有用である[1]

用途

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安価に合成できることから、医薬品試薬ロケット燃料に配合されるなど、用途は広い。

冠血管を拡張し、平滑筋を弛緩する作用があることから、狭心症心筋梗塞に対し即効性のあるアンプル剤として使用される。吸入による血圧低下は亜硝酸イソアミルが比較的高く、ヘキシル、ヘプチル、オクチルの順に、炭素鎖が長くなると減少する。医薬品としての利用は、1879年にイギリスのW.Murrellが使用したのが始まりである[2]シアン中毒解毒剤としても重要であり、注射を必要とせず吸入により投与できる亜硝酸アミルを中心に用いられる。

亜硝酸イソブチルや亜硝酸イソプロピルを含む脱法ドラッグ芳香剤などの名目で一部で販売されているが[3][4]、乱用による急性メトヘモグロビン血症による死亡例がある[2]。動物実験による半数致死濃度(LD50。ラット、4時間吸入)は亜硝酸エチル160ppm、亜硝酸メチル176ppm、亜硝酸プロピル300ppm、亜硝酸イソブチル777ppmなどのデータがある[2]

合成

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主に下記の合成法が採られる[5]

主な亜硝酸エステル

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化合物名 読み 英名 化学式 分子量 CAS登録番号 融点 沸点 密度 比重 備考
亜硝酸メチル あしょうさんめちる methyl nitrite 61.04 624-91-9 -12℃ 0.991
亜硝酸エチル あしょうさんえちる ethyl nitrite 75.07 109-95-5 17℃ 0.90
亜硝酸イソアミル あしょうさんいそあみる 3-methylbutyl nitrite 117.15 110-46-3 97-99℃ 0.875 異性体混合物は亜硝酸アミルと呼ばれる
亜硝酸イソブチル あしょうさんいそぶちる 2-methylpropyl nitrite 103.12 542-56-3 67℃ 0.870
亜硝酸イソプロピル あしょうさんいそぷろぴる 2-propyl nitrite 130.18 541-42-4 39-39.5℃ 0.844
亜硝酸 t-ブチル あしょうさんたーしゃりーぶちる 1,1-dimetylethyl nitrite 103.12 540-80-7 63℃ 0.8671 ジェット燃料
亜硝酸 n-ブチル あしょうさんのるまるぶちる butyl nitrite 103.12 544-16-1 78.2℃ 0.9114
亜硝酸 n-プロピル あしょうさんのるまるぷろぴる propyl nitrite 89.09 543-67-9 46-48℃ 0.8864 ジェット燃料

関連項目

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脚注

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  1. ^ 『窒素酸化物の事典』p190
  2. ^ a b c 『窒素酸化物の事典』p194-195
  3. ^ ラッシュ系ドラッグの薬物確認法 (PDF) (東京都健康安全研究センター 研究年報第57号(2006年))
  4. ^ メトヘモグロビン血症の解明 (PDF) Demystifying Methemoglobinemia.
  5. ^ 『窒素酸化物の事典』p191

参考文献

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  • 鈴木仁美『窒素酸化物の事典』丸善、2008年。ISBN 978-4-621-08048-1